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ママ、ママはどうしてパパと暮らしていたの? 夢に亡くなったママが現れたのは、都が陵と暮らしはじめてからだった。きょうだいが辿りついた愛のかたちとは。読売文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
幽霊の小説だと思った。 幽霊の小説、というのはオバケが出てきてどうこう ということで済む話ではない。 "幽霊"とはどういうことか? "幽霊が出現する"という現象とは何か?についての小説。 物語のうねりを直列的に眺めるかたちではなく、 その部屋およびその部屋にま...続きを読むつわるある時間に巣食う"幽霊"についてを、あらゆる角度とあらゆる時間から暴いていく。 1ページ目から最後のページまでずっと歪な不気味さがある。 この小説を思い出すことが怖い。 この小説を怖がる時、読者のそばに幽霊がもう立っている。
都と陵は一つ違いのきょうだい。特殊な関係の親の元に育つ。ママは言葉が鋭く、自然と人を怖がらせもする、だけど魅力的で男受けは良い。 都はママが大好き。どうして子供は、母親が好きなんだろう。どんな母親だったとしても、子供は母親の全部が好きなのだ。 陵は、偶然地下鉄サリン事件の現場に居合わせ、幸い難を逃れ...続きを読むる。ママは空襲で実母を失う。それぞれが命の安全が脅かされるようなPTSDを抱える。 大好きなママが病気で亡くなってからもずっとママの夢を見続ける都。 若い頃は離れて暮らしていたが、30代半ば再び実家で一緒に住みはじめた都と陵。陵がサリン事件に出くわしてから。人の死は、遠いようで紙一枚隔て隣にあった。 都と陵の関係について、ありえないと言ってしまえばその一言だが、家庭環境が影響を及ぼした(のだろうか)。 「わたしは陵のようになりたかった。陵になって、ママに喜んでもらいたかった。でもできなかった。だからわたしこんなにも陵が好きなのかもしれない」と言っている。 強烈なママの自爆から逃れられない都は、外へ飛び出せなくて、結局、陵に向かった。 子供というのはいつかは親元を巣立つもの。肉親から離れてゆくのが自然だろう。都(陵も?)は言わば毒親のママから精神面で自立できなかった(のだろう)。 「いつもわたしと陵は裁かれている。わたしたちを知るすべての人々に。けれど、真にわたしたちを裁いてくれる者など、ほんとうはどこにも存在しない。」 重いなぁ。この時期キツイ。 だけど、こんなにも綺麗な言葉文章で描かれた物語は濁りもない真っ白い水のよう。雰囲気がすごい。 夏の夜の鳥で始まって鳥で終わる。一羽だけぽつんと浮いていた水鳥。 また夏が来る。鳥は、太く、短く鳴くことだろう。
ひとの人生に触れると実感して思い出すことがある。それは思い出だったり、生き方だったり、生と死の匂いだったり。 濃密な家族と、広義な愛の物語でした。 軽々しく時を越えていろんな場面が描かれているのに、全く不自然でなく、そこに存在しなかったわたしも、主人公たちのあたかもそばにいたように思い描くことが出...続きを読む来る。 夏のじっとりとした空気。しかし、冬になればその暑さを忘れてしまう。でもどうしてもあの夏のあの夜に戻ってしまう。 すごく読まされた、という気持ちです。 ぐいぐいと同じ沼に引き摺り込まれた気持ちでした。 時計だらけの開かずの間が開かれる時、やっと覚悟ができた気がします。 周りのキャラクターもとても魅力的で、わずかしか出てこなかったキャラクターの人生も空想します。
ある家族の、「私」から見た家族のお話し 子供の頃と今とが交差しながら進んでいく 家族みんなが素敵なんだけど、 何よりママがとても素敵 美しくて奔放で人を惹き付ける魅力のある人 人が人に対する想いが、丁寧にかかれてる
面白かったです。 あわあわとした、姉と弟の日々。 パパ、ママ、そして姉である主人公の都と、弟の陵。別々に立っているようで、とても濃密に絡まっていました。 戦中戦後や昭和の事件、昭和天皇の崩御、そして地下鉄サリン事件や地震も出てきて、姉弟のこれまでの時間の経過が描かれるのが印象的でした。降りたいときに...続きを読む降りることは、できない。でも、降りたくないときに降ろさせられる。生きるって難儀です。 好きだった、という告白はとても残酷で甘美な気がします。姉弟というものは思ったよりも近いかもしれません。 不思議と嫌悪感は全くありませんでした。 あわあわと、ぼやぼやと過ぎて行きました。
生暖かい沼へ静かに沈んでいくような感覚 女のこと 肉体のこと 見えないけどたしかに存在している部分 でもそれらを皮膚感覚で察していくような 愛おしさはどうしようもなく湧き起こる それが幸せでもあり怖くもあり 川上弘美はいつどれを読んでもその世界観に沈めてくれるから好きだ
