川上弘美のレビュー一覧

  • どこから行っても遠い町(新潮文庫)

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    平穏な日々にあるあやうさと幸福。ほっこりしながら読み進めていました。
    最後から数頁前の一行から、わたしは背筋が伸び、また川上さんの世界に引き込まれるのでした。川上さんのお話は、なんでこうも人生の無常さを表されるのでしょう。
    読んだ後は、しばらく切なさマックスだったが、後に希望が見えてくる。青い空の向こうから、真紀さんが微笑んでこちらを見てるような絵が浮かんだ。
    生きてることは素晴らしいと訴えてくる。またわたしは心で泣けました。

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    2020年06月11日
  • センセイの鞄 1巻

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    「センセイの鞄」漫画版。これは買って良かったかもしれない。映画版は俳優が印象と違うと思ったので好きになれなかった。でもこれは好きだ。映像付きだし気楽に読める。原作を知っているからこその、いいとこ取りなこの感じ!イイネイイネー。もう遅い時間だけど、日本酒を持ってきました。いそいそ。

    「センセイの鞄」漫画版P91。”心意気さえあれば どんな場所でも 人間は多くのものを学べるものですよ”。センセイの言葉である。酒と共に胃の腑に染みる。

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    2020年05月12日
  • 猫を拾いに(新潮文庫)

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    川上さんならではの不可思議な世界と、レンアイの話を、一つ一つ丁寧に読むのが楽しかった。
    恋人の弟、丹二さんを好きになってしまった衣世の、せつない恋の話 「ぞうげ色で、つめたくて」
    地球外生物が出てくる不思議な話 「誕生日の夜」
    修三の母の心の内を綴った「はにわ」
    気持ちが動くたびに、カウンター機をカチカチと押している女の子の話 「真面目な二人」等々、21篇が収められている。
    それぞれ深く考えさせられたり、最後まで飽きることなく楽しめました。
    川上さんの掌小説、好きです。

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    2020年04月12日
  • 水声

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    ある家族の、「私」から見た家族のお話し
    子供の頃と今とが交差しながら進んでいく
    家族みんなが素敵なんだけど、
    何よりママがとても素敵
    美しくて奔放で人を惹き付ける魅力のある人

    人が人に対する想いが、丁寧にかかれてる

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    2020年03月15日
  • 森へ行きましょう

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    とても良かった。パラレルワールドと言ってしまえばそうなんだけど、人生って本当のところこんな風なのかも知れないと、読み終わって本を閉じ、しみじみ思ってしまった。

    川上弘美って、たぶんもう大御所なのだろうけど、よくこんなこと思いつくなあ。

    主人公は表裏みたいな「留津」と「ルツ」。わたしは、さばさばした性格のルツの方により共感できた。誰もが様々な選択をして、何かを得たり何かをあきらめたりしながら、ままならない、と思いながら生きている。

    でも物語の終盤近くなって、選ばなかった人生を生きてきた「流津」や「るつ」が少しだけ登場するが、不思議と彼女たちは一様に満たされた表情をしている。どんな選択をして

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    2020年02月11日
  • ゆっくりさよならをとなえる(新潮文庫)

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    一編が文庫3ぺージに収まる長さで、ほっと心が休まるエッセイ集。
    あ~そうですそうですと、思い当たるようなちょっとした出来事や、出先で見聞きしたことなどが書いてある。
    中でも川上さんが引用されている本は、読みたくなってしまう。

    好きな食べ物は飽きるまで食べる、なんかそのこだわりが良く分かる。私も米粉パンを卒業して今は塩バターパンに凝っている。

    どこを読んでも、川上さんの人柄がにじみ出ている。拘らない楽そうな生き方や、作家で主婦でお母さんの、ゆったりした毎日が微笑ましい。
    身近なものに向ける視線もユーモア含みのほっとする文章が納まっている。

    " 織田作之助の「楢雄は心の淋しい時に蝿

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    2019年12月31日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。

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    2019年09月14日
  • 100万分の1回のねこ

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    個人的には楽しめたけれど、予想以上に毒が利いていた(笑)。
    確かに絵本も毒は利いているんだけれどさ。
    何ていうか大人向け『100万回生きたねこ』。
    それぞれの小説はおもしろいんだけれどもさ。

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    2019年07月20日
  • ゆっくりさよならをとなえる(新潮文庫)

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    川上弘美の本をはじめて読んだ。
    ちょっと洒落ていて、
    ところどころで、ハッとさせられた。
    タイトルがカッコ良すぎる気がして、
    (個人的にあまり好きではない類)
    もぞもぞしながら読みすすめたが、最後の最後で、
    このタイトルの一節が出てきて…
    やられたー!!
    となりました。
    普段は思い出さない昔のことや、思い出などを
    振り返させられ、
    しみじみ。
    読めてよかった?

