★5 絶不調ホームズの大冒険? オマージュ満載の痛快ドエンタメ小説 #シャーロック・ホームズの凱旋
■きっと読みたくなるレビュー
おもろい!★5
いやー、こんな小説は森見登美彦先生しか書けませんよね、最高。四畳半神話大系を読んだ時も発想力と世界観にひっくり返りましたが、今回もぶっ飛んでました。
...続きを読むあらすじとしては、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズのキャラクターたちが、ヴィクトリア朝京都ですったもんだ大冒険する物語です。
名探偵であるはずのホームズがスランプに陥り、さらに投げやりな人生を送っているところ、働けよとワトソンが尻を叩くという構造で物語が進行していく。オリジナルシリーズの様々なオマージュが仕掛けられているのですが、決してそのままミステリーにするのではなく、まるで違った作品になっているのです。
キャラクターがとにかく強烈なの。まったく覇気のないホームズにイライラしながら、ワトソンの煮え切らない態度にもソワソワ。そこにワトソンの奥様メアリの叱りっぷりがまるで鬼嫁。さらにアイリーン(ホームズのライバル探偵)と徒党を組んで頼りない男どもを追い込んでいく様子は、まぁ爆笑でしたね。
さらにモリアーティ教授も登場し、あんた敵キャラちゃうんかいと… そして一章のオチなんかはオリジナルを思い出させてくれる一幕で、これもニヤニヤがとまらなかったです。
京都を基にした舞台なんですが、全く違和感がないの。というか物語が細部までしっかり作りこんでるから、むしろ調和してるという恐ろしさで、是非このままアニメ化してほしいですね。
ストーリーとしても、さすがは先生の作品ですよ。なんつーの、物語がうねってますよ、半端ないです。そして思いもよらなかった展開なのに、なにこの腹に落ち感。なにこの終止感!
と…、詳しくは語れないのでパッションだけでごまかしています。ただ難しく考えずに物語に浸るのが吉でして、これが森見ワールドなんですよね。
素晴らしいエンタメ小説、日々疲れているひとには超おススメしたい作品でした。
■ぜっさん推しポイント
幻想的でコミカルな中にも、どこか生きづらさや満たされない気分になる本作。終章まで読むと、なぜ先生がこの小説を書こうと思ったのか、理解できたような気がしました。
誰しも理想の人生を歩めるとは限らない。いろんな生活環境や人間関係があるし、どんなに努力しても上手くいかなないことなんていっぱいある。捨て鉢になったり、人に迷惑かけてしまうこともあるでしょう。
でもやっぱり神様は見ている。その人の進んできた過程によって、それ相応の結果が伴うんだと信じたい。
明日も仕事で憂鬱な気分になっちゃうけど、目の前にことから逃げ出さずに向き合ってさえいれば、きっと楽しいこともあるし、うまくいく未来がやってくる。
夢や希望、しかし厳しい現実… その狭間にある苦痛を救う魔法みたいな何かを感じられるのです。