稲葉振一郎のレビュー一覧
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社会学とはどのような学問なのかということを、わかりやすい文章で解説している本です。
著者は、社会学においては研究者たちの共通の枠組みとなるような理論が存在していないことを指摘し、そのあつかっているテーマのとりとめのなさの歴史的な由来や、そのことが社会学という学問の現代的意義にどのように関係しているのかということが論じられています。
本書では、社会契約論において「方法論的個人主義」の発想にもとづく社会の説明が成立し、その後社会学の前史において文化的な意味や知識、情報などが人間の行動を規定しているという全体論的な発想が生まれてきた経緯を説明しています。そのうえで、こうした新しい人間の理解のしか -
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SFものフィクションにしばしば登場する銀河系規模の国家の成立について、主にアイザックアシモフの古典SF作品を題材として考察する本。アシモフを作品は読んでいないが、本の要所要所で解説を挟むので読み進める上での不便はあまり感じなかった。(逆にいうとこれからアシモフの本を読みたい人には向いていない)
しかしながら倫理学や自然科学、社会科学に関連する内容が含むので、読み進めるのに骨が折れるし時間もかかる。
そもそもの話のスケールが壮大なので、直接現代の我々がこの本から得られる気づきは余りなさそうだが、フィクション作品を楽しむうえで作中の社会の成り立ちなどをあれこれ夢想するための資料にはなるだろう。 -
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本書のテーマは、著者自身によって「素人の、素人による、素人のための経済学入門」と規定されています。その一方で、「あとがき」には、「「マルクス主義」を野辺送りにし、「近代経済学」を肯定し、その上で自由主義と左翼ラディカリズム、そしてポストモダンへの、自分なりのスタンスを定められたように思います」と述べられているように、マルクス経済学という不良債権を処理し、その思想的遺産のなかに引き継ぐべきものとしてなにがのこされているのかということを見定める試みともなっています。
小泉内閣における「構造改革」が人びとのが大きな共感を呼び、金子勝を中心とする左派の経済学者たちの批判を鈍らせることになった理由とな -
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稲葉振一郎先生の新刊が出るので再読。「経済学という教養」についてあれこれと書かれている本だが、今から読むにはかなり厳しい本である。第一に、経済学入門としては、あまり筋がいい本とは言えず、これを主流派の経済学入門とするには、かなり厳しい。第二に、元はwebの連載をまとめたもので仕方ないかもしれないが、総花的でどうも纏まりが良くない。稲葉先生の「勉強ノートを公開してみた」という感じで、要点が整理されておらず、闇鍋みたいな経済学教養本。賛否で云うと否の割合が個人的に高い。
マルクス経済学について書いた部分をバッサリ切って、もっと主流派経済学について書くべきだったのでは?これだと「(マルクス)経済学 -
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先日読んだ「Do!ソシオロジー」は総花的で問題意識に欠ける、社会”学”としての観点に乏しいのが不満だった。
本書ではそういうところがきっちりと書かれている。
そもそも社会”学”とは何なのか、そこにはどのような理論があるのかをはじめに丁寧に解説していく。
そして、時代を戻して社会学の成立・発展史から現代の社会学における問題までを敷衍する。
「Do!ソシオロジー」が現時点における論点設定というところに重きを置いていたのに対して、本書は社会学それ自体のアイデンティティは何か?社会学の存在意義は何か?といったよりメタな視点での問題意識が強い。
社会学の標準(そんなものがあるとして)と著者の視点がど -
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[ 内容 ]
「私的所有」が制度化され、市場経済が発展し、資本主義の秩序が支配する世界は、それ以前の「自然」な状態よりも、おおむね有益である。
だがそうした世界は不平等や労働疎外をも生みだす。
それでもなお、私たちはこの世界に踏みとどまるべきであり、所有も市場も捨て去ってはならない。
本書はその根拠を示し、無産者であれ難民であれ「持たざる者=剥き出しの生」として扱われることがないよう、「労働力=人的資本」の所有者として見なすべきことを提唱する。
「所有」「市場」「資本」等の重要概念を根本から考察した末に示されるこうした論点は、これからの社会を考える上で示唆に富む。
[ 目次 ]
プロローグ -
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<目次>
第1章こういう人は、この本を読んでください
第2章出発点としての「不平等化」問題
1日本社会の「不平等化」
2不平等と経済学
第3章素人の、素人による、素人のための、経済学入門
1ミクロ経済学ーマクロ経済学への入り口として
2マクロ経済学
(1)マクロ経済現象-総需要と物価
(2)マクロ経済現象の原因-市場の不完全性か、貨幣愛か
3マクロ経済動学
(1)二つのケイジアン
(2)三つのケイジアン
(3)不完全情報と不確実性
(4)バブルとは何か
(5)この節のまとめ
4この章のまとめ
補論金融システムという魔圏
第4章日本経済論の隘路
1「構造改革主義」は「市場原理主義」で -
Posted by ブクログ
資本主義は不平等や疎外を生み出すシステムだけど、それに代わるものとしてマルクス主義のように新しいシステムを構想するのではなく、持たざるものは「労働力=人的資本」を所有する者として、このシステムに留まるべきだ――ということを、ホッブズやロックの社会契約論を参照しながら、所有、市場、資本など資本主義を構成する概念を検証しながら主張する。なんて分かったように書いているけど、社会学にも経済学にも不案内な僕には難解で理解できないところも多かった。たぶん誠実に書くからこうなっちゃうんだろうけど、新書なんだし、不誠実でも分かりやすく書いてもらえるとありがたいなと。