川上弘美のレビュー一覧

  • 東京日記2 ほかに踊りを知らない。

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    川上さんの日記を集めたもの第二弾。十一月二十日に出たばかりの本で、この本を書店で見つけなかったら、第一弾も知らなかったでしょう。一巻よりも、文章がほんの少し長くなっています。普通の日常が文章にしてみると、すこしぶれているようなそんな感覚が返って心地よい気分にさせてくれます。

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    2010年04月29日
  • いとしい

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     同じ作家を何冊か読んでいると、自然と作者が心地いいのだろう文字のリズムが浮かび上がってくる事がある。
     ところが川上弘美は大抵私の想像を覆していく。感覚の準備運動が出来ない。
     50メートル走のつもりで走り出したらマラソンだった、くらいの衝撃がある。
     あ、そっち行っちゃうの?みたいな。「行く」じゃなくて「行っちゃう」。
     『西日は私の閉じたまぶたからつるつると私の中にまで入りこみ』
     ひとつの表現が磨かれた鋼みたいにギラギラしてて、文章がこっちに食いついてくるみたいなお話。

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    2012年11月25日
  • ニシノユキヒコの恋と冒険

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     恋多きニシノユキヒコ、しかし愛した女性とは必ず別れてしまうニシノユキヒコ。彼の恋愛遍歴……いやいや、恋と人生を巡る冒険、を描く10の短編。
     すごく優しいんだけど悲しくて、不可解で切なくて、恋愛というものに対して疑問ばかり抱いてしまうような内容だったけれど。ひとを愛するってこういう(不可解で曖昧な)ものなのかも、と思いました。文庫版に付いている藤野千夜さんの解説は素晴らしいです。

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    2022年03月06日
  • 此処 彼処

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    一年間、毎週新聞に掲載されたエッセィ。
    地名を具体的に出すという趣旨で綴られており、タイトルも最初と最後が「此処」と「彼処」以外は全て地名。

    いつもながらの川上節で、読んでいて楽しい。
    あとがきで具体的な名前を出すと、自分をはっきり書いたような気がするが、全然そんなことはない、と書いてあるのも興味ぶかい。

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    2009年10月04日
  • 物語が、始まる

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    相変わらずの”うそばなし”です。
    川上さんの作品を読むたびに「これは何だ?」とか「何故読むのか?」という疑問が浮かび上がってしまうのです。身に付いて役に立つわけでも無し(まあ、大抵の小説はそうですけど)、生きる勇気を与えてくれる訳でもなく。
    で、考えた末に出した結論が「旅みたいなもんだ」と。
    日常から離れて、川上さんの作る不思議な世界を旅する。遊ぶ。それが楽しければ良いじゃないかと。多くの旅なんてそんなものだし、何故旅するかなんて考えることなく、普通に行ってるし。
    ただ、この世界は、論理も通じない不可思議な世界なのに、なぜか異様な実存感がある。それが川上さんの凄い所だと思います。

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    2016年08月16日
  • 龍宮

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    「夢十夜」「冥途」みたいなカンジ。薄暗く、ジメジメしてるんだけど、好奇心が勝って思わずドキドキのぞいてしまう。すべてオチがありません。後味すっきりしないな。とても女性的な小説です。
    なんか首のあたりがムズムズします。こういう作家さんてあまり読んだことがないから感想もいいにくいなあ。最初の話「北斎」は海から上がって何百年もたってしまい、戻り方を忘れたかなしい男の話。最後の「海馬」も何百年も海から上がって久しい女の話。陸にあがった理由は二人ともセックスです。
    なんか対象的なのでとても印象に残っています。女のほうは海に帰れるんだけどね。でもこの小説の主人公たちはみんな空虚で何考えてるのかわかりません

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    2014年02月19日
  • 物語が、始まる

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    現実と非現実の境界線があまりにも曖昧で、どっちが本当の世界かわからなくなる。読み手を異世界へ誘うのが非常に巧い作家。ひとつひとつの言葉や単語にとてもそそられる。表題作に出てくる雛形こそ、天性の小悪魔だと思う。雄だけど。そうして彼に出会った人たちの物語は、延々と始まりをむかえるのだ。

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    2009年10月07日
  • 此処 彼処

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    川上さんのゆるい文章のリズムの隙間に「ほんわか」の素がつまっています。特筆すべきことのない暮らしでも彼女にかかれば味わい深し。

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    2009年10月07日
  • 此処 彼処

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    川上さんは可愛いなぁと再確認する一冊。
    普段あまりエッセイは読まないのでありますが、小説でストーリーを追ったり凝った美しい文章を追ったりするのが疲れてくると、ゆるゆると読めるものを欲するようになります。
    「此処彼処」は場所に関するエッセイで、あの町この町にまつわる川上さんの思い出話をたくさん聞かせていただいた気分になれる本でした。
    あっという間に読める。

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    2009年10月04日
  • 物語が、始まる

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    表題作は今ひとつながらも、「墓に入る」がとても秀逸です。ああ、文学! と思いました。思想があるなぁと。
     女の人には珍しい感じの文学だと思います。前述の三人の文学はとてもやわらかくて身近な物語だけれど、川上弘美が「墓に入る」で書いていたのは世界の構造みたいなもので、それがとても意外でした。女の人でそういう文学を書く人はとても少ない気がします。

