【感想・ネタバレ】大きな鳥にさらわれないようのレビュー

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ネタバレ

静かな美しい語りの近未来物語
同じ間違いを繰り返し、世界を破滅させる愚かな人類を生き延びさせようとする『大きな母』と『母たち』 は多くの子どもを生み育てるのだが。
理性的な判断を拒否し自らとは異質なものを受け入れられない人類はこの地球でチャンスを得ても
生きる価値は無いのか?
各章はどれも関連して魅力があり一気に読んでしまう。帯に筒井康隆が『打ちのめされた』とあるのも納得の傑作長編。

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2022年05月16日

Posted by ブクログ

大好きです。久しぶりに川上弘美さんの本を読みました。まずタイトルに惹かれ、冒頭の一文に惹かれ、一章ずつは好きなものとそうでないものに分かれるけれど最終的に世界観が繋がるスタイルも好きで、読み終えてタイトルに大きな意味はないのにここを選び抜き取ったセンスも好きで、大切な一冊ができてしまった、と思いました。文体も構成も行間も洗練されていて心地良く丁寧に大切に読みたくなる。この世界に浸っていたくて読み終わるのが寂しくて勿体無くて、読むのに時間がかかった。

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2022年01月14日

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読めば読むほど世界が広がっていくのが心地良かったです。

かと言って、各章の物語が薄いということはなく、次第に明らかになる世界観が好きです。

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2021年10月05日

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人類が居なくなった後の世界……現実味が無さそうであって、少し恐ろしく、でも川上さん特有のゆるゆるした時間が感じられ、読んでいて癒された。人類滅亡後の神話は新鮮でした。

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2021年05月01日

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ネタバレ

川上弘美のこの世界観、しっとりとしてやさしいこの文章、これが大好きなのだ!と改めて思う。
人が生きること、人と交わること、それぞれの死や滅び、そういったすべてがある。
あたたかくやさしく語られるその無限の生と死の繰り返しのなかに、そこはかとなく常にただよう不安な滅びの匂いと寂しさ。
ばらばらに語られていたような物語がすべて繋がっていき、最後にまた始めの物語へと還っていく。
神話のような手ざわりだが、いま生きているこの世界が語られているのでもある。
もう一度また読んでみたい作品。

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2021年01月30日

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最初は、なんだか気持ち悪い話だな、と読みながら思っていた。今私が生きている世界と似ているけど確実に違う、異様な感じ。人間、という言葉を登場人物がよく口にしていたことから、この子たちは人間ではないのか、でなければ何なのか。人間ではないのに人間のことを考えて人間のような世界に住んでいることに違和感を感じた。
読み進めるうちに、この物語は人類のこれまで、そして未来の物語なのだと分かった。人類が生まれてから、滅び、そしてその後、どのような世界になるのか。物語は壮大で、遠く宇宙から俯瞰しているような気分になる。悲しさ、恐ろしさ、感動、いろんな感情を掻き立てられた。最後の章では、作者がこの物語に込めた祈りが表されているような気がして、愛情やあたたかさに包まれた。

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2020年05月02日

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とても好きな世界でした。面白かったです。
緩やかに滅びていく。
人は、愛することと争うことをやめられないから。自分と違うことを受け入れられなくて排除しようとするから。
なんとか生き延びさせようとしていた「母たち」が、「もうおしまい。」と決めるところは悲しくもありほっとしたところでもありました。
これは遠い遠い話のようで、でも実はすぐ近くのことかもしれない。
でも、それでも…という祈りも感じました。優しい眼差し。
川上さんのお話は時に神話のようです。

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2020年04月18日

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現代の神話。様々な社会問題を掬いとって、様々な視点で笑い飛ばすような。人類の未来さえも笑い飛ばすような愛と絶望に満ちた視点。

