あらすじ
「センセイ」は私の高校時代の古文の先生。十数年ぶりに再会したセンセイと私の、セツセツとした淡き恋の行方は? 人気女流作家のオカシくて、哀しい最新長編恋愛小説。
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Posted by ブクログ
ずっと読んでみたくて機会を逃し続けていたので今年の目標に「センセイの鞄」を入れてようやく読めました。
センセイとツキコさんがカタカナで呼び合うのが印象的でした。ツキコさんが「センセイ」と呼ぶ時、小島孝や石野先生が「松本先生」と呼ぶのとは異なる温度を感じました。息子さんが「父春綱が生前お世話になったそうで」と話した瞬間は、センセイが他の人になってしまったような、ふたりの時間が本当に終わったような気持ちで悲しかったです。ツキコさんの泣く様子が目に浮かびました。
冒頭、サトルさんのお店で会っていた頃のやりとりも楽しかったですし、中盤のパチンコへ行くあたりからの展開も良かったです。「干潟ー夢」の章は、島への旅行以来、奥さんのことで心がざわついている様子が伝わってきました。夢特有のふわふわした感じと現実的な描写が組み合わさり、他の小説にはない浮遊感のある場面でした。
最後、鞄を残すように言いおいたところにセンセイの愛情を感じました。鱈と春菊を湯豆腐に入れるツキコさんにもふたりの日々が幸せだったことが感じられました。センセイの鞄の中を覗き込むツキコさんが切なかったです。
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「今年いっぱいはまだ三十七」の主人公の「わたし」と、「歳は三十と少し離れている(すなわち60代後半ということ)」「センセイ」の恋物語。センセイはわたしの高校時代の国語の教師であり、卒業から20年近く経ってから、偶然、再会したのだ。
恋愛のテンポは驚くほどゆったりしている。「センセイと再会してから、二年。センセイ言うところの"正式なおつきあい"を始めてからは、三年。それだけの時間を共に過ごした」とある。この物語は、主に、わたしがセンセイと再会してから、「正式なおつきあい」を始めるまでの二年間の出来事が綴られている。特に劇的な出来事があって、2人がつき合うようになるわけではない。物語の初めから、わたしはセンセイに、センセイはわたしに好意を抱いているのは明らかだ。そして、何度も居酒屋でお酒を一緒に呑み、市(いち)やキノコ狩やパチンコや旅行に一緒に行ったりし、センセイが「石野先生」と仲良くすることに嫉妬し自分は「小島孝」と良い雰囲気になったりしても、決定的なことは何も起こらない。かなりじれったい展開が、「再会してから、二年」続くわけである。
わたしの方は、「わたしが近づこうと思っても、センセイは近づかせてくれない、空気の壁があるみたいだ。いっけん柔らかでつかみどころがないのに、圧縮されると何ものをもはねかえしてしまう、空気の壁」を感じている。そしてセンセイの方は、「ワタクシはいったいあと、どのくらい生きられるでしょうか」と考えたり、「長年、ご婦人と実際にはいたしませんでしたので」「ワタクシは、ちょっと不安」を感じていたりして、一歩を踏み出せない。そして、わたしも、先生がそのような不安を抱えて一歩を踏み出せないことを分かっている。誠にじれったい展開だ。
しかし、月が満ちるように、二人は結ばれる。再会してから二年が経過した後で、そして、お互いに好意を持っていることを分かっていながら、ついにセンセイは「ワタクシと、恋愛を前提としたおつきあいをして、いただけますでしょうか」と告白する。わたしは、ずっと「すっかりセンセイと恋愛をしている気持ちに」既になっているのに、と思いながら、「センセイにかじりつ」く。
この後の二人の様子の描写が好きだ。
「闇がわたしたちをとりまき、わたしたちはぼわぼわと話しつづける。からすも鳩も、巣へ帰っていったらしい。センセイの乾いてあたたかな腕に包まれて、わたしは、笑いたいような泣きたいような気持ちだった。けれど笑いもせず泣きもしなかった。わたしはただひっそりと、センセイの腕の中におさまっていた。
センセイの鼓動が、上着越しにかすかに伝わってくる。闇の中で、わたしたちは、静かに座りつづけていた。」
このような瞬間のために人生があるのだと思わせてくれるような美しい場面だ。
そして、この小説には、静かに、しかし胸を揺さぶるような場面がもう一つある。小説の最後の場面だ。「正式なおつきあい」を始めてから三年で、センセイは亡くなる。そして、センセイの息子さんから形見として、センセイの鞄をわたしはもらう。「センセイが書き残しておいてくれた」のだ。この鞄は、センセイがわたしと再会してから、センセイと共に、色々な場面に登場し、色々な場所に一緒に出掛けたものである。わたしはセンセイと過ごした日々を時々思い返す。
「そんな夜には、センセイの鞄を開けて、中を覗いてみる。鞄の中には、からっぽの、何もない空間が、広がっている。ただ儚々とした空間ばかりが、広がっているのである」と小説は結ばれている。「儚々」という言葉は、初めて見かけた。「ぼうぼう」と読むらしい。「儚」は、「はかない」という言葉なので、意味は分かる。
センセイのことを思い出してみるが、それは、「からっぽ」で「はかない」ということ。「わたし」の淋しさは、如何ばかりかと思う。
美しい物語と美しい描写・言葉遣いがされている、しかし、儚い小説だ。
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「大人は、人を困惑させる言葉を口にしてはいけない。次の朝に笑ってあいさつしあえなくなるような言葉を、平気で口に出してはいけない。」
