【感想・ネタバレ】水声のレビュー

あらすじ

ママ、ママはどうしてパパと暮らしていたの?
夢に亡くなったママが現れたのは、都が陵と暮らしはじめてからだった。きょうだいが辿りついた愛のかたちとは。読売文学賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

家族についての、物語。
家族とは、何だろうか。
たとえば、結婚している男女、血のつながり…。
でも、そうではなくて、呼び名はどうであれ、一緒に暮らしているなら、それは家族なんだと思う。
誰と一緒に暮らしたいか、誰と家族になりたいかは、それぞれの選択だ。
ママは、武治さんではなくパパを選び、ママ曰く、パパとはそれ以上の関係ではないらしいけれど、兄妹としてではなく、パパママとして家族になった。
ママはとても魅力的で、この家族の物語の中心に、ママがいる。

解説で江國香織は、1986年の章は音楽のようだ、と言うけれど、まさにその通りで、この小説全体も、現在と過去を行き来し、まるでフーガのようなのだ。
同じ主題が、何度も変奏されて繰り返される。
ママとパパ、都と陵。愛人のいたおじいちゃま、ママと武治さんの関係。奈穂子は誰の子どもなのか。

そしてふと振り返って、題名について考えてみた。
水声。水が流れる音。
なぜこの題名なのか。最初は分からなかった。多分、今でも分からない。
でも、すべてがママに向かって流れているような気がしたのだ。海へ向かって水が流れていくように。
むかし陵が使っていた部屋を南京錠で閉めたって、止めることはできない。
止める必要さえ感じないような、何か圧倒的なもの。
でもそれは、強く狂おしいものではなくて、もっと緩やかで穏やかな気持ちだ。
何かを決めつけたり、非常識だと非難したり、そういうものから解放されたところに、とてもシンプルな「好き」という気持ちがあるような気がする。

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2024年10月03日

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幽霊の小説だと思った。
幽霊の小説、というのはオバケが出てきてどうこう
ということで済む話ではない。
"幽霊"とはどういうことか?
"幽霊が出現する"という現象とは何か?についての小説。
物語のうねりを直列的に眺めるかたちではなく、
その部屋およびその部屋にまつわるある時間に巣食う"幽霊"についてを、あらゆる角度とあらゆる時間から暴いていく。

1ページ目から最後のページまでずっと歪な不気味さがある。
この小説を思い出すことが怖い。
この小説を怖がる時、読者のそばに幽霊がもう立っている。

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2022年01月25日

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ネタバレ

川上弘美ではもちろん「センセイの鞄」が一番好きだけど、これはそれと同レベルくらい切なかった。ありそうでなかった恋愛の設定だ。
お互いを強く求め続けた二人の気持ちは、普通の恋愛とは言えない。今、性同一性障害とか認知され始めているけど、こういう人たちももしかしたら世の中には…?ちょっと考えにくいし、存在するとしても多分、社会の中で「自分たちを認めてください」と声をあげることはまずしないだろうと思われる。ひっそりと生きるというか…。
そういうこともアタマをかすめつつ、でもあくまでも「物語」として、感情移入しながら読める。
「ママ」のキャラクターも素晴らしい。
多くの人が、彼女のように生きたいと思うのではないかな。明るく、日々の些事に振り回されることはなく、どちらかと言うと自分が周りを振り回す方。でも決して不快感を与えるわけではなく、人を惹きつける。そして楽しかった、と言って死んでいける。
主人公はそんな「ママ」の思い出に耽りつつ、ゆっくりと年をとっていく。人の死も、年をとることも、生きていく限り心から追いだすことができない誰かに対する「想い」も、決して抗うことはできない、というその事実に、じんわりと感じるものがある。

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2021年08月08日

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都と陵は一つ違いのきょうだい。特殊な関係の親の元に育つ。ママは言葉が鋭く、自然と人を怖がらせもする、だけど魅力的で男受けは良い。
都はママが大好き。どうして子供は、母親が好きなんだろう。どんな母親だったとしても、子供は母親の全部が好きなのだ。
陵は、偶然地下鉄サリン事件の現場に居合わせ、幸い難を逃れる。ママは空襲で実母を失う。それぞれが命の安全が脅かされるようなPTSDを抱える。