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2024年04月22日

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ネタバレ

最初は純粋SFかと思い、台詞や文章の節々に居る現代とのズレをおもしろがりながら進めていたが、読むにつれて背景と時の流れが進み、最後には最初と繋がっていく。これは紹介通り神話だな、となった。
「わたし」や「母」の存在感が良い味を出している。それぞれの話が細く繋がっており、知っている名前が時を経て何度も出てくると自分もまた彼らをそんなやつだったなと思ったりしてしまうものだった。管理社会であったり人類滅亡したりもあるが、基本は愛のある話だ。かなり好きな部類である。

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2024年02月23日

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読み終わって、ついつい解説にあるように最初の「形見」を読み返した。何度も読み返したくなる本、というのはこういう本のことを言うのだろう。
最初はわけがわからなくてなかなか進まないのだけれど、気づいたら止められなくなっている、そんな話。SFは得意ではないのだけれど。

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2023年05月14日

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あなたは、『今まで何人の子供を育ててきたのだろうと、時おり指をおる』と語る女性の話を聞いて何人の子供を想像しますか?

1人の女性が一生の間に生む子供の数が年々低下し、歯止めがかからなくなっている状況が懸念されています。1949年には、なんと4.32人という統計史上最大値を記録していたその数値は1973年を頂点とするベビーブームを境に年々下がり続け、2021年には、ついに1.30人という数値まで落ちました。流石に”異次元”の対応が急がれるのも当然なのだと思います。人の世が永続していくために、この国が永続していくために、知恵を絞った対応には是非期待したいところです。

では、一つの家族が育てる子供の数は何人になるのが理想でしょうか?二人でしょうか?三人でしょうか?

ここに、自らの育児の経験を語る女性が主人公の一人を務める物語があります。そんな女性は、育ててきた子供の数を数えます。

『ひい、ふう、みい、よ』。

(*˙ᵕ˙*)え?

『名前をはっきりと覚えている子供だけでも、十五人いる』。

工エー=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)

『覚えていない子供まで入れると、ゆうに五十人は育てたろうか』。

ニャンダッテ━━Σค(°ㅅ°ค(°ㅅ°ค(°ㅅ°;)ค━━!!

この作品は、私たちが当たり前に思う事ごととはどこか異なる世界が描かれる物語。そんな不思議な世界が14もの短編それぞれに語られていく物語。そしてそれは、『すでに多くの国はほろびていた』という、まさかの未来世界を描く”川上ワールド”全開な物語です。

『わたしが結婚したのは、五年前だ』、『夫は、町はずれにある工場に通っている』と説明するのは主人公の『わたし』。『夫は私とのものを含めて、今までに四回結婚している』という中、『わたしは二回』と思う『わたし』は、『夫の妻たちも、わたしの前の夫も、すでに亡くなっている』ことを思います。そんな『夫は三人の妻たちの形見を、ちゃんととってあ』り、『それらは、脱脂綿が平らに敷かれた小さな三つの箱に、ていねいにおさめられてい』ます。そんな『わたし』は、『夫が働いている間』『子供を育て』ています。『町のまんなかにある広い公園で』『子供を遊ばせる』『わたし』は、『今まで何人の子供を育ててきたのだろうと、時おり指をお』ります。『名前をはっきりと覚えている子供だけでも、十五人いる』という子供たち。『覚えていない子供まで入れると、ゆうに五十人は育てたろうか』と子供たちのことを思う『わたし』は、『子供たちの成長は、早い』と考えます。『幼稚園に上がるのに二年も三年もかかる子供はまれで、短い子になると生後三ヵ月でじゅうぶん幼稚園に通えるようになる』という子の成長。結果、『幼稚園に入れば、もうほとんど手は離れる』ことになります。そのために、『十五人の、名前はちゃんと覚えているけれど、大人になってしまった子供と会った時に、すぐにわかるかどうかは自信がない』という『わたし』の元に、先日、『成人したとおぼしき子供が訪ねてき』ました。『お母さんですね』と『花を差し出』されるも『名前を思い出せなくて、しばらく躊躇していたら』、『卓です』と『自分から名乗ってくれた』その子供。『今度、結婚することになりました』、『ぼくはいつ、お母さんの子供だったんですか』と訊く子供に、『それは、教えてはいけないことになっているでしょう。それに、こうやって来るのだって』と戸惑う『わたし』は『あたりをそっと見回し』ます。そして、『卓の胴体に腕をまわし、ぎゅっと抱きしめ』、『わたしが育てた、子供』と思う『わたし』。そんな『わたし』が『おめでとう』と言うと『にっこり笑い、頭を下げた』子供は『なごり惜しそうに』『振り向き振り向き、帰ってい』きました。『以前は、「国」という大きな単位の地域のまとまりがあって、そこは「日本」と呼ばれていた』と『古文書を読むのが好きな夫から教えてもらった』『わたし』が暮らすちょっと不思議な未来世界が描かれていきます…という最初の短編〈形見〉。いきなり違和感満載の日常生活の描写に戸惑いを感じつつも、”川上ワールド”へと足を踏み入れていく喜びを合わせて感じた好編でした。

