川上弘美のレビュー一覧

  • 蛇を踏む

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    三作の短編。
    「蛇を踏んでしまった。」
    「最近よく消える。」
    「夜が少しばかり食い込んでいるのだった。」
    冒頭から『⁉️』と鷲掴みにされる。
    そして淡々と不可思議なことを語られ、粛々と物語が進んでいく。
    ファンタジーというには謎展開すぎて、お伽話のような感覚。

    話の中に教示や諫言を見つけられなかったが、著者の独特の物語は想像の斜め上どころではなく、四方八方どこに連れて行かれるかわからない楽しみを得ることができた。
    物語を読むというより、摩訶不思議な世界をただ浸る体験ができた。

    物語を読むというよりも、摩訶不思議な世界を楽しむという感じ。

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    2023年06月16日
  • なめらかで熱くて甘苦しくて(新潮文庫)

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    5篇の短編からなるこれは、どのタイトルもラテン語である。水、土、空気、火、世界。
    全ての短編に性と生と死を感じた。それと、人称の使い方がおもろしろかった。アクアでは、水面と汀という2人の少女が登場する。地の文は水面主観で語られるが、その際水面は汀と呼び捨てで呼んでいる。しかし、会話文になると田中さん、と姓呼びになり距離を感じられる。この2人と同じ生まれの少女が行方不明になり、全裸で死体となり発見される。この少女はいつもどこか2人の少女の中をさまよう。

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    2023年06月07日
  • 100万分の1回のねこ

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    著名な作家によるトリビュート。やはり一流、表現の仕方や情景描写が素晴らしい。

    個人的には角田光代が1番好きでした。

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    2023年06月03日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

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    松任谷由実の曲を元にしたトリビュート小説集
    著名な作家さん達による、別角度からの切り口で綴られる物語

    歌詞をそのまま物語にしたものではない
    むしろ設定のリンクはそんなにないかも
    タイトルにインスパイアされた短編という表現の方が近い


    収録は6編
    あの日にかえりたい/小池真理子
    DESTINY/桐野夏生
    夕涼み/江國香織
    青春のリグレット/綿矢りさ
    冬の終り/柚木麻子
    春よ、来い/川上弘美
    解説:酒井順子



    ・あの日にかえりたい/小池真理子
    いまも私の心は学生時代を過ごしたあの場所にいる


    昭和の学生運動が盛んな頃の大学生
    男を巡る友人とのちょっとした行き違い

    大学生の頃に戻りたい

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    2023年05月30日
  • おめでとう(新潮文庫)

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    裏表紙を見ると『よるべない恋の十二景』らしく、それらに、たよりとするところが無いのかどうか、私には分からないが、川上さんの数々のこと細かい描写に、胸を突かれるような愛おしさが湧いてくる事は確かである。

    それは、最初の「いまだ覚めず」だけでも枚挙に暇がなく、タマヨさんが、十二年前の写真を捨てずに取ってある事や(しかも、壁一面に貼ってある中のどこにあるか、瞬時に分かった)、「仕事ばっかりしてる」「わたしも」の『わたしも』や、『あなたと手つなぐの、すきだった』や、「なにしてあそぶ」と、少しお化粧をして少しよそいきになったりと、言葉だけだと何ということも無いように思われるが、物語に於ける、これらの言

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    2023年05月26日
  • 東京日記7 館内すべてお雛さま。

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    ネタバレ

    虚実入り混じったような、ふわっとしたこのシリーズがとても好きだ。
    途中からコロナ禍の影が射しはじめ、ひやりとするも、雰囲気はさほど変わらず安心する。
    だが、あとがきを読んでハッとした。この日記の後には、日常が瓦解する光景を目の当たりにするのだった。
    これ程分かりやすく暴力的に暮らしが破壊されていったわけではないが、コロナ禍においてむき出しになったあれこれも記憶に新しい。特に非常時に乗っかって、文化を軽んじた人たちのことは決して忘れてやらない!と強く思う。
    とまれ、くだらなくも愛おしい日常が続いていきますように。

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    2023年05月24日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ユーミンの曲を女性作家さん達がトリビュートし
    創作された物語の短編集。
    小池真理子「あの日にかえりたい」
    まだ共同玄関や共同トイレが一般的だったころに
    学生時代を過ごした主人公の郷愁の物語
    既に老年に入った主人公が人生を振り返るような
    切ない物語。短編の中に人生の流れがつまっていて
    さすが小池真理子さんだなと思った。

    桐野夏生「DESTINY」
    村上春樹が愛読書の争いごとを好まない青年の物語
    変わらぬルーティーンの中ではっと目についた
    女学生に少し惑わされてしまうけれど、また
    普段の日常に戻っていく。何も劇的なことは
    ないのだけれどシニカルでとても良かった。
    村上春樹とか山田風太郎とか主人公

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    2023年05月22日
  • 東京日記7 館内すべてお雛さま。

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    林真理子や銀色夏生とも違う独特の面白さ。
    ちょっと浮き世離れしてるというか、童話的な(夢の話し)感じ。
    随所に笑いどころあり。
    友人が少ないことを気にかけてるとこや、それでも知人が多そうで電話で話す知人、友人の会話がめっぽう面白い。
    中盤からコロナ禍になりリモート系のエピソードも楽しい。
    落ち込むとネットで食材(筋子とか)を買うとこもなんかわかる。
    タイトルは旅先で訪れた展示会の内容が変更になっていて、
    ひな祭り関係のものばかりだったとか。

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    2023年05月22日
  • 真鶴

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    ネタバレ

    真鶴という場所にはたびたび行ったことがあり、縁がある。その流れで読んだ一冊。
    文体が綺麗で儚げで、特に句読点の多さや漢字で書くところを平仮名としたりなどの書き様がそのあたりを演出しているように思った。
    あとがきでようやく気がついたが、主人公は少し精神を冒されているという状態だったようだ。最後まで感情移入が難しかったが、夢現の描写はとても美しく感じた。

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    2023年05月04日
  • ざらざら(新潮文庫)

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    あなたは、短編が好きですか?それとも、長編が好きですか?

