川上弘美のレビュー一覧
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川上さんは、何時も不思議な話を書く人ですが、その中でも"有り得ざる者”や”有り得ざる事"が出てくる「蛇を踏む」などの作品と、ちょっと変わった人々を主人公にする「センセイの鞄」のような作品があるようです。
これは、そういう意味では「センセイの鞄」の系列です。
例によって、なんだかフンワリした感覚に浸ってしまいます。所々ではニマニマと笑い出してしまいます。そして、時に切なくなります。
他の人の評価を見ると、やはり極端に割れてしまいます。リアリティを求めてしまうとダメでしょうね。こんな高校生は居ないし、周りの人物も変過ぎます。川上さんの作品は小説と言うより"物語& -
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短編4作を収録しています。
「物語が、始まる」は、主人公の女性が公園の砂場で男の「雛型」を拾い、育てる話です。やがて「三郎」と名付けられた雛型と彼女との間で少し奇妙なラヴ・ストーリーが展開されていきます。
「トカゲ」は、マナベさんという近所の主婦から、幸運の「座敷トカゲ」を授かったカメガイさんの話です。トカゲはヒラノウチさんの家に預けられ、急速に成長していきます。
「婆」は、主人公の女性が一人の老婆に手招きされ、彼女の家で奇妙な時間を過ごす話です。最後の「墓を探す」は、寺田なな子が、父親の霊に促された姉のはる子に付き添って、先祖の墓を探す話です。
著者の作品には、どこか現実感の欠如した -
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新聞連載されていたころ、毎日楽しみに読んだ作品だ。
古書店で見かけて、読みたくなった。
上巻が手に入らなくて、中巻から、となってしまったけれど。
でも、連載がまとまると、やはり集中して読むことができて、印象が変わるものだなあ、と思う。
中巻は第四の夜と、第五の夜。
第四の夜には、さよと仄田くんは、別々の世界にいる。
そこでさよは若い日の両親に出会い、仄田くんはこちらの世界の自分とは全く違う、完全無欠な男の子になっている。
二人とも、それぞれ、自分の中の荒れ狂う気持ちに気づいていく。
第五の夜では、さよと仄田くんのウバたちとの戦いが描かれる。
こちらの世界のモノたちに命を与え、育てる一方で、イ -
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内容(「BOOK」データベースより)
かりん、という琺瑯の響き。温泉につかったあと、すっぴん風に描く眉。立ち飲みで味わう「今日のサービス珈琲」。四十八歳、既婚者で「中途半端」な私が夢中になった深い愛―さりげない日常、男と女の心のふれあいやすれ違いなど、著者独自の空気が穏やかに立ち上がる。虚と実のあわいを描いた掌篇小説集。
何処がどうという訳では無いのだけれども、この淡々とした文章でさらりと書かれた短編が沢山入っています。もっと膨らませて沢山本出せそうだなあと凡人は思ってしまいますが、出し惜しみせず書けるのは才能の成せるわざか。
どの話も落ちは無いし、哀しくもうれしくもない話ではありますが、な -
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17/04/15 (28)
ガールズトークは答えを導いてほしいわけではない。ただ単純に話を聞いてほしいだけ。話を聞いてもらっているうちに自分で答えが分かるもの。分かる、というか気づくというか。ほんとは初めから答えは自分のなかにある。気づかないように見ないようにしているだけで。
わかったつもりでいて全然ほんとうはわかっていないこと。気づいてしまったら痛みを伴うこと。人生て、なんて複雑で単純で深くて浅いんだろうね。
・「ぷんぷんですか」
「ぷんぷんの最上級ね」
「ああ、今夜は家に帰りたくないです」
わたしは訴えた。すると土井母はひとさし指を振りながら、
「でも帰らなきゃならないのよね。帰ると