川上弘美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1人の作家を読み続ける傾向のある私はいつも最後の作品になると寂しくなる。。
この作品が川上小説の最後になってしまった。。
実はもう一作、幻冬舎から『いとしい』って作品が出ているんだけど、これが取り寄せ不可で今のところこれが最後の作品になってしまったの。。
この物語は4編からなる短編集で『うそはなし』の中でもちょっとまた異質な感じだった。。
表題作の『物語が、始まる』は絶対にない話でありながら、この広い世界のどこかで、こんな経験をしている人がいなくもなさそうだし、『トカゲ』は読み始めの最初の印象が最後にはがらっと変わるジェットコースター風だったし、『婆』の不思議は体験してみたい不思議だった。。
-
Posted by ブクログ
性別や年齢に関係なく、個人として尊重している感じがとても好き。センセイもツキコもマイペースなのがいい。センセイは先に歩いていっちゃうし、ツキコも先に帰っちゃうし。そもそも約束もせずに居酒屋で会って手酌で呑む自由さがいい。相手に尽くしたり合わせたりしないところが最高に心地よい。
私はおそらく月子の性格と似ているので、行動に一々共感するし、先生の優しさやふてぶてしさにも共感するし、どちらにも似ているのかもしれない。
小島くんは真面目だし優しくていい人だと思うけど、マッチングアプリで出会って安全に仲を進めたい教科書男って感じなので、深みを感じないというか、ほのかな下心が気持ち悪くさえある。不器用な -
Posted by ブクログ
装丁だけでなく本文にも祖父江さんの楽しい仕掛けが込められている川上さんの東京日記シリーズ。
帯に「けっこうホントの日記です。」と書かれてあるように、5分の4はホントのカワカミさんの日記のような短編の卵たち?少しの脚色がどこなのか…なんてどうでもよく、粛々と内に外に伸び縮みする川上さんの毎日から生まれる言葉が愛らしい。
ある春の日に、花茣蓙を手に入れたという友達に誘われて公園に花見へと出掛け、桜と柳の美しい公園でお弁当やお酒を開ける長閑な一日。沢山の花びらが舞い散る中、交代で花茣蓙を担ぎ合いながら駅まで歩く帰り道。もう過ぎゆこうとしている春の幸福な後ろ姿を見送るようで心が静かに和らいだ。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ少し変わっていつつも平穏な家族の成り行きを時代を行きつ戻りつしながら流麗な文章で描く。家族それぞれの個性がきっちり描かれており読みやすい。主人公、都の目線で徐々に明かされる家族の秘密も興味深く、数々の伏線が回収されていく。家族とは、恋愛感情とは、死とはを考えながら読み進める。母親の死、地下鉄サリン事件の死、日航機墜落の死をきっかけに人は揺れ、秘めていた欲望を実行するのは自分の死も意識するからなのか、本能なのか。
都と弟の陵との心地よく歯がゆい関係性を興味深く読んだ。恋愛感情は同居する時間と反比例して低下していく不思議は全ての人において当てはまることではないのかも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ普通の日本の風景のように始まった物語だが、進むにつれてどこかおかしい。違和感がどんどん増えていく。
ほとんど絶滅している人類の、最後の生き残りたちが生きる様子を、詩的な文章で描いていて、本当にこんな未来になるかもしれないと思わせる力がある。
世界観がはっきりしていて、最後の方でそれを説明しすぎてしまうところがやや難点か。雰囲気から読み取れるぐらいにしておいた方が、詩的な文章とのバランスがよかったかもしれないと思った。
ともあれ、想像力はすばらしく、読者の頭の中にも想像の世界をくっきりと立ち上げることができるすばらしい文章だった。これは映像では決してできない、文学だけが持つ力だと思う。