上記で取り上げた〈形見〉について、“私が編者となって、大好きな作家のみなさんに「変な愛を書いてください」とお願いし、書き下ろしていただいた”と語られるのはこの作品で〈解説〉を務められる翻訳家の岸本佐知子さん。そんな”〈形見〉を書き終えた時、これは未来の話じゃないかしら?と思った”と、作者の川上弘美さんは、”長く書けるかもしれない”とこの作品成立の経緯を語られます。そして、完成形として刊行されたこの作品は14の短編が緩やかに繋がりを持つ連作短編の形式をとっています。そもそも上記した〈形見〉だけでも不思議世界が蠱惑的に顔を見せるこの作品。では、まずは、そんな14の短編の中から三つの短編をご紹介しましょう。

・〈水仙〉: 『今日、私が来た』と『扉を開け』、そこに『私よりもずいぶん若い、髪をのばした私がい』るのを見たのは主人公の『私』。そんな『私』は、『その日から』『私と二人で暮らしはじめ』ます。『最初に、家事の分担を決め』ようとするものの『掃除が好きで料理にはさほど興味がない』『私』と、『もう一人の私も同じだったので』、『曜日ごとに分担すること』なった二人。そんな『もう一人の私』との会話で『昔のことを』思い出した『私』は、『ものごころついた頃には、私は三人いた。生まれたばかりの頃は十人の私がいた…』と過去を振り返る中に、『二十五歳の秋に』旅に出たことを思い返します。

・〈みずうみ〉: 『15の8。それが、あたしの名前です』と言うのは主人公の『15の8』。『あたしには三人の兄と二人の姉がいます。兄たちの名は、それぞれ15の3、15の5、15の6です…』と説明する『15の8』は、『村には、100の家があり』、『あたしの家は、15の家』、『子供は、母親の家の番号を名乗り』、『生まれた順に下の番号をもら』うという命名ルールを説明する『15の8』。そんな『15の8』は、『この村の人たちは、みんなどことなく似たところがあると思っています』。それが『誰も人を憎まない』ということだと思う『15の8』は、『憎むって、どういうことなの』と『かあさんに聞いてみま』す。

・〈Interview〉: 『へえ、話を聞かせてほしいって言うのかい。たいした話なんて、ないけどね。なに?普通の一日のことを聞きたいって?』と一人で話し始めたのは主人公の『おれ』。そんな『おれ』は『目が覚めたのは、三歳のころ』と続けます。『ほとんどものは食べない』という『おれ』は『水分はたっぷり取』る中に『合成代謝』によって生き『五百時間くらいはずっと同じ場所にい』るものの『生殖をおこなう時期になると』『あちこちに出かけていく』と説明します。『たいがいのFと生殖可能だ』が『なかなかFがおれを生殖相手に選んでくれないから』『ずいぶん遠くまでめぐり歩く』…と一人語りを続けます。

