川上弘美のレビュー一覧
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川上弘美さんのエッセイ集。
この人のゆるゆるとしているけどゆるぎない感じ。
なにげないけど、にじみ出ているもの。
そんな『感じ』にすごくシンパシーを感じます。
中にドラえもんとのび太に関するエッセイがあって、
自分が若くて少し傲慢だったころは
のび太の依存心が好きではなかった。
でも大人になると、できることできないこともわかってくる。
ドラえもんと名前を呼んで、道具でひと時の夢を見て癒されて、さあ頑張るかとまた現実に帰ってくる。
そんな気持ちがわかるようになったし、だれか疲れた時にドラえもんのようにひと時のやすらぎを
与えることができる。
そんな人になりたいなっていう気持ち。
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Posted by ブクログ
1人の作家を読み続ける傾向のある私はいつも最後の作品になると寂しくなる。。
この作品が川上小説の最後になってしまった。。
実はもう一作、幻冬舎から『いとしい』って作品が出ているんだけど、これが取り寄せ不可で今のところこれが最後の作品になってしまったの。。
この物語は4編からなる短編集で『うそはなし』の中でもちょっとまた異質な感じだった。。
表題作の『物語が、始まる』は絶対にない話でありながら、この広い世界のどこかで、こんな経験をしている人がいなくもなさそうだし、『トカゲ』は読み始めの最初の印象が最後にはがらっと変わるジェットコースター風だったし、『婆』の不思議は体験してみたい不思議だった。。
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Posted by ブクログ
あなたは、『名前も、性別も、年も、わからない』という人に出会ったらどうするでしょうか?
さまざまな事情で記憶を失うことはあると思います。映画やテレビドラマ、そして小説にはそのような設定の作品も存在します。ショッキングな状況をまず打ち出して、視聴者、読者を釘付けにする、これは演出として十分あり得ることだと思います。そして、話が進むに従ってその人物の人となり、背景事情が明らかになっていく、このような筋書きの作品は普通に存在します。
とは言え、そんな作品の最後には、すべての謎が解き明かされて、視聴者、読者のモヤモヤはスッキリと解決される結末が待っている。めでたしめでたし、こう展開してくれることを -
Posted by ブクログ
私はお能を嗜んでいるので、お能の曲の出典として伊勢物語には馴染んでいる。
あとがきに訳者の川上さんも書いているけれど、ひとつひとつの話はごく短く、けれど和歌によってお話の世界が広くなる。和歌には世界観を二重、三重にする仕掛けがある。
さらにそこから能の作者は想像を膨らませてたくさんの曲を作ってきた。物語そのまま取り入れているときもあるし、背景に手を加えてよりドラマチックにしているものもある。短いお話だけに、よりインスピレーションを刺激されたんだろうな。
たくさんある伊勢物語の翻訳本のなかでも、小説家ならではの和歌の翻訳が、とても効いている本だと思った。 -