川上弘美のレビュー一覧

  • 神様

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    日常にそっと紛れ込んだ異類と人間の日々を描く連作短編集。表題作「神様」はくまに誘われて散歩に行くという牧歌的や語り口ながら、人間よりも人間らしいくまの振る舞いで、端的に人と熊の差異を浮かび上がらせているのが非常に上手い。それでいながら近所への挨拶をかかさない昔気質な部分であったり、のんびりしていながらも理知的な言葉回しが面白く、それだけでくまがとても愛おしく思えてくる。切り口は完全にファンタジーであるのだが、何の理屈も理由もなく、喋るくまというファンタジーを受け入れるか否かが、そのまま排外主義への問いかけへと繋がっているのが素晴らしい。

    熊を見る主人公以外の「まなざし」はやはり異物に対する視

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    2025年09月12日
  • Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

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    一度は乗ってみたい豪華列車。ますます乗ってみたくなった。
    各作家さんが描くそれぞれのドラマが、同じ列車内で繰り広げられているんだなぁと思うと、感慨深い。

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    2025年09月07日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    絶滅寸前になった人類が母の監視の元、いくつかの共同体に分かれて過ごす日々を切り取った終末SFの連作短編集。冒頭から語り口調が素晴らしく、その文体だけで斜陽となって滅びに向かう人類の愚かさへの絶望と絶え間ない悠久の孤独を感じてしまう。

    一つ一つの短編はどれも緩い繋がりとなっており、世界観を共有しながらも読み味が少しずつ違うのが面白い。特に目立った事件や大きな出来事が起きるというわけではないのだが、その背景に挟まる断片的な情報の不穏さが素晴らしく、設定面は若干フワフワした部分がありながらも、クローンや人工知能といった設定は惜しみなく使っており、そこから察するディストピアな世界観がたまらなく美しい

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    2025年08月25日
  • センセイの鞄

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    センセイとツキコのほっこり歳の差恋愛物語り。
    センセイ70歳くらい、ツキコさん37歳。
    恋愛小説でした。

    2001年6月初版。
    川上弘美40ちょい頃の作品。

    行きつけの居酒屋で良く合うようになった2人。
    奥手な2人のたわいも無いエピソードがポツポツと語られていく。
    特に事件もない。
    ほんと、ポツポツと。
    ツキコの変化、センセイの変化。
    少しずつ、進んだり、引いたり…
    なかなか進まない感じ…
    恋愛小説です。

    終わり方も、さり気なく、寂しくもあり、スンと、ホロリと…

    何もないようで
    なにか、ステキなお話でした。

    調べてみると、どうやら
    37回谷崎潤一郎賞受賞作。
    ベストセラーにもなってい

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    2025年08月20日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    人類は急激に減りつつあった。そして地球上の誰も人類の衰退を止める術を持っていない… 現存の人間ではもうだめだと考えた人間が 人間を進化させ違う人類をつくりだす計画をたてた。


    今 私たちがいるこの世界は『運命』という章で〝わたし〟が語っているどのフェーズにあるのだろうかと考えた。
    もう既に私の体内に何かが常駐しているのだろうか…
    もう人類が地球生態系の最上位者ではなくなるのも時間の問題なんだろうか…
    この先人類はどれだけ同じ事を繰り返していくのだろうか…


    読み始めてからしばらくして 始めの『形見』だけ毛色が違うなぁと思ったが その理由は最後まで読んでからわかる。 解説にもあっ

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    2025年08月19日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    「滅びゆく世界を慈しみ深く描いた未来の神話」と文庫の帯にはあって、いい得て妙だと思いました。

    語り手を変えながら物語が続くのですが、私は途中、このディストピア物語が一体どこまで続くのか、不安になりました。それでも巧みな書きぶりで、どんどん読み進むことができ、最後2つの物語で、全体の枠組みを開示してくれます。

    とはいえ、明るいものではありません。「あなたたち、いつかこの世界にいたあなたたち人間よ。どうかあなたたちが、みずからを救うことができますように。」このレマの祈りは、この小説を読む私たちに向けられたものでしょう。

    そしてそれでも今の人類は滅んでいく。「エリのつくった町のことを、レマはま

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    2025年08月07日
  • 某

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    不思議な本だった。本屋で一目惚れして購入。あらすじ見ただけだとどういうジャンルな話かわからなかったが、SFに近いジャンルだった。心内文が地の文として多く、話し手が変わってもカッコでわけていないため少々読みにくかったが、こういう表現も、「誰でもない者」が語り手であるが故なのかなと思いました。

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    2025年07月24日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

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    ユーミンデビュー50年を記念して、6人の作家による短編書き下ろし。ユーミンの曲名と歌詞からイメージした短編はそれぞれ作者の個性が出てます

