あらすじ
恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、不実な男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。
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Posted by ブクログ
一遍一遍読むたびに、はぁとひと息ついて、余韻に浸りたくなる。なんだかわからないけど、噛み締めたくなる。
この短編集を手に取る前に、『ざらざら』『ぼくの死体をよろしくたのむ』を読んでいたので、リンクするお話を見つけるたびに感動していた。もちろん、この短編集から読んでも十二分に楽しめると思う。
『ざらざら』よりかはソフトな恋模様だった。
それぞれ異なる恋愛をしていて、チープな言い方になってしまうが、面白い。
表題作『パスタマシーンの幽霊』が特に大好きで、料理の不得意な主人公がケチャップごはんをつくるシーンが一番のお気に入りだ。短編集を読み終わってからも、この部分は何回も読み返しているし、実際に真似して作ってみたりもした。本文のかわいい言い回しを思い出しながら、それにしたがって。それで、結構おいしかったので、適当にごはんを食べたいときはこれを作るようになりました。本当に好きな短編、というか、レシピの書き方。がさつで適当なご飯なのに、主人公の説明口調が丁寧でかわいらしいんです。
「炊きたてのごはん(炊飯器があるので、ごはんだけはふつうに炊ける。なんてありがたいことなんだろう)を茶碗によそって、バターをひとかけ、ごはんのてっぺんに落とす。……………(続く)」
どうでしょう、ここまででも既にかわいいですよね。
「おしょうゆ」「お箸」と丁寧に言ってるのが良い。
「そまったへん」と適当なのも良い。
これだけで、なんとなくの主人公の性格とかバックグラウンドが見えてくるような気がする…大袈裟だけど。
ひらがなの使いどころと、擬音の使い方、説明の仕方が絶妙で、胸を掴まれた。暗記したいレベルで好き。
これってもしかして、詩なの?
このレシピ、みんなに読んでほしい…!!!!!
まだこのケチャップごはんをつくったことがない方には、一度ぜひつくってみてほしい。おいしいから。
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久しぶりに川上弘美の作品を読んだ。
川上弘美作品に出てくるちょっと行儀が悪かったり、性格に難アリというような主人公をチャーミングに描いているところが好きだ。作品内の他キャラクターには「チャーミングですね」とは認識されていなくとも読者にはどこか可愛く思えるし、そういう少しの「難」を抱えた読者をちょっと救う話ばかりだ。
物語そのものは大きく変化していなくて、問題に対する心持ちだけがギュンと変わりましたよというお話が大好きなのでかなり良い作品集だったなあと感じた。
特に表題作の「パスタマシーンの幽霊」で主人公が披露するケチャップごはん(ほかほかごはんにバターと醤油、ケチャップを回しかけて適当にぐちゃぐちゃ混ぜるもの。混ざりきってない方がケチャップだけが濃い部分とかがあって美味しい。)がめちゃくちゃわかりすぎてニヤニヤしながら読んだ。あれだよね、このごはん好きな人絶対ピザポテトとかコンソメパンチ好きだよね。
本当にこのレシピを見て欲しいがばかりにこの本を人に薦めたい気持ちがある。私たぶんこの雑なケチャップごはんの良さをわかる人としか友達になれない。
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少しだけ「普通」とは離れた感がある女性たちのお話。短編集なのだが、ひとつひとつの話にきっちり入り込めるし、時間も場所も忘れられる。どれもこれも、その辺のよくある話なのに(多分)川上さんの世界が存分に醸し出されていて、読み終わるのが寂しくなるくらいだった。失恋したりくっついたり立ち上がったり諦めたり。どの話の女性とも話をしてみたくなる。シワシワの黒豆が食べたくなる。ひとつだけ驚いたことが、私の旧姓は珍しい苗字なのだけど、その苗字が出てきて、その女性の話にやたら共感していたこと。私の大好きな川上さんの小説に自分の旧姓を見つけられるなんて、自分の中で勝手に宝物にした。
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川上弘美さんの文章を前にすると、私は為す術がなくなります。
人物の感情を推し量るとか、場面を分析してみるとか、いわゆる「読解」をしてみても良いのに、存外その「読解」が嫌いではない質なのに、ダメなのです。
空気に呑まれるというのが、適切な表現かもしれない。
本を閉じて、自分の世界に戻っていくのが、いつももったいなく感じるので、私は現実に満足していないんだなと思い知らされたりもします。
