川上弘美のレビュー一覧
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ネタバレタイトル、すごく明るい意味だったんだなぁ
「今度は二人で一緒に、同じ森に行きましょう」って、最上級の愛だ 愛おしさだ
ままならない
人生の中には生きているだけで選択肢が山ほどあって、自分だけの選択ではなくて環境で決まってしまうことや、後になってからそれが選択肢だったのだとわかることもある。どういう道を選んでいても間違いではないし、どうなるかは誰にもわからない。自分でどうにかできる部分もあるし、できない部分もある。
よくあるゲームみたいに、ハッピーエンドルートとバッドエンドルートの2つしかゴールがないのと人生はやはり違っていて、不満もあるけどまあ、幸せかな、みたいなそういう人生になっていく。
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ネタバレある商店街の魚屋、そこに少し関わる人たちと、更にその人たちにちょびっと関わる人たちのそれぞれの物語11編。
こういう、ある場所でのさまざまな人のあれこれ的な連作短編が好きだ。
電車で長距離移動すると、見える家々のほぼすべてに人が暮らし、それぞれにそれぞれの時間があることに、うわーって気持ちになるけど、それの規模小さく高解像度で見ている感じ。
商店街で少しだけ関係している人たちにも、当たり前だけどそれぞれに色々なことがあり、他の人が思いもよらないことを経験し、自分が1度も気にしたこともないことを考えながら生きている。
それらを俯瞰的にみることは、通常ない。それぞれ色々なことは事実としてわかって -
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さらっと(それでいてわくわくして)読んだが、今までの中で一番心に残ったエッセイだと思う(著者の中で)。
川上弘美さんが小説を書かれるとき、まずはじめに全体の「雰囲気」を決められていることを知った。
内容や筋道については曖昧なままでいいのだが、雰囲気が決っていないと書き始められないと。
笑えばいいのか悲しめばいいのか判断のつかない微妙な、
道端の空き缶を蹴ってみたが外れて気まずい、
世の中の全部を許してしまいたくなるうきうきした、
例えば、そういう様な雰囲気。
著者の小説を読むと、それぞれ独特の空気がある、と伝わってくるのはそのせいなのだと思った。ふわふわして掴みどころがなく、時々奇妙でそれ -
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わたしには、1〜6までと7〜13では違うお話のように思えました。前半登場人物が増えていき取り止めもない日々が穏やかに過ぎていってとても心地よく感じました。後半になりオトヒコさんとユリエちゃんがいよいよ親密になって鈴本が現れてから、不思議なことがよくおこるようになるからかもしれません。やっぱりミドリ子は紅郎をそういう意味で好きだったということなのでしょうか、ふわふわしてわからないことがあるままのところが良かったです。
「ほんとはしっかりしてるんだけどね。しっかりしない自分が嬉しいみたいね」というユリエちゃんの言葉はまさに恋に恋する初期の頃を言い当てているように感じました。
余談ですが -
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穏やかな秋の日、お日様があたるお気に入りの場所でこの本を読むと、ほっこり癒されます。
解説でも書かれていますが(串間努さん著)、「川上さんにはもっと人にいえないような体験がきっとあるに違いないと思いますが、それは私も同じなので、大人なるものそのようなことは詮索しないものなのであります」
きっと大変な半生を送ってこられたのに、「なんとなく」な日常を、さらりとありのままに表現されている。読み手のほうは、ゆるく楽しんでおられる様子に安堵し笑えてしまう。そういう言葉選び、起こる出来事を面白く捉えられてクスっと笑えてしまう。肩の力を抜かせてもらえる。
例えばこんなところ、
お葬式の帰り道、河童に会った -
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タイトルのようにふわりとしてそれでいて濃い、印象的なエッセイでした。まるで、そこにあるかのように目の前に情景がうかびました。
例えば、地下鉄の広尾の駅を上がったところに見える「逃げ森」のお話とか。本当に目の前に緑の木々が広がり、都会の空気を感じることができました。
そして、11月になると散歩に行きたくなるお話。井の頭公園での場面。小学生の鼓笛隊のお話。鉄腕アトムを演奏する楽器の音が聞こえてきそう。あったな自分もそういう、目にしたけど語らないこと。なんてことない日常なのだけど。その風景は見る人によって、希望に満ちてはつらつしたものにも、もの悲しくも、ざわざわにも映る。どのようにもとれるありのまま -
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リリ35歳。世間で言う、恵まれた結婚をしている。が、最近夫の幸夫のことがあまり好きではないと気づく。例えば、夫のふとした仕草。髭を剃るその掌の動き、とか。たてる音。はっきりとした咳払い、とか、そういう感じ。
リリは思う。そういうところが嫌いなのではない。幸夫を好きと信じてた頃はそれさえ愛していた、と。
なんなんだこの感情は?幸夫にではなく自分に向かっている感情って。
そんなころ、夜の公園をひとり歩くリリは、マウンテンバイクを飛ばしている9歳年下の暁と出会う。
夫幸夫は、リリの親友春名の猛烈な押しで関係を持つようになる。ありえないな、春名という女性。親友の夫に会った瞬間に。「リリは春名のその目 -
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川上弘美さんの作品を知ったのはまだ数年前ですが、
1993年に書かれた「神様」が…ほんわかして優しくて大好きです。
その後、2011年に「神様2011」が「あのこと」をベースにした神様の物語が書かれています。
あのこととは、2011年東日本大震災による福島原発事故。わたしは、震災のニュースを見、大きな衝撃を受けたが、原発事故のことは、あまり意識の中になかった(というか、わからなかった)。
最後の川上弘美さん自身の「あとがき」は、まるで川上さんが話しておられるような語り調で、背筋が伸びる気がした。非常に訴えを感じた。怒りと受容にも似た。
本の中の前述の「神様」の文は、原文そのまま。
後の方の「 -
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こういう乾いた恋愛ものはとても好き。語弊があるかも知れないけれど、江國香織さんの世界観とも共通するものがあるように感じた。
川上弘美さんの小説は私の場合、はまるものと世界が独特すぎてついていけないものに分かれる。この小説は完全に前者。
主人公は35歳のリリ。主婦で、夫の幸夫がローンで買ったマンションに暮らし、申し分ない生活をしている。だけど毎日が、なんとなく退屈だ。
幸夫は、リリの親友の春名と恋人関係にあり、リリもまた、マンション前の公園で知り合った9歳年下の暁と恋人関係にある。
こんなにせまい人間関係のなかで、さらにあるひとつのつながりがある。
リリはどことなく謎めいていて、感情をあまり