あらすじ
もう帰れないよ、きっと。
重ねあった盃。並んで歩いた道。そして、二人で身を投げた海……。時間さえ超える恋を描く傑作掌篇集。女流文学賞、伊藤整賞ダブル受賞
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汲々とすればするほど、二人いっしょではなくなる。
ともかく充填し用いあってできてくるのは、ウチダさんでもないわたしでもない、そのあわいに生まれてでてくるところの形象である。
(さやさや/溺レる/亀が鳴く/可哀想/七面鳥が/百年/神虫/無明)
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年増のわたしと更に年上の男性との関係。すっかり大人のふたりなのにどこか子供っぽいやりとりで、読み終わるとなんだか心があったかい。蝦蛄を食べたくなった
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退廃的な生活。ダメな女。道を間違った男。変な人たち。こどものようなおとな。意味のない日々。
自分はなにをがんばっているんだろう?自分もこうなりたい、ほんとうは。ひとには言えないけど。
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女流文学賞、伊藤整賞W受賞。短編集。どれも男と女の話。『さやさや』『溺レる』がお気に入り。この人はもの喰ってる描写がいいなぁ。実に旨そうで実に巧妙に取り入れてある。
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表題の話より、冒頭の「さやさや」が好き。
互いに人間的に好意を抱いている男女が、酔ったまま終電もなくタクシーも走っていない田舎の道を歩く夜。
美味しいお酒を気持ちよく飲んでいるような、心地いいふわふわした意識のなかで読めた。
川上さんが描く男性はどうしてこうも魅力的に見えるのでしょう。
現実世界にいたら確実に好きになってしまうようなおとこのひとばかりです。
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川上弘美の怖さを見た。
言葉の重ね方、
会話の重ね方、
酒と食事の重ね方が、
川上弘美の魅力と思っていたのは、
まだまだ少ない経験で得た、
彼女のいち断面であったか。
男と女の情念の、
強く、淡く、もろく、
果てしない粘りつき方が、
とても恐ろしい。
川上弘美が粘りつくと言うと、
ひどく粘りついて見える。
そこにある情念が、
とてもとても粘っこい。
あわあわとしているのに、
さらさらとしているのに、
やたらと絡みついて、怖い。
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「立ち向かう」から逃げてみたのはいいけれど、でも「逃げる」って、どこへ?
なんとなく満たされない心の隙間や、漠然とした不安を情欲で埋める男女たち。この気持ちは愛なのか気の迷いなのか。幸の味も不幸の味もわからなくなって、途方に暮れているような掌篇集だった。
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恋愛の、特に男女の関係のその部分だけを濃く濃く表現した短編集って感じでした。なんで彼と一緒にいるのか、なんで別れるのか、なんで彼が好きなのか、ということよりも『その人が好き』という感情だけが濃い。
お気に入りは『七面鳥が』でしょうか。彼を蹂躙したいって、普通、使いません…。
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現実とは、少し軸のずれたところにいるような男女。どの作品も片方は生活者として社会参加もしている、しかし、どちらかは日常生活の中で時間や、住んでいる地面から少し浮かんだような奇妙な空間で暮らしている。
二人はこういうカゲロウのような淡い、見方によってははかない弱い生き物になってしまっている、そんな日向か蔭よく分からない、流されて生きる人を書くのは、川上さんならでの世界だ。
短編集だが、テーマは、道行というか、世間からはみ出した二人連れの話で、行き着くところは、お定まりの別れだったり、話の最初から心中行だったりする。
別れは、まぁ文字通り、世間並みに生きていける方が去っていく。
情死は遂げたが、目的どおりうまく死ねたり、片方が生き残ったりする。そして死んだ魂が、百年、五百年と漂っていたりする。
こういう風に人の生活は何かとりとめがなさそうで、その根源は、単純に見えたり、哀しかったり恐ろしいものかもしれないと感じる。
川上さんの言葉似対する独特の優れた感覚、感性が雰囲気のある、短編集になっている。