川上さんの紡ぐ言葉は、除夜の鐘のようにボワワワーンと体の芯に響きます。
評価とか感想とか書けないので、今回の読書で一番響いた一節を紹介します。
「若いって、いいな。ヤマグチさんの話を聞いていると、いつも私は思う。若いこと、それ自体がいいというわけでもないのだけれど。ただ、この世界に、まだ知らないことがたくさんある、そしてまだ知らぬその事々をいつか制覇してやるつもりがある、という心弾みが、うらやましいのだ。」
そうだよな。そうなんだよ。
ずっと生きて、ずっと物語を書いて欲しいな、川上さん。
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恋っていう名前のものじゃなかった。でも、知らんふりは、できないものだった。
知らんふりできなかった想いは「あたし」の中に確かにずっと残ってる。
雑誌『クウネル』に連載された22の短編集第2弾。
今回も様々な「あたし」達の揺れ動く想いに、私の気持ちも揺さぶられっぱなし。
第1弾から続く修三ちゃんとアン子の親友コンビに加え、初登場の誠子さんと山口さんコンビもとてもいい。
この二組は長編にしてほしい。
この他印象的だったのは『海石』。川上さんの不思議ワールド全開の話で初っぱなからやられた。
どうして「陸のいきもの」は相手を好きになると混じり合わないようにしてしまうのだろう。
「海のいきもの」のように好きと好きが引き合ってくっついちゃうといいのにね。
また今回は美味しそうな料理も印象的。
ケチャップごはんに、修三ちゃんお手製の黒豆、アン子お手製のはまぐりずし、鶏のまるごと煮込み、ブイヤベース…。
料理と一緒に、作った時食べた時の想いも伝わってきた。
このシリーズはこの先もずっと続けていってほしい。
Posted by ブクログ
面白かったです。「ざらざら」に引き続きとても好きな世界でした。
恋ってままならないけど、良いものです。
「結婚てうまくできそうにない」と、修三ちゃん好きだ、は今も変わらず思うことです。
ケチャップごはん、わたしもやってみよう。
ふわふわ読みましたが、ずっと浸っていたい世界です。
とても心地好いです。
Posted by ブクログ
まったりしてるのにどこか物悲しいところが好きだな、と思った短編集。
いや、超短編集。
パスタを作るおばあちゃんの幽霊が出てくる表題作もとても可愛らしくて好きだけど、私は小人のヤマグチさんが出てくるお話が好きだった。
忘れたころにまたヤマグチさんの短編がやってくるところも何か嬉しい。そういうつくりだった。
可愛くて笑ったり、ちょっとほろっとしたり、切なくなったり。
そしてそこにはいつも男女がいる。様々なかたちで。
多くは語れないけど大好きな世界観。
Posted by ブクログ
裏表紙に「恋をしたとき、女の準備は千差万別。」「女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。」と書いてあるけれど、これは恋の本なんだろうか?
恋愛の話もある、あるというか読み終わったらほとんどそうだった気もした、前の「ざらざら」から続いているアン子の恋の話もあるし、表題の「パスタマシーンの幽霊」だってそれは恋人の部屋で見つけたパスタマシーンに問い詰めた所から話は始まるし、他にもいっぱい恋も出て来るんだけれど
最初の一編が「海石」と書いて「いくり」と読む圧倒的でどこか神話的な話から始まるのもあって、まるで色々な立場、年齢、環境にいる様々な女たちをどこかから見ている神様か何かがいて、少しずつそれを私にも見せてくれているような気がして、恋もそういう女達に起こる出来事の一つのように思ったのかもしれない。
描かれている恋愛も、こんな感情を持つというのはなんと可愛らしいことかと涙ぐみたくなるような恋もあれば、いらないのならそれはいらないでいいんだなと思う話もあり
クウネルで連載していた短編というとクウネル的なという風に思うかもしれないけれど、表題作である「パスタマシーンの幽霊」は
蕎麦も打ったし、餃子の皮も手作りしたし、パンも焼いた
という ”料理上手なばあちゃん”が念願のパスタマシーンを孫達からプレゼントされてじきに亡くなって、幽霊になってまでパスタを作りに出てくるのだけれど、その孫の一人の恋人で料理が下手だと自分で言い「パエリアなんか、土鍋で作っちゃうような」女をまるで仮想敵のように思っているのに、恋の終わった反動で料理に没頭し「今にパエリア女になってやる」と叫ぶ唯子の所にあらわれて
料理上手な女なんて、ロクなもんじゃないよ。
と非難する。
イメージを持ったりそれで整理をつけると便利なこともいっぱいあるなと思うけれど、そんな風にだけでは収まりきらないこともあるからおもしろい人や物事に会えたり、おもしろい本が読めたりすることもあるんじゃないかなーと思ったり。