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    2009年10月04日
  • 物語が、始まる

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    幻想譚を集めた短編集。というか、この人の書く話はそのほとんどが幻想譚。その中でも、「物語が、始まる」(表題作)には胸が締め付けられた。主人公の女性がある日から、男の雛型を拾って育て始める。やがて成長して立派な男になる雛型。女性は雛型を愛するようになるが。が。ここからが痛い。つらい。悲しい。今はちょっと読めない。状況が自分に重なるんだなぁ。(2006,1,21現在のわたし)

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    2009年10月04日
  • 此処 彼処

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    川上さんの文章は和風(あくまでも私が受けた印象です)で静かで心が落ち着く。どの章も終わりの部分が特に好きです。

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    2009年10月04日
  • スナックふたり

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    かわいい話。川上弘美らしいっちゃらしい。過去未来とかあの世とか、今ここじゃないどこかがカーテンの向こうにちらちらと見えてくる感じ。

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    2026年08月23日
  • スナックふたり

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    ネタバレ

    スナックふたり

    著者:川上弘美
    発行:2026年7月10日
    中央公論新社
    初出:『読売新聞』2025年3月12日~12月18日

    司と逸子が経営するスナックが舞台。どっちがママか?という話題が、何年かに1回か話題になって盛り上がる。2人の年齢は、話の内容によって30代~70代まで、いろいろと答えが返ってくる。常連客もいろいろで、基本的にはみんな仲良し。全6話のそれぞれに一見客が登場する。それが幽霊なのである。普通の人間のように思えるし、お金もちゃんと払っていくけど、実は幽霊。それで、話の締めくくりになると消えて「あの世」に去って行く。

    3話ぐらいになると「スナックふたり」は幽霊界で有名な店

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    2026年08月22日
  • スナックふたり

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    今までの著者の作風とは違うなぁ。
    とはいえ、不思議な話という点では繋がるのか・・・

    さて、スナックの面々が個性的でこんな常連さんがいる場所なら行ってみたいと思う、ほのぼのとした昭和のドラマのようでした。

    新聞連載で読むには面白いストーリーかと。
    最新今一つ面白くない新聞連載を読んでるからの比較。

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    2026年08月21日
  • あるようなないような

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    書評の章は正直読むのが大変だったが、最後の「あるようなないような」のインターネットの話は時代を感じて面白かった。

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    2026年08月20日
  • 女性作家が選ぶ太宰治

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    女性作家さんは江國香織さんだけ知っているのだけど、選んだ作品がとてもらしくてニッコリした。太宰治は暗いイメージだったけど、こんなかわいい作品もあるんですね
    太宰治は病みそうで怖くてあんま読んでないんだけど、こちらは全部短編なので入り込みすぎなくて逆に良かったかも…… すごい元気な時に読むのが良さそうですね。
    でも暗くても言葉選びがすごーーく綺麗且つわざとらしさがなくて、こんなに古いのに読みやすかった。

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    2026年08月14日
  • スナックふたり

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    川上さんの愛する人間風土を、ふかふかに耕した安心納涼小説だった。
    一見客も常連も不思議な一体感に包まれる、居心地の良さが伝わってきた。
    肩の力を抜き、紙のページをさわさわ捲りながら歩を進めた先で、耳をすませば…そこが【スナックふたり】の座標。
    今晩のお通しは何かな?

    此岸と彼岸のカウンターでぼんやり席を温めてみるのも、いいもんですね。

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    2026年08月07日
  • 大きな鳥にさらわれないよう

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    ネタバレ


    ​世界観と構成の妙
    ​人類の衰退から消滅にいたるまでの過程を描いた、短編がいくつも重なり合う「連作短編」形式の構造美。
    ​断片的なエピソードを読み進めるうちに、徐々に作品世界の全貌が浮かび上がってくる演出が秀逸。
    ​AI(人工知能)と生命の描き方
    ​人工知能(母)が人類を育て、その愚かさや美しさを慈しむ姿が非常に印象的。
    ​人工知能を「母」として捉え、人体移植のようにも見える生命とテクノロジーの融合という発想が極めて先進的で面白い。
    ​集団隔離と人為的進化の試み
    ​人類を存続・再興させるため、集団を隔離して進化や変容を試みるという手法・設定の鋭さ。
    ​登場人物の「命名」がもたらす効果
    ​登場

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    2026年08月04日
  • 伊勢物語

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    学校のレポートのため使用したが、原作に忠実で読みやすい。男の心情を直接説明する場面が少なく、行動や情景を簡潔に描写することに重点が置かれているところが小説家訳の古典という感じ。
    そのため、読者が場面全体から心情を読み取る必要性が出てくる。この省略や余白を残そうとする姿勢が原作『伊勢物語』の多くを語らず、わずかな描写や和歌によって人物の心情を表現しようとする特徴に調和していて逆に良さがある、と私は感じた。

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    2026年08月04日