「溺レる」という題名。次第に溺れていく男と女がアテもなくさまよい、部屋に帰ればはアイヨクに溺れる。
そういう行為が全編に書わたって書かれているが、アイヨクに溺れたり、交歓だったり、交合したり、情を交わしたり、挑みかかられたりして極まったり、極まれなかったり極まったフリをしたりする。男が可哀想で施してやったりする。
下品なポルノに堕ちない文学作品はこういう書き方もあるのかと読みきるのが惜しまれた。
作品の背景によって書き分けてられている情景も、言葉も素晴らしい。
さやさや
溺レル
亀が鳴く
可哀想
七面鳥か
百年
神虫
無明
男がこどものころ寝ていたら「七面鳥」が胸に乗ったという、夢の話か、それにしても足をたたんだ七面鳥の感覚が今でも甦る。
面白い話。
「さやさや」もいい。飲んで揺れる男の腰を見ながらついて歩く。気持が悪くなって道端で吐き、草むらに入って放尿する「さやさや」と音がした。
「溺レル」では、逃げている二人の会話がどこかずれているのに、二人で逃げている。
「リフジンなものからはね、逃げなければいけませんよ」といわれ
ひとつ逃げてみますか、というので逃げ始め、だんだんその意味も分からなくなってくる。
女は何もしないでゴロゴロしている。物事も全うできなくなった、以前は出来ていたのに、だから男との生活も全うできなかったのだ、「別れる」「出て行く」といって男が去った。
「百年」は心中で海に飛び込み死んでしまったが、男は助かり何もなかったように以家族との生活に戻った。男は87歳で死に子も死に孫も死んだのがわかる。
「無明」
不思議な世界、事故で二人とも死んだが、今度は不死の体になった。男は50年前にタクシーの免許を取り運転手をしている。五百年経ったけれどまた五百年くらいすぐ過ぎるさ、と男が言う。
あらすじは余り意味がない。短い物語なのに面白くて、特に結びがいい。
川上さんの作品は読むたびに後に残る。全部読もうかなと思うがそういう作家が多くてなかなか追いつかない。まだ先があるというのも嬉しいけれど。
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再読でも好きでした。何かから逃げ続けている男女の、ふわふわとしていながらも、寂しい官能を感じる短編集でした。いくらアイヨクに溺れても、相手との間の空気を改めて知るような、満たされないふたり。人ではないものになって、百年とか五百年を過ごしても、寂しさは続くのかもしれません。食べる場面も、悲しくて寂しくてとても好きです。亀って鳴くのかな。解説も好きでした。「つまらない女」にひっかかったら最後、もう帰れないのである。
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川上弘美さんてこんな詩的でエロい小説を書くのだなあと意外に思った。独特のちょっと古風な文体、言葉の使い方、それから頻繁に出てくる和食の描写。日本酒が飲みたくなる。全体的に上品な和の薫りがする。そして狂気が漂ってる。
「百年」が一番好き。心中した男女の、生き残った側ではなく、死んだ幽霊の側から見た世界。という設定が面白い。個人的に『坊っちゃん』が好きなので、ところどころに出てくる「清」のエピソードにぐっときた。
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ちょっと翳りのある、どこかいびつさのある男女関係を描いた短編集。どの話もどろりとした関係性のはずなのに、湿っぽさは感じられない。どの“わたし”もどこか醒めた目で自分と男のやりとりを見ているように思えた。
「この人の書く文章が好きなので、読んでみて欲しい」と友人から贈られた一冊。確かに自分では選ばないタイプの本なので、新鮮だった。
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行間に立ち込める空気をどこかで感じた事があると思ったら、太宰の斜陽だった。
収録作品の多くが「虚ろな男女のどこか前向きではない逃避行」といった風情。カラダの結びつきも描かれるわけだが、淡々としたエロさが文章として美しい。
そしていつもの川上節というのか、暖簾に腕を押すような男女のかけあいもしみじみとした味わい深さがあって心地いい。
砂時計の砂がさらさらと落ちて時の経過を告げる、そんな読後感。印象に残ったのは「さやさや」「溺レる」「可哀相」「七面鳥が」「神虫」の4篇。
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暗くてさびしい。でも後味悪くないのが不思議。
どうしようもない人たちが登場する。男も女も。
此処はいったい何処なのだろう?
