ただ何となく分かっているつもりでいた近代について、十分に深化できてないなかったことを痛感した。文章自体は平易に綴られており、非常に理解しやすい。その分、ページ毎に想像をかき立てられた。これが良書というものかと感覚した。
社会学の標準理論 ー自然科学ではその分野の科学者が共有する普遍的な存在意義のよ
...続きを読むうなものー を模索する試み(これを著者は素直な近代、あるいは近世の試みとしいる)を懐疑的に見ており、モダニズム
は社会を規定する理論の模索に対する内省とした。
これを再帰的近代化と呼び、筆者は社会学を「物理法則のように普遍的かつ不変の法則としての社会秩序についての学問」としてではなく「社会的に共有される意味・形式の可変性・多様性についての学問」と定義している。ここで私はウェーバーやデュルケムが整備した「社会に共有されるもの、規定するもの」が確かに存在し、またそれは人間の意図の届かない自律的な性格を持っているという前提を忘れてならないと強く感じた。つまりこの部分に社会学を社会学にたらしめる根底があるよう思うのだ。
個人的に、芸術に関する記述画やや冗長のように感じられた。それを踏まえた上でも良書であるということは間違いない。