どうでしょうか?なんだか分かるようでさっぱり意味不明?そんな感想を持たれた方も多いと思います。私も上記した冒頭の〈形見〉含めて、あまりにかっ飛びすぎたその内容にポカン!としてしまったというのが正直なところです。これは、ファンタジーなのか?という思いが巡りますが、そこに”これは未来の話じゃないかしら?と思った”という川上さんの言葉が思い起こされます。”私はSFが好きで、大学時代はSF研究会に入っていました”とおっしゃる川上さんが描かれたこの作品はそんな言葉の先に誕生したSF作品なのです。そんなSFの前提は物語が進む中で、少しづつ説明がなされていきます。

『いくつものカタストロフやインパクトの後、人類は急激に減りつつあった。ついに人口数は臨界点を下まわりはじめていた』。

『残存する頭脳を結集させ、あらゆる技術を掘り起こし、長大で複合的な計算をコンピューターでおこなっても、はかばかしい展開は得られなかった』。

そんな先に、ついに、

『すでに多くの国はほろびていた。かろうじて存在していたいくつかの国も、国家としての機能をほとんど失いつつあった』。

まさかの未来の地球の姿が描かれていることがわかります。そんな時代には、上記で取り上げた不思議な感覚の原因がこんな説明の中に明確になります。

『まだ俺たちがクローンではなかった頃、ふつうの生殖で生まれた人間だった頃…』

そんなこの14の短編、どこか同じ世界のようで違う世界のようでという不思議な感覚の物語の理由が示されます。

『人間集団を、いくつかの地域に分断し、完全におのおのを隔絶する』。

そう、この物語に描かれているのは、『隔絶』された『いくつかの地域』の物語。『隔絶』されているが故に、同じようで違う、違うようで同じ、なんとも不思議な世界のイメージがそこに見えてくるのです。これは凄いです。人は今生きている時代、生きている瞬間を全ての比較基準とする生き物です。私たちは2023年という今を生きていますが、この作品世界を生きる”存在”たちは、あくまでその時代、瞬間を基準に考えます。川上さんは、そんな”存在”たちどっぷりな視点で全てを描かれていきます。この感覚が圧巻です。次から次へと、私たちの世界のようでいて、気持ち悪いくらいに異なるなんとも言えない微妙な感覚世界を描いていく川上さん。

『おれも、おまえも、そしてこの地球上の誰も、人類の衰退を止めることができない。その能力をもっていない。人類は、もっともっと素晴らしいものになるはずだったのに』。

こんな風に、まさかの未来世界から過去を振り返る描写など、SFならではの過去を俯瞰する視点を登場させるなどとにかく抜かりがありません。そして、そんな物語には、私たちの世界を痛烈に皮肉る表現が切れ味鋭く登場します。二つご紹介しておきましょう。

・『自由、というのは、あたしたちの学校でもっとも頻繁に使われる言葉かもしれない』。
→ 『でも、あたしはこの学校にいても、自由であるという感じをあんまり持てない』。

・『そもそも、憎むって、どういうことなの』
→ 『相手が、この世界からいなくなってほしいと思うことよ』

“地球の長い歴史から見れば、今、人類が繁栄を謳歌しているのは、実はすごく運の良いことなんですね。だから、こういう時代だから、というよりも、人類も他の生物と同様、いつかは絶滅するということは、普遍的なことです”と語る川上さんが描く14の短編から構成されたこの作品。そんな作品には、『すでに多くの国はほろびていた』というまさかの未来世界の”存在”が、そんな時代、瞬間を生きる姿が描かれていました。今までに子供を『ゆうに五十人は育てたろうか』、『僕のように他人の心を走査できる』、そして『子供の由来は、ランダムだ。牛由来の子供もいれば、鯨由来の子供もいれば、兎由来の子供もいる』というかっ飛んだ物語に、正直、”ナニイッテルカワカラナイ”という感情に苛まれもするこの作品。

未来世界の不思議な描写の連続の中に、それでいて丁寧に綴られていく美しい文章にも魅せられる、そんな作品でした。

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2023年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・2月6日に読みはじめ、8日に読み終えました。
・たいへんおもしろかった!

