川上弘美のレビュー一覧
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『白シャツになりすもも食ふすもも食ふ 木星』―『夏/李(すもも)』
「すてきにハンドメイド」(NHKテキスト)に連載されていたということで、少しミッション系スクール的雰囲気のする文体なのだろうか(雙葉だし)。他のエッセイの文章とは違いやや改まった口調の文章が並ぶ。もちろん四季折々の感慨を季語に寄せて書かれたものを読めば川上弘美であることには違いなくて、これまで出版されたエッセイ集同様に記憶の中の心象と呼応する感情の起伏を巧みに引き寄せて語ってはいる。けれど、やはり少しだけすました顔つきの文章と感じる。
川上弘美には「東京日記」という何処までが事実でどこからが脚色なのか判然としない日記風の連 -
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読書開始日:3月22日
読書終了日:4月2日
所感
書き終えた所感が消えてフレッシュさを失ったかもしれないが、再度書く。
仕事で忙しかったこともあるがとにかく読み進めるのが難しかった。
理解できない、わからない、掴みどころがない、この感覚のまま進み始めた。
後半部になって、自分も少し感じたことがあるような感じになり、終わりを迎えた。
真鶴から東京へ、現実に戻る感じを少し味わえた。
解説を読んで、要約理解をすることができた。
自分にも、みんなにもそれぞれ幽霊がいる。そしてその距離感覚は人それぞれ。
自分と幽霊の距離を感じる時に、次第に太陽が遠くなり、陰影が大きくなり、やがてモノクロになる。
京は -
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本屋で、俳句のコーナーを歩いていると、優しい色使いのこの本を見つけた。偶然の出会いだったが、ページをパラパラめくると、興味のあまりなかった、季語というジャンルに惹きつけられて、購入。
なんだか、柔らかな太陽の光を浴びながら、コーヒーや紅茶を片手に読みたい本。
季語なんて、学生時代は暗記するものとしか思えなかった自分にとって、季語にまつわるエピソードは、全て新鮮。
言葉ひとつにも、思い出が結びついているように、季語にもそれがある。
『それぞれの持ち味を、差別せずにただありのままに良しとする。それが季語の精神』(P174)
曇り空のどんよりとした雰囲気や、無造作に生えた雑草。それら -
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川上弘美はやっぱり天才ですね。
こんなに分厚い小説をどんどん読ませる才能!
川上弘美独特の美しい文章と、「そういう気持ち感じたことある!」と思うものの、うまく言語化できないものを的確に表現する巧みさ。
いつも思いますが、漢字とひらがなの使いわけが絶妙ですよね。あえて「はんぶん」と表記してみたり。
この本では、主に(というのも、最後の方に行くにつれてさらに主人公のパターンが増えるので)ルツと留津という二人が出てきます。
主人公が行う選択。
たとえば女子校か、共学か。
理系に進むか、文系に進むか。
結婚した人生としなかった人生。
結婚したあとの人生の選択について。
どちらの人生にも違った -
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残念なことに私の人生、
川上弘美さんの「神様」を
知らずにやってきました。
しかしこれ読んで、
ちょっと凄味を感じています。
自身のデビュー作である「神様」を、
2011年の3月の末に、あらためて書いたという「神様2011」
そこには、「あのこと」として、あの時に起こったこと。
原発事故以前の幸せな「神様」を原発事故以降の「神様2011」として新たに書いたのですね。
その行動力に驚きました。「神様2011」は、2011年の6月にはすでに、「群像」に発表されている。。
詩人の斉藤倫さんがブックガイドに紹介したものを読んだのが、この作品を手にしたきっかけですが、
紹介文にはこうあります。
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都と陵は一つ違いのきょうだい。特殊な関係の親の元に育つ。ママは言葉が鋭く、自然と人を怖がらせもする、だけど魅力的で男受けは良い。
都はママが大好き。どうして子供は、母親が好きなんだろう。どんな母親だったとしても、子供は母親の全部が好きなのだ。
陵は、偶然地下鉄サリン事件の現場に居合わせ、幸い難を逃れる。ママは空襲で実母を失う。それぞれが命の安全が脅かされるようなPTSDを抱える。
大好きなママが病気で亡くなってからもずっとママの夢を見続ける都。
若い頃は離れて暮らしていたが、30代半ば再び実家で一緒に住みはじめた都と陵。陵がサリン事件に出くわしてから。人の死は、遠いようで紙一枚隔て隣にあった -
購入済み
紙媒体も持っているケド
いつ位前か忘れたケド当時、竹野内豊主演の映画が作成されるのが切っ掛けで、本を購入し勿論読破。
で、映画も後に鑑賞。映画は抑えるトコは抑えていると云った内容で、私が好きなキャストが多く出ていたので映画も満足でした。
原作と映画とどちらが面白かった?と云う話なら、原作の方が面白かったと云う事になるかな。
ただ、私見だけど映画から入って原作を読むのも全然アリだと、この作品関しては思います。
それ位、面白い設定と世界観だと私は思います。
紙媒体も持っているケド今回久々に読みたくなったので家中を探そうかと思ったが、何処に閉まったか、はたまた友に貸したかイマイチ覚えていなかったので、電子版を購入 -
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ひとの人生に触れると実感して思い出すことがある。それは思い出だったり、生き方だったり、生と死の匂いだったり。
濃密な家族と、広義な愛の物語でした。
軽々しく時を越えていろんな場面が描かれているのに、全く不自然でなく、そこに存在しなかったわたしも、主人公たちのあたかもそばにいたように思い描くことが出来る。
夏のじっとりとした空気。しかし、冬になればその暑さを忘れてしまう。でもどうしてもあの夏のあの夜に戻ってしまう。
すごく読まされた、という気持ちです。
ぐいぐいと同じ沼に引き摺り込まれた気持ちでした。
時計だらけの開かずの間が開かれる時、やっと覚悟ができた気がします。
周りのキャラクター -
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わたしには、強烈な本でした。京は、失踪した夫、礼をずっと追い求めています。いつまで引きずっているの、気持ちはわかるけどいい加減・・と言いたくなる。
歩いていると、ついてくるものがあった。これはついてくるものとのお話。京の心の葛藤、立ち直るまでの心模様。
きっと、真鶴は女との修羅場だった場所でしょう。
空想の中では、逆上して刺したり、首を絞めたりしている。この現実かわからない、とりとめもなく入り混じった表現が好きすぎて。
「ついていかなきゃならないの?声に出して聞いてみたが、音にならなかった。それで、女との会話が、実際の声ではなく、からだの内側でおこなわれているのだと知った。」京がこたえを言って