川上弘美のレビュー一覧
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今月の頭に内定式のために行った東京で、生まれてはじめて神保町を訪れた。古本屋でついつい名前を探してしまう著者はそんなに多くないが、川上弘美は私にとってそのうちの一人である。短編集だというのも相まって、すぐに150円と引き換えにこの本を手に入れて、帰りの新幹線でのんびり読んだ。今日になってやっと最後まで読み終わったので感想記録。
一番好きなのは、うーん、決められない。「クリスマス・コンサート」「旅は、無料」の連作は良かった。金色の道、も素敵。川上弘美の書く年の差恋愛は大好物だから。朝顔のピアス、捨てがたい。「猫を拾いに」はそこまで刺さらなかったけど、自分にしてはこれは珍しい。表題作ってやっぱり -
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ネタバレ家族についての、物語。
家族とは、何だろうか。
たとえば、結婚している男女、血のつながり…。
でも、そうではなくて、呼び名はどうであれ、一緒に暮らしているなら、それは家族なんだと思う。
誰と一緒に暮らしたいか、誰と家族になりたいかは、それぞれの選択だ。
ママは、武治さんではなくパパを選び、ママ曰く、パパとはそれ以上の関係ではないらしいけれど、兄妹としてではなく、パパママとして家族になった。
ママはとても魅力的で、この家族の物語の中心に、ママがいる。
解説で江國香織は、1986年の章は音楽のようだ、と言うけれど、まさにその通りで、この小説全体も、現在と過去を行き来し、まるでフーガのようなのだ。 -
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ネタバレ前作の七夜物語は、新聞連載で欠かさず読んだ。
さよと仄田くんはくっつかないのか‥しかも夜の冒険を覚えていないのか‥。と、ちょっと切ない気持ちで読み終えたのを覚えている。
さて続編、仄田くんの娘りらと、さよの息子絵が主人公。前半は、小学生2人の学校生活や家庭での話をメインに、子どもの内面をこれでもかと掘り下げてくる。自分が子どもの頃何をどんなふうに考えていたとか、ほとんどが忘却の彼方なんだけど、作者の川上さんは覚えているのかな、っていうぐらい、とてもリアルに思えた。
絵は学校生活をわりと謳歌してるけど、仄田くんに似てちょっと変わり種のりらは、イジメに遭っている。2人は仲良しなのに、りらの境遇を -
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子どもを産んでから、「私が可愛がってもらった曽祖母や祖母と、この子が会うことはないんだな」とふと思い、じゃあ私(や私と同世代のいとこたち)が死んだ時点で、曽祖母や祖母を知ってる人っていなくなるんだ!!とはたと気づくことがあった。
曽祖母から見れば私の子どもはたった4世代しか離れてなくて、なのにほんの数年前まで生きていた曽祖母を、私の娘は全く知らないし、知ることはないのだ!!
私には曽祖母や祖母との思い出がこんなにあるにも関わらず、私が死んだらもう誰も彼女たちのことを知る人は誰もいなくなるのだ。
人生ってなんてあっけないんだろう、歴史に名を残さない大多数の人々は、こうやってあっけなく忘れられるの -
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あなたは、『人魚』を見たことがあるでしょうか?
(*˙ᵕ˙*)え?
“世界三大がっかり名所”と言われる場所があります。ベルギーの”小便小僧”、シンガポールの”マーライオン像”、そしてデンマークはコペンハーゲンにある”人魚姫の像”です。世界的に有名にもかかわらず、わざわざ訪れてがっかりという感情が先行してしまうというのもなんだか残念な話です。しかし、そんなにがっかりするものなのか?と逆にがっかりを体験するために訪れる、そんな考え方もあるようです。
“人魚姫の像”はアンデルセンが1837年に作り出したおとぎ話が起点となっています。美しい人間の王子を見て恋心を抱いた一人の『人魚』は、やがて美 -
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『「うん、そうだよね。でも、わかりやすくちゃ、だめなの?」ぼくは大ねずみに聞いてみた。最初は、大ねずみのことがこわかったけれど、今はもう、どっちでもよかった。いろんなことがあって、つかれてるからかもしれない。「だめとかいいとか決めるってことが、そもそもわかりやすいことじゃないのかい?」かあさんが、大ねずみのその言葉を聞いて、わらった』―『二人の夜』
ああ、なるほど。これは続編だったのか、と届いた本の表紙を見て理解する。本棚には横長の新聞の切り抜きの束がある。もちろん、単行本もあるが初の新聞連載ということで一日一日読み継ぐ愉しさを味わった名残だ。本当は、連載された後に単行本となったものを読む方