北田暁大の一覧
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ユーザーレビュー
「左派」論者3名による経済政策論かつリベラル批判の対談書。日本のリベラル派を、経済成長政策を疎かにしてきたと批判し、文化的・制度的な面での公正性を重んじるだけでなく、「明日どうやって飯を食っていくか」に直結する経済政策もちゃんと考えろと指摘している。この本を読むことで、リベラルを自称し人権を重視し・
...続きを読む ・・と考えている人が、自分の視野の狭さに気付かされるかもしれない。僕はそうだった。
対談の著者は三名。①『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で有名なイギリス在住の文筆家、ブレイディみかこ。②マルクス経済学を専門にする立命館大学の経済学教授、松尾匡。③理論社会学でメディア史を専門にする東大大学院教授、北田暁大。戦後史、経済理論史、時事問題(ブレグジット、ギリシャ危機など)を幅広く取り上げつつ丁寧に説明しており、我々はどこからきて、今どこにいるのか、そして今後どこへゆくのかの文脈について、整理することができる。面白い。
また、この本を読んで感じたのは、経済政策を評価(立案・投票などすべて)するとき、私たちはどんな社会(国)作りがしたいのかをそもそも考える必要があるということ。
税金の使い道についても、税の累進性の政策の是非についても、結局何がしたいのかの目的に紐づけて、メリデメを評価する必要がある。
ついては、日本にそういった明確なビジョンがあるだろうかと思うと、色んな政治家がビジョンを出していることにようやく気づく。また様々な政策研究会議においてビジョンらしきものが提示されている。
「株式会社ニッポン」があるとしたら、世界市場でどんなポジションで、どういうミッション・ビジョン・バリューを持ってやっていこうとしているのか、もっと明確に理解していきたい、、、
本書が重要だと思えるのは、現実主義的な語り口だからだ。ライツ・トーク(rights talk)と呼ばれる、人権をベースとするリベラリズムの考え方(とくに、rights as a trump *人権の切り札性)の理想主義的な部分を認め、それだけで物事を判断しきれない、また政策として不十分な部分を解消するために、適切な経済成長や、適切な財政出動を推奨しているからだ。
一方で政策論はそれとして、その政策を実現するためには民意を動かしていく必要があるが、その民意が分断されている(=ソーシャルアパルトヘイトの)現状で、どう人々が交わっていくかについては、この本のスコープではカバーされていない。「リベラル」な自分が本当のところ「左派」になれないのは、この分断を作っている一員だからだと感じるが、これを乗り越えるために何ができるのか、強い課題意識を持った。
Posted by ブクログ
イギリス在住ライターのブレイディみかこ、経済学者の松尾匡、社会学者の北田暁大の3名による鼎談本。
ブレイディさんのヨーロッパ政治経済の知識と、松尾さんの経済学をベースに、北田さんが整理している感じ。「アベノミクス憎し」で経済政策が混迷している左派に警鐘を鳴らしている。
第二次安部政権のアベノミクス
...続きを読む のうち、金融緩和はデフレ経済では当然の政策で批判されるものではないのだが、左派はアベノミクスに反対せざるを得ないので賛成できないという奇妙な立場にあった。
続けて財政出動も、脱デフレを目指す雇用創出のための妥当な政策だった。
これらは小泉政権の新自由主義ではなく、むしろ逆に左派的な経済政策なのだが、安部首相が主導しているせいで左派はなぜか逆にこれを批判する形になった。
アベノミクスで批判されるべきは財政出動が選挙前に限られていたことや、規制緩和は金融緩和・財政出動と関係がなく、場合によっては矛盾することにあり、左派は本来「もっと財政出動しろ」と言うべきだった、というのが本書の主張。
安部首相がこのように左派的な経済政策をとった裏には支持を得て改憲など「本当にやりたいこと」をやるための下地作りがあったと思われ、これは一定以上に成功したが、改憲などに移る前に、森友・加計問題や「桜を見る会」などのお友達優遇や支持率は下がり、そこに新型コロナウイルス対策も重なり体調不良により辞任し、菅政権となった。
菅政権は、安部政権以上に権力を好き放題に振るう一方、経済政策は方向性が全く見えないため、左派にとっては有利な状況と言える。
しかし本書に従えば、野党は相変わらず不祥事の追及などに終止していて、アベノミクスのような「期待を持たせる経済政策」を打ち出さない限り、積極的な支持を得ることは難しいだろう。
Posted by ブクログ
いずれ読み返したくなるような、素晴らしい内容。
結局みんな自分の生活が1番大切なんだよ!っていう当たり前のことなんだけど、きちんとそれを説明してもらった感覚で、とても勉強になりました。
Posted by ブクログ
超面白い。
流行った消費社会論が経済の方向に行かずにアイデンティティ論に終始したというのは本当にその通りだと思う。
まだわからない部分が大きいけども、経済に興味が出てきた。
Posted by ブクログ
反緊縮政策の有効性や左派の思想史などについて学べる本。
・左派の立場から、勢力を盛り返すために現在の安部政権を上回る経済政策を提案しなければだめだ。そのためには、いままでのような緊縮ではなく、反緊縮政策を提案し、福祉などしかるべきところに再配分をしっかりと行うべきだ。
・WWⅡ前後の左派の歴史を整
...続きを読む 理、レフトの思想が歩んできた歴史とその総括について。労働者の味方だった左派が、下層の人々を忘れ多様性に焦点を絞るようになってしまったこと。
・メリトクラシー(能力主義)が勃興した結果、下層の人々に対する差別が生まれたこと。「能力が無いのは自己責任」。グローバリズムについていけない人たちが新たな差別階級になった。英国ではチャブ。日本ではマイルドヤンキーやB層。また、そうした状況の中で下層の人々が社会の中で取り残されていること。
現在の世界での潮流。トランプ大統領やジェレミー・コービン氏、安部首相がなぜ支持されているのか。という説明を非常にわかりやすくしている本だと思う。「緊縮政策で国内経済がボロボロになり、上下構造や明日の飯を食えるかというのが大きな関心になっていたところに、大々的に財政出動を主張する政党や政治家が現れ支持された」という説明は非常にわかりやすいものだったし、最近見たヨーロッパ情勢の本を読んで得られた実感とも重なる。ギリシャ危機に対する、ドイツやeuの掲げる経済政策への不信とかね。
ただ、本書のコンセプト自体が左派の復権を目指したものというか。右派の否定でもある気がしたので、モヤモヤするところもあった。左派・右派という二項対立に陥ってしまっている気がする。「効果のある経済政策を行い、右派から支持層をもぎ取ろうみたいな」。
右派の極致はナチスかもしれないが、左派の極致はソ連や中国共産党やグローバリズムの中で多様性を認めることを強制される社会だと思う。良い部分と悪い部分がお互いにある。
階級による差別はいかんという意見には完全に同意するし、そこに目がいくのはやはり左派の人たちだろうなと思うからこそ。
イデオロギーは違う価値観を持つ世界みたいな。自分がそこに属していたら、その世界と相手の世界を分けてしまうみたいな。政治思想を理解するにはイデオロギーを理解しなければいけないけれど、そうなるとイデオロギーによって自分と意見の違う相手を分かつことになる。「こちら側とあっち側」が出来上がる。レッテル貼りも生まれる。それぞれのいいところを理解するための邪魔になっている気がする。
囚われてしまうと、政策は結局のところ「相手を倒す道具」になってしまう。そこを乗り越えて、みんなを幸せにするためにはどうしたらいいのかを必死に考えることが一人一人に求められていく視点だと感じた。理想論だけれども。
Posted by ブクログ
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