川上弘美のレビュー一覧

  • ざらざら(新潮文庫)

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    恋にまつわる23の掌編。
    雑誌「クウネル」にて掲載されていたためか、女性たちのライフスタイルがさり気なく演出されている。
    短いながらも、きっと彼女たちはこういう歩みできたんだろうなと何となく察せられました。
    「びんちょうまぐろ」のゆきちゃんにはゾッとしてしまったかな…。「卒業」が特に好き。

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    2022年01月12日
  • ニシノユキヒコの恋と冒険

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    ニシノユキヒコ、西野幸彦。
    彼とひと時を過ごした10人の女性たちからの述懐。
    ニシノはどう見てもだらしがないろくでなしなんだけど、どこか理由がありそうに見えて、でも実のところ分からない。心の内に空虚が巣食っているようでいて十分に満たされているようにも思える。「真実の愛」を欲しているのに欲していない。わかりそうなのに掴みどころがなくて、よくわからない人だった。
    本人も持て余しているらしいけれども、こんなに途方に暮れる才能があろうか……。
    ニシノユキヒコは、川上弘美のなめらかで体温の低い文章がよく似合う男でした。

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    2022年01月11日
  • 蛇を踏む

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    読者開始日:2021年12月25日
    読書終了日:2021年12月28日
    所感
    【蛇を踏む】
    不思議な作品だった。
    ニシ子、願信寺坊主、サナダ、家に蛇が住み着いた3名の日々は、それ以前まで不満、もしくは退屈を抱えていたのだろうか。
    そうすると見えてくる蛇の正体。
    「カリギュラ効果」だと思う。
    ダメだと言われる、怖いと思うほど、やってみたい、見てみたいと思う裏腹な心。
    どんな人にでも経験があると思う。
    坊主はよくわからないが、サナダは退屈な毎日、ニシ子は満たされない心を抱えていて、蛇を自ら作り出したと言ってもいい。
    存在を無くしたい、極端になりたい、蕩けたい、堕落したい。
    でも心の底では堕ちたくな

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    2021年12月28日
  • 100万分の1回のねこ

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    その絵本の内容を忘れてしまったが、
    これだけの作家達に、これだけのお話を作らせるんだから、すごい絵本なんだな、と思う。

    大人になって楽しむ本があることに、幸せを感じる。

    挿絵を描いていたという方の話が、一番、絵本に近いんだろうな、という予感。

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    2021年12月26日
  • 物語が、始まる

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    短編4作品収録
    いずれも川上弘美ワールドを強く感じる作品でした
    男の雛型、座敷トカゲ、おばあさん、お墓
    まさに異世界でした

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    2021年12月24日
  • 100万分の1回のねこ

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    絵本「100万回生きたねこ」のアンソロジー本。途中、あれ?猫出てきたっけ?っていう作品もあったけど、基本、要所要所に猫が登場。でも、猫飼い的に胸が痛くなるような描かれ方もあって、さすが100万回生きたねこだな。
    そういえば、100万回生きたねこは幸せなのかどうかって論争もありましたね。きっと、そんな流れから出てきた本なんだろうけど。これ。

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    2021年12月10日
  • 水声

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    ネタバレ

    許されない関係が清流のように紡がれていました。兄妹間モノが苦手でなければ、読んで損はないと思います。

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    2021年12月03日
  • センセイの鞄

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    あなたは、高校時代の先生の名前を覚えているでしょうか?

    人間は群れで生きる生き物であり、日々誰かしら新しい人と出会い、その名前を記憶していくことを繰り返していきます。そんなことはないと思われるかもしれませんが、あなたは無意識のうちにテレビのニュース報道や、ネットのSNSを通じて日々新しい人たちと出会っているはずです。一方で私たちの記憶容量には限界があります。関係しなくなった人の名前は自然と忘れていくものです。それは、かつて恩師として私たちにいろいろな知識を授けてくれた学校の先生も同じことです。担任はまだしも、ましてや特定科目の先生の名前まで記憶し続けるのは容易ではありません。しかし、世の中は

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    2021年11月27日
  • 神様 2011

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    ネタバレ

    ゴア描写もないのにグロテスクと感じる文章

    作者あとがきにもある通り、何某かの怒りが、深い穴から湧き出てくるような描写力でした。
    くまとのハグが、あんなに空寒く感じるのかなちい

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    2021年11月23日
  • ハヅキさんのこと

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    あとがきにもあった通り、『知っている』人に出会う話と『いろいろな恋愛』に関する話の二種類からなるショートショートの作品群。どの作品もしっかり中身が深く一語一語にはっきりと意味を感じられ、川上ワールドを体験できた。小物もよく使っており、ともすれば読み飛ばしてしまいそうになる所もしばしば。短いながらも一話ずつ噛みしめるようにして読め、ちょっとした隙間時間にちょうどよかった。個人的にはかすみ草が好みだった。評価の星は3.5をつけたいが、システム上できないため4。

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    2021年11月19日
  • どこから行っても遠い町(新潮文庫)