同じような場所に、同じような男女が生息しているような。
百年とか、五百年後とか、お伽話みたいでおもしろい。
「亀が鳴く」が印象的だった。
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適切な表現ではないと思うが、境界知能に近しい主体性・生活能力の欠如した女性達の依存的な恋愛を収めたコンセプト短編集。
表題通り内容は感傷的かつ抽象度高め、作中人物に知を感じられず通読が少し大変だった。
一方、『神虫』『無明』など形而上的なアプローチが光る作品もあり、人は選ぶが文学的引力を持った一冊だった。
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別の本に『百年』が紹介されていて、気になったので読んでみました。
川上さんの作品は初めてです。
内容に疑問や余白が多く、短編なのに詩みたいだなと思いました。
サカキさんはどうして死にたくなってしまったのだろう。
助かって?しまったあとは、どんな気持ちで87歳まで生きたのだろう。
この物語は、主要な登場人物二人が、既に他界しており、「私」が俯瞰してみている文章になっていて、とても不思議な気持ちになりました。
この作品を通して、何を伝えたかったのか。余白が多い分、考える甲斐があります。
肉体はなくなっても、人の想いは一生残り続けるのかなと思いました。
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2025年6冊目『溺レる』(川上弘美 著、2002年9月、文藝春秋)
愛欲に溺れる男女の道行きを描く8つの物語が収められた短編集。
性表現は多いが、その背後に執着心のようなものは感じられない。また、短編は全て一人称小説なのだが、いずれの語り手も物事を俯瞰的に観測している。
本作の文体は軽やかで瑞々しく、登場人物たちのまぐわいは時として生々しいが、この著者と物語の距離感が、作品に乾いた寂寥感と儚さを生み出している様に思う。
〈ここはいったいどこなのだろうと不思議に思いながら、モウリさんに身を寄せていた〉
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自分と他人を隔たる境界線が、川上弘美にとって肌なのでは。
その肌の内側に空洞があって、それを他人で埋める女性は、社会に目もくれず自律していない。
一方で、その空洞を生物学的に満たす体を持ちながら埋めやすらしない男性は、女性を理解どころか関心すらもっていない。
体も心も満たされず、でも現状を手放せずにぬめぬめ生きる男女たち。
多かれ少なかれ、異性と適切な距離感をもてずにずぶずぶと生きる瞬間は誰にでもある気がする。
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少し不思議で倒錯したような世界で描かれる男女間の情愛の短編8本を収録。どれもストレートでエモーショナルな感情のぶつけ合いではなく、もちろんドロドロもしていない、どちらかというとカラッとあっさりした風合いなのだけれど、とらえどころのない男と、それに拘泥しないようでいてつながっている女の湿り気というか、人生のひだのようなものがそこはかとなく感じられる作品だった。
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静かな展開で進む短編集。
愛欲に溺れていく男女のお話です。
でも綺麗な流れなので何か心に響きます。
「アイシテルンデス」、肝心なときに言えないのはなぜだろう……。
二人で何本も徳利を空にして、ゆらゆらと並んで歩く暗い夜の情景―「さやさや」。
ちょっとだめな男とアイヨクにオボレ、どこまでも逃げる旅―「溺レる」。
もっと深い仲になりたいのに、ぬらくらとすり抜ける男―「七面鳥が」。
重ねあった盃。並んで歩いた道。そして、二人で身を投げた海……。恋愛の過ぎて行く一瞬を惜しみ、時間さえをも超えていく恋を描く傑作掌篇集。
他に「亀が鳴く」「可哀相」「百年」「神虫」「無明」など、全八篇。
2000年、本書で女流文学賞、伊藤整文学賞をW受賞。解説「つまらない女が飼う」 種村季弘
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【2022年58冊目】
