稲葉振一郎のレビュー一覧

  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』
    何年も前に読んだナウシカをまた読みたくなったきっかけだった。
    こんなに深い視点がいっぱい詰まった作品だったとは思わなかった。当時読んだ時は20代前半でまだ世の中の現実や厳しさなどほとんど知らない世界で過ごしていたためか、ほとんど心に残っていなかった。というよりも理解できていなかったのだと思う。
    もう...続きを読む
  • AI時代の労働の哲学
    昨年のコロナ禍の下で、取り組もうと思った「働くこと」についての本の読みつなぎ、こんな難しい本にまで届いてしまっています。題名に「AI時代〜」とは付いていますが、2014年のマイケル・A・オズボーン准教授らの論文『雇用の未来ーコンピューター化によって仕事は失われるのか』的な職業の浮き沈みの話ではなくて...続きを読む
  • 社会学入門・中級編
    入門編的な本はたくさん読んだので、社会学の知の上澄みは知ってきたが、実際どういう調査や因果論を経てあのような理論が打ち立てられたのかは、入門編には書いていないので、この中級編も大変勉強になった。
    個人的に勉強中の実験計画法と、以前から好きだった社会学、因果論がここで三位一体となり、頭の中で『十分に発...続きを読む
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか
    社会学の初歩についてではなく、社会学の性質について書いてあります。知識のない方が社会学がどんな学問か知りたいと思って読むとえらいめにあいます。『入門』とありますが、ある程度勉強したひとが読む本だと私的には思いました。
    名著です。
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか
    ただ何となく分かっているつもりでいた近代について、十分に深化できてないなかったことを痛感した。文章自体は平易に綴られており、非常に理解しやすい。その分、ページ毎に想像をかき立てられた。これが良書というものかと感覚した。
    社会学の標準理論 ー自然科学ではその分野の科学者が共有する普遍的な存在意義のよ...続きを読む
  • 「資本」論 ――取引する身体/取引される身体
    「自由な雇用労働が保証するのは、暴力や強制からの解放であって、健康で安全な生存ではない。」

     はるか昔では社会ってのは資本(土地とか金とか)をベースに作られていて、そういった物を持つ人間のみが働き、そして生活する場だった。自給自足的な生活ではそれが一般的だった。そして、それ以外の持たざる者は蚊帳...続きを読む
  • 増補 経済学という教養
    文系で最も科学的と言われる経済学だが、考え方や処方せんが論者によって真っ向から対立することもしばしば。そんなよくわからない経済学の見取図として、おすすめの良書。
  • 増補 経済学という教養
    人文系の人(経済学の素人)が素人のために書いた経済学の本。で個人的には初めての経済学の本。
    自身が素人であることを断った上でどの理論にも依ることなく俯瞰的な立場で経済学を論じる。
    現代思想をメインステージに活動する著者らしいので文章展開もそれらしく教科書的でない風な点で面白く読める。直接の経済学とは...続きを読む
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか
    現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。

    社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者...続きを読む
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか
    社会学とは何か気になったら最初にとるべき一冊。
    ややまわりくどい部分もあるが、初学者にとって非常にわかりやすく丁寧に書かれている。
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか
    凄いボリュームの本なので圧倒されてしまいますが、頑張って読んでみて欲しい本です。岸政彦さんの文章から感じるやさしさが好きで、それがいったいどこからきているのか少しわかった様な気がしました。
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか
    中級編を先に読んだのちに本書をとった。大澤の社会学史と並行して読んでいるが、研究者によって社会学の大家の捉え方が異なっているのが面白い。社会学にとって一般理論を作るのは不可能であるといわれているから、社会学をもとにする教育社会学も同様なのか、さらには教育社会学から派生した高等教育学も同様なのか気にな...続きを読む
  • 社会学入門・中級編
    社会学と他の学問との対置など詳しく論じられている。何をもって社会学で研究をするのかなどに迷われている方にオススメ。デイヴィッドソンの哲学のとこらは、理解するのに時間がかかり難しかった。
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

    社会学を専攻していないとわからない”雰囲気”はあるものの,問題の骨子は刺激的。

    たとえば,事例研究における代表性をどう考えるか?というトピックは社会学だけに留まらないであろう。

    対話記録であるため,会話感覚で読めるのも本書の良いところ。サクサク読めてしまう。

    しかし,内容の深みはあるので,し...続きを読む
  • 「資本」論 ――取引する身体/取引される身体
    労働力以外に売るものを持たない人々を「剥き出しの生」として扱われることから守るためには、労働力という人的資本の所有者とみなす擬制に基づいて、社会のセーフティ・ネットを基礎づけようとする試みです。

    本書の議論は、ホッブズやロック、ルソーによって論じられ、ヒュームによって批判された「自然状態」という概...続きを読む
  • 不平等との闘い ルソーからピケティまで
    もっぱら、現代でのピケティの議論に至る「分配」を巡っての経済学の長い歴史の一般的な解説である。このテーマが全世界と数百年の時を経て、幾人もの偉大な思想家と経済学者によって考察されてきても、いまだ誰にも全貌を見通しよく把握することのできない、人間の最大のテーマの一つ(生命とはなにか、とか、宇宙とはなに...続きを読む
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか
    社会学とは「社会的に共有される意味・形式の変容可能性についての学問」というのが結論。近代の自意識が社会学を形作ったというのは興味深いお話しでした。再帰的近代=ポストモダンというのは思ったより早くから進行していたんだな。
  • 増補 経済学という教養
    冒頭で「インフレ」という言葉の解説があったんでかなり易しめなのかと思ったが、そんなことはなく。それなりに経済学をかじってないとしんどいかもしれない。僕はしんどかった。

    しかし主要な経済思想を現状(2000年代中頃あたり?)に当てはめながら考えられるので、教養としては確かに良かった。参考文献をかなり...続きを読む
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか
    社会学の教科書を目指した入門書。

    社会学とはどのような方法で研究し、何を対象にして発展したのか、その歴史もわかりやすい本。

    社会学がわからない人は、まず類書を読んでみるのがいいのではないかと思う。
  • モダンのクールダウン
    僕の場合、モダンとポストモダンの定義をかなり東の定義に依っていたので、本書で示されるような「近代」「モダン」「ポストモダン」という区分けは、歴史の位置づけを行う際の「多様性」を指し示してくれたように思う。

    本書のキー概念である「テーマパーク型権力」に関しては、筆者も認めるように東の議論とかなりかぶ...続きを読む