川上弘美のレビュー一覧
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ネタバレ読む前の印象は、もっと怖くて仄暗いお話なのかな~‥と思いましたが、そんな事はなくてちょっぴり不思議なお話でした。
一見、突拍子もない摩訶不思議な話しに思えるけど、この物語を前世の記憶を少しだけ持っている人達の話と置き換えて読んでみると、非常にしっくりくる‥
何度も何度も変化(輪廻転生)を繰り返しながら
生とは?死とは?
問いかけながら
変わっていく事、変わらない事。
色んな人格になり、色んな人生を経験する事で、自身も知らない間に少しずつ成長していく‥
「愛するって何?」
「相手の為に生きたいって思える事だよ」
死を恐れなかったひかりが、愛する事を知って変化する事を恐れた事も、変化 -
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去年、世田谷文学館の谷口ジロー展で、谷口さんがこの作品を書いていることを知ったが、販売コーナーには無かった。結果、谷口ジローコレクションの配本を待つことになった。
川上弘美さんの原作を読んだのは、いつだったか。帯に川上さんの一文「こういう話だったんだ!描いていただいて、ほんとうに知ったような心地です。」がある。
本当にそう言う感じ。老境のセンセイと月子さんが淡々と吞んでいる漫画。偶にキノコ狩りやお花見があるけれど。
急いで読んじゃいけないんだよと心に言い聞かせながら、頁をめくる。
気がつくと、月子さんの気持ちにセンセイが占めているのが何とも言えず、沁みるなあ。
この後は、8月配本の続巻を待つば -
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「蛇を踏む」「消える」「惜夜記」の三作品。
どれも非常に独特な作品でした。
どのように読むのがいいのかしばらく分からないままだったのですが、「あ、これ変な時間に寝た時に見る夢みたいだな」と思ってからはその感覚にスイッチすることで、なんとなくこの世界に溶け込めたような気がしました。
不気味さも奇妙さもありながらどこかしら生命の神秘的な面も感じられて、無秩序のようでいてどこか傾倒していってしまいそうな世界観。
作者の方は相当不思議な方なのかなと思っていたら、あとがきでは平易な言葉で「うそばなし」のことを書いてあり拍子抜けしてしまいました。
どこまでも掴みどころない作品でした。
しばらく心にモヤ -
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休日のちょっとした遠出の電車と喫茶店とで読みきった。
川上さんの文章、気持ちがすかすかして好き。別れる話がなんとなく多い気がしてつっかかったけれど、別れなかったとしても別れたとしても、川上さんの描く人たちはみんな清々してて好き。あと、ちょっと不思議でほんわかしてて、切ないのに、傷を知らないふりして、涼しい顔するのも好き。川上弘美の読後感が好きなのかもしれない。
少し不憫なこととか、ありえないことが起きても、まあしょうがないよねって受け止める。恋をしてじたばたして、恋にならなくてざわざわしても、そのあとはさっぱりしてる。どの短編のみんなもきっと、この先をずーっと進んでいけばどこかでハッピー -
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ネタバレ12編のアンソロジー。
どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
その中でも特に好みだった2つについて書きたい。
『藁の夫』
2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。
『逆毛のトメ』
シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か -
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『ね、今日はどうだった。
たいがい毎日、母は聞く。
うん、ふつう。
というのが、僕の返事だ』。
人は他者とコミュニケーションを取る手段の一つとして、その他者の感じたこと、思ったこと、そんな心の内を本人に問いかけることがあります。と言ってもこれは難しいことを言っているわけではありません。美味しいものを食べに一緒にレストランへと行った時、感動を味わうために一緒に映画を見に行った時、そして非日常を求めて一緒に旅に出かけた時、『どうだった』と、相手の感情を確かめたくなるのは自然な感情だと思います。そんな時にその相手が『うん、ふつう』と答えたとしたらどうでしょうか?えっ、楽しくなかったの -
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あなたは、いきなり『死んでからもうずいぶんになる』という書き出しの小説に接したとしたら、その先にどんな世界を感じるでしょうか?
どんな小説に於いても冒頭の一文というものはとても大切です。その作品世界に入っていくことができるかどうかを試す試金石とも言えるのがこの冒頭の一文です。私は今までに500冊以上の小説ばかりを読んできましたが、そんな中でも未だに一番強く印象に残っているのが、綿矢りささん「蹴りたい背中」の冒頭の一文です。『さびしさは鳴る』と始まるその一文。そんな一文をもって私の心はすっかり綿矢さんの作品世界に囚われてしまいました。芥川賞を受賞された作家さんの表現の魅力というものをこんなとこ -
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『恋とは、いったい何だろう。わたしが恋をしていたのは、ニシノさんという、ひとまわりも年うえのひとだった』。
『恋』とは何かという質問はなかなかに難しいものだと思います。それを”特定の相手のことを好きだと感じ、大切に思ったり、一緒にいたいと思う感情”のことです、と説明されても、はあ、としか言いようがありません。私は中学生の時にクラスのある女の子に『恋』をしました。いわゆる初恋というものです。好きで好きでたまらない、でも相手がどう思っているかなんて全くわからない、そして他のクラスメイトには決して知られてはならないこの想い。なんとも悶々とした日々を過ごしたことを覚えています。結局、その想いは叶う -
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ニシノユキヒコが主人公(?)ながら、ニシノユキヒコの心情は一切記されておらず、ニシノと交流したさまざまな女性たちの視点で、ニシノが語られます。
1番最後に配された「水銀体温計」で、ニシノの少し屈折した女性への態度の背景が明かされ、その一つ前の章「ぶどう」で、唐突に訪れた彼の冒険の終わりが綴られます。姉への気持ちを明確にするのが怖かった、ということなのでしょうか?ただ、思えば、1番最初の「パフェー」で成仏しきれず他の女の元へ行くあたり、もうその浮ついた性分はもう自制の効く類のものではなく、生まれついた性質なのでしょうか。
ニシノと女の儚い関係の中の穏やかな熱情に、なんだかやつされるような想いがし -
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幸せなのにさみしい。
主人公の多くの「私」には名前が出てこない。それがよけいに自分に語られ、問いかけられているようだった。
心のままの感情を持ってしまうことへの辛さ、心細さとか、人との絡まる感情は、どうにも消化できない。
多くは「ままならぬ関係」だったりするが、それでもふふっと笑えたり、不確かなものだって存在するんだと、人の心の儚さが、ずしっと刺さった。
無機質でお人形さんみたいに感じる登場人物…そういう、ゆめうつつのところが、それはそれで好きなんだと思う。笹蒲鉾を持ってタマヨさんに会いに行った「私」は、私でもあった。空想の中で会いたい人に会いに行く、つい移入してしまう。
「夜の子供」「冷た