あらすじ
恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、不実な男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。
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Posted by ブクログ
川上弘美さんの文章を前にすると、私は為す術がなくなります。
人物の感情を推し量るとか、場面を分析してみるとか、いわゆる「読解」をしてみても良いのに、存外その「読解」が嫌いではない質なのに、ダメなのです。
空気に呑まれるというのが、適切な表現かもしれない。
本を閉じて、自分の世界に戻っていくのが、いつももったいなく感じるので、私は現実に満足していないんだなと思い知らされたりもします。
川上さんの紡ぐ言葉は、除夜の鐘のようにボワワワーンと体の芯に響きます。
評価とか感想とか書けないので、今回の読書で一番響いた一節を紹介します。
「若いって、いいな。ヤマグチさんの話を聞いていると、いつも私は思う。若いこと、それ自体がいいというわけでもないのだけれど。ただ、この世界に、まだ知らないことがたくさんある、そしてまだ知らぬその事々をいつか制覇してやるつもりがある、という心弾みが、うらやましいのだ。」
そうだよな。そうなんだよ。
ずっと生きて、ずっと物語を書いて欲しいな、川上さん。
Posted by ブクログ
恋っていう名前のものじゃなかった。でも、知らんふりは、できないものだった。
知らんふりできなかった想いは「あたし」の中に確かにずっと残ってる。
雑誌『クウネル』に連載された22の短編集第2弾。
今回も様々な「あたし」達の揺れ動く想いに、私の気持ちも揺さぶられっぱなし。
第1弾から続く修三ちゃんとアン子の親友コンビに加え、初登場の誠子さんと山口さんコンビもとてもいい。
この二組は長編にしてほしい。
この他印象的だったのは『海石』。川上さんの不思議ワールド全開の話で初っぱなからやられた。
どうして「陸のいきもの」は相手を好きになると混じり合わないようにしてしまうのだろう。
「海のいきもの」のように好きと好きが引き合ってくっついちゃうといいのにね。
また今回は美味しそうな料理も印象的。
ケチャップごはんに、修三ちゃんお手製の黒豆、アン子お手製のはまぐりずし、鶏のまるごと煮込み、ブイヤベース…。
料理と一緒に、作った時食べた時の想いも伝わってきた。
このシリーズはこの先もずっと続けていってほしい。
Posted by ブクログ
雑誌『クウネル』に掲載されていた短編。「ざらざら」の続編。
また杏子と修三ちゃんに会えて嬉しい!
杏子も成長してるなぁ。
今回は山口さんと誠子さんの連作もおもしろかったです。
続巻がたのしみ。
クウネルはたまに手に取るけれど、川上さんの短編は文庫化するまでのオタノシミにしてます。
解説にも似たようなことが書いてあって、そうそう!と深く頷いたのでした。