川上弘美のレビュー一覧

  • 神様

    Posted by ブクログ

    教材研究のため、表題作の「神様」だけ読んだ。
    語り手の「わたし」は、たまたま三つ隣の部屋に引っ越してきた「くま」から、近所の河原までハイキングに誘われる。「くま」は、川で取った魚を干物にして、「わたし」にプレゼントし、別れ際に親しい者同士で行う故郷の習慣だと言って抱擁を交わした。「わたし」は、そんな「くま」と過ごした一日を「悪くない一日だった」と思う。

    「わたし」と「くま」の間には、「くま」が「わたし」の父のまたいとこにあたる人物にかつてお世話になったという関係があった。「わたし」にとってその関係は、「あるか無しかわからぬような繋がり」だったが、「くま」はその関係を「縁(えにし)」というやや

    0
    2025年05月13日
  • 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

    Posted by ブクログ

    切ない。はっきりしない。ゴールが見えない。もやもや。
    そんな雰囲気がかえって心地よい小説。
    早朝の霧がかった、しんと静かな湿った道路を歩く時のあの気持ち。心の真ん中にぽっかりとあく孤独の穴。これを生涯抱えて生きることに呆然とする一方で、どこか満たされているようにも感じる不思議。
    Reading through the entire book what we got at the very last was just “魂が「するっと近くに寄った気がした」”。What sort of purity is that.
    でも何よりも心強い一言。老いてなお誰かとそんな関係性を、何よりその感性を持てるの

    0
    2025年05月11日
  • これでよろしくて?

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     川上弘美さん・・・(申し訳ないのですが)聞いたことはある・・くらいで、よく知らない作家さんでしたが、芥川賞を取ったこともある作家さんなのですね。
     お義母さんとの言葉にできない感情のやりとり、お義母さんと義妹、お義母さんと義弟のお嫁さんとの関係を見る目など実に繊細。そればかりを考えているとおかしくなりそうだが、ちょっと年上の利害関係のないお姉さまたちに話を聞いてもらったり、いろんな事件を経ると関係が少しずつ変わっていくことに気づく。
     わが身を振り返っても、昔けむたくて仕方なかった人たちも30年たつと亡くなったり、元気がなくなったり・・病気になるほど悩むことなんてなかったんだなと今にして思う

    0
    2025年05月05日
  • 明日、晴れますように 続七夜物語

    Posted by ブクログ

    「七夜物語」の続編。
    大人になったさよと仄田くんに出会えた!
    大人になった仄田くんは小学生の頃よりしっかりしたなぁ。大人になったのね、仄田くん!と思いました。
    夜の世界のことを覚えていないさよと仄田くんが悲しかった。
    2人の子供である絵とりら。それぞれの親の性質を受け継いでいる感じがしました。

    0
    2025年05月04日
  • 七夜物語(下)

    Posted by ブクログ

    敵はいつも自分自身だ。
    どうか戦わないで、と願う。話し合いで解決できない相手でも、どうか戦わないで。
    話し合うのでも、戦うのでもない、三つ目の選択肢があればいいのに。
    人間はいつもどっちつかずで、ゆらゆらしていて、あいまいだ。
    そのあいまいさは、人間の良いところでもあり、悪いところでもあり。
    夜が明けたら、もう現実は今までと同じではない。
    たとえ覚えていなくて、新しい物語を体の底に沈めて、もう同じ自分ではいられない。同じ自分であるはずがない。
    物語を読むとは、そういうことなのだ。

    0
    2025年04月26日
  • 七夜物語(中)

    Posted by ブクログ

    現実と夜の世界は混じり合い、パラレルワールドのように重なって、時間と空間を越えてすべてが同時に存在している。
    最初の夜に、グリクレルの台所で遭遇したミエルは、さよと仄田くんでもあったのだろう。
    グリクレルが作っていたたくさんの料理は、さよと仄田くんのためでもあったのかもしれない。
    夜の世界は現実とは違うけれど、違うことを経験することで見えてくる現実もある。
    それは、見たくない現実かもしれない。
    さよと仄田くんはちっぽけなただの小学四年生で、でもこの夜の世界では、イキモノの代表にもなる。
    ゆらゆらと右往左往するばかりであっても、物語は進んでいく。