大好きなママが病気で亡くなってからもずっとママの夢を見続ける都。
若い頃は離れて暮らしていたが、30代半ば再び実家で一緒に住みはじめた都と陵。陵がサリン事件に出くわしてから。人の死は、遠いようで紙一枚隔て隣にあった。

都と陵の関係について、ありえないと言ってしまえばその一言だが、家庭環境が影響を及ぼした(のだろうか)。
「わたしは陵のようになりたかった。陵になって、ママに喜んでもらいたかった。でもできなかった。だからわたしこんなにも陵が好きなのかもしれない」と言っている。
強烈なママの自爆から逃れられない都は、外へ飛び出せなくて、結局、陵に向かった。
子供というのはいつかは親元を巣立つもの。肉親から離れてゆくのが自然だろう。都(陵も?)は言わば毒親のママから精神面で自立できなかった(のだろう)。
「いつもわたしと陵は裁かれている。わたしたちを知るすべての人々に。けれど、真にわたしたちを裁いてくれる者など、ほんとうはどこにも存在しない。」
重いなぁ。この時期キツイ。
だけど、こんなにも綺麗な言葉文章で描かれた物語は濁りもない真っ白い水のよう。雰囲気がすごい。
夏の夜の鳥で始まって鳥で終わる。一羽だけぽつんと浮いていた水鳥。
また夏が来る。鳥は、太く、短く鳴くことだろう。

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2021年01月16日

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ひとの人生に触れると実感して思い出すことがある。それは思い出だったり、生き方だったり、生と死の匂いだったり。

濃密な家族と、広義な愛の物語でした。
軽々しく時を越えていろんな場面が描かれているのに、全く不自然でなく、そこに存在しなかったわたしも、主人公たちのあたかもそばにいたように思い描くことが出来る。

夏のじっとりとした空気。しかし、冬になればその暑さを忘れてしまう。でもどうしてもあの夏のあの夜に戻ってしまう。

すごく読まされた、という気持ちです。
ぐいぐいと同じ沼に引き摺り込まれた気持ちでした。
時計だらけの開かずの間が開かれる時、やっと覚悟ができた気がします。

周りのキャラクターもとても魅力的で、わずかしか出てこなかったキャラクターの人生も空想します。

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2020年07月23日

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ある家族の、「私」から見た家族のお話し
子供の頃と今とが交差しながら進んでいく
家族みんなが素敵なんだけど、
何よりママがとても素敵
美しくて奔放で人を惹き付ける魅力のある人

人が人に対する想いが、丁寧にかかれてる

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2020年03月15日

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面白かったです。
あわあわとした、姉と弟の日々。
パパ、ママ、そして姉である主人公の都と、弟の陵。別々に立っているようで、とても濃密に絡まっていました。
戦中戦後や昭和の事件、昭和天皇の崩御、そして地下鉄サリン事件や地震も出てきて、姉弟のこれまでの時間の経過が描かれるのが印象的でした。降りたいときに降りることは、できない。でも、降りたくないときに降ろさせられる。生きるって難儀です。
好きだった、という告白はとても残酷で甘美な気がします。姉弟というものは思ったよりも近いかもしれません。
不思議と嫌悪感は全くありませんでした。
あわあわと、ぼやぼやと過ぎて行きました。

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2018年10月15日

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ネタバレ

水、と、鳥。崩壊と変化を、モチーフにのせて描いている。崩壊は「死」も含む、ただ変化しているようで、根本は変化していないのかも。
肌を重ねる様子を、太刀魚に譬えて描くだろうか…言葉がきれいで驚いた。

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2025年03月30日

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生暖かい沼へ静かに沈んでいくような感覚

女のこと 肉体のこと 見えないけどたしかに存在している部分 でもそれらを皮膚感覚で察していくような 愛おしさはどうしようもなく湧き起こる それが幸せでもあり怖くもあり
川上弘美はいつどれを読んでもその世界観に沈めてくれるから好きだ

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2023年03月02日

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あいかわらずの美しい日本語で描きだされる不思議な家族愛。
でも、これは女の人の物語だったなあ。読みすすめるうちに疎外感を覚えるほどに。

あと、江國香織さんのあとがきが素晴らしかった。
時折こういうあとがきがあるから、文庫版も買いたくなるんだよね。

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2023年02月26日

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ネタバレ

許されない関係が清流のように紡がれていました。兄妹間モノが苦手でなければ、読んで損はないと思います。

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2021年12月03日

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ただただ美しい言葉の羅列が並び、そこには静謐とした雰囲気が纏っていた。禁断の行いでありながら、それを問題視にしているわけでもなく、ごく当たり前の状況、出来事として綴られている。個人的に川上弘美さんはファンタジー要素が多い印象があったけど、今作ではそれは薄らいでいて好みだった。「真鶴」と同等か、それ以上の傑作。

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2021年07月14日

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ネタバレ

両親(兄妹、でも肉体関係なし)のもとに生まれた近親相姦姉弟(肉体関係あり)の生まれてから約50年間の話。戦後から昭和の終わり、バブル崩壊、松本サリン、阪神淡路大震災など当時の大きなニュースが挟まれるのが特徴的。登場人物が皆どこか不思議だけれど、純文学。
やはり文章が美しい。

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2020年08月12日

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家族の物語。
55歳になった都の思い出。
心にはいつも死んだママがいる。
ママが死んでから同居をしないといって出て行ったパパがいる。弟の陵がいる。
パパと呼んでいるが実は叔父で子供の時からママと一緒にいるのでずっとパパと呼んでいる家族だ。
一緒に暮らしている陵は弟で生まれた時を知っている。

ママの心はいつも満たされていて、家族の中心だったが若いのに癌で死んでしまった。

最後のピクニックでママがいった。
「もうすぐあたし、死ぬのね」
「もうそれ,飽きたから、やめて」
「せっかくその気になっているのに」
「その気になってならなくていい」
「こんなにこの家で権力をふるえるのって,初めてのことなんですもの」
「あなたはいつだって、この家の一番だったでしょう」
パパは笑った。ママも私も、陵も。
「ねえ、後悔しちゃだめよ」
「何かを、してもしなくても、後悔はするんじゃない?」
陵がぽつりと言った。
「してもしなくても、後悔しちゃだめなの」
「それって、おなじようなものじゃないの」
「違うの。後悔なんかしないで、ただ生きていればいいの」
死んでいく人間の言うことはよく聞かなきゃ。ママはそう言って、おむすびを口に運んだ。


(意味を考えては、いけない)
(そこから何かがもれていってしまう、あるいは入り込んできてしまうから)
おれたちって、生まれてこのかたずっと、だだっぴろくて白っぽい野に投げ出されているみたいだよね。いつか陵が言ったことがある。
「たとえば荒野のように、雨風そのほかこっちにつきささってくる攻撃的なものから無防備な場所じゃなくて、なんだかぼんやりした抽象的な感じの場所」

この白い野のことを時折思うようになった。
その光景は次第に形を変えてきたが、やはり果てのない野だった。

陵と都が住んでいた家は古くなって取り壊された、今はマンションで隣り合わせに済むようになった。
お互いに訪ねあって暮らしている。

恋人を愛することと陵を愛することは、まったく違うことだった、けれど、その違いをわたしはうまく言葉にできない。誰かに聞かれる機会もないから、言葉にする必要もない。


パパとママの関係も陵と都の関係も世間から見るといびつな家族の形をしている。
その家族はそれでも、好きだといいあったり、同じベッドでねむっている。
しかし都はいつも白く広がっている野の風景を見ている。

陵は会社に行き都はうちでイラストを描く、世間の秩序に沿って暮らしているが、家族という絆とは違った結びつきの中で漂っている日々が、ママも思い出とともにたゆたうような言葉で読者を浮遊させる。