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    住んでた町の商店街の居酒屋、軽食屋、魚屋の回想。最後の章では、えっそうきたか、それも面白い締めくくり。

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    2021年11月12日
  • ざらざら(新潮文庫)

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    ずっと、楽しみだったものが終わってしまう、一歩手前の切なさを思い起こさせる。
    日曜日の午後2時から日が暮れるまでの時間帯。
    きっとこの瞬間、時が経ってから思い出すんだろうなと思いながら、誰かと一緒にすごす今を愛おしむ気持ちが詰まっている。

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    2021年11月09日
  • 真鶴

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    芸術選奨文部科学大臣賞受賞作。
    文学らしい文学。純文学と呼ぶに相応しい。

    過去形と現在形が入り混じる独特の文体に、始めは戸惑ったが、次第に慣れてきた。短いセンテンスは詩の旋律のよう。

    12年前に失踪した夫に囚われ続ける京(けい)。娘の百(もも)と母と女3世代の暮らしはどこか危うい。
    夫の日記に書かれた「真鶴」に旅をする時に「ついてくるもの」が…。その正体は⁈

    先が気になる、というよりは【目が離せない】小説。
    現実と幻想、愛と情欲、遠くと近さ、そこには区別があるのか⁈ ひらがな表記のこだわりや、美しい日本語の動詞や形容詞もとても魅力的。

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    2021年10月01日
  • 森へ行きましょう

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    ネタバレ

    人生を森に例えた小説。
    主に二つの人生の小話を代わる代わる見せられる。通している登場人物が、設定が少し変わって登場するので、そこが面白みに繋がるとともに、さーっと読んでいるとわずかな混乱が引き起こされる。

    最後一個前のルツの話は良かったなあ。
    相手を知り尽くす必要はない、というところと。
    だれもが森に迷い込むけど、今度は一緒の森に行こうねっていうあのシーンは白眉でしたね。
    最後の最後で、ちくりと毒があるけどね!
    いきなり誰だよ!

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    2021年09月30日
  • 某

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    究極の自分探し。
    アルファやシグマ等の「仲間」が出てきたあたりで飽きてしまった。
    意外と「特殊な」みのりがあっさりしている

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    2021年09月17日
  • 七夜物語(下)

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    不思議な小説だった。
    児童文学なのだろうか、魔法のような現実ではない空想の世界が、現実とも空想とも言い切れない形で描かれている。当たり前のように不可思議なことがおこりつつ、リアリティが維持されていて、ファンタジーの世界と切り離しきれない感じが不思議だった。

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    2021年09月12日
  • 光ってみえるもの、あれは

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    「若さ」とは何かを教えてくれる。まぶしいねぇ。「ふつう」っていったいどういうことなのか。自分の普通と他人の普通は決して同じではない。自由でありながら不自由だったりする。このあたりを大人は「あきらめ」と「分別」で対応していくのだけど。
    高校生のころ、分別くさい大人にだけはなりたくなかったもんね。でもあきらめきった老人になっちまったけど。

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    2021年08月23日
  • 森へ行きましょう

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    人生、パラレルワールド、選び取らなかった未来、これまで歩んできた道、それらを「森へ行きましょう」で昇華させる川上氏。うつくしいです。
    ルツか留津かはじめは見分けがつかないけれど、時が進むにつれてルツか留津か、はっきりと区別がつくようになる。はじめはちょっとずつのズレだったのに。昔のことの記憶が曖昧になっていく感じも、まるでルツたちと同じ時間を過ごすようだった。

    追記
    時間が経ってじんわりと俊郎のことばを思い出すことがふえた。すべてを知らなくて良い、一緒にいたいと思ってくれている、結婚してくれている、嫌いではないでしょう、それで良いよ、そうだよね。

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    2021年08月21日
  • 光ってみえるもの、あれは

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    本質を捉えられるようで手からするりと抜けていくような不思議な、川上弘美さん独特の世界観。

    主人公・翠は考えすぎるきらいがあるが、本質は他人へ踏み込んでいない、興味を持っていないように感じる。
    自分だけの狭ーい世界で満足しているような。
    きっとガールフレンドの水江は隣に翠がいても「一人ぼっち」に感じたろうな。

    そんな主人公こそが独りにならないのは、少しずつ普通じゃない周りの人間のお陰かな。そして彼らに大事に愛されているから、彼は彼らしくいられるという事、気がついていると良いな。

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    2021年08月21日
  • わたしの好きな季語

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    この夏我が家に突如訪れた俳句ブーム。歳時記は、勢いで買ったり、実は夫が持っていたのをチラ見したりはしたものの、かじりついて読み潰すような情熱は持てずにいる(句作をしようとしてないから当然かもしれない)。
    この本はなにか雑誌の連載の書籍化のようで、見開き一ページで川上弘美が季語をひとつとりあげてミニエッセイと例句の紹介してくれており、お手軽に季語と俳句作品に触れられて良かった。誰かのフィルターを通して語られた方が近寄りやすい。

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    2021年08月20日