川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
休日のちょっとした遠出の電車と喫茶店とで読みきった。
川上さんの文章、気持ちがすかすかして好き。別れる話がなんとなく多い気がしてつっかかったけれど、別れなかったとしても別れたとしても、川上さんの描く人たちはみんな清々してて好き。あと、ちょっと不思議でほんわかしてて、切ないのに、傷を知らないふりして、涼しい顔するのも好き。川上弘美の読後感が好きなのかもしれない。
少し不憫なこととか、ありえないことが起きても、まあしょうがないよねって受け止める。恋をしてじたばたして、恋にならなくてざわざわしても、そのあとはさっぱりしてる。どの短編のみんなもきっと、この先をずーっと進んでいけばどこかでハッピーエンドが待ってるんだろうなって思える。
修三ちゃんに叱られたいし、染谷さんと河原で石拾いしたいし、山口さんが口笛を吹いて部屋に遊びにきてほしい。
川上弘美、さすがにそろそろ飽きてきたかな?と思ったけど、全然良くて、ぐんぐん読んじゃった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ12編のアンソロジー。
どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
その中でも特に好みだった2つについて書きたい。
『藁の夫』
2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。
『逆毛のトメ』
シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚かな人間の頭に邪鬼の形相のトメがいることを想像してそのコミカルさに取り憑かれる。気づけばトメのことが好きになっていた。 -
Posted by ブクログ
ニシノユキヒコが主人公(?)ながら、ニシノユキヒコの心情は一切記されておらず、ニシノと交流したさまざまな女性たちの視点で、ニシノが語られます。
1番最後に配された「水銀体温計」で、ニシノの少し屈折した女性への態度の背景が明かされ、その一つ前の章「ぶどう」で、唐突に訪れた彼の冒険の終わりが綴られます。姉への気持ちを明確にするのが怖かった、ということなのでしょうか?ただ、思えば、1番最初の「パフェー」で成仏しきれず他の女の元へ行くあたり、もうその浮ついた性分はもう自制の効く類のものではなく、生まれついた性質なのでしょうか。
ニシノと女の儚い関係の中の穏やかな熱情に、なんだかやつされるような想いがしました。愛って少しドロドロとしていて暑苦しいけれど、恋はサラサラ、キラキラしていて、ひだまりのようです。愛するって、きっと一定程度は能動的なものなんですよね。ニシノは、そのドロドロが怖くて、心の全部を相手に委ねないように、愛さなかったのかなと思います。
愛したいのに、愛せない、その絶望と孤独がわかるが故に、ニシノが可哀想で可哀想で、ドキドキしてしまいました。その可哀想が、多くの女を虜にするのでしょうか。 -
Posted by ブクログ
幸せなのにさみしい。
主人公の多くの「私」には名前が出てこない。それがよけいに自分に語られ、問いかけられているようだった。
心のままの感情を持ってしまうことへの辛さ、心細さとか、人との絡まる感情は、どうにも消化できない。
多くは「ままならぬ関係」だったりするが、それでもふふっと笑えたり、不確かなものだって存在するんだと、人の心の儚さが、ずしっと刺さった。
無機質でお人形さんみたいに感じる登場人物…そういう、ゆめうつつのところが、それはそれで好きなんだと思う。笹蒲鉾を持ってタマヨさんに会いに行った「私」は、私でもあった。空想の中で会いたい人に会いに行く、つい移入してしまう。
「夜の子供」「冷たいのがすき」が特に印象に残った。
表題作「おめでとう」西暦三千年一月一日のわたしたちへ、世紀末で孤独に生きる女性。時々会う「あなた」。
永遠に漠然と憧れを抱いていたかもしれなかった。しかし、仮に永遠が存在するなら、とてもこわい、しんどいものだと思わされた。とても好きな短編だと思いました。