川上弘美のレビュー一覧

  • 真鶴

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    川上弘美さんの文体が美しい。いるはずもないものを語るとき、そこにはリアリティがあった。
    「ーーみなひとしく日を受けている。目をつむり、両のまぶたいっぱいに日を受けるーー」
    主人公の京は全身に、目に見える世界に光を感じて、失踪した夫に想いを馳せる。ついてくる女はもういない。

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    2022年08月31日
  • 某

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    ネタバレ

    読む前の印象は、もっと怖くて仄暗いお話なのかな~‥と思いましたが、そんな事はなくてちょっぴり不思議なお話でした。

    一見、突拍子もない摩訶不思議な話しに思えるけど、この物語を前世の記憶を少しだけ持っている人達の話と置き換えて読んでみると、非常にしっくりくる‥

    何度も何度も変化(輪廻転生)を繰り返しながら
    生とは?死とは?

    問いかけながら

    変わっていく事、変わらない事。

    色んな人格になり、色んな人生を経験する事で、自身も知らない間に少しずつ成長していく‥

    「愛するって何?」
    「相手の為に生きたいって思える事だよ」

    死を恐れなかったひかりが、愛する事を知って変化する事を恐れた事も、変化

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    2022年08月27日
  • 神様

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    空想と現実の間で遊ぶ

    たとえそうでないとしても、“合わせることなんてないのに。”そう言ってくれる人がいたということが、きっと何かの支えになるんだ

    くまに誘われて散歩に出たい。

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    2022年08月16日
  • ニシノユキヒコの恋と冒険

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    ハードカバーの本を20年近く前に買って、度々読み返している。
    この小説のすごいところ(というか作者のすごいところ?)は、ストーリーのその場に自分もいるような感覚で読めるところだと思っている。
    気まずい空気とか、じわじわと寂しさが込み上げる場面とか、その場の暑さとか湿度だとか、
    登場人物が感じているものをリアルに自分も感じられる文体が魅力。
    20年前はニシノさんみたいな男性は嫌だなって思いながら読んでいたけど、年を重ねふと自分がニシノさんみたいな生き方をしているかも、と気付くから人間って不思議だなと思う。

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    2022年08月06日
  • センセイの鞄(谷口ジローコレクション) : 1

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    去年、世田谷文学館の谷口ジロー展で、谷口さんがこの作品を書いていることを知ったが、販売コーナーには無かった。結果、谷口ジローコレクションの配本を待つことになった。
    川上弘美さんの原作を読んだのは、いつだったか。帯に川上さんの一文「こういう話だったんだ!描いていただいて、ほんとうに知ったような心地です。」がある。
    本当にそう言う感じ。老境のセンセイと月子さんが淡々と吞んでいる漫画。偶にキノコ狩りやお花見があるけれど。
    急いで読んじゃいけないんだよと心に言い聞かせながら、頁をめくる。
    気がつくと、月子さんの気持ちにセンセイが占めているのが何とも言えず、沁みるなあ。
    この後は、8月配本の続巻を待つば

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    2022年07月30日
  • 光ってみえるもの、あれは

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    16歳の少年が少しづつ大人へと成長していく物語。
    川上さんのこういう淡々とした世界観がなんだか好き。前半はちょっと変わった家族構成だけど普通の高校生の日常と後半は五島列島の島に渡り自分の周りのいろんなことを見つめなおしながら少しづつ大人へと向かっていく翠。
    普通に生きるのって簡単なようで簡単じゃないんだよなぁ。

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    2022年07月29日
  • わたしの好きな季語

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    面白かった
    季節
    それを表す言葉の
    美しさや佇まい
    大切にして
    生きていきたいなぁと
    思いはするけど
    楽な方へ流れてしまう
    川上弘美さん3冊目
    ようやくしっくり来た感じ
    しだみ独立書店フェス
    本ひとしずくにて購入

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    2022年07月10日
  • 某

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    何とも奇怪な話を考え付く才能はどこから生まれるのか、読みながら考えたが未だに結論が得られない.丹羽はるかが野田春眠になり、山中文夫、神谷マリ、ラモーナ、片山冬樹、ひかりと変身していくなかで、キャバクラで働いたり、カナダに移住したり、幼児になったり、なんだこりゃ! 蔵先生と水沢看護師が唯一まともな人と思ったが、芦田先生、津田さん、アルファ、シグマ、高橋さん、鈴木さん、等々ユニークな登場人物をチェックするのも大変だった.人間の生き方を上下左右に振り回しても、生き長らえられるのだと感じた.