普通に幸福だと言われていることがそうだとは限らないし、逆もまたそう、ということもとても思った本でもありました。
Posted by ブクログ
このお話が好き、こっちがいちばん、
と心でしるしをつけながらひとつひとつ読み進めたら、
最後にはいちばんがなくなってしまった。
ひとつ読むと、それがいちばんになる。
そして、左手で挟むページが薄くなってくると
かなしくて、
あとひとつ?まだある?と、
そわそわした。
読んでしまうのが勿体ない。
けど、もっと欲しい。まだまだ食べたい。
だから、川上さんの短いお話はだいすきなのだ。
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『ざらざら』の続編。
ちりちりと心を焦がす残り火を、最後は自分の息でふっと消す。「恋のお葬(とむら)い」をするような短編集だった。どうして恋は、好きなればなるほど上手くいかなくなってしまうのだろう。同じくらいの「好き」じゃなくていいから、あともう少しだけ、一緒にいる口実にできるくらいの「好き」でよかったのに。
「杏子とおかまの修三ちゃん」、「誠子さんと山口さん」の連作短編が大好き。
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日常生活の変な話や微妙な気持ち・失恋が書かれてるけ気持ちを追体験したり、不思議な世界に触れられる。
山口さんが出てくる話が好き。
「ざらざら」の続編らしいのでざらざらも読んでみたいなー
Posted by ブクログ
休日のちょっとした遠出の電車と喫茶店とで読みきった。
川上さんの文章、気持ちがすかすかして好き。別れる話がなんとなく多い気がしてつっかかったけれど、別れなかったとしても別れたとしても、川上さんの描く人たちはみんな清々してて好き。あと、ちょっと不思議でほんわかしてて、切ないのに、傷を知らないふりして、涼しい顔するのも好き。川上弘美の読後感が好きなのかもしれない。
少し不憫なこととか、ありえないことが起きても、まあしょうがないよねって受け止める。恋をしてじたばたして、恋にならなくてざわざわしても、そのあとはさっぱりしてる。どの短編のみんなもきっと、この先をずーっと進んでいけばどこかでハッピーエンドが待ってるんだろうなって思える。
修三ちゃんに叱られたいし、染谷さんと河原で石拾いしたいし、山口さんが口笛を吹いて部屋に遊びにきてほしい。
川上弘美、さすがにそろそろ飽きてきたかな?と思ったけど、全然良くて、ぐんぐん読んじゃった。
Posted by ブクログ
ずっと前、居たなそういう人、原田聖子のような理解できなかった存在の人。(ゴーヤの育て方)
「ねえ、大学時代はさあ、会社に入って働くとか、考えてもなかったよね」「いろんな女や男やおっさんやおばさんがいるところで、自分も働いていることが、まだ信じれん」
不特定多数の人と、誰もが良い人間関係を結ぶのは難しいと学んだ自分の「お勤め」のころを思い出した。
輪ゴム、はよかった(全部よかったけど)。どのお話も哀愁が漂って、ふわふわしてるのにせつなくて、だけど穏やかになる。
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冒頭の短編「海石(いくり)」で強烈に引き込まれた後は、目くるめく川上ワールドの奔流に絡め取られて、気付いたら最後まで一気に読んでしまいました。勿体無いことした…。
こういう中毒性がある短編は、秋の夜長に、大事に大事に、一編一編、噛みしめるように読んでいくのが一番満喫できると思うんですよね……。
勿体無いことした…………。
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花澤香菜ちゃんが読んでたって言っていたから購入した、たぶん。独特な世界観についていけなくてはじめて読み始めた当時は積んでしまっていたけれど、数年経って読んでみたらすんなり入ってきた。色んな恋の深みを体験できて楽しくてすこし寂しい。
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川上弘美さん大好きです
この本の中では [ほねとたね]が好きでした
日常の なんでもないようなことが川上弘美さんのフィルターを通すと 読んでいて 面白いです
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川上さんの本を開くといつも、同じ活字なのに、活字を見ただけで、あっ川上さんだって思ってしまう。
「ざらざら」の続編。
不器用でどうしようもない、女という厄介な生き物について書かれている。
厄介だけど、恋するって幸せなんだよね。
修三ちゃんとアン子と中林さんの登場する長編が読みたくなってしまった。
あと、コロボックルの山口さんも。