    0
    2025年04月26日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

    Posted by ブクログ

    人はなぜ、異質な存在を拒絶するのか。


    私の日常にそんな問いをもたらした本。
    本の中は快適ではなかった、爬虫類の1番外側に触れる時と似た気持ち悪さがあった。

    わかったりわからなくなったりを繰り返して、
    全てのストーリーか繋がったと思えば、
    人類?史はぱたりと終えられる。

    問いだけが、推進力のみで進むスワンボートのように、心の湖面に波動を作り出しているようだ。

    私が嫌悪感を抱くあんな人たちとか、ああいうのを好む人たちが最も進化に適した人類だとしたら。

    進化することを放棄するかも。

    なぜ?

    自分の美学に従って生きる方が幸せだと思うから。

    なぜ?

    進化という大義のために、自分を犠

    0
    2025年04月22日
  • センセイの鞄(谷口ジローコレクション) : 2

    Posted by ブクログ

    何度も何度も読み返すくらい原作の空気が大好きなんだけど、漫画になってもその空気が見事に再現&引き継がれててびっくり。

    あの作品のコミカライズを谷口ジローさんに依頼しようと思った人、すごいと思った。
    なんというか作風がめちゃくちゃ噛み合ってるんだよな。

    0
    2025年04月22日
  • 七夜物語(上)

    Posted by ブクログ

    さよと仄田くんの、二つの夜の冒険。

    本の中と現実は違う。
    二人はそれぞれ本の中に逃げながら、現実を生きている。
    でも、本の中がやり直しのきかない危険な場所だったら。

    0
    2025年04月12日
  • 水声

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    水、と、鳥。崩壊と変化を、モチーフにのせて描いている。崩壊は「死」も含む、ただ変化しているようで、根本は変化していないのかも。
    肌を重ねる様子を、太刀魚に譬えて描くだろうか…言葉がきれいで驚いた。

    0
    2025年03月30日
  • これでよろしくて?

    Posted by ブクログ

    【2025年39冊目】
    専業主婦の菜月は、いつもの決まりきった買い物道で元彼の母親である土井母に出会う。「これでよろしくて? 同好会」なるものに誘われ、戸惑う菜月だったが、思い切って参加してみるとそこは年齢が様々な女の集まる語り場だった。

    劇的なことが起こるわけではありません。殺人が起こるわけでもないし、不幸のどん底に叩き落とされるわけでもない。けれど、日々生活をする中で誰もが感じている感情の揺らめきを、見事に描き切っています。

    夫との距離感、姑との距離感、義妹の他愛ない一言、相違する価値観、異なる習慣、他人と関わる上で「おや?」と思って、燻ってしまう感情。主人公の菜月の戸惑いを、同じよう

    0
    2025年03月29日
  • ぼくの死体をよろしくたのむ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    大聖堂
    不動産屋 1匹だけ動物飼うという設定
    面白い なかなかない
    1号室のカーブァーさん じつはキレイな人

    ずっと雨が降っていたような気がしたけれど
    普通でない、変わった、その人しかないもの
    女性ってひかれる?
    同じものを2つ買う主人公
    好きな男の人のスペアもほしいという
    世界に二人といない珍しい男になりたいというのに惹かれた
    光月と出会って、スペアのことを考えることやめた

    二人でお茶を
    トーコさんはっきり発言していて、自分の素直な気持ちそのまま言えてる。純粋、うらやましいとも思ってしまった。
    なんだかんだ、トーコさんとミワさんがニコイチで息が合ってるのかな

    銀座 午後2時 歌舞伎座あ

    0
    2025年03月20日
  • 猫を拾いに(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    短編小説を好きになったのは川上弘美のおかげ
    これより短いと素通りしてしまうし、これ以上長いと取り込まれてしまう、そういう絶妙な距離感にある異世界(それも、日常と限りなく地続きな)の数々を、今作でも沢山味わえた

    0
    2025年03月19日
  • 王将の前で待つてて

    Posted by ブクログ

    一作目で好きになり続けての2冊目。
    近年のものに含め、一年毎に一句選び評がついている付録付き。
    前回の生活の一部を川上風にはあるものの、なんだか不穏さを滲ませるものまであって物語の始まりや転換部を読んでいるような印象。
    連作?や見たことある型のものもありより生活感が増した印象。
    命というものを歪にした時に、楽しんでいる風もあり突き放した感じもある?

