稲葉振一郎のレビュー一覧

  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    社会学を専攻していないとわからない”雰囲気”はあるものの,問題の骨子は刺激的。

    たとえば,事例研究における代表性をどう考えるか?というトピックは社会学だけに留まらないであろう。

    対話記録であるため,会話感覚で読めるのも本書の良いところ。サクサク読めてしまう。

    しかし,内容の深みはあるので,しばらく知識をつけた後に読み返すと,また違った感想を抱くような気がする。

    ちなみに,著者らの情報量(知識)がすごすぎて圧巻,もっと勉強しなければと思わされました。

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    2019年04月17日
  • 「資本」論 ――取引する身体/取引される身体

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    労働力以外に売るものを持たない人々を「剥き出しの生」として扱われることから守るためには、労働力という人的資本の所有者とみなす擬制に基づいて、社会のセーフティ・ネットを基礎づけようとする試みです。

    本書の議論は、ホッブズやロック、ルソーによって論じられ、ヒュームによって批判された「自然状態」という概念や、アダム・スミスによって論じられた「市場」、さらに「資本」と「労働」の関係について論じたマルクスらの仕事を解説するという形で進められていきます。著者は、ホッブズとロックの「自然状態」の理解の相違を、エコロジカルな条件の相違によって一つの見取り図の中に位置づけようとします。さらに、ヒュームの「コン

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    2017年09月13日
  • 不平等との闘い ルソーからピケティまで

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    もっぱら、現代でのピケティの議論に至る「分配」を巡っての経済学の長い歴史の一般的な解説である。このテーマが全世界と数百年の時を経て、幾人もの偉大な思想家と経済学者によって考察されてきても、いまだ誰にも全貌を見通しよく把握することのできない、人間の最大のテーマの一つ(生命とはなにか、とか、宇宙とはなにか、とか・・に匹敵する)であることがわかる。
    新書とは思えない難しい内容であり、例えば、経済システムについての理解が現代社会の舵取りにはマストな教養インフラであったとしても、こういうことが政府部内や立法府でまともに議論できるようになるとは思えない。実際の政治システムや民意の形成では、「専門家」が否定

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    2018年10月19日
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか

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    社会学とは「社会的に共有される意味・形式の変容可能性についての学問」というのが結論。近代の自意識が社会学を形作ったというのは興味深いお話しでした。再帰的近代=ポストモダンというのは思ったより早くから進行していたんだな。

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    2013年09月07日
  • 増補 経済学という教養

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    冒頭で「インフレ」という言葉の解説があったんでかなり易しめなのかと思ったが、そんなことはなく。それなりに経済学をかじってないとしんどいかもしれない。僕はしんどかった。

    しかし主要な経済思想を現状(2000年代中頃あたり?)に当てはめながら考えられるので、教養としては確かに良かった。参考文献をかなりの数挙げてくれているので、要は「これを足がかりに教養を付けてくれ」という本なのだと思う。きちんと勉強したい人向け。

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    2013年05月12日
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか

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    社会学の教科書を目指した入門書。

    社会学とはどのような方法で研究し、何を対象にして発展したのか、その歴史もわかりやすい本。

    社会学がわからない人は、まず類書を読んでみるのがいいのではないかと思う。

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    2013年04月25日
  • モダンのクールダウン

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    僕の場合、モダンとポストモダンの定義をかなり東の定義に依っていたので、本書で示されるような「近代」「モダン」「ポストモダン」という区分けは、歴史の位置づけを行う際の「多様性」を指し示してくれたように思う。

    本書のキー概念である「テーマパーク型権力」に関しては、筆者も認めるように東の議論とかなりかぶるところが多いように見受けられる。ただ、大塚や他の思想家たちの思想を概観し、それぞれをある程度の客観性を持って俯瞰することが出来るようになったことは本書を読めたことの意義になるだろう。

    ただ、あまり僕がこの手の分野に不慣れなせいかわからないが、本書の示しているような近代――特に「時代」としての近代

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    2012年05月25日
  • 「公共性」論

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    公共性とは所与のものではないことから、
    全体主義や動物化の議論を通して、リベラル・デモクラシーの立場を取り、自然、社会、個人の諸関係を結んでいく。

    これまでの社会論≒公共性論の整理+著者の構想だけれど、
    何も考えなくて済むようなポストモダン的な社会ではない、
    方向へ少しでも向かう道筋をつけようとしている。
    配慮しつつの啓蒙路線。
    これは仕方ないし、こういう方向でしか啓蒙はもうできない。

    種々の議論と論者が入れ替わり立ち代り出てくること、
    著者自身ふらふらするところがあって、全体の流れを意識しながら読まないと迷子になる。
    また、具体的に創出or批判しなければならない、という意識が強く、悲観的

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    2012年02月19日
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか

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    社会学の教科書として書かれた本である。社会学が、学問として、一般理論を求めているが、見出せていないこと。そして、それが、究極的に、われわれの予想外にあること。学問の永遠のテーマだろうな。

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    2011年12月16日
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか

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    社会学のシャの字も知らないような自分だったが、本書はかなり分かりやすく、社会学の成り立ちから基礎的な研究方法、目指すところと今後に至るまで大よそ理解することができた。関連文書の紹介も充実しているため、分かりやすそうな本から今後も手をつけていきたいと考えている。

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    2011年11月27日
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか