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雑誌「クウネル」に連載していた短編をまとめた一冊。
その短さゆえか、さらりとした文章ゆえか、相当に奇妙な状況が“ちょっと奇妙”くらいに感じて、後から、長編になりそうなくらい濃い設定だなあと気づいたり。
でもかえって、この短さが印象的かもしれない。
小説を読んでいない時に、ふと「こんな話のこんな状況があったなあ」と思い出し、これって何の話だっけ?…あ、パスタマシーンの幽霊の一遍だ。
と思い出す、ということが何度もありました。
じわじわ心に残っていることに気づかされる短編集。
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22の短編集。
「海石」は、おとぎばなしのようで、それでいてちょっと怖くて・・・
印象に残りました。
出てくる女の子たちは、どれも普通な感じで等身大で、好感が持てる。
さりげなく心を動かされる感じが、とても「川上弘美」的で、素晴らしい一冊でした。
Posted by ブクログ
いくつかの短編は、ドキドキするほど自分のことが書いてある…と思い、
自分のこの恋も、もしかしてこの小説の登場人物たちみたいに終わっちゃったりするのかなとか、
本気で心配しちゃうくらい、気持ちの中で重なるところが大きくて、
小説は小説なんだろうけど、どうにも繊細にあたしの胸をついてくるものだから、
読みやすいんだけど、数編読むと疲れて先に進めないのでした。
今はいくつかの短編にビビっと反応して、
きっとまた違う恋をしたら違う短編にビビっと反応して。
川上弘美さん、もてるんだろうな。
良い恋も悪い恋も、たくさんして来たに違いない。
良い恋も悪い恋も、どれもたぶん良い恋なんだ。
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雑誌『クウネル』に掲載されていた短編。「ざらざら」の続編。
また杏子と修三ちゃんに会えて嬉しい!
杏子も成長してるなぁ。
今回は山口さんと誠子さんの連作もおもしろかったです。
続巻がたのしみ。
クウネルはたまに手に取るけれど、川上さんの短編は文庫化するまでのオタノシミにしてます。
解説にも似たようなことが書いてあって、そうそう!と深く頷いたのでした。
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海石(いくり)という妙な動物(妖怪?)や幽霊やコロボックルなんてものが日常に普通に出てきて、久しぶりに「うそばなし」の川上さんが戻ってきてくれた様な気がします。全部ではないのですけどね。
基本的に私が苦手にしている恋愛小説なのです。しかし、このところ多かった現実的と言うかドロドロした雰囲気の作品では無く、どこかホワホワとした感じが戻ってきて、これが川上さんらしさだよなと思ってしまいます。
やっぱり川上さんはこの路線で行ってほしいな。
Posted by ブクログ
【2024年7冊目】
川上弘美さんワールドにどっぷりと浸れる22の短編集。短編なので、どのお話も数ページの間だけの展開にもかかわらず、濃厚な物語の世界を楽しむことができました。短編の中でもうっすら続いているものもあったりして、読んでいると「おっ、これは」となるのも良かったです。
1番好きなのは、「ナツツバキ」でした。人間の私とコロボックル並の大きさの山口さん。違うのはその大きさだけなのに、その大きさの違いが2人にとっては、とても大きい。
恋を軸にしながらも、それだけではなく、どこか不思議な雰囲気もありつつ、現実と虚構を行ったりきたりする物語たちを堪能させて頂きました。
何度でもゆっくり読みたくなる一冊ですね。
Posted by ブクログ
短い短編が沢山入っているので、ちょっとずつ読むのもいいかもね。一気に読み終わりましたが。
あまりにも沢山入っているのですぐ忘れてしまいますが、3編出てくるコロポックルの山口さんと、OLの誠子との淡い恋の話がとてもよかった。これだけ中編にして欲しい。
種族を超えての恋も良いし、どちらも憎からず思っているのに、控えめで歩み寄れない切なさもよい。読んだ後もふと思い出すこの感覚が「余韻」っていうんだろうなあ。
Posted by ブクログ
22の短編集。
修三ちゃん
コロボックルの山口さん
好きです。
楽しく読めた(^o^)
P30
しあわせな女の定義。
何より一番大切なのは「揺るがないこと」。
Posted by ブクログ
「柔らかいしわなしの黒豆は、長時間かけてゆっくりお砂糖をしみこませてゆっくり冷まして段階ふんで作るけど、しわしわの黒豆は砂糖なしでゆでたあとどばっといっぺんに砂糖を入れてばりばりにしわを入れるのである。どば。ばりばり。アン子そのものだな。修三」
(修三ちゃんの黒豆)