    小説にはさまざまなジャンルがあります。恋愛もの、青春もの、そして学園もの。横文字でいけば、ミステリー、ファンタジー、そしてホラー。さらには、京都が舞台、お仕事小説、そしてタイムトラベル…切り分け方次第で一つの作品であってもさまざまな分類の仕方ができると思います。例えば京都が舞台と言っても、青春ものに振った瀧羽麻子さん「左京区七夕通東入ル」、恋愛&SFに振った七月隆文さん「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」では、読み味が全く異なりますし、それぞれに好き嫌いも出てくると思います。内容の分類だけで好みの作品を見つけるのもなかなか難

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    2023年05月03日
  • Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

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    豪華寝台列車の「ななつ星」を題材に5人の作家と糸井重里さん、小山薫堂さんが物語や想いを綴る。寝台列車はセンチメンタルな気持ちになる。闇夜を走り抜ける中、人は過去を思い出し、その時にしかできない話しをし、解決できなかった想いを投げかける。5つの物語はどれも労りがあり、癒しもある。旅(ななつ星は旅というより乗ること自体に価値があるのだが)は不思議だ。自然と自己に向き合わせていく。
    自分を見つめ直したくなる一冊だった。
    お気に入りは「夢の旅路」「アクティビティーは太極拳」。

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    2023年05月02日
  • Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

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     豪華列車ななつぼしに関するアンソロジー。作家さん、それぞれに特徴的な物語だが、すべて、心に沁みる物語。

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    2025年12月07日
  • 真鶴

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    あなたにとって、思い入れのある場所はどこでしょうか?

    世界には数多の観光地があります。例え仕事をやめて一生そんな観光地巡りをしたとしてもその全てに行き尽くすことなどできません。もちろん、観光地といっても幅があります。例えば、それを世界遺産だけと限れば行き尽くすこともできるかもしれません。しかし、それでは単に巡ること自体が意味となってしまいます。もちろん、それも考え方ではありますが、せっかく訪れるのであれば、自身が行ってみたいと感じる場所に行きたいものです。

    そう、私たちはそれぞれに嗜好が異なり、世界各地のどの場所に心囚われるかは当然に異なります。”リピーター”という言葉がある通り、新しい場

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    2023年04月29日
  • Yuming Tribute Stories(新潮文庫)

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    印象に残ったところ
    ・小池真理子 『あの日にかえりたい』
    学生時代のほろ苦い仲違い。どこでボタンをかけちがったのかなーと思うことは、人生であるけれど、そのどうにもできない思い残りを微妙なタッチで描いた作品だった。ズシンと澱が残るような、そんな読後感。
    ・綿矢りさ 『青春のリグレット』
    菓子の思い出に共感。
    その当時は、その後にそんなに大きな存在になることなどないと思った存在が、ふといちいち思い出す存在になっていたと感じることはある。それが確かに青春という時期特有のものなのかもしれないなーと気付かされる。

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    2023年04月25日
  • 東京日記7 館内すべてお雛さま。

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    コロナ禍に入る前からの3年間の東京日記。あとがきにも述べられてるけどさほどいつもと変わり映えしない安定した東京日記にほっこり、癒されました。一生続いて欲しいシリーズ

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    2023年04月25日
  • ニシノユキヒコの恋と冒険

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    ある意味で純愛小説。
    あらすじを読んだ時にコメディかなと思ったけど、読み終わったら胸が締め付けられていた。
    男側の勝手な意見だけど、ユキヒコは自分の感情に対して頗るピュアなんだろう。
    逆に愛なんてものは、実に曖昧なものなんだろう。

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    2023年04月17日
  • 東京日記7 館内すべてお雛さま。

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    相変わらず変な川上さんであるw

    いろいろ激しく同意。

    ん?私も変な人なのか?
    いや、同意したのは変な部分じゃなかったかと…www

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    2023年04月14日
  • Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

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    死ぬまでにしたいことの一つ、豪華クルーズトレインの旅を、豪華執筆陣のアンソロジーで擬似体験。「ななつ星」をめぐる7編、どれもいい話だった。中でも印象に残ったのは、ラストが切ない、井上荒野さんの「さよなら、波瑠」と、母娘リモート旅が和む、川上弘美さんの「アクティビティーは太極拳」。老春、相生、家苞etc…単語をお題にした小山薫堂さんの随想「旅する日本語」も刺さった。

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    2023年04月13日
  • 蛇を踏む

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    愛してやまない川上弘美の世界。
    このかたが生み出す世界は現実や意味(理性)の世界と自由に結びついたり解けたり、誰も知らない結び付き方を表したり、あらゆる境界をぼかしながら私たちを驚かせる。それは日本古来の妖怪譚のような、幻想文学のような、不条理文学のような趣きを持ちつつ現代に現れた作者独自の世界である。

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    2023年03月12日
  • 水声

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    生暖かい沼へ静かに沈んでいくような感覚

    女のこと 肉体のこと 見えないけどたしかに存在している部分 でもそれらを皮膚感覚で察していくような 愛おしさはどうしようもなく湧き起こる それが幸せでもあり怖くもあり
    川上弘美はいつどれを読んでもその世界観に沈めてくれるから好きだ

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    2023年03月02日