あらすじ
誕生日の夜、プレーリードッグや地球外生物が集い、老婦人は可愛い息子の将来を案じた日々を懐かしむ。年寄りだらけになった日本では誰もが贈り物のアイデアに心悩ませ、愛を語る掌サイズのおじさんの頭上に蝉しぐれが降りそそぐ。不思議な人々と気になる恋。不機嫌上機嫌の風にあおられながら、それでも手に手をとって、つるつるごつごつ恋の悪路に素足でふみこむ女たちを慈しむ21篇。
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Posted by ブクログ
今月の頭に内定式のために行った東京で、生まれてはじめて神保町を訪れた。古本屋でついつい名前を探してしまう著者はそんなに多くないが、川上弘美は私にとってそのうちの一人である。短編集だというのも相まって、すぐに150円と引き換えにこの本を手に入れて、帰りの新幹線でのんびり読んだ。今日になってやっと最後まで読み終わったので感想記録。
一番好きなのは、うーん、決められない。「クリスマス・コンサート」「旅は、無料」の連作は良かった。金色の道、も素敵。川上弘美の書く年の差恋愛は大好物だから。朝顔のピアス、捨てがたい。「猫を拾いに」はそこまで刺さらなかったけど、自分にしてはこれは珍しい。表題作ってやっぱり一番出来がいいなあといつも思っているから。解説の壇蜜も、とても身近で共感できる文章だった。
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「こないだ本よんでたらさあ。圭司はそこでぱさりとあおむけになった。こんなことが書いてあった。地球上の生活には金がかかるかもしれないけど、太陽のまわりを年に一周する旅が無料でついてくるって」
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大好きで何度も読んでる本。どれも本当に短いお話なのに印象的で心に残るし読み返したくなる。特に好きなものは、
「猫を拾いに」
あたしたちは、じきに、ほろびるんだね
空想のようで現実のような少し切ない日常。
「クリスマス・コンサート」「旅は、無料」
一本の映画を見たような気持ちになる恋の話。
川上さんの書くちょっと距離感のある女性たちと、現実や日常の延長線に成立する少し不思議な世界がとてつもなく好き。
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詩のようなちょっと余白のある川上弘美さんの文章が相当好きです。
しかも不思議なお話が多いところも個人的にとても好みです。
何度読んでもまた新たな感想が生まれそう。
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川上さんならではの不可思議な世界と、レンアイの話を、一つ一つ丁寧に読むのが楽しかった。
恋人の弟、丹二さんを好きになってしまった衣世の、せつない恋の話 「ぞうげ色で、つめたくて」
地球外生物が出てくる不思議な話 「誕生日の夜」
修三の母の心の内を綴った「はにわ」
気持ちが動くたびに、カウンター機をカチカチと押している女の子の話 「真面目な二人」等々、21篇が収められている。
それぞれ深く考えさせられたり、最後まで飽きることなく楽しめました。
川上さんの掌小説、好きです。
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とても面白かったです。このテンションが丁度良くて好きです。
小さな短編がいくつも、でもこれまで読んできた川上さんの短編集と地続きの世界が嬉しかったです。修三ちゃんも、多分山口さんと同じ村?のまるいさんも。
お話は表題作が一番好きでした。これから世界はほろびていくのだろう、でもこんなゆるゆるとした諦念なら良いかなと思います。そして、本当にこんな風になるんだろうな、と感じました。
「でも、恋をすると、誰でもちょっぴりずつ不幸になるよ。」これは…!と思いました。
壇蜜さんの解説も嬉しいです。「つっつけ、不幸。つんつん。」
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初読み作家さん。
短編集。不思議なお話が多かったけど、置いてけぼりにされる事もなく、年末の忙殺を癒してくれる作品でした。特にクリスマスコンサートが好きでした。
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少し常識と比べたら変わった境遇だったり、体験だったり、なんとなく謎な人とか宇宙人とか小さい人とか幽霊だったりが出てくるちょっと不思議なテイストの21編の短編集。みんなもやっとしたものを抱えながらも、「まあいいか」とそれでも前を向いていくような、寂しさや悲しみに寄り添う温かさを感じました。特に『信長、よーじや、阿闍梨餅』がいちばん面白かった。
1話1話が短いので思い出した時に少しずつ読み返したくなりそう。
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試験前で読書を控えていた先月、ちまちま家にある"センセイの鞄"を読み、川上弘美欲が高まってしまった。
21の短編から成るこちらの作品は、どれも川上さん節が強く、みょうちくりんで魅力的な小説ばかりで心が満たされた…!
このくらいなら書けそうだと思わせてくる。だけど、絶対に書けないユニークな表現や世界観たち。高等テクや…!
お気に入りは"誕生日の夜"。
いつも通りナナの部屋で、のぞみとナナにお祝いされる誕生日。にぎやかな誕生日にするため、知り合いや、知りあいの知りあいもどんどん招待した結果、昌子たちや、のぞみの恋人の国枝くんとその友達、見知らぬおばあさんとおじいさん、タヌキのつがいと鶴にプレーリードッグ、そして地球外生命体のゆむ°て、どんどん参加者が増えていくカオスなのに穏やかで楽しそうな誕生日会。
出来すぎている息子の、性的嗜好だけが母である"私"を悩ませる"はにわ"も素敵。
交通調査で使うカウンター機で感情が揺さぶられた数を数える同級生に出会う"真面目な二人"。
女の阿部さんと男の阿部さんが出てくる"ラッキーカラーは黄"。
どれも最高にふにゃふにゃしていて、優しい夢みたいな物語で大好き。
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つかめそうで、つかめない。それが心地良いと思う。
現実と非現実の間を描くのが本当に巧みだと感じる。
どちらかと言えば、今までも、これからも、この短編に出てくるような不思議なことが、私に起きることはないだろうけど、似たようなやりとりはするんだろうなっていう、身近な感じというか、親近感がある。
川上弘美さんの作品は、いつも夢の中みたいで、目が覚めたら夢のことなんか忘れてしまうみたいに、読み終わったら詳細に思い出せない。でも、夢で見た一場面とか、言葉とか、小さな要素は頭の片隅にちゃんと保管されていて、ふとした時に思い出す。これを思い出したときがまた不思議な感覚になって、読んで良かったなあとしみじみ思う。
表題作は、まさかのディストピアで面白かった。こういう世界も書く人だったのか!
