川上弘美のレビュー一覧
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これだけ突拍子もない寓話的な物語を説得力を持って、読者に違和感を抱かせず描き切っていることに驚愕した
おそらく、違和感がない、という違和感こそがこの作品のキモだ。
世界との不和に悩む女性の姿が、蛇に乗せられてありありと描かれる
蛇は、現代人の孤独のメタファーとして僕は読んだ
結局、他者はどこまでも他者でそこに壁がある。その壁があるからこそ会話が成立するのだ。
一方、壁のない自分自身との対話はぬるま湯のように心地よく、泥沼化する。その先に何もないとわかりながら、自分自身に依存していってしまう。
踏むというのは、自己の発見に他ならない。それは偶然でありかつ、どこまでも主体的行為なのだ。
“踏 -
Posted by ブクログ
この本は、(私が抱く川上さんのお話のイメージより)軽くて楽しいものかと思えば、徐々に重くなって、ラストにはずしっときてしまった。
菜月、38歳、2つ年上の夫、光と平穏な結婚生活を送っている(子供はいない)。あるとき、菜月は結婚前の元彼の母親(土井母)から声を掛けられ、「これでよろしくて同好会」の入会を勧められる。この会は年齢も環境も違う女性5人が、洋食屋で集い、そのつど(人のある事柄とか)議題について討論し合う。井戸端会議のように。土井母のテンポが面白い。
最初は「会」について、訝しげな菜月だったが次第に居心地の良い場所となってゆく。
それとは別の場面。菜月の家族との絡みの部分、二つの構成で -
Posted by ブクログ
なまめかしいタイトルから、想像していたものと少し違った(それはそれでよいが)。重い、この時期重いのは辛く、星三つになった。
生(母性も)と性と死を描いてある。話を追うごとに難解になってゆく。
二つ目の「terra」。また私は川上さんの世界に引きずられてゆく。沢田と対話しているのは、女友達と思っていたら違った。最後に謎が明かされる。死の無念さをこんなにも淡々と語って、いや淡々だから余計にやるせない。
「死んじゃったな、麻美」
「つまらないなあ、死ぬと」
あなたが巻いてくれなくなったので、最後に自分で巻いてみた左手首の紐を確かめようとしたけれど、もう体がないので、できない。
土に還って二酸化炭素や -
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Posted by ブクログ
「るつ」という音の名前を持つ複数の女性の生涯を、パラレルワールドのように並行して綴った物語。
前半は「留津」と「ルツ」という二人が登場し、後半になると「るつ」「流津」「瑠通」「る津」「琉都」などというように徐々に主人公が増える。彼女たちはどのストーリーでも同じ家庭に生まれるが、その家族構成は母の生死、父母の関係性などの点で微妙に異なっている。その小さな枝分かれが、やがて森の木々のように入り組んで、後の人生に大きく差をつけていく。
「るつ」たちの友人や恋人、同僚は、彼女の人生に登場するタイミングを変えながら、それぞれのストーリーに登場する。すなわち、あるストーリーでは友人だった女性が違うス