あらすじ
日本海軍のシンボルとして不沈を誇りながら、瀬戸内海で謎の沈没を遂げた戦艦「陸奥」。その「陸奥」を巡り、巡洋艦「白馬」の艦長、設計者、そして砲撃を命じた旗艦の艦長の子供たちが辿った数奇な運命とは……。人間の繰り返す普遍的な愚行を、実際の事件を取り入れて描く(表題作)。―太平洋戦争末期から敗戦後の世相を背景に、極限下の人間模様を活写! 他10篇収録。
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Posted by ブクログ
風太郎作品の根底には、常に「太平洋戦争」があります。そのテーマを真っ向から描いた作品が面白くないわけがない!上質の戦争文学であり、ミステリ。特に『太陽黒点』はオススメ。
陸奥の爆沈をテーマにした「戦艦陸奥」他の短編小説集。文章がややレトロ調で、時代がかって
いる感はあるものの、戦時中の世相がよく描かれている。
陸奥の爆沈の原因は諸説あるが、乗組員による放火、爆破説が有力のようだ。当時の海軍では
下士官による水兵の私的制裁が日常化していたとか。これを恨んだ水兵が犯行に及んだのではな
いか、という説が有力で、結局千人以上が亡くなった。小説では別の原因になっているが、死と
隣り合わせの戦時下、ファシズムの嵐が吹き荒れる日本では、みんなまともな精神状態ではいら
れなかったのかもしれない。