揺れるような不思議な小説。小舟で揺られているような。
自分にとっては、仕事でしばらく忙しく、別のところに連れていかれるような感覚があり、心地よかった。心地よい・・ちょっと違うかな。。心の中に深く潜る・・というか。。自分はこのような状況に陥ったことはないし、異性だし、確かに理解しているとは感じられない
...続きを読む。でも、どこかの自らの心象風景に近づくことがある。
最初の文に>>
歩いていると、ついてくるものがあった。
まだ、遠いので、女なのか、男なのか分からない。どちらでもいい。かまわず歩き続けた。
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布団はすぐに敷きます。風呂は地下です。そっけなく説明する息子が出て行ってから薄いカーテンを引くと、すぐ際に海が見えた。波音がする。月は出ていない。波を見ようと目をこらしたが、灯の数が足りなかった。部屋はずいぶん前から準備されていたようにむっと暖かだった。窓も開け、冷えた空気を入れた
>>
最初は主人公がどこにいるのか、男性なのか女性なのかもわからなかった。
文章に好き、嫌いがあるが、すぐに好きになった。途中、ひらがなが多かったり、普通は使わない「たゆたう」などの言葉が出てきて、読みにくいと感じることもあった。でも、独特のリズムがあり、行ったり来たりする、人の気持ちの揺らぎを、自分事として感じることができたように思う。
ついてくるものは、最初、はっきりしない。途中からリアリティをもって感じられるようになってくる。主人公のメンタルも崩れる一歩手前までくる。それが離れていくことになるが、メンタルの危機は離れ、明るい前向きな気持ちに変わっていく。
まるで人生そのものではないか。単に恋愛だけでなく、いろいろなことを考えてしまった。
また、読み返したい。