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    2022年06月24日
  • 東京日記2 ほかに踊りを知らない。

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    ネタバレ

    2007年11月17日発売と2作目。

    少し慣れたかな。4/5は本当のこととあるけど、本当かな。だとするとスゴイ。

    『十二月某日

    おおみそか。

    年賀状を書きながら、来年の目標を考える。二つ、

    思いつく。

    一つは、「よくうがいをする」。

    もう一つは、「くつしたを裏返しにはかない」。 とても難しい目標だけれど、守れるよう頑張ろ うと、強く決意する。』

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    2022年06月13日
  • 蛇を踏む

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    「蛇を踏む」「消える」「惜夜記」の三作品。
    どれも非常に独特な作品でした。
    どのように読むのがいいのかしばらく分からないままだったのですが、「あ、これ変な時間に寝た時に見る夢みたいだな」と思ってからはその感覚にスイッチすることで、なんとなくこの世界に溶け込めたような気がしました。

    不気味さも奇妙さもありながらどこかしら生命の神秘的な面も感じられて、無秩序のようでいてどこか傾倒していってしまいそうな世界観。

    作者の方は相当不思議な方なのかなと思っていたら、あとがきでは平易な言葉で「うそばなし」のことを書いてあり拍子抜けしてしまいました。
    どこまでも掴みどころない作品でした。
    しばらく心にモヤ

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    2022年05月15日
  • パスタマシーンの幽霊(新潮文庫)

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     休日のちょっとした遠出の電車と喫茶店とで読みきった。
     川上さんの文章、気持ちがすかすかして好き。別れる話がなんとなく多い気がしてつっかかったけれど、別れなかったとしても別れたとしても、川上さんの描く人たちはみんな清々してて好き。あと、ちょっと不思議でほんわかしてて、切ないのに、傷を知らないふりして、涼しい顔するのも好き。川上弘美の読後感が好きなのかもしれない。
     少し不憫なこととか、ありえないことが起きても、まあしょうがないよねって受け止める。恋をしてじたばたして、恋にならなくてざわざわしても、そのあとはさっぱりしてる。どの短編のみんなもきっと、この先をずーっと進んでいけばどこかでハッピー

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    2022年05月08日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • 龍宮

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    あなたは、ほんとうはここにいないものでしょう。
    人と人にあらざるものとの8つの短編集。
    人間界に馴染めず異生物になって現れたり、不思議な昔話だったり、夢の中の物語のような気がした。人と人以外のものたちとの絡みが不思議な世界観でした。
    ぼんやりしたいとき、すっと頭に入ってきて違和感がなかったです。
    淡々としているが、女性の艶めかしい空気を感じる作品でもあった。「センセイの鞄」を彷彿させる「狐塚」、「荒神」が特によかったです。荒神は一番現実味がありズキッときました。人以外の動物や生物が、人間の本質を遠目に見てるように感じました。

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    2022年04月09日
  • 光ってみえるもの、あれは

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    『ね、今日はどうだった。
    たいがい毎日、母は聞く。
    うん、ふつう。
    というのが、僕の返事だ』。

    人は他者とコミュニケーションを取る手段の一つとして、その他者の感じたこと、思ったこと、そんな心の内を本人に問いかけることがあります。と言ってもこれは難しいことを言っているわけではありません。美味しいものを食べに一緒にレストランへと行った時、感動を味わうために一緒に映画を見に行った時、そして非日常を求めて一緒に旅に出かけた時、『どうだった』と、相手の感情を確かめたくなるのは自然な感情だと思います。そんな時にその相手が『うん、ふつう』と答えたとしたらどうでしょうか?えっ、楽しくなかったの

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    2022年04月06日
  • 溺レる

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    あなたは、いきなり『死んでからもうずいぶんになる』という書き出しの小説に接したとしたら、その先にどんな世界を感じるでしょうか?