・終始、なんだかうすいスープのような、何かしらのきれいな上澄みを飲んでるような気分だった。こんなにやわらかく書かれているのにガッチガチのSFなのすごいな。


・バラバラの短編集のように見えて全体はつながっている、という作品はけっこうあるけど、これはその中でもだいぶ異質だなと思った。個人の名前の規則性が全くなかったりそもそも名がなかったり、文化も生活様式も各作品でガラッと違っていて、どうみてもちがう世界の話なのに、完全に隔離されてそれぞれ発展した人間たちというくくりで同じ地球の話にしてしまうのすごかった。

・あとクローンが当たり前みたいに出てくるから、別の話で出てきた名前が出てきても、その人が出ていた話と時系列が一緒というわけではなく、名前だけを残している。その時間軸の不確かさも良かった。最後の話が最初の話につながっていると思うんだけど、この時系列の曖昧さがあるからまた新しく創造されたとも読むことができるなあと思った。


・「運命」が一番好きだな~。上位存在に語られるのって良い。あと今までの話がしっかりとまとまった瞬間だったので、シンプルに話として強かったな。「Interview」の光合成するお兄さんも良かった。

・最後、母たちが小型の時限爆弾を飲み込んで爆発して一斉に死ぬというなんともコミカルに見える死に方を選んだのも、前の「運命」で人工知能が腹の中に居ることが語られているから、きちんと合理的な方法だったんだなあとわかる。

・こういうディストピア系を読んで「未来を見てるようだな」とか言うの好きじゃないんだけど、実際少しは思った。特に最近はAIが爆発的に発達してるからなあ。作中の人工知能とはちょっと違うと思うけど、SFは未来を描いているから重ねてしまうんだよなあ。


・色を変え形を変え温度を変えてずっと愛の話が語られていたな、と読み終わって気づいた。私は愛の話が本当に好きなんですけど、今まで好んで読んできた愛の話とはまったく毛色が違ったな。博愛といえば博愛に見えるんだけど、そういう言葉以前の愛というか、ずいぶん原始的な欲求に従った「愛」だなと思った。

・あと「恋」が一切出てこない。小学校低学年くらいの子供がふつうに少女漫画や児童文庫の恋愛ものを買っていくのを見て、こんな10にも満たない頃から恋愛の概念を教えられる/知っているのはなんだか怖いなあと普段からすこし思っていたりするのですが、愛はともかく恋については、外部からの情報がないとわからないよな。文明の度合いによるかもだけどね、


・だいぶおもしろかった。文庫裏あらすじにもあるように、「新しい神話」を読んでる気分だった。

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2023年02月09日

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経験したことないような感情をおぼえるすごい本。
なんとか言葉にするなら、自然の脅威とか、宇宙の真理とか大いなるものに触れたときのような気持ちだ。

深い霧のなかを手探りで歩いてるようなぼんやりしたなかで話が進んでいき、たまに世界の核心的なものにちょっとだけ触れられる。
でも短編なんで、ほんのちょっとわかった気がしたところでポンと放り出されて次の話になってしまう。そしてまた手探り状態で歩くことになる。でも次に触れた世界の核心が、さっき触れたものの別の角度からのものだったりして、少しずつ世界の解像度があがっていく感覚が味わえる。

