川上弘美のレビュー一覧
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夫婦、嫁姑、嫁小姑、などなど、結婚してしまったからには、簡単には切っても切れない人間関係。
簡単に切れないからこそ、日々の些細なすれ違いや思い違いを、まいっか。って言葉に出せなくて飲み込んでしまって、消化不良をおこしてしまうんですよね。
消化不良のままで終わればいいのに、いつかどこかでたまらなくなって吐き出してしまって、その吐き出したものは、最初のどーでもいい出来事から、巨大な巨大な問題の塊に化けてしまってて、最終的には取り返しのつかないようなことになっちゃったりして。
こわいこわい。
だから『これでよろしくて?同好会』みたいな場所って、誰にでも必要なんじゃないのかなー。なんて思ったり -
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水声ー水の流れる音。水は止まらずに流れるが、物語はその音を意識させず、時に内面を表し、姉弟の行為に対する一般論を遠ざけた。時計もそうか。時を刻みながら、回想で歪む時系列を象徴する。常識とは無関係に、ただそこにあり、本人たちのみが理解し得る関係性。姉弟の行為にどのような意味があるのか、彼らは考えないようにした。読み手は考えるべきだろうか。登場人物に自らを重ねても、読み手はその感情を想像し得ない。
川上弘美は、食べる事をとても美味しそうに描く作家だと思う。そんな彼女が描く非日常のドラマだから、共感できないとどんよりした気持ちになりそうだが、決して共感は出来ず、ただ眺めるだけ。 -
Posted by ブクログ
都心から地下鉄で20分程のある街。魚屋の魚春には、かたつむりの殻のように増築された3階がある。魚春には、母屋に暮らす平蔵と、増築された部屋に住む源二が不思議な同居生活を送っていた。
基本的にそれぞれの短編でなされつつ、年も世代も少しずつずれながら、少しずつ重なっている11作。それぞれの人や家族の生活を覗き見するような、掌編である。
魚春、学習塾、居酒屋など、わかりやすい重なりで前半は進むものの、中盤から重なってるんだか重なっていないんだか、しかもいるんか?という言うのも少しあり、中だるみが生じている。後半の作ではまた重なる部分を意識できるような作風となるため、終盤ではそういえばそういう人た -
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Posted by ブクログ
阿部工房やカフカを彷彿とさせる、異世界に迷い込んだような幻想的な物語。
「語り手である主人公マリエとその姉のユリエ、母カナ子、母の恋人だったイラストレーターのチダさん、マリエが教える大鳩女子高等学校の生徒ミドリ子、ミドリ子の兄でマリエの恋人になる紅郎、ミドリ子を追いかける鈴木鈴郎、姉ユリエの恋人オトヒコ。全員が揺らめくごとく、あやふやで、液体みたいな人物たちだ(解説p.252)」
ミドリ子はチダと性行為をすると耳が上下逆に「捻れる」(チダが一回につき二万円を支払うと元に戻る)。ある日突然「休眠」に入ったオトヒコの全身を膜のようなものが覆い、そのうち身体の一部が分裂して新しい小さなオト -
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ネタバレ川上さんのあたたかいお人柄が感じられる本。幼少期の思い出から最近の小話まで、身近な話と季語の融合がよかった。
北窓開くーー冬の間締め切っていた北に向かう窓を、春が来たのでひいらく、という意味をもちます。ずっと耐えた冬がゆるみ、ようやく明るくあたたかい空気が北側の部屋にも入るようになった喜びを表しているのです。
春愁(はるうれい)ーー小説内では、ひとはしばしば恋に落ち恋に敗れ友と別れ大切なものをなくし、人生を憂え、深い哀愁を覚えるものなのです。
鯖ーー鯖の目が、大きくてつぶらだったこと。油がよく乗っていて、包丁が油まみれになったこと。内臓も豊かだったこと。などなど、お店で買ったのでは実感で