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    2019年05月03日
  • おめでとう(新潮文庫)

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    お気に入りの一冊になりそう。
    短編だと一行ごとの印象が強いし物語ごとの悲哀が濃くてとても好き。飲み仲間の友人にプレゼントしたい。

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    2020年12月15日
  • 古道具 中野商店(新潮文庫)

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    人間描写が面白くてどんどん読み進めていけた。自分も中野商店で働けたら面白いのになと思わずにはいられなかった。

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    2019年03月01日
  • 川上弘美書評集 大好きな本

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    川上書評集。解説を書いているのが豊崎社長だからという訳でもないけど、基本的に、同じ方向性を持つ書評集という印象。そこに、同じ作家としての感性が添加された感じ。豊崎書評愛好家としては、本作からも同様の満足度が得られた訳です。あとは、本人のあとがきでも触れらているように、新しく書かれたものほど、作品を読みたくなる度が高まっていく感はあり。そういうところにまで自覚的であれる、ってのが素敵だけど。後半を中心に、読みたくなった本も少なくなく、ふとした折に、ブックガイドとしてお世話になります。

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    2019年01月27日
  • 神様 2011

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     2011年3月11日に東日本大震災が起こり、川上弘美は3月中にこの小説を書き、自ら出版社に持ち込んだ。掲載されたのは「群像」2011年6月号だから、5月初旬発売で原稿の締切はおよそ4月20日あたり。刊行された小説として福島の原発事故をとりあげた最も早いもののひとつだった。本書にはこの時に発表された「神様 2011」の前に「神様」というタイトルの短編がおさめられている。並置されていると言うのが正しい。ぼくは2012年になったくらいか、当時勤めていた会社の同僚女性に本書を、短いし読みやすいだろうなと考えて、貸した。神戸の出身で阪神淡路大震災を経験していて、東日本大震災のすぐあとに東京へ引っ越して

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    2019年01月23日
  • 川上弘美書評集 大好きな本

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    「好きな本があるよ、いい本があるよ、みんなもよかったら読んでね!」という、あとがきにあった川上弘美さんの声がたくさん聞こえてきた、面白い書評集でした。
    好きな人がおすすめとして語ってくださるのを聞くのは楽しいです。小川洋子さんしかり、この川上弘美さんしかり。読み友さんたちも勿論。
    どれもこれも面白そう…と思いましたが、今すぐにでも、と思ったのは、「むずかしい愛」、ジム・クレイス「死んでいる」、ジャネット・ウィンターソン「オレンジだけが果物じゃない」、倉橋由美子「老人のための残酷童話」、町田康「告白」、古井由吉「辻」、酒井順子「枕草子REMIX」、久世光彦「謎の母」です。
    心に残った一文は「(中

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    2018年12月19日
  • 溺レる

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    女流文学賞、伊藤整賞W受賞。短編集。どれも男と女の話。『さやさや』『溺レる』がお気に入り。この人はもの喰ってる描写がいいなぁ。実に旨そうで実に巧妙に取り入れてある。

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    2018年11月20日
  • あるようなないような

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    川上弘美さんのエッセイはぼんやりと読むのにとても良いです。
    こちらも面白かったです。
    選ぶ言葉が素敵…「元気出ない回路」「十一月散歩」「偽ギリシャ」、偽の誕生日というのも面白かったです。
    「元気出ない回路」に迷い込んでしまったとき、わたしも本を読むかなぁと思いました。
    十一月なので十一月散歩にわたしも出掛けたいです。
    読書案内も良かった。川上さんの好きな本の本も持っているので読みます。

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    2018年11月13日
  • 猫を拾いに(新潮文庫)

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    とても面白かったです。このテンションが丁度良くて好きです。
    小さな短編がいくつも、でもこれまで読んできた川上さんの短編集と地続きの世界が嬉しかったです。修三ちゃんも、多分山口さんと同じ村?のまるいさんも。
    お話は表題作が一番好きでした。これから世界はほろびていくのだろう、でもこんなゆるゆるとした諦念なら良いかなと思います。そして、本当にこんな風になるんだろうな、と感じました。

    「でも、恋をすると、誰でもちょっぴりずつ不幸になるよ。」これは…!と思いました。
    壇蜜さんの解説も嬉しいです。「つっつけ、不幸。つんつん。」

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    2018年10月30日
  • 水声

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    面白かったです。
    あわあわとした、姉と弟の日々。
    パパ、ママ、そして姉である主人公の都と、弟の陵。別々に立っているようで、とても濃密に絡まっていました。
    戦中戦後や昭和の事件、昭和天皇の崩御、そして地下鉄サリン事件や地震も出てきて、姉弟のこれまでの時間の経過が描かれるのが印象的でした。降りたいときに降りることは、できない。でも、降りたくないときに降ろさせられる。生きるって難儀です。
    好きだった、という告白はとても残酷で甘美な気がします。姉弟というものは思ったよりも近いかもしれません。
    不思議と嫌悪感は全くありませんでした。
    あわあわと、ぼやぼやと過ぎて行きました。

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    2018年10月15日
  • おめでとう(新潮文庫)

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    ネタバレ

    川上さんお得意の、女達の恋の短編集はやっぱりいいな。
    ちょっと風変わりな困ったちゃん達の恋愛模様にニンマリしたりアハハと笑ったり。
    友人が思わずつぶやいたセリフ「まったくもう、困った、でもいい人だねこの人は」にも激しく同意。
    不倫相手の元恋人に憑かてる内に仲良くなったり、論理的思考を持っているのに鈍感だったり。
    みんな呑気でおおらかで。
    愛すべき困ったちゃん達の逞しさに元気をもらった。

    大人のしっとりと湿り気のある恋愛物も良かった。
    「俺150年生きることにした。そのくらい生きていればさ、あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうしさ」
    別れ際にそう言った彼。
    途方もない年数は叶うわけはな

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    2018年09月09日
  • なめらかで熱くて甘苦しくて(新潮文庫)

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    書かれてからそんなに経ってないはずなのに、昔からある物語のような気がしました。
    伊勢物語をモチーフにした短編もありましたが、それのせいだけではないような。
    なめらかで熱くて甘苦しい、情念とか、人間の業をふつふつと感じます。でも描写は淡々としていて、そこがとても好きです。

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    2018年09月05日