【感想・ネタバレ】某のレビュー

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感情タグBEST3

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ネタバレ

「今の自分に納得いかなくて全く違う誰かになれたらいいのに……」「朝起きたら佐々木希になってますように……」「Twitterでの自分はキラキラOLで彼氏とも上手くいってて……」「転職先ではパリピとして振舞おう……」そんなふうに普段から思いながら生活をしているわたしにとって、とてもぴったりな作品でした。
そして、本当に愛する人ができた時に他の誰でもない自分でありたいと願ったり、その人のために生きたいとか命を投げ出したりとか、本当の愛について深く考えました。

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2023年05月06日

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ネタバレ

無機質な存在「某」がいろいろな人間の形に変化して、人間に近づいて行くのが面白かった。
デッサンの時に強い感性を発揮するところからはじまり、悲しみに共感するようになったりして、なんともほろりとさせられます。
川上弘美さんの文体がとても好きです。

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2023年03月30日

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「誰でもない者」という独特な設定なのに、なぜかすっと受け入れられた。一つ感じたのは、じゃあ私は空っぽではなくちゃんと私であれているのかなということ。もっと私自身と寄り添ってみよう。

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2023年03月26日

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ネタバレ

某って響きいいな。
こんな簡単に色んな人に変われたらなーって誰しも思うよなぁ。女にも男にも日本人以外にもなってみたい。しかも元の人間の記憶がありながら。
大切な人が出来たら変わらないことを望むかー。確かに。考えたことなかった。今のその人自体が好きなんだものね。ありのままが1番ってわけだ。

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2022年12月17日

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ああ、川上弘美だ。
「神様」とか「蛇を踏む」とか、久しぶりに思い出した感じがあった。

たぶん、私たちはふだん「わたし」というものをそれほど意識して生きてはいない。
少なくとも私はそんなに「わたし」について考えることはしない(思春期の頃はもっと「わたし」について考えていