川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短編が4つ入っています。
最初は「物語が、始まる」で、男の雛形(人形ではないらしい)を手に入れて女性と、その人間のようになっていく雛形の、奇妙な恋愛物語。
2つめは「トカゲ」で、幸福のトカゲを飼う事になったマンションの奥さんたちの話から、最後は一種狂気じみたオカルトのような世界になります。
3つめは「婆」。何となく立ち寄ることになってしまった、婆の家。不思議な穴が奇妙な世界観を醸し出しています。
最後は、「墓を探す」。あまり親密でない姉妹が、先祖の墓を探すことになります。ご先祖様がとりついているような姉と、不思議な世界を経験しながら墓を探す。物語は、墓にたどり着く前で終わっていますが -
Posted by ブクログ
相変わらずの”うそばなし”です。
川上さんの作品を読むたびに「これは何だ?」とか「何故読むのか?」という疑問が浮かび上がってしまうのです。身に付いて役に立つわけでも無し(まあ、大抵の小説はそうですけど)、生きる勇気を与えてくれる訳でもなく。
で、考えた末に出した結論が「旅みたいなもんだ」と。
日常から離れて、川上さんの作る不思議な世界を旅する。遊ぶ。それが楽しければ良いじゃないかと。多くの旅なんてそんなものだし、何故旅するかなんて考えることなく、普通に行ってるし。
ただ、この世界は、論理も通じない不可思議な世界なのに、なぜか異様な実存感がある。それが川上さんの凄い所だと思います。 -
Posted by ブクログ
「夢十夜」「冥途」みたいなカンジ。薄暗く、ジメジメしてるんだけど、好奇心が勝って思わずドキドキのぞいてしまう。すべてオチがありません。後味すっきりしないな。とても女性的な小説です。
なんか首のあたりがムズムズします。こういう作家さんてあまり読んだことがないから感想もいいにくいなあ。最初の話「北斎」は海から上がって何百年もたってしまい、戻り方を忘れたかなしい男の話。最後の「海馬」も何百年も海から上がって久しい女の話。陸にあがった理由は二人ともセックスです。
なんか対象的なのでとても印象に残っています。女のほうは海に帰れるんだけどね。でもこの小説の主人公たちはみんな空虚で何考えてるのかわかりません