川上弘美のレビュー一覧
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ネタバレ喪失と、「距離」の物語。「距離」とは、他人との距離でもあり、自分との距離でもあり。
百の成長と、それに伴ってなくなってくるもの。時間が経つに従って、変わってくる他人との関係(百でも、母でも、青茲でも、礼すらそうだ)、それに伴う何かの喪失。喪失がいいことなのか悪いことなのかは分からない。決めるのはその人間との距離と関係のような気もする。自分の中での喪失もまた然り、であろうか。
水のようにひたひたと様々な「距離」にふれ、最後は光が差してくる。光が差すのをハッピーエンドと判断するのは楽観的すぎると思うが、自分と他人と向き合い続けたこの物語の末には少しでも希望があって欲しいとは思った。 -
Posted by ブクログ
別の本に『百年』が紹介されていて、気になったので読んでみました。
川上さんの作品は初めてです。
内容に疑問や余白が多く、短編なのに詩みたいだなと思いました。
サカキさんはどうして死にたくなってしまったのだろう。
助かって?しまったあとは、どんな気持ちで87歳まで生きたのだろう。
この物語は、主要な登場人物二人が、既に他界しており、「私」が俯瞰してみている文章になっていて、とても不思議な気持ちになりました。
この作品を通して、何を伝えたかったのか。余白が多い分、考える甲斐があります。
肉体はなくなっても、人の想いは一生残り続けるのかなと思いました。
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Posted by ブクログ
さよと仄田くんの物語が心の成長を描いたものならば、りらと絵くんの物語は体の成長を描いているように思われる。
だから少し、気持ち悪い。
時代は移り変わって、物語は少なくなったのかもしれないと思う。
さよと仄田くんはもともと友達ではなかったけれど、りらと絵くんは友達で、だから着地点も違うわけで。
でも二人に限らず、恋愛とは違うところでの結びつきがどんどん広がっているようだ。
麦子と南生が夜の冒険を潜り抜けてきたのかどうかは分からないけれど。
夜の冒険が結びつけることもあるし、そうではない時もあるかもしれない。
さよと仄田くんの冒険とその結末は、希有なものだったのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
1歳児を育てている身としては、娘の百が母からどんどん離れていくこと、娘の言葉に母が疵付けられることがあることが苦しかった。
セックスエデュケーションの中でも、主人公の母ジーンが「息子に傷つけられる」と話し、それに対してのちに恋人になるヤコブが娘にたいして"hate"という言葉を使っていたので驚いた。思春期に入った子どもたちに親はここまで傷つけられるのか、と思った。
いまこんなに一緒にいて、くっついて、その柔らかさ温かさを共有してくれる娘が離れていくなんて想像がつかないし、そのとき私がどんな風に感じるかも実感が湧かない(もちろん身が捩れるほど寂しいだろう、とはぼんやりと想像