川上弘美のレビュー一覧
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とても良かった。パラレルワールドと言ってしまえばそうなんだけど、人生って本当のところこんな風なのかも知れないと、読み終わって本を閉じ、しみじみ思ってしまった。
川上弘美って、たぶんもう大御所なのだろうけど、よくこんなこと思いつくなあ。
主人公は表裏みたいな「留津」と「ルツ」。わたしは、さばさばした性格のルツの方により共感できた。誰もが様々な選択をして、何かを得たり何かをあきらめたりしながら、ままならない、と思いながら生きている。
でも物語の終盤近くなって、選ばなかった人生を生きてきた「流津」や「るつ」が少しだけ登場するが、不思議と彼女たちは一様に満たされた表情をしている。どんな選択をして -
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一編が文庫3ぺージに収まる長さで、ほっと心が休まるエッセイ集。
あ~そうですそうですと、思い当たるようなちょっとした出来事や、出先で見聞きしたことなどが書いてある。
中でも川上さんが引用されている本は、読みたくなってしまう。
好きな食べ物は飽きるまで食べる、なんかそのこだわりが良く分かる。私も米粉パンを卒業して今は塩バターパンに凝っている。
どこを読んでも、川上さんの人柄がにじみ出ている。拘らない楽そうな生き方や、作家で主婦でお母さんの、ゆったりした毎日が微笑ましい。
身近なものに向ける視線もユーモア含みのほっとする文章が納まっている。
" 織田作之助の「楢雄は心の淋しい時に蝿 -
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2011年3月11日に東日本大震災が起こり、川上弘美は3月中にこの小説を書き、自ら出版社に持ち込んだ。掲載されたのは「群像」2011年6月号だから、5月初旬発売で原稿の締切はおよそ4月20日あたり。刊行された小説として福島の原発事故をとりあげた最も早いもののひとつだった。本書にはこの時に発表された「神様 2011」の前に「神様」というタイトルの短編がおさめられている。並置されていると言うのが正しい。ぼくは2012年になったくらいか、当時勤めていた会社の同僚女性に本書を、短いし読みやすいだろうなと考えて、貸した。神戸の出身で阪神淡路大震災を経験していて、東日本大震災のすぐあとに東京へ引っ越して
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「好きな本があるよ、いい本があるよ、みんなもよかったら読んでね!」という、あとがきにあった川上弘美さんの声がたくさん聞こえてきた、面白い書評集でした。
好きな人がおすすめとして語ってくださるのを聞くのは楽しいです。小川洋子さんしかり、この川上弘美さんしかり。読み友さんたちも勿論。
どれもこれも面白そう…と思いましたが、今すぐにでも、と思ったのは、「むずかしい愛」、ジム・クレイス「死んでいる」、ジャネット・ウィンターソン「オレンジだけが果物じゃない」、倉橋由美子「老人のための残酷童話」、町田康「告白」、古井由吉「辻」、酒井順子「枕草子REMIX」、久世光彦「謎の母」です。
心に残った一文は「(中 -
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面白かったです。
あわあわとした、姉と弟の日々。
パパ、ママ、そして姉である主人公の都と、弟の陵。別々に立っているようで、とても濃密に絡まっていました。
戦中戦後や昭和の事件、昭和天皇の崩御、そして地下鉄サリン事件や地震も出てきて、姉弟のこれまでの時間の経過が描かれるのが印象的でした。降りたいときに降りることは、できない。でも、降りたくないときに降ろさせられる。生きるって難儀です。
好きだった、という告白はとても残酷で甘美な気がします。姉弟というものは思ったよりも近いかもしれません。
不思議と嫌悪感は全くありませんでした。
あわあわと、ぼやぼやと過ぎて行きました。 -
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ネタバレ川上さんお得意の、女達の恋の短編集はやっぱりいいな。
ちょっと風変わりな困ったちゃん達の恋愛模様にニンマリしたりアハハと笑ったり。
友人が思わずつぶやいたセリフ「まったくもう、困った、でもいい人だねこの人は」にも激しく同意。
不倫相手の元恋人に憑かてる内に仲良くなったり、論理的思考を持っているのに鈍感だったり。
みんな呑気でおおらかで。
愛すべき困ったちゃん達の逞しさに元気をもらった。
大人のしっとりと湿り気のある恋愛物も良かった。
「俺150年生きることにした。そのくらい生きていればさ、あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうしさ」
別れ際にそう言った彼。
途方もない年数は叶うわけはな