あいかわらずの美しい日本語で描きだされる不思議な家族愛。 でも、これは女の人の物語だったなあ。読みすすめるうちに疎外感を覚えるほどに。 あと、江國香織さんのあとがきが素晴らしかった。 時折こういうあとがきがあるから、文庫版も買いたくなるんだよね。
ただただ美しい言葉の羅列が並び、そこには静謐とした雰囲気が纏っていた。禁断の行いでありながら、それを問題視にしているわけでもなく、ごく当たり前の状況、出来事として綴られている。個人的に川上弘美さんはファンタジー要素が多い印象があったけど、今作ではそれは薄らいでいて好みだった。「真鶴」と同等か、それ以...続きを読む上の傑作。
家族の物語。 55歳になった都の思い出。 心にはいつも死んだママがいる。 ママが死んでから同居をしないといって出て行ったパパがいる。弟の陵がいる。 パパと呼んでいるが実は叔父で子供の時からママと一緒にいるのでずっとパパと呼んでいる家族だ。 一緒に暮らしている陵は弟で生まれた時を知っている。 ママの...続きを読む心はいつも満たされていて、家族の中心だったが若いのに癌で死んでしまった。 最後のピクニックでママがいった。 「もうすぐあたし、死ぬのね」 「もうそれ,飽きたから、やめて」 「せっかくその気になっているのに」 「その気になってならなくていい」 「こんなにこの家で権力をふるえるのって,初めてのことなんですもの」 「あなたはいつだって、この家の一番だったでしょう」 パパは笑った。ママも私も、陵も。 「ねえ、後悔しちゃだめよ」 「何かを、してもしなくても、後悔はするんじゃない?」 陵がぽつりと言った。 「してもしなくても、後悔しちゃだめなの」 「それって、おなじようなものじゃないの」 「違うの。後悔なんかしないで、ただ生きていればいいの」 死んでいく人間の言うことはよく聞かなきゃ。ママはそう言って、おむすびを口に運んだ。 (意味を考えては、いけない) (そこから何かがもれていってしまう、あるいは入り込んできてしまうから) おれたちって、生まれてこのかたずっと、だだっぴろくて白っぽい野に投げ出されているみたいだよね。いつか陵が言ったことがある。 「たとえば荒野のように、雨風そのほかこっちにつきささってくる攻撃的なものから無防備な場所じゃなくて、なんだかぼんやりした抽象的な感じの場所」 この白い野のことを時折思うようになった。 その光景は次第に形を変えてきたが、やはり果てのない野だった。 陵と都が住んでいた家は古くなって取り壊された、今はマンションで隣り合わせに済むようになった。 お互いに訪ねあって暮らしている。 恋人を愛することと陵を愛することは、まったく違うことだった、けれど、その違いをわたしはうまく言葉にできない。誰かに聞かれる機会もないから、言葉にする必要もない。 パパとママの関係も陵と都の関係も世間から見るといびつな家族の形をしている。 その家族はそれでも、好きだといいあったり、同じベッドでねむっている。 しかし都はいつも白く広がっている野の風景を見ている。 陵は会社に行き都はうちでイラストを描く、世間の秩序に沿って暮らしているが、家族という絆とは違った結びつきの中で漂っている日々が、ママも思い出とともにたゆたうような言葉で読者を浮遊させる。 一気に読ませる不思議な魅力は相変わらず川上さんのものだ。
テーマは、家族と愛。愛は近親相姦と世間で呼ぶ類のものかもしれないけれど、卑猥な感じではなく、読んでいると、愛の変形系の一種としてナチュラルにスムーズに受け入れられる。主人公の都の両親は、実の兄妹で、都も弟の陵に恋愛感情を持つ。都の母親「ママ」はさばさばしていて冷たいところがあるけれど、どこか人を惹き...続きを読むつける魅力を持った女性。世間から見れば、都の家族は歪んで、ねじれている。いとこの奈穂子はアメリカ帰りの帰国子女で、都から見ればいつも笑顔なように見えて、少しも笑っていない無表情にも見える女の子。(「奈穂子は笑っていた。あるいは、無表情でいた。」)都の育ての父親は、時計コレクターで、都の弟の部屋には掛け時計がたくさんあって、そして南京錠がかけられ開かずの部屋になっている。 冷静にみたら、えーそんなんある?って思うくらい風変わりな家族で風変わりな暮らしだけど、読んでいるとまあそれもありかと思う。そして自分の外への寛容度が高まって、自分自身への寛容度も高まる感じがした。 よく、話の細部まで理解できなかったように感じる。自分の心の中がさざ波が立っているからなのか、それとも人生の経験不足からなのか。またいつの日かゆっくりと読み返してみたい。
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