わからないことをすぐに調べず、自分のなかにとっておいておける人におすすめです。

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2022年09月22日

Posted by ブクログ

数千年、もしかしたら数万年の超ロングスパンで描かれる壮大な人類史SF小説。これからの“わたしたち”の行く末。滅びの美学。そこに描かれる世界はディストピアのようでディストピアではない。不思議な感覚。
短編集の形を取り、最初は無関係そうに見えるアネクドートがいつしか共通の世界観を持ってして描かれた叙事詩であることがわかる。母たちとは。見守りとは。様々なキーワードが散りばめられ次第に全体像をなす様はさながらジグソーパズルを完成させていくかのよう。所々、いくつかのアネクドートで、タイトルにもある『鳥』が印象的な舞台小道具として登場する。
そして一番最後の『なぜなの、あたしのかみさま』を読み終えた時冒頭の『形見』へと繋がる見事な円環構造。何度でも楽しめる名作。

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2021年05月29日

Posted by ブクログ

愚かで愛おしい「わたしたち」について。
SF頻出のテーマを、「白いガーゼのうすもの」を被せたようにほのめかしながら、やわらかな言葉遣いで読ませるので夢見心地になる。

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2021年05月22日

Posted by ブクログ

時間、場所が次々に転換するけと、ひとつの「世界」の物語。
こんな感じの女性作者さんの書くSFって割と好みなのかもしれないと思いました(華竜の宮とか大好きだし)

追)読み終わってからあらすじ見たけど、これはSFという以外前情報ない方がおもしろく読めると思います

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2021年04月15日

Posted by ブクログ

文庫新刊が出た時に気になっていたのだが、中古本屋で見つけたので購入。

最初のほうはかなり戸惑う。読み進めて薄っすらと理解できるようになったところもあったが、それ以上に分からないこともまた出て来るといった感じ。
100頁ほど行った辺りからそこまで蒔かれた話の上に徐々にタネが明かされていき、朧にこの話の世界が理解できるようになってくる。
そうなってくると、今まで???だった話の意味がいきなり深い意味を持って立ち昇ってきて、読むほどに、もう一度前に戻ったり、グッとこの世界に引き込まれる。
色々な語り口で書かれた作者の人間に対する思いは、最後のほうの「運命」という話で集約されるが、全体を通じてこちらの想像力が試されるというか、作者の想像力とこちらの想像力がぶつかり合っているというか。
遠い未来の話でありながら寧ろ太古の昔を感じさせる雰囲気で、SFチックな描写は殆どないが読み終えて見ればガチSF。
最後の話を読むとまた最初の話から読み返したくなる。

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2021年04月10日

Posted by ブクログ

面白かった。
独立している短編があちこちで繋がっているのを感じて、「あっ。これはあの人か! あの人のその後だったのか!」と、ワクワクしました。
ラストもうまくまとまったと思います。

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2020年12月29日

Posted by ブクログ

この物語について、何と表現したら良いか……思いつきません。

SFのように、空想世界の中で大冒険があるわけでもなく、
ミステリーのように全ての事象が明らからにされていくわけでもない。

「何からできてるかは秘密だけど、舌の上でよく転がして味わってみて」と言われて出てきた食べ物のような匂いのするもの……そんな感じ。
でも、食べたあともやっぱり「何からできてるか」はよくわからないし、喜怒哀楽を現す感情の揺さぶりは感じられないが、なんだか心に残る。

やっぱり「何と表現したら良いか……」わかりません。

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2020年12月18日

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想像力の飛距離、と解説で岸本佐知子さんがつぶやく。まさに、遠い異界へぶん投げられる、この作家ならではの神話。各章に繰り返し出てくるモチーフを再発見するべく、読み直さなければならない。

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2020年04月28日

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「自分と異なる存在をあなたは受け入れられますか」
人間って人間に近くてでも絶対に理解できないものを一番に恐れませんか。幽霊とかAIとか人でもそう。
人間よりも理性が強くて穏やかな存在からしたら、わたしたち人間だってみんな可愛くみえるかな。わたしたちが猫とか犬を無条件に可愛いと思うのと同じに。

