川上弘美のレビュー一覧
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ネタバレ川上弘美さんの文章を前にすると、私は為す術がなくなります。
人物の感情を推し量るとか、場面を分析してみるとか、いわゆる「読解」をしてみても良いのに、存外その「読解」が嫌いではない質なのに、ダメなのです。
空気に呑まれるというのが、適切な表現かもしれない。
本を閉じて、自分の世界に戻っていくのが、いつももったいなく感じるので、私は現実に満足していないんだなと思い知らされたりもします。
川上さんの紡ぐ言葉は、除夜の鐘のようにボワワワーンと体の芯に響きます。
評価とか感想とか書けないので、今回の読書で一番響いた一節を紹介します。
「若いって、いいな。ヤマグチさんの話を聞いていると、いつも私は思 -
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川上弘美って、
どうしてこうも怖いのだろう。
以前からそうなのだが、
年々その怖さが増していき、
先に読んでいた『森へ行きましょう』に真骨頂を見ていたが、
この作品で既にその片鱗が明確に現れていたか。
ふわっと夢のようでありながら、
生々しさと毒があって、
そのくせ冷たいくらいに俯瞰している視線がある。
それはグロテスクではない静かなものだからこそ、
とても怖く感じる。
確かにどこにでもありそうな町の人間模様に、
少しでも足を踏み入れれば、
そこにはひとりひとりの人生があり、
それは何にも変えられない超個人的なものだ。
その人生達が触れ合って、絡み合い、
通り過ぎて、離れていって、
そう -
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ネタバレ川上弘美ではもちろん「センセイの鞄」が一番好きだけど、これはそれと同レベルくらい切なかった。ありそうでなかった恋愛の設定だ。
お互いを強く求め続けた二人の気持ちは、普通の恋愛とは言えない。今、性同一性障害とか認知され始めているけど、こういう人たちももしかしたら世の中には…?ちょっと考えにくいし、存在するとしても多分、社会の中で「自分たちを認めてください」と声をあげることはまずしないだろうと思われる。ひっそりと生きるというか…。
そういうこともアタマをかすめつつ、でもあくまでも「物語」として、感情移入しながら読める。
「ママ」のキャラクターも素晴らしい。
多くの人が、彼女のように生きたいと思うの -
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春(22)・夏(24)・秋(25)・冬(19)・新年(6)と、川上さんが好きな季語とそれを含む一句を選び、その季語や句にまつわるエッセイが綴られている。
虫大好き、生物大好きな川上さんの、生きとし生けるもの全てに注ぐ視線が温かく、そしてちょっと不思議な体験談もあったり。
昭和の頃の話も同年代として懐かしく読みました。
載っている季語は、誰でもそこで一句読めそうな身近なものが多いですが、その中で異彩を放っていたのが『絵踏(えぶみ)』でした。
現代の歳時記にはもう載っていないことも多い、ということですが、2018年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産へ登録されたこともあ -
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『白シャツになりすもも食ふすもも食ふ 木星』―『夏/李(すもも)』
「すてきにハンドメイド」(NHKテキスト)に連載されていたということで、少しミッション系スクール的雰囲気のする文体なのだろうか(雙葉だし)。他のエッセイの文章とは違いやや改まった口調の文章が並ぶ。もちろん四季折々の感慨を季語に寄せて書かれたものを読めば川上弘美であることには違いなくて、これまで出版されたエッセイ集同様に記憶の中の心象と呼応する感情の起伏を巧みに引き寄せて語ってはいる。けれど、やはり少しだけすました顔つきの文章と感じる。
川上弘美には「東京日記」という何処までが事実でどこからが脚色なのか判然としない日記風の連 -
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読書開始日:3月22日
読書終了日:4月2日
所感
書き終えた所感が消えてフレッシュさを失ったかもしれないが、再度書く。
仕事で忙しかったこともあるがとにかく読み進めるのが難しかった。
理解できない、わからない、掴みどころがない、この感覚のまま進み始めた。
後半部になって、自分も少し感じたことがあるような感じになり、終わりを迎えた。
真鶴から東京へ、現実に戻る感じを少し味わえた。
解説を読んで、要約理解をすることができた。
自分にも、みんなにもそれぞれ幽霊がいる。そしてその距離感覚は人それぞれ。
自分と幽霊の距離を感じる時に、次第に太陽が遠くなり、陰影が大きくなり、やがてモノクロになる。
京は -
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本屋で、俳句のコーナーを歩いていると、優しい色使いのこの本を見つけた。偶然の出会いだったが、ページをパラパラめくると、興味のあまりなかった、季語というジャンルに惹きつけられて、購入。
なんだか、柔らかな太陽の光を浴びながら、コーヒーや紅茶を片手に読みたい本。
季語なんて、学生時代は暗記するものとしか思えなかった自分にとって、季語にまつわるエピソードは、全て新鮮。
言葉ひとつにも、思い出が結びついているように、季語にもそれがある。
『それぞれの持ち味を、差別せずにただありのままに良しとする。それが季語の精神』(P174)
曇り空のどんよりとした雰囲気や、無造作に生えた雑草。それら -
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川上弘美はやっぱり天才ですね。
こんなに分厚い小説をどんどん読ませる才能!
川上弘美独特の美しい文章と、「そういう気持ち感じたことある!」と思うものの、うまく言語化できないものを的確に表現する巧みさ。
いつも思いますが、漢字とひらがなの使いわけが絶妙ですよね。あえて「はんぶん」と表記してみたり。
この本では、主に(というのも、最後の方に行くにつれてさらに主人公のパターンが増えるので)ルツと留津という二人が出てきます。
主人公が行う選択。
たとえば女子校か、共学か。
理系に進むか、文系に進むか。
結婚した人生としなかった人生。
結婚したあとの人生の選択について。
どちらの人生にも違った -
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残念なことに私の人生、
川上弘美さんの「神様」を
知らずにやってきました。
しかしこれ読んで、
ちょっと凄味を感じています。
自身のデビュー作である「神様」を、
2011年の3月の末に、あらためて書いたという「神様2011」
そこには、「あのこと」として、あの時に起こったこと。
原発事故以前の幸せな「神様」を原発事故以降の「神様2011」として新たに書いたのですね。
その行動力に驚きました。「神様2011」は、2011年の6月にはすでに、「群像」に発表されている。。
詩人の斉藤倫さんがブックガイドに紹介したものを読んだのが、この作品を手にしたきっかけですが、
紹介文にはこうあります。
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都と陵は一つ違いのきょうだい。特殊な関係の親の元に育つ。ママは言葉が鋭く、自然と人を怖がらせもする、だけど魅力的で男受けは良い。
都はママが大好き。どうして子供は、母親が好きなんだろう。どんな母親だったとしても、子供は母親の全部が好きなのだ。
陵は、偶然地下鉄サリン事件の現場に居合わせ、幸い難を逃れる。ママは空襲で実母を失う。それぞれが命の安全が脅かされるようなPTSDを抱える。
大好きなママが病気で亡くなってからもずっとママの夢を見続ける都。
若い頃は離れて暮らしていたが、30代半ば再び実家で一緒に住みはじめた都と陵。陵がサリン事件に出くわしてから。人の死は、遠いようで紙一枚隔て隣にあった