一気に読ませる不思議な魅力は相変わらず川上さんのものだ。

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2020年01月13日

Posted by ブクログ

テーマは、家族と愛。愛は近親相姦と世間で呼ぶ類のものかもしれないけれど、卑猥な感じではなく、読んでいると、愛の変形系の一種としてナチュラルにスムーズに受け入れられる。主人公の都の両親は、実の兄妹で、都も弟の陵に恋愛感情を持つ。都の母親「ママ」はさばさばしていて冷たいところがあるけれど、どこか人を惹きつける魅力を持った女性。世間から見れば、都の家族は歪んで、ねじれている。いとこの奈穂子はアメリカ帰りの帰国子女で、都から見ればいつも笑顔なように見えて、少しも笑っていない無表情にも見える女の子。(「奈穂子は笑っていた。あるいは、無表情でいた。」)都の育ての父親は、時計コレクターで、都の弟の部屋には掛け時計がたくさんあって、そして南京錠がかけられ開かずの部屋になっている。
冷静にみたら、えーそんなんある?って思うくらい風変わりな家族で風変わりな暮らしだけど、読んでいるとまあそれもありかと思う。そして自分の外への寛容度が高まって、自分自身への寛容度も高まる感じがした。
よく、話の細部まで理解できなかったように感じる。自分の心の中がさざ波が立っているからなのか、それとも人生の経験不足からなのか。またいつの日かゆっくりと読み返してみたい。

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2020年01月09日

Posted by ブクログ

この本の空気は、江國香織の書くものに似ていると思った。
家族は、一緒に暮らせば暮らすほど思い出が増えていく。
歴史のようなもの。水の流れのように、とどまることを知らない。
思い出を共有し過ぎた姉弟の、愛の物語。
優しすぎて、深すぎて、なんだか泣けてくる。

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2018年07月29日

Posted by ブクログ

終始ふわふわしていて、タイトルじゃないけれど水の中にいるような雰囲気が流れる小説。
手っ取り早く言えば姉弟の近親相姦のお話なのかもしれないけれど、そういう枠に当てはめるのは何だか違和感がある。
独自の愛、独自の家族感、というか。
ひとつの夫婦やカップルにはそれぞれの形がある。というように、この2人はこの形なのだろう、と妙に思わされてしまうのだけど、とてもしっくり来るわけではないというか。。

難しいな。笑

実はけっこう前に読み終えていた作品で、タイムラグがあるので感想をつづる感覚も若干遠いのだけど、時系列が行ったり来たりしながら、1組の姉弟とその母と父(その両親にも1つのいわくがある)を中心に描かれている物語。
1969年から、2014年にいたるまで。
かつて少年少女だった姉弟は50代になり、そして…。

川上弘美さんの小説を読むとなぜか縁側があるこぢんまりとした日本家屋が浮かぶ。そういう描写は無いのだけど。不思議。静かで、美しい文体だからだろう。

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2018年07月18日

Posted by ブクログ

川上弘美さん特有の艶っぽい文体で綴られるひとつの愛と絆のかたち。ともすればドロドロとしてしまいそうなのに、上品さを保っている。世間一般の価値観ではありえない関係なのに『こういうのもアリかもなぁ。人生の正しさなんてあるようでないんだよなぁ』と、読み進めるうちに素直に彼らを肯定してしまう。その感覚が心地良かった。

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2018年01月20日

Posted by ブクログ

きれいな物語だった。川上弘美さんの小説が好きなのは、解説で江國香織さんが書かれているように、そこにゆるやかな肯定があるからかもしれない。
許さないことや否定することが流行っている中で、そのゆるやかな肯定が懐かしく温かく優しく感じられる。

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2018年01月16日

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ストーリーや設定だけを説明しようとすると
なんだか、納得というか、なぜかなと不思議な気持ちになるけど
淡々と静かに受け入れてしまう川上さんの小説
ちょっと心が疲れちゃうけど、嫌いじゃないんだよね

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2017年10月08日

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ネタバレ

不自然といわれるものの自然さを描くときにこの作者は生き生きとするように感じる。気持ちの動きを普通に感じさせる力。

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2017年09月14日

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「昔」の描写にとてつもない郷愁を感じるのはなんなんだろう。
どこか遠くにある自分の懐かしいものを見せられているような気持ち。
どんな話なのかと言われるとうまくまとめて伝えることができにくいのだけど。
きょうだいの性愛が含まれていても
「そういうものもあるだろう」
という、なんというかストンとくるものがあるのは川上さんの書き方ゆえなのか。