    0
    2025年03月17日
  • 明日、晴れますように 続七夜物語

    Posted by ブクログ

    七夜物語と続編。
    リンクしているけど
    そこまでファンタジーではなく。

    みんなのその後が知れて良かった!

    0
    2025年03月16日
  • どこから行っても遠い町(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    1つの町を中心に語られる遠いどこかで繋がっている人たちの物語。誰もが誰かの脇役であり、各々に背景があるのだ。きっと予想さえつかない未来に向かって、理想を掲げて今を生きるしかないのだと思う。この本を読んだ後、何かにもがいた人しか得られない、辿り着かない境地があるのではと思った。
    時間とともに、何かを決めようと思わなくとも決めさせられている。そういった集まりが人生なのだろう。

    0
    2025年03月16日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    松任谷由美デビュー50周年を記念して、6人の女性作家さんたちが書き下ろしたユーミン曲がテーマのオリジナル小説集。題名見るだけで惹かれるものがあり、即購入。

    収録されている話は以下、
    ・あの日にかえりたい(小池真理子)
    ・DESTINY(桐野夏生)
    ・夕涼み(江國香織)
    ・青春のリグレット(綿矢りさ)
    ・冬の終り(柚木麻子)
    ・春よこい(川上弘美)

    いずれの曲も知っていたが、あらためて思ったのは、その曲に対する偶像イメージは『人それぞれ』ということ。特にユーミンなどは僕らの年代は誰もが知っていて、その曲に対する絵が脳裏に自然と浮かぶ。
    ただ、それをいざ物語化してみたら、作家が描くストーリーが

    0
    2025年03月07日
  • 真鶴

    Posted by ブクログ

    面白かった! 川上弘美は「先生の鞄」しか読んだことがなかったけど、こんな不思議な幻想的な小説を書くとは知らなかった。
    1歳の娘をおいて失踪した夫の影を追って幽霊のような女と共に神奈川の真鶴をおとづれる主人公。彼女の夫への執着が切なく、時々怖かった。これほどまでに誰かに執着する人はいるんだろうか。あまりにも激しすぎて愛とはまた違う気がする。
    時折挟まれる主人公と母親と娘の生活がほっこりする。母に老いの影が迫った時、子どもが自立していく時、私も主人公のような気持ちになるんだろうか。

    0
    2025年03月02日
  • 七夜物語(上)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    エッセイの文章がささり 初読
    イラスト酒井駒子氏! 児童文学の摩訶不思議な雰囲気にピッタリ
    ページ下に小さくイラストがあって こんなに沢山見られるのは嬉しい

    作品も 最近は先を想像しながら読むような小説が多かったので
    ページをめくるたび どうなるかドキドキするのは久しぶり

    上巻で五つ目の夜に突入したけれど 下巻はどうなって どういった結末になるのだろう?

    (衛生面から表紙の鼠は悪役だと思い込んでいたスミマセン)

    「それにね あんたたち人間は そうでなくても自分で考えようとしないんだから 説明なんかしたひには すっかりわかった気になって ますます考えなくなることうけあいなのさ」

    『上の

    0
    2025年02月26日
  • 王将の前で待つてて

    Posted by ブクログ

    俳句って日記代わりにもなるんだね。
    簡単に作ってるようで、これがなかなか難しいんだろうな。
    巻末に載っていたように、全部の俳句に解説が欲しかった。

    好きな俳句

    ・別れ来てラーメン食ふや暮の春
    ・花木槿 半目の写真消さず置く
    ・スマホ買ひ即罅(ヒビ)入れる夜寒かな

    0
    2025年02月21日