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「いままでで一番多く足を踏み入れた店は本屋、次がスーパーマーケット、三番めは居酒屋だと思う。なんだか彩りに欠ける人生ではある」。春夏秋冬、いつでもどこでも本を読む。居酒屋のカウンターで雨蛙と遭遇したかと思えば、ふらりとでかけた川岸で、釣竿の番を頼まれもする。まごまごしつつも発見と喜びにみちた明け暮れを綴る、深呼吸のようにゆったりとしたエッセイ集。
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Posted by ブクログ
表題「ゆっくりさよならをとなえる」が大好き。 思わず朗読してしまった。それから幾度となく朗読するのが気に入っている。 川上弘美氏にはいつも「そのままで良いんだよ」と言ってもらっている。 精神の安定のために川上氏のエッセイは側に置いておく。
一編が文庫3ぺージに収まる長さで、ほっと心が休まるエッセイ集。 あ~そうですそうですと、思い当たるようなちょっとした出来事や、出先で見聞きしたことなどが書いてある。 中でも川上さんが引用されている本は、読みたくなってしまう。 好きな食べ物は飽きるまで食べる、なんかそのこだわりが良く分かる。私も米粉...続きを読むパンを卒業して今は塩バターパンに凝っている。 どこを読んでも、川上さんの人柄がにじみ出ている。拘らない楽そうな生き方や、作家で主婦でお母さんの、ゆったりした毎日が微笑ましい。 身近なものに向ける視線もユーモア含みのほっとする文章が納まっている。 " 織田作之助の「楢雄は心の淋しい時に蝿を獲った」にふれ、そうやって楢雄は自分の不器用な生をめいっぱい喜んでいたんじゃないだろうか、その人の奥底も知らずに、と思う。 少し淋しかったので風呂場に潜んでいた蚊を潰した。” 言葉で書いてある「あやとり」をやってみる。 そして再び小説に、もどる。安らかさとは正反対のところにある営為に。正反対にあるからこそ、いっそのこと安らかなのかもしれない、営為に。 博物館に行ったり、古本屋をめぐったり、昼顔を見たり、漫画の欠けた巻が近所ではどこにもないので、電車に乗って探しにいく。 あてもなくのんびりと電車に乗って隣りの町に行くことを信条としている私の人生が、たった一冊のマンガによってすっかり血走ったものになってしまった。 ”「田紳有楽」という本を借りた。仰天したままその日のうちに本を読み終えた。「すごいね」とマリ子さんに言うと、マリ子さんはエヘへと笑った。以来私は「田紳有楽」という本を愛してやまないのだが、いまだにその全貌をうまく把握することができない。なんだかわからないけれど、小説ってものは、やはり凄いな、と私は思ったのだ。” 数えてみれば全部で59編あった。218ページにそんなに入っているのに、楽しく暖かい。 最後に詩のように日々の生活から切り取った言葉が並んでいる。 ”(略)今まで言ったさよならの中でいちばんしみじみとしたさよならはどのさよならだったかを決める(決まったら心の中でゆっくりさよならをとなえる) 連載エッセイを書いていて、最後の回になると、私はさみしくてたまらなくなってしまいます、表題作も連載最後の回に書いた文章です。”
川上弘美の本をはじめて読んだ。 ちょっと洒落ていて、 ところどころで、ハッとさせられた。 タイトルがカッコ良すぎる気がして、 (個人的にあまり好きではない類) もぞもぞしながら読みすすめたが、最後の最後で、 このタイトルの一節が出てきて… やられたー!! となりました。 普段は思い出さない昔のことや...続きを読む、思い出などを 振り返させられ、 しみじみ。 読めてよかった?
とても好きな空気です。 たくさんの本のこと、と、まごまごした感じ、が、心地よいです。平らかな気持ちになりました。 魚喃キリコさんや小川洋子さんの本を読まれていたりするのも嬉しいところです。 居酒屋さんや本屋さんにも行きたくなります。 読みたい本も増えます。良かった。
絶妙なひらがな遣い。あたたかい諦め感というか,赦され感というか…タイトルがエッセイ全体の雰囲気にぴったり合っていました。
この人の感性はとてもしっくりくるので、作品はどれも気持ちよく読める。川上さんの世界では、どんなにぱぁっと晴れた日の風景にも冷たい冬の日の景色にも、薄紙がかかっている。表題のエッセイは、詩のようななんだか泣けてしまう文章だ。私にとっては、宝物を集めた小箱みたいな作品。 「しょうがパン」にはうんうん、と...続きを読むうなずきながら読んだ。私もそうだった!と思い出しながら。今よりずっと、外国の生活なんて遠くにあって、ただただ想像して憧れるだけの日々だった。
弘美さんから見る日常はどうしてこんなに美しいのだろう。と、うっとりしてしまいます。 物をとても丁寧に、とても優しく扱うからその物一つ一つに沢山の愛情が注がれ、その愛おしさが自然に読み手にまで伝わってきますね。 触れることができるなら柔らかく、温かい。そんな弘美さんの美しい日常をほんの少しでも覗くこが...続きを読むできて、幸せでした。
毎年、年末になると棚から引っ張り出してくる。ぱらぱらめくって、適当に読む。最後の表題作だけは、それこそゆっくり噛み締めながら読む。一年を振り返るのに、これ以上のものはない。
川や、町並みや、 友人や酒や、 そして多くの本と言葉からや、 目に留まるあらゆるものへ、 真摯で率直に、思いが広がっていく。 散歩に行きたくなる。 酒が飲みたくなる。 友人に会いたくなる。 読み終わった後で、 飲み屋で待ち合わせをしたあゆちゃんにそのままあげた。
再読。 ゆるっと掻い摘んで読むつもりがどうにも止められず、 結局最後までガッツリと読み込んでしまう事に。 面白いなぁ、良いなぁ、なんて、いちいち脳内でつぶやきながら。 刺激され、意識が一瞬本から離れ、ふと思い耽ってはまた戻る…なんて事を繰り返しながら。 エッセイを繰り返し読むという事はあまりしないの...続きを読むですけれど、 この本はやっぱり特別でした。
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ゆっくりさよならをとなえる(新潮文庫)
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川上弘美
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