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    2025年07月21日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    人とは何か、どんな姿をしていても人間なのか、そもそも人間と決めることに意味はあるのかわからなくなっていく。そして人間は生きていく意味があるのか。
    変に賢いからそういうふうに考える。小鳥のようにただ子孫を残すなどの純粋なもので満たされているほうが幸せかもしれない。ディストピアともユートピアとも読める不思議な本だった。

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    2025年07月20日
  • 森へ行きましょう

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    人生は、選択に満ちている。
    その時最良だと思っても思わなくても、とにかく前へ進むために何かを選び、選ばされる。

    選ばなかった道。
    あったかもしれない未来。

    でも、出会うべき人には出会い、何か一つの場所へと収斂していくような気もする。
    振り返ってみて、自分が幸福だと思えるかどうか。
    どんな人生をたどっていても、それもまた自分の心持ちひとつなのだ。

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    2025年07月13日
  • わたしの好きな季語

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    わたしの好きな季語を私も選んで何か書いてみたくなる
    ひとつの季語に思うことは人それぞれなんだろうなぁ 
    著者の俳句を読んでみたい

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    2025年07月12日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    気持ち悪さがあるが、すぐにそれ以上にそれを上回るその気持ち良さ。よく分からない世界をどんどん読み進められるけど、もう少し理解したいので再読する。

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    2025年07月07日
  • わたしの好きな季語

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    海苔とか、わかめとか、飯蛸、馬刀、そらまめ、豆飯、鯖、濁酒、きのこ狩り、切干、河豚、おでん、七草……なんだか食べものについて話しているページが来るたびに妙にうきうきしてしまってなんだか悔しい(笑)

    薄暑を「きらきらしい季節」と表すあたりに小説家としてのすごみを感じつつも、食べものの話がしきりに挟まれていて(「濁酒」を読んで、こんなていねいな食生活がしたい!と強くおもった)、「ああ、この人も同じ人間なのね」となじみを感じた。「歌留多」の節は首がとれんほどに頷いた!

    こうも感性を枯らさずに人間は生きられるのか、と思うと、少しばかりこの先にも希望がもてる。自分は意外にも、夏が好きらしい。夏生まれ

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    2025年07月04日
  • 恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

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    ちゃんとしているけど、どこかに変な芯があってどうしようもない人間を描く川上弘美のよさが味わえる作品だった
    思ったより良かった

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    2025年07月01日
  • 東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。

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    哺乳類が好きかどうかで、人は分かれるよな、と思う。
    特に女性は、子どもを産むと哺乳類好きに変わる人が多い気がする。
    だから、しっくりこなくなる。
    その点、川上弘美には安心感がある。

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    2025年06月28日
  • わたしの好きな季語

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    季語だけじゃなくて、川上弘美自身の生活にちょっと触れられた気がした。川上弘美みたいに生きたいと思った。

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    2025年06月27日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    読んでいるうちに、自分が今いる世界を信じられなくなってきてしまった。わたしが今いるのは、何回目の世界で、誰によって創られたもので、わたしを見守る上位的存在はいるのか…。影響されやすい性格なのでそんなことを考えてしまう。
    破滅の道をたどるというのに人はなぜ、人を憎み、争い、それでも愛すのか。人間というものを考えるときに根本となるものをテーマにしてると思う。読みながら、こんなに人間の営みを俯瞰して見ることができて、このディストピアのシステムを構想し、お話の中で機能させることができた川上弘美はなんて頭がいいのだろうと何度も唸った。そりゃブッカー賞候補にも上がるなあ。
    人間は愚かな存在だけど、それでも

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    2025年06月27日
  • わたしの好きな季語

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    想像したとおり、言葉やちょっとした小話が面白くてあっという間に読んでしまった。
    季節を感じてことばにする、文字に含まれた意味を解く…歳時記や、季語についてもっと詳しく知りたくなった!

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    2025年06月25日
  • 七夜物語(中)

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    さよと仄田くんの冒険がだんだん核心へと迫っていく。
    若い頃のさよの両親に出会ったエピソードが
    なんだか良かった。
    下巻ではどんな結末が待っているのか。

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    2025年06月23日
  • 某

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    今までの記憶が全然なく、名前も性別も年齢も分からないまま、突然この世に現れた某は、担当医の蔵利彦氏の元でアイデンティティーの確立のため治療を始める。
    女子高生、男子高生、高校の事務員…次々と別の誰かに変化して演じ分けていき、ついには病院を脱走してしまい、外の世界で自分と同じような存在の仲間に出会うことになります。

    何とも小難しい設定なのに、登場人物たち(人間ではないのだけれど)それぞれが飄々としていて面白い。
    日本のみならず世界を飛び回り、病院でお世話になった蔵医師や水沢看護師はどんどん年老いてゆくのに、某のような「誰でもない者」たちは100年ほど生きていたり、時間軸が人間とはずいぶんずれて

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    2025年06月08日