私もどこかでカウンター機を見つけたら、物語の2人みたいに持ち歩いてカウントしたいなと思った。
個人的に、解説の壇蜜さんの文章が面白くてとても好みで、壇蜜さんの本も読んでみたいなと思った。解説も読む価値大アリです。
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恋愛の短編集
川上弘美さんの作品はとても好きだ。
個人や人間や生物という、みんなが持って生きている枠というか輪郭がとても曖昧なぼやけている世界を描くのがとても上手い。
それでいって、登場人物はみんな自分の意見をしっかりもってる。まあこの二つは矛盾していくわけではないのだけど
この二つのミックス度がとても素敵な本
しかも恋愛について深いことをさらっと言うので心に気づいたら突き刺さってる。
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掴めそうで掴めない、ほんわか優しい短編集。
小人だったり、お盆からずれて帰ってくる霊だったり、人の色が見えたり、カチカチ感情の数を数えたり。不思議なはずなのに、さも「日常のストーリですけど?」という感じで普通に書かれているストーリーだらけで、現実世界でも、私の知らないところでこんな世界が実は繰り広げられているのではないか、と思えてしまう。
お気に入りは「ぞうげ色で、つめたくて」「クリスマス・コンサート」「9月の精霊」。
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自分の中の星新一はこういうお話を書きそうだなあと勝手に思ってしまうような、ひとつひとつの話が不思議でふわふわしていた。
詩集みたいな、突拍子もないけどそういう世界なんだなと納得してしまう馴染み深い味わいがあった。
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真ん中くらいまでは、結論がなくて何ともないただの描写じゃないのかと思っていましたが。「そういうことは、なんとなく、わかるものなのだ」という、村上春樹みたいな文章あたりから、その結論の無さが好ましくなってきました。
「地球上の生活には金がかかるかもしれないけど、太陽のまわりを年に一周する旅が無料でついてくる」なんていうちょっとくさい文章もなんだか許せてしまいます。
川上さんはあまり読んだことはありませんがちょっと気を付けて読んでみようと思いました。
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「地球上の生活には金がかかるかもしれないけど、太陽のまわりを年に一周する旅が無料でついてくる、って」(p.187)
川上ワールドにとっぷり浸かれる21篇。
肉体は太陽のまわりを旅しながら、精神は本のなかへと旅に出る。同時に2つの旅ができるのは、読書家の特権だと思った。
一番好きだったのは、「誕生日の夜」の、のぞみの台詞。「2000年は20世紀だったわけだから、31歳になってはじめて20代の世紀が終わる」という言葉が、ちょうど先日31歳になったばかりの自分にがつんと響いた。悦子に倣って、わたしも何かをひとつ、新しくしてみようかな。
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さくさく読めた 全体的にこれと言った盛り上がりもオチもない 当たり前に不思議なことが存在する日常を覗き見ている感じで良かった まあ人生って続くからなって思った。
しょっちゅう会って、打ち明け話とかもして、メールもいつも交わす友だちと、全然会わないのに、何かにつけて思いだす友だちの違い わかる
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面白い話もあったけれど、めちゃくちゃつまんない話もあった。
読んだのが少し前になるので記憶が曖昧なんですが、
ハイム鯖 誕生日の夜 猫を拾いに が特に面白くって印象に残ってる、が、金色の道がめちゃくちゃつまんなくて読むのをやめようと思った記憶がある。
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恋をすると不幸になる。
それでよいとおもう。
川上弘美のそういうところが好きだ。
どういうところかと言われても、
そういうところ、としか言いようがない。
*
どうしても欲しいものは、
いつだって、
僕の手に入らない。
それがでも、
僕は決していやではない。
『トンボ玉』
*
少しずつ、すべてがまんべんなく、
痛かった。
Posted by ブクログ
川上弘美の作品の中では、わりとマイルドで読みやすい短編集です。表題作の「猫を拾いに」よりも個人的には「ミンミン」「クリスマス・コンサート」「旅は、無料」の続けて3作と、「九月の精霊」がなんといってもお気に入り。順番に。「ミンミン」…小人のお話。ああ良いなぁこういう感覚が持てたら幸せだなと、純粋に思ってしまう童話のようなお話。コロポックル的。「クリスマス・コンサート」「旅は、無料」…登場人物が同じ、視点が違う女性の作品。まず前作を読むと、後作の話がすっと入ってきます。いますよねぇそういう人、でも憎めないし同性としても好きだけれど、でも少し憎らしいっていう感覚は素敵。無意識のうちに人を惹きつける人は、おそらく本来自分では気付いていなくって、だからこそ稀有で美しい存在。「九月の精霊」…今作品集の中で、個人的には一番お気に入りの作品。川上弘美らしい作品で、不思議で、幸せで、奇妙な感じ。先祖や血の繋がりはどうしても切っても切れないし、どうしても過ぎる時に涙が出てくる。成長して、歳をとって、だんだん死が近くなる。それは辛いことのようで本当は幸せなことでもあって、それを作品から感じることで幸福な気持ちが溢れてきました。生きていく、それぞれ女性にとって生き方が違うように、幸福のかたちや幸せを感じることも違うなぁと思わせられる作品集。