    どんな小説に於いても冒頭の一文というものはとても大切です。その作品世界に入っていくことができるかどうかを試す試金石とも言えるのがこの冒頭の一文です。私は今までに500冊以上の小説ばかりを読んできましたが、そんな中でも未だに一番強く印象に残っているのが、綿矢りささん「蹴りたい背中」の冒頭の一文です。『さびしさは鳴る』と始まるその一文。そんな一文をもって私の心はすっかり綿矢さんの作品世界に囚われてしまいました。芥川賞を受賞された作家さんの表現の魅力というものをこんなとこ

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    2022年04月04日
  • ニシノユキヒコの恋と冒険

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    『恋とは、いったい何だろう。わたしが恋をしていたのは、ニシノさんという、ひとまわりも年うえのひとだった』。

    『恋』とは何かという質問はなかなかに難しいものだと思います。それを”特定の相手のことを好きだと感じ、大切に思ったり、一緒にいたいと思う感情”のことです、と説明されても、はあ、としか言いようがありません。私は中学生の時にクラスのある女の子に『恋』をしました。いわゆる初恋というものです。好きで好きでたまらない、でも相手がどう思っているかなんて全くわからない、そして他のクラスメイトには決して知られてはならないこの想い。なんとも悶々とした日々を過ごしたことを覚えています。結局、その想いは叶う

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    2022年04月02日
  • ニシノユキヒコの恋と冒険

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    ニシノユキヒコが主人公(?)ながら、ニシノユキヒコの心情は一切記されておらず、ニシノと交流したさまざまな女性たちの視点で、ニシノが語られます。
    1番最後に配された「水銀体温計」で、ニシノの少し屈折した女性への態度の背景が明かされ、その一つ前の章「ぶどう」で、唐突に訪れた彼の冒険の終わりが綴られます。姉への気持ちを明確にするのが怖かった、ということなのでしょうか?ただ、思えば、1番最初の「パフェー」で成仏しきれず他の女の元へ行くあたり、もうその浮ついた性分はもう自制の効く類のものではなく、生まれついた性質なのでしょうか。
    ニシノと女の儚い関係の中の穏やかな熱情に、なんだかやつされるような想いがし

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    2022年02月20日
  • おめでとう(新潮文庫)

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    幸せなのにさみしい。
    主人公の多くの「私」には名前が出てこない。それがよけいに自分に語られ、問いかけられているようだった。
    心のままの感情を持ってしまうことへの辛さ、心細さとか、人との絡まる感情は、どうにも消化できない。
    多くは「ままならぬ関係」だったりするが、それでもふふっと笑えたり、不確かなものだって存在するんだと、人の心の儚さが、ずしっと刺さった。
    無機質でお人形さんみたいに感じる登場人物…そういう、ゆめうつつのところが、それはそれで好きなんだと思う。笹蒲鉾を持ってタマヨさんに会いに行った「私」は、私でもあった。空想の中で会いたい人に会いに行く、つい移入してしまう。

    「夜の子供」「冷た

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    2022年02月18日
  • 夜の公園

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    自由な女たちの物語

    人としてありえない!と思う反面、自分に正直で、こういうのびやかな女性にはずっと憧れてしまうと思う

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    2022年02月06日
  • ハヅキさんのこと

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    25の掌編小説集。
    どの作品も余韻が心地好い。綺麗にまとまっているとかオチがつくわけではないが、空間や時間の広がりがふわっと薫り作品の奥行きを感じさせる。
    川上作品は語りすぎない行間が魅力的だ。
    読み手の想像力を掻き立てながらも、そっと予感を残していく。
    挙げればキリがないけれど、「琺瑯」「グッピー」「かすみ草」「ハヅキさんのこと」「島」が特に好きだ。

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    2022年01月12日