川上弘美のレビュー一覧
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教材研究のため、表題作の「神様」だけ読んだ。
語り手の「わたし」は、たまたま三つ隣の部屋に引っ越してきた「くま」から、近所の河原までハイキングに誘われる。「くま」は、川で取った魚を干物にして、「わたし」にプレゼントし、別れ際に親しい者同士で行う故郷の習慣だと言って抱擁を交わした。「わたし」は、そんな「くま」と過ごした一日を「悪くない一日だった」と思う。
「わたし」と「くま」の間には、「くま」が「わたし」の父のまたいとこにあたる人物にかつてお世話になったという関係があった。「わたし」にとってその関係は、「あるか無しかわからぬような繋がり」だったが、「くま」はその関係を「縁(えにし)」というやや -
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切ない。はっきりしない。ゴールが見えない。もやもや。
そんな雰囲気がかえって心地よい小説。
早朝の霧がかった、しんと静かな湿った道路を歩く時のあの気持ち。心の真ん中にぽっかりとあく孤独の穴。これを生涯抱えて生きることに呆然とする一方で、どこか満たされているようにも感じる不思議。
Reading through the entire book what we got at the very last was just “魂が「するっと近くに寄った気がした」”。What sort of purity is that.
でも何よりも心強い一言。老いてなお誰かとそんな関係性を、何よりその感性を持てるの -
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ネタバレ川上弘美さん・・・(申し訳ないのですが)聞いたことはある・・くらいで、よく知らない作家さんでしたが、芥川賞を取ったこともある作家さんなのですね。
お義母さんとの言葉にできない感情のやりとり、お義母さんと義妹、お義母さんと義弟のお嫁さんとの関係を見る目など実に繊細。そればかりを考えているとおかしくなりそうだが、ちょっと年上の利害関係のないお姉さまたちに話を聞いてもらったり、いろんな事件を経ると関係が少しずつ変わっていくことに気づく。
わが身を振り返っても、昔けむたくて仕方なかった人たちも30年たつと亡くなったり、元気がなくなったり・・病気になるほど悩むことなんてなかったんだなと今にして思う -
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現実と夜の世界は混じり合い、パラレルワールドのように重なって、時間と空間を越えてすべてが同時に存在している。
最初の夜に、グリクレルの台所で遭遇したミエルは、さよと仄田くんでもあったのだろう。
グリクレルが作っていたたくさんの料理は、さよと仄田くんのためでもあったのかもしれない。
夜の世界は現実とは違うけれど、違うことを経験することで見えてくる現実もある。
それは、見たくない現実かもしれない。
さよと仄田くんはちっぽけなただの小学四年生で、でもこの夜の世界では、イキモノの代表にもなる。
ゆらゆらと右往左往するばかりであっても、物語は進んでいく。 -
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人はなぜ、異質な存在を拒絶するのか。
私の日常にそんな問いをもたらした本。
本の中は快適ではなかった、爬虫類の1番外側に触れる時と似た気持ち悪さがあった。
わかったりわからなくなったりを繰り返して、
全てのストーリーか繋がったと思えば、
人類?史はぱたりと終えられる。
問いだけが、推進力のみで進むスワンボートのように、心の湖面に波動を作り出しているようだ。
私が嫌悪感を抱くあんな人たちとか、ああいうのを好む人たちが最も進化に適した人類だとしたら。
進化することを放棄するかも。
なぜ?
自分の美学に従って生きる方が幸せだと思うから。
なぜ?
進化という大義のために、自分を犠 -
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【2025年39冊目】
専業主婦の菜月は、いつもの決まりきった買い物道で元彼の母親である土井母に出会う。「これでよろしくて? 同好会」なるものに誘われ、戸惑う菜月だったが、思い切って参加してみるとそこは年齢が様々な女の集まる語り場だった。
劇的なことが起こるわけではありません。殺人が起こるわけでもないし、不幸のどん底に叩き落とされるわけでもない。けれど、日々生活をする中で誰もが感じている感情の揺らめきを、見事に描き切っています。
夫との距離感、姑との距離感、義妹の他愛ない一言、相違する価値観、異なる習慣、他人と関わる上で「おや?」と思って、燻ってしまう感情。主人公の菜月の戸惑いを、同じよう -
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大聖堂
不動産屋 1匹だけ動物飼うという設定
面白い なかなかない
1号室のカーブァーさん じつはキレイな人
ずっと雨が降っていたような気がしたけれど
普通でない、変わった、その人しかないもの
女性ってひかれる?
同じものを2つ買う主人公
好きな男の人のスペアもほしいという
世界に二人といない珍しい男になりたいというのに惹かれた
光月と出会って、スペアのことを考えることやめた
二人でお茶を
トーコさんはっきり発言していて、自分の素直な気持ちそのまま言えてる。純粋、うらやましいとも思ってしまった。
なんだかんだ、トーコさんとミワさんがニコイチで息が合ってるのかな
銀座 午後2時 歌舞伎座あ -
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松任谷由美デビュー50周年を記念して、6人の女性作家さんたちが書き下ろしたユーミン曲がテーマのオリジナル小説集。題名見るだけで惹かれるものがあり、即購入。
収録されている話は以下、
・あの日にかえりたい(小池真理子)
・DESTINY(桐野夏生)
・夕涼み(江國香織)
・青春のリグレット(綿矢りさ)
・冬の終り(柚木麻子)
・春よこい(川上弘美)
いずれの曲も知っていたが、あらためて思ったのは、その曲に対する偶像イメージは『人それぞれ』ということ。特にユーミンなどは僕らの年代は誰もが知っていて、その曲に対する絵が脳裏に自然と浮かぶ。
ただ、それをいざ物語化してみたら、作家が描くストーリーが -
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ネタバレエッセイの文章がささり 初読
イラスト酒井駒子氏! 児童文学の摩訶不思議な雰囲気にピッタリ
ページ下に小さくイラストがあって こんなに沢山見られるのは嬉しい
作品も 最近は先を想像しながら読むような小説が多かったので
ページをめくるたび どうなるかドキドキするのは久しぶり
上巻で五つ目の夜に突入したけれど 下巻はどうなって どういった結末になるのだろう?
(衛生面から表紙の鼠は悪役だと思い込んでいたスミマセン)
「それにね あんたたち人間は そうでなくても自分で考えようとしないんだから 説明なんかしたひには すっかりわかった気になって ますます考えなくなることうけあいなのさ」
『上の