あらすじ
遠い未来、衰退の危機を認めた人類は、「母」のもと、それぞれの集団どうしを隔離する生活を選ぶ。異なる集団の人間が交雑することにより、新しい遺伝子を持ち、進化する可能性がある人間の誕生に賭け―。かすかな希望を信じる人間の行く末を、さまざまな語りであらわす「新しい神話」。泉鏡花文学賞受賞作はるか先を静かに見通し、慈しみ深く描いた未来の人類史
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Posted by ブクログ
普通の日本の風景のように始まった物語だが、進むにつれてどこかおかしい。違和感がどんどん増えていく。
ほとんど絶滅している人類の、最後の生き残りたちが生きる様子を、詩的な文章で描いていて、本当にこんな未来になるかもしれないと思わせる力がある。
世界観がはっきりしていて、最後の方でそれを説明しすぎてしまうところがやや難点か。雰囲気から読み取れるぐらいにしておいた方が、詩的な文章とのバランスがよかったかもしれないと思った。
ともあれ、想像力はすばらしく、読者の頭の中にも想像の世界をくっきりと立ち上げることができるすばらしい文章だった。これは映像では決してできない、文学だけが持つ力だと思う。
Posted by ブクログ
世界観と構成の妙
人類の衰退から消滅にいたるまでの過程を描いた、短編がいくつも重なり合う「連作短編」形式の構造美。
断片的なエピソードを読み進めるうちに、徐々に作品世界の全貌が浮かび上がってくる演出が秀逸。
AI(人工知能)と生命の描き方
人工知能(母)が人類を育て、その愚かさや美しさを慈しむ姿が非常に印象的。
人工知能を「母」として捉え、人体移植のようにも見える生命とテクノロジーの融合という発想が極めて先進的で面白い。
集団隔離と人為的進化の試み
人類を存続・再興させるため、集団を隔離して進化や変容を試みるという手法・設定の鋭さ。
登場人物の「命名」がもたらす効果
登場人物の名前をあえて単純(記号的)にしているからこそ、普遍的な「人間が持つ怒り・憎しみ・愛おしさ・美しさ」がより強く強調され、感情描写が引き立っている。