川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ニシノユキヒコの恋と冒険、「恋と冒険」なんて楽しいことが起きそうなタイトルなのに、この本はずーっと物悲しい。明るいし、愛や愛になりそうなもので溢れているけど、物悲しい。
そして悲しくて寂しいのだけど、カラッと乾いて心地よくて、不思議な小説だなと思う。
まずニシノユキヒコの最期から始まり、その次に中学生の頃の彼を知ることになるので、とにかくニシノユキヒコは寂しい人だなと思うことになる。そこから彼がどんな恋愛をしていくか見ていくと、彼の冷たいところにより恋愛が成就していかないのがものすごく悲しい。彼が冷たいのが理由だとしても、彼が可哀想で、「わーん」と泣きたくなる。
女の子たちが、何をニシノユキヒコに言おうとして、でも言わなかったのか、ひとつひとつが胸の奥にぎゅーーーっと食い込むように寂しい。
はあーーー。
初めて読んだのは大学4年のときで、ケアンズに卒業旅行に行くことになっていて、機内で暇だろうな〜とBOOKOFFで買い求めたのだった。
日本へ帰る飛行機で読んで、ニシノユキヒコの人生が悲しくて、隣の席で眠る恋人の横でオイオイ泣いたのだった。
それからニシノユキヒコの恋と冒険は寂しい小説だったなあと半年に一回は思い返していた。
先日川上弘美さんの短編集を読んだのを機に、実家から持ち帰って読んだけどやっぱり寂しかったなあ。
でも大好きな作品だなあ。
ササキサユリさんの、冷静な視点で全てを受け止めている様が潔くて好きだな。
あと、カノコちゃんが好きなものを列挙するとき、おとうさんやおかあさんに続いて、「隣家の生まれたばかりの赤ちゃんが好き。」と来るのにキュンときた。 -
Posted by ブクログ
帯より。
「季語がよびさます忘れえぬ瞬間。
散歩道にほころぶ梅を愛で、
茄子とみょうがで濁酒。
ぬくぬくと朝寝をむさぼり、
ががんぼを一人いとおしむ。
行きつけだった居酒屋から、東京の四季おりおり、
少し人見知りな 作家の日常まで。
川上弘美がもっと近くなる 俳句エッセー96篇。」
季語の学びの本ですね。でも、ただ意味の説明ではなく、俳句エッセーになっていて、面白いです。
(川上弘美さんは、随分前に読んだ「センセイの鞄」がとても好きです。その時に、しみじみとこの本好きだなぁ〜と感じました。)
こちらの「わたしの好きな季語」は、決して数は多くはありませんが、季節ごと、そして新年の季語がありますので、ゆっくり愉しみながら味わいたいです。 -
Posted by ブクログ
歳を重ねるといろいろなものが見えるようになって心は成長し、身体は衰えていくと思っていた時期がある。どうやらそんなものではないと今は感じている。
大きな事件があるわけではなくて、エッセイのような本。60を超えた幼馴染が近づいたり離れたりしながらコロナ禍を生きている。歳を重ねたからこそのものの捉え方は決してスマートなわけではない。でも相変わらずいろんなことを考えながら人は生きるのだなとしみじみ思う。
静かで、暖かくて、どこか切ない物語だった。
「どうしようもなく誰かと一緒にいたい、という相手を自分が求めないことがさみしいのだった。」
「他者の思考に自分がのみこまれてゆく心地よさと抵抗感と恐ろしさの中に、ゆっくりと溺れていった。」
「カズのことをわたしは好きなのかしらん、と自分に訊ねてみる。自分の中で、その問いが小さく響く。がらんどうの部屋の中で、覚束なく団扇太鼓を鳴らしているような音で。答えはなく、ただぺなぺなした太鼓の音が、てん、てん、と鳴っているばかりだった。けれど、その覚束ない太鼓の音が、悪くはないなと思った。」
そこかしこで、独特な、素敵な表現に出会える。そして、本の題名も章の題名もまた、気持ちのどこかに触れられる感じがする。 -
Posted by ブクログ
試験前で読書を控えていた先月、ちまちま家にある"センセイの鞄"を読み、川上弘美欲が高まってしまった。
21の短編から成るこちらの作品は、どれも川上さん節が強く、みょうちくりんで魅力的な小説ばかりで心が満たされた…!
このくらいなら書けそうだと思わせてくる。だけど、絶対に書けないユニークな表現や世界観たち。高等テクや…!
お気に入りは"誕生日の夜"。
いつも通りナナの部屋で、のぞみとナナにお祝いされる誕生日。にぎやかな誕生日にするため、知り合いや、知りあいの知りあいもどんどん招待した結果、昌子たちや、のぞみの恋人の国枝くんとその友達、見知らぬおばあさんとおじいさん、タヌキのつがいと鶴にプレーリードッグ、そして地球外生命体のゆむ°て、どんどん参加者が増えていくカオスなのに穏やかで楽しそうな誕生日会。
出来すぎている息子の、性的嗜好だけが母である"私"を悩ませる"はにわ"も素敵。
交通調査で使うカウンター機で感情が揺さぶられた数を数える同級生に出会う"真面目な二人"。
女の阿部さんと男の阿部さんが出てくる"ラッキーカラーは黄"。
どれも最高にふにゃふにゃしていて、優しい夢みたいな物語で大好き。