川上弘美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
子供を畳んで押入れにしまったり、町内に縄文人街があったり、1月8日から2月3日まで冬眠したり。
作者の川上弘美さんとイラストの山口マオさんの「あとがきのような対談」によると、「椰子・椰子」は川上さんが実際に見た夢から始まったものだそう。
どんなに変てこなことでも、そういうものだと受け入れてしまう、まさしく夢の世界。
山口マオさんのイラストがあまりにぴったり、というか、文章+絵でどちらか1つだけでは成り立たない、またちがう夢の世界が紡ぎ出される。
不可思議で不条理で、でも居心地はわるくない、夢の世界を起きながらにして見ている気分になりました。 -
Posted by ブクログ
人と、人にあらざる聖なる異類。
読む前は梨木香歩の「家守綺譚」を思い浮かべたのだけど、読んでいるとちょっと違う。
「家守綺譚」は人と人にあらざるものは、互いにあまり違いを感じていないように思う。
ちょっとした個性程度の差。
この短編集に収録されている作品の中で、人と人にあらざる者は融け合い混ざり合っても、決して同化はしない。
けれども、人が確固とした人であるのかというと、それもまた違う。
本人が人と言っているだけで、それは私たちが通常知っている人とは明らかに違う。
限りなく狐に近い人。生きる気力を取り戻すためにモグラのコートのポケットに入り込む人。壁の漆喰を食べる人。
それでも、人と人にあら -
Posted by ブクログ
【本の内容】
女にはもてるのに人間界にはなじめなかった蛸、七世代前の先祖にひとめぼれする二百歳の女、曽孫の前に突如現れ、放浪の果てに自然神となった曽祖母、男の家から海へと帰る海馬―。
人と、人にあらざる聖なる異類との交情を、説話的な要素と日常のリアリティを融合させて描いた玉手箱のごとき8つの幻想譚。
[ 目次 ]
[ POP ]
うつし世の小路と地続きに異界の小路が網の目のようにはしっている。
そんな感じ。
ふたつの世界は「越境」するまでもなくすでに混ざりあっていて・・・電車のドア付近に立っている彼、狐かもしれない。
斜め向かいの席の彼女、鼬かもしれない・・・
[ おすすめ度 -
Posted by ブクログ
【本の内容】
いつも束の間の逢瀬しかできない2人。
年末の一日、初めて過ごした2人だけの長い時間。
鍋を準備して、「おかえり」「ただいま」と言い合って(「冬一日」)。
ショウコさんと旅に出る。
電話の最中に「なんかやんなっちゃった」と声が揃ってしまったのだ(「春の虫」)。
いつか別れる私たちのこの一瞬をいとおしむ短篇集。
[ 目次 ]
[ POP ]
ふわふわした感じのする12の作品。
どこか悲しいのに暖かくもあり、読み終わるとなんだか人恋しくなる作品もあり。
川上弘美という作家さんの作品はいつもいろんな感情を渦巻かせている。
読んでて忙しい。
それすら心地よいのですけ