「昔の話ができるのは、一緒に昔を見た人がそばにいるからだ」

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2017年09月11日

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ネタバレ

人間は70%が水でできてるっていうけど、相手と一つになることを水が混じり合う様に例えていた。境目がなくなる感じとか、一つになることが当然のような感じとか。周りがどう、とかではなくて、馴染むか馴染まないか、なんだなと。まさに、水の様に流れていく文章。複雑な登場人物関係のはずなのにそれを感じさせないのがすごい

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2025年07月28日

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姉弟の話。母が亡くなり、父が別の家に移っても、幼少期から過ごした家を離れずに2人で暮らしている。家族を異性として好きになる人がいることは知っているけど、自分の感情として理解することはできない。でも、本人達がお互いそれでいいなら悪いことではないとも感じるし曖昧なところ。周りの人に裁かれている、という一文が最もしっくりきた。

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2023年09月22日

Posted by ブクログ

水声ー水の流れる音。水は止まらずに流れるが、物語はその音を意識させず、時に内面を表し、姉弟の行為に対する一般論を遠ざけた。時計もそうか。時を刻みながら、回想で歪む時系列を象徴する。常識とは無関係に、ただそこにあり、本人たちのみが理解し得る関係性。姉弟の行為にどのような意味があるのか、彼らは考えないようにした。読み手は考えるべきだろうか。登場人物に自らを重ねても、読み手はその感情を想像し得ない。

川上弘美は、食べる事をとても美味しそうに描く作家だと思う。そんな彼女が描く非日常のドラマだから、共感できないとどんよりした気持ちになりそうだが、決して共感は出来ず、ただ眺めるだけ。

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2022年01月04日

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ネタバレ

いつだって家族の中心にいたママが
病気になって死んでいくまでと、
都が本当に愛していた人は、弟の陵だったこと。

時々尋ねてきてくれる武治さんのこと。
パパは本当のパパではなくて、
ママの兄だったこと。

互いを思い合う姉と弟。
その思いは恋を超えている何か。

p39ママが
都たちが子供の頃の話をしているとき
当時は理解できなかったけれど、なんとなくママがわざとふざけているようにわたしは感じられた。

後年、ママは、子供を育てるなんてこと、不真面目にでもやらなきゃ、たまらない苦行だわよって打ち明けて

じゃあ、わたしや陵を育てるのも苦行だったのかと都が聞けば
いいえ、苦行じゃなかったわ。だって、不真面目に育てたからね。

って言うところが印象的で
粋なママだなあって、面白かったなあ。

自分とはあまりにもかけ離れている状況で
なんだかあんまり共感はできないのだけど
彼らの心情や文章の作り方書き方が絶妙で
うまいなあ、って。本当にすごい。

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

家族とは何なのか、何とも不思議な感覚に囚われる。川上さんの文章は美しくて、すうっと、それこそ白い広野をあちこち彷徨いながら読み進め、そして読後は何ともむず痒い。内容は正直苦手だが好きな小説だった。

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2021年06月03日

Posted by ブクログ

血縁の中に潜む声をすくい上げるような丁寧な文体。
しかし、現在の男女が50代でなお、なんとも密やかな恋を交わしている点は、リアルストーリーとしては頭に描き辛い。

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2020年02月24日

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ネタバレ

互いのことを愛している姉弟と、その家族にまつわる話。兄弟に性愛を感じるってことに奇妙さを感じてはいたが、最後には、別に何ということはないような気もした。読後感が不思議だ。

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2019年10月05日

Posted by ブクログ

2017/08/26
ふわふわとした小説だった。
ママ、サリン事件、弟、チェルノブイリ、夢、がん、父親、パパ、そして死。
夢か現実かよくわからないその狭間を行ったり来たりしているような感覚。
なんだか江國香織みたいな本だなと思っていたら解説書いてた。

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2017年08月26日

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