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2020年02月01日

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ユートピアのようなディストピアのような世界が描かれ、不思議と心地よい世界観に引き込まれていく。短編集のようでありながら、以前出てきた名前が再度登場し世界が繋がっていたことを知る。つながっているはずなのにやはり違う世界のように感じる。章が進むにつれて次第にこの世界の全貌が明らかとなり、そして最後に世界の最初が描かれまた最初から読み返したくなる。滅亡の危機に瀕した人類を描くまさしく「新しい神話」であった。

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2024年03月26日

Posted by ブクログ

読みやすいSFだった。淡々とした語り口がすごい合ってる。
表題作と「みずうみ」「緑の庭」が特に好き。最後まで読むとまた読み返したくなる。

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2022年08月21日

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不思議な話、と一言で語るにはもったいないけれど、他の言葉にも置き換えられないような…。
「新しい神話」とあるように、「神話」と呼ぶのがきっとふさわしいです。
分かるような分からないような、さっきも出てきたような…を辿っていくと、はじめに戻ってくる。そう思ってはじめから読むと、繋がっているはずなのに別物に思える不思議。
ざっくり内容をおさえたうえでもう一度読んでみたい気もしますが、何度読んでも分からない気もします。でも、神話は分からないところがあって当たり前だろうから。

「ノア」「マリア」など、キリスト教を感じさせる言葉も出てきてその繋がりも気になります。他の言葉もそうなのかな。

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2022年01月06日

Posted by ブクログ

初めは何の関連もないただの短編集のように思えるが、読み進めていくうちにそれぞれの短編の繋がりが見えてくるという構成。
ラストを読んで、驚きが隠せなかった。まさかあそこに繋がってるなんて…

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2021年02月03日

Posted by ブクログ

ふわふわした文体に騙されそうになったけど、ゴリッゴリに壮大なSFものだった。

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遠く遙かな未来、滅亡の危機に瀕した人類は、小さなグループに分かれて暮らしていた。異なるグループの人間が交雑したときに、、新しい遺伝子を持つ人間──いわば進化する可能性のある人間の誕生を願って。
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うまく言葉にならないけど。
エリ、エリ、レマ、サバクタニ。


ラストのまとめ方が残酷ですき。そうやってループする。

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2021年01月18日

Posted by ブクログ

なんだかよく分からない、分からないままに読み進める。
それが本を味わうということなんだろうな、と思いながらページを進めた。
短編毎に、語り手も、描かれる世界も変化し、時間軸や空間軸まで異なるのでは?と思わせるほど。
未来の人類史、ともされるこの小説は、人工知能や遺伝子といった理系的な概念も登場するが、書き手の表現力で柔らかくまとめられ、堅苦しさを感じずに読むことが出来る。
音楽でいうと中村佳穂さんの『きっとね!』や、kiki vivi lilyさんの『カフェイン中毒』といった曲の世界観に重なる。
ぜひ聴きながら読んでみて欲しい。

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2020年05月22日

Posted by ブクログ

しばらくは世界観に慣れず、飲み込めず違和感を抱えたまま読み進めた。人間は自分の理解の範疇を超えた光景に感動することもあるけれど、自分の理解できない出来事や生命には悍ましい、気持ち悪い、そして恐怖といった感情を持つ。そして排除しようとする。大昔から今日まで、そしてずっと先の未来まで、人はどうやっても繰り返していく生き物なのかもしれない。人類がどのようにして生き残っていくのか、自然の中にどう影響を与え合っていくのか、気になってきた。作者の想像力や描写には息を飲む。

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2020年04月25日

Posted by ブクログ

SFであり、ファンタジー、聖書のようでもある。静謐で不思議な味わいの壮大な物語。人類が行き着いた先は…再読必至。

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2020年04月18日

Posted by ブクログ

なんの予備知識もなく読み始めた。
むむむ…。
再読の余地あり。っていうか、再読しないと元は取れないか⁉︎

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2020年03月28日

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