川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
何度も読みたいエッセイ本ってあまりないですが、これは貴重な一冊。
この人の、歩きながら真剣にぼーっとしている感じがたまらなく愛らしい。
「真剣なぼーっ」の中には実は空想・思考がフルカラーでたゆたっているんだけれど、普通はそういうたゆたう思考はそのまま流れていってしまう。浅い眠りの夢みたいに。
それをこともなげに言葉にして世界に呼び出してきちゃう強さがまた・・・嗚呼愛らしい。
「立春」という言葉を聴いて、「さまざまな小さい生き物でみっしり埋め尽くされた一枚の絵のようなものにちがいない」と確信する、このみずみずしさ。
春生まれだったら、なんかうれしいな。 -
Posted by ブクログ
恋愛小説のような
怪奇小説のような
官能小説のような
家族の物語のような
いろんな要素が含まれていて、ちょっとキュンとして、それでいてこわい。
たとえばマキさんとアキラさん。ミドリ子の目玉の回転。オトヒコさんの出芽。すずもとすずろう。
驚くのは、ただ単に要素が集まっているだけじゃなくて、それらが複雑に折り重なっていて、混ざりあっているということ。
だからこわいはずなのに哀しいし、せつないし、ドキドキする。
そして文章が絶妙。言葉の選び方がああもうってなってしまう。
不思議な話です。
少しずつ形を変えていく、いろいろなものや出来事が描かれています。変わらないものはなにもなくて、どんど