川上弘美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
私(梨子)は、幼い頃から恋をしていたナーちゃんと婚約をし結婚するのですが、見た目も美しく魅力的なナーちゃんには、次々と女の人が近寄ってくるようです。
沈み込んでいる梨子はある時、その昔小学校の用務員室にいた高丘さんという男性に再会し、高丘さんに教えてもらった「魔法」で、江戸吉原や平安の時代に行き、果てしない旅をしながらさまざまな愛を知るのです。
「伊勢物語」をモチーフにした夢物語は、やわらかな筆致で読みやすく、昔々の恋物語を存分に堪能することができます。
江戸時代の女性たちのしいたげられたつつましい暮らしや、平安の姫さまにつかええる女房としての働きぶりなどが体験できて、今の時代と比べてみると本当に面白い。
人には物語があって、すべてが断片的で思い込みでできているのです。
体は滅びても、せつなく激しい恋心は、いまだにしぶとく心の中に残り続けているのです。
恋することは苦しくても、もう昔に帰れなくても、私たちは決してそのことを忘れることはないでしょう。
生きている間に好きな人に出会えるって、こんな素敵なことはないのですね。
とてもいい小説に出会えました。 -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんかなー?と思ったら、「このあたりの人たち」を既に読んでいて、すごく好みだったことを思い出した。
柴崎友香さんにどこか通じる、柔らかくて暖かくて、ノスタルジックな文体がとても心地よくて好み。
余白のような時間を感じさせてくれる、静かで素敵な短編集。
酷暑のホテルステイのお供として持って行ったら、本当にぴったりだった。
朝のプールサイドや、夜のテラスでゆったりとページをめくる時間が、とても贅沢で穏やかな気持ちにさせてくれる。
大きな感情の起伏はないのに、いつの間にか惹きつけられて、永遠に読んでいられるような優しい時間を過ごさせてくれる作品だった。 -
Posted by ブクログ
これは面白い! と思わず膝を打った。
専業主婦の菜月の、日々の様々なもやもやした思いがつづられる。
それは嫁姑問題を中心に、愛する夫との関係だったり、義妹などの親族のことだったり、昔の職場の同僚だったり。不思議なことに、そのどれもが共感できるような気がするのだ。
ただ、本作は2009年の作品。それ故か、「ツマがオットを立てる」描写が令和の現在の数倍は強いことの理解が必要かも。
そして、偶然参加することになる「これでよろしくて?同好会」も大変面白い。様々な年齢層の女性5人が集まって、特定の議題について自由に意見を述べる謎の会合だ。主に性や人間関係の話題が多く、それをあけすけに話す女性たちの会話が小気味いい。
この小説の面白いところは、菜月の視点で話がすぐに脱線すること。議題と関係のない妄想をしたり、唐突に思い出語りの独白が始まったり、突然時間軸が巻き戻ったり。
小説というよりも、生きている人間の思考を読んでいるみたいだ。