自分自身が思い出になる前に、鞄が空っぽになる前に、どれくらいの出会いがあるだろうか。
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めっちゃ良かったです。良すぎて、下手な感想が書きにくい…。
よく思うのが、恋愛が成就する、というのは、どういうことなのか、ということ。30も歳の離れたセンセイと、30代後半のツキコの場合、恋愛が成就するってどういう状態なのかな?って考えてしまったんですが、やっぱり、いくつになっても恋愛はいいものだし、自分の年齢も相手の年齢もそんなこと、どうでも良いことなのでしょう。
と、月並みなことしか、書けないですが、とても良かったです。
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ツキコの方に年の近い私。
読めば読むほどツキコとセンセイの日々をずっと読み続けていたくなる。
自分がお酒を飲まないので、飲み屋でつまみをつつきながら、とっくりをかたむけてみたい、と思った。
センセイははじめからずっと、ツキコの傍にいるようだ。
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アラフォーOLが高校時代の先生と飲み屋で再会し、着きすぎず、離れすぎず、穏やかで静かな交流が始まる。主人公ツキコとセンセイのやりとりが微笑ましい。ツキコを通して見える情景から寂しさ、孤独感がしみじみと感じられるゆえに、センセイの存在のぬくもりがこちらにも伝わってくる。こんな形の愛もあるんだなぁ…。切なくてとても暖かかった。
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初めての川上弘美との出会いは中学生くらいだったな。川上弘美の本二つしか読んだことないけど、つい最近まで川上未映子と混同してたけど、川上弘美さん好きです。小川洋子と並んでた好きな女性作家さんですね。
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年齢のせいにしないで、ツキコさんとちゃんと恋愛してくれて良かった。
好きか嫌いかには、好きか嫌いかで答えてほしいから。
毎晩少しずつ読むのが楽しみだった。
最後は号泣した。
それだけ、もだもだしながら、私もセンセイとの思い出を積み上げているような気になっていたのだと思う。
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よかったあ。月子さんとセンセイの関係が少しづつ近づいていくのが、まどろっこしいんですが。年齢を重ねた男女が、躊躇しながらも自分の気持ちに正直になっていく姿が、いいですねえ。
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心が暖かくなる、でもちょっと切ない気持ちになるとても良いお話でした。
センセイとツキコさんのあいだに流れる空気とか、物腰の柔らかさ。行きつけのお店の美味しそうなお料理の数々。全てがほんわかと和ませてくれます。
読み終わったあと、ついセンセイ口調になってしまう自分がおりました。
ワタクシはこの話が大好きでございますよ。
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センセイとツキコのほっこり歳の差恋愛物語り。
センセイ70歳くらい、ツキコさん37歳。
恋愛小説でした。
2001年6月初版。
川上弘美40ちょい頃の作品。
行きつけの居酒屋で良く合うようになった2人。
奥手な2人のたわいも無いエピソードがポツポツと語られていく。
特に事件もない。
ほんと、ポツポツと。
ツキコの変化、センセイの変化。
少しずつ、進んだり、引いたり…
なかなか進まない感じ…
恋愛小説です。
終わり方も、さり気なく、寂しくもあり、スンと、ホロリと…
何もないようで
なにか、ステキなお話でした。
調べてみると、どうやら
37回谷崎潤一郎賞受賞作。
ベストセラーにもなっている模様。納得です。
調べてみると、どうやら
ドラマ化されてる模様
ツキコ小泉今日子、センセイ柄本明。納得です。
どうやらprime videoで見れる模様。
たまにはドラマも良いかも
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お酒が出る本を探して出会いました。
年齢差がある恋の話ですが、酒好きとしてはその出会い、その空気感に憧れます。
後半少しだけ違和感を感じる部分はありましたが、お酒を飲みながら読み終えたこと嬉しく思います。
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ずっと読みたい!と思ってた本、やっと読めた…
全体的な雰囲気、文章の感じはとても好き。
森のような文章、読んでいてとても落ち着く。
正直、自分が主人公と同じ年齢で、20個以上歳が離れた初老の男性と恋愛できるか…ってなるとかなり想像がつかなくて、あまりそこは共感できなかった。でもツキコさんとセンセイの間にあった静謐で淡い時間の流れは、かけがえのないものだったんだろうな、ということはすごくわかった。自分が主人公と同じ年齢になった時、どう読めるか、もう一回読んでみたい。
Posted by ブクログ
キャピキャピしたり情熱的な恋愛ではなく、2人の間にゆったりとした時間が流れていて、読んでいて気持ちよかった~^^
時々まどろっこしくも感じるけど、それすらも愛おしい時間なんでしょうね♪
国語教師なだけあって、センセイの言葉運びが美しい!