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    「社会学ってなんだろう」という素朴な疑問から手に取ってみた本。
    とりあえずウェーバーとかデュルケームのことだろって思ってた社会学のイメージを変えてしっかりと入門させてくれた本。
    「社会学とは社会的に共有される意味・形式そしてその変容可能性についての学問」ということだそうです。
    入門書なのですごく読みやすいし、手早く読めます。
    そして最後に多様な読書案内がついてるので、さっそく読んでみようかと。

    「社会学ってなんだ?」と悩む人たちにまずは概論の一歩前としておすすめ。

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    2011年08月02日
  • 社会学入門 <多元化する時代>をどう捉えるか

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    格差や家族問題から国際紛争まで何でも扱う社会学。
    では、その根本に流れる問題意識とはどのようなものか?
    「無意識」の発見に象徴される、近代の理性的人間観の崩壊を踏まえ、人々が無自覚にもつ価値観と、社会形成とを関連づけて捉える視点だ。
    以上の見立ての下、デュルケムやウェーバーらを考察するとともに、他の諸学問との比較を通して、社会学の輪郭を描き出す。
    パーソンズ以降、社会学の中心理論の不在が続く現状を捉え直し、ダイナミックに変容する現代社会を分析する上での、社会学の新たな可能性をも探る。

    [ 目次 ]
    1 社会学の理論はどのようなものか(理論はなぜ必要か―共通理論なき社会学;「モデ

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    2011年06月12日
  • 「公共性」論

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    400ページ程の本書の帰結するところは著者曰く「着地点はひどく見慣れた風景」との事だが、そこに至るまでの本書の内容は結構険しい。論は理路整然としているので順を追っていけば読み解けるが、とにかく骨が折れる。それでもそれだけの内容はあると思う。「公共性」などという定義するのも共通認識を形作るのにも非常に困難なものを現在において捉え、理解することを助けてくれる1冊。良書です。

    市民社会における公共性とは何か?という問いに対して、著者はハーバーマスとアレンとの著作から公共性(市民的公共圏)の姿を描いてゆく。さらにはミル、ホッブス、ロックといった社会契約論的な地平まで遡って、公共性というものが成立する

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    2010年08月29日
  • モダンのクールダウン

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    近代をクールダウンしつつ、棄却することはせず、誰もがコミットする可能性を残すべきと主張
    テーマパークは動員であって公共性ではない
    →フェスはどうか

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    2009年10月04日
  • 「資本」論 ――取引する身体/取引される身体

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    「資本」論というタイトルに偽りあり。正しくは「資本論」論。マルクスの「資本論」とそれ以前のホッブスやルソーらの概念を比較していく。「資本論」研究としては薄いが、入門書としてはややとっつきにくい

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    2009年10月04日
  • 「資本」論 ――取引する身体/取引される身体

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    安価で入手しやすくコンパクトである、ということについては言うことは無い。内容は社会契約論からマルクスまでの道を噛みくだいで説明していく、というものだが、重箱の隅をつつくようなところもあり、その都度他の入門書なども参照しなければならないので、難易度は思ったよりも高い。各章ごとに論点がまとまっているので便利ではある。

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    2009年10月04日
  • 銀河帝国は必要か? ──ロボットと人類の未来

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    『「世界征服」は可能か?』からの本書だったため、同じような内容を期待したが、こちらは、SFやロボットと人間の関わりについて、もう少し硬い論調で書かれていてちょっと疲れる。「スター・ウォーズ」などのスペース・オペラが「宇宙を舞台とした西部劇」と説明されていて、長年の「スペース・オペラってよく聞くけど何だろ?」っていう疑問を解消してくれた。

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    2025年05月28日
  • 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』

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    教養がないと読み切れない対談集、難しい内容だと感じる本だった。これほどの知識人、文化人がその立場や専門分野から様々な考察がされる。宮崎駿作品ならではのことだろうと思う。それこそ20年以上前に、ナウシカの漫画本を途中までだか、読んだ記憶はあるのだが、自説を語れるほどの読者ではないので、偉そうなことは何も言えない立場ではある。

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    2023年07月23日
  • AI時代の労働の哲学

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    人工知能の発達によって人間の仕事がうばわれるのではないかという問いかけがなされる現在において、あらためて労働をめぐる経済学や社会哲学における議論の蓄積のなかから、この問題について考えるための手がかりをとりあげなおし、人工知能がわれわれにもたらすインパクトの本質について考察をおこなっている本です。

    著者は、ロックやスミス、ヘーゲル、マルクスなどの思想を渉猟し、資本主義における労働や疎外について彼らがいったいどのような思索を展開してきたのかということをたどっていきます。そうした枠組みを踏まえたとき、人工知能が人間の仕事をうばうという問題は、それが管理業務のようなものにまでおよぶことになるかもしれ

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    2023年06月28日
  • 不平等との闘い ルソーからピケティまで

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    トマ・ピケティの『21世紀の資本』(2014年、みすず書房)が日本でも広く話題となった状況のなかで刊行された数多くの本のひとつですが、著者が「あとがき」で述べているように、ピケティの解説書ではなく「不平等との戦い」というテーマの経済学史における変遷をたどり、このテーマが現代においてあらためてとりあげられることになった文脈を明らかにしている本です。

    本書ではまず、ルソーとスミスの対立にまでさかのぼり、ルソーが私的所有制度のもとでの分業が不平等を生み出すことを問題視したのに対して、スミスは市場メカニズムを通じて全体としての豊かさが実現できることに目を向けたことが説明されます。つづいて、マルクス経

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    2022年04月28日