タイトルの「溺レる」も含め、男女の恋愛について書いた短編集。解説を読んで気づいたが、登場人物は全員何かから逃げている。逃げているというか離れようとしているというか。
しんしんとした描写が続く。終始雨が降っているような雰囲気の話だった。
Posted by ブクログ
寄り添ってはいるけれど、どこか寂しく、心もとなく、さ迷っているような恋愛の情景を描いた短編小説集。どの作品も違う人たちのことが書かれているのにただよってくる雰囲気に共通点が感じられて、ほんとはみんな同じ人たちなんじゃないか…と思えてくる。彼らの会話や通り過ぎた景色の音や色や感触が心に残って離れない。不思議な読後感に浸れます。
Posted by ブクログ
入り込むと現世から逃れられないような引力がある。誰もが逃げていて、何から逃げているのか、頂点に君臨している者達から逃げているのか。何世紀経っても不老不死で生き続けている夫婦もいるのだから果てがない。どれが自分にとって理想的な逃避行か、探すのも面白いかもしれない。愛欲の故の溺レるというは正にそうで、どの短編でも少なくとも愛情や欲に溺レていた。
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う~ん、退廃と現実逃避の世界だなぁ~。
でも面白い...。この世界観はなかなか味わえないので、定期的に触れてみたくなるだろうな...。好き嫌いが分かれる作品だと思う。私はOKにしたい。
Posted by ブクログ
いろんな男女が出てきた。
細かい描写はないものの、やたら交わるのだけど、そんな部分より互いの気持ちや会話の部分の湿度や粘度が高くて驚く。
さらっとしてる文章に見えるし、男から殺されそうになったり二人して不死身だったりと、なかなか共感できるシチュエーションでもないし、執着だの欲望だのが前面に出るよりは、ぼんやりした淡泊な主人公の一人称が多いのだけど、何故だか知ってる感情のような気がする。
Posted by ブクログ
「溺レる」。
何故「れ」ではなく「レ」なのか。
なるほど「アイヨク」だから。
ダメ女達のなんとも言えない「愛」の短編集。「愛」と書くのもはばかられるような、そんな状態だけど。
冒頭の「さやさや」という短編は、おしっこの音だったとは。
Posted by ブクログ
なんとなく、雰囲気に浸れる女性作家さんの文章が読みたい、と手に取った本。以前読んだ『センセイの鞄』が良かったなぁと思った気がして。(確かこの本なのだがうろ覚え)
雰囲気はあるけれど、全体的に傾いた雰囲気で通勤電車で読み始めてくらくらした。
最初の「さやさや」とか、終わりのほうえーって感じだったし…。生々しい話が多い。
その後、ああそういう話ばかりなのね、と理解。現実から逃避する、男性に従順についていくふわふわ…というかじりじりとした女性ばかりが主人公で読みなれると楽だった。流れに抗わずに流されるというのはいいなあという心地さえしてきた。慣れるまでがちょっと気持ち悪かったけど。なんというか、酔ってる時に読むのが最適かも。朝のしゃっきり現実脳には向かない本かな。笑
食べ物にまつわる描写、毎回美味しそう。私はお酒を飲まないのだけど、おつまみとお酒美味しいのだろうなあと憧れるレベル。
「百年」という話の設定面白かったかな。死んで百年経つのかい、とびっくり。さっぱりした書き方で、確かに清のよう。
好きかどうかと言われると好きでないけれど、こういった文章をぐいぐい書けるのはすごいなと思ったので、星3つです。
Posted by ブクログ
星3つ半くらい。
ゆるゆると、川上ワールドに浸って居られるのが良い。
短編集を読むのは初めてだった気がする。
やっぱり、長編の方が良いな、と思いつつ、「神虫」あたりは、何がとは言葉に出来ないけれど、なんだか良かった、
150816
Posted by ブクログ
何かから逃げている男女を描いた短編集です。世間から、この世から、二人の関係性からーー彼等が逃げている対象は様々ですが、共通しているのは「諦めている」女の潔さでしょうか。
男の決断に諾々と従い、嗚呼こんな筈じゃなかったのにと溜息を吐きながら、最後には全てを許容する強かさ。
うーん、私には真似できないし、真似したくない女性像だなあ…。