何度読んでも飽きない1冊(o^^o)
Posted by ブクログ
2016/3/10
この本はやっぱりいいね。
ずいぶんと久しぶりの再読。
とてもいいね。
川上弘美はこれ以外はどうも合わないけれど、これだけはやっぱりいいね。
2020/2/15
どうしてこの本だけこんなに焼けているんだろう?
昭和初期の本かと見間違えるわ。
センセイのの
立ち居振る舞いや、潔さに惹かれる。
月子さん側から見たセンセイだけれど、センセイ側のお話が見えてくるのは、自分がもう少し大人になってからかなぁ。
Posted by ブクログ
ふわあっと始まって、ふわあっと終わった感じ。子供の頃読んでいたら、きっと全然面白くなかったんだろうなぁと思いながら読んだ。こういうお話に魅力を感じられるような歳になったんだなぁとしみじみした。
Posted by ブクログ
ずいぶん前、高校生のころに読んで、すてきな雰囲気の小説だとは思ったものの、心情的にはさっぱり理解できなかったこの小説。主人公の月子さんの年に近づいてきて、雑誌に紹介されていて久しぶりに読んでみようと思い立ち、読んでみたけれど、月子さんの冷静で見つめているような、それでいて揺れているような心情に同調できて、以前とは違った気分で楽しめた。
Posted by ブクログ
良いな~センセイとツキコさんのこの関係。大人の恋ですね。愛ではなく、恋。四季折々の中で綴られていく二人の色濃く流れる月日。この二人の日常を通して、著者の豊かな感性に触れられる一冊。
Posted by ブクログ
なんの情報もなしに読みはじめ、まさかそんな展開になるとは思ってもいなかったので、にやにやとおかしくなった。
これは帯の情報すらも得ずに読みはじめたほうが絶対良い。
ゆるい川上弘美。
びしびしの鋭さがなく楽しく読めた。
Posted by ブクログ
スラスラ読みやすく、温かい。
気持ちがくたびれた時に読みたい小説。
65
ツキコさん、ワタクシはいつも一緒だと言っているでしょう
78
人が生きていくことって、誰かに迷惑をかけることなのね
96
ツキコさん。センセイは答えた。わたしの名前だけを、ただ口にした。
182
この世の誰も気づかないくらいに、わずかに。しかしわたしは今や、センセイのどんな表情の変化も見逃さないのだ。
186
ひどく優しいほほえみ
Posted by ブクログ
私(ツキコ)が自分の思いをセンセイに打ち明けるところはキュンキュンしました。
センセイはもうご老体だし、ツキコは来年38になる独身だし、若者のような恋はできないとわかっているけど…
なんだか2人ともかわいらしい。
センセイが告白するところはキュン死にものです…!
Posted by ブクログ
再会を果たした先生と生徒のお話でしたが、中々にツキコさんの心情の描写が少ないのでセンセイに告白した時、「え、好きやったんや!」となりました笑
歳を考えて、とか世間体を気にして、とかじゃない恋愛、穏やかに流れる川のような果てしない愛に包まれて幸せそうな2人がよかったです。最後センセイは死ぬんだろうなと思っていたので特段驚きはしませんでしたがセンセイの鞄の空っぽの空間だけが広がっていてツキコさんをこれからも包んでくれるのでは無いかなと思いました。
感情を出すのが苦手、というかなかなか出さないツキコさんが終盤ずっと好きだと言えていてツキコさんにとってセンセイは受け止めてくれる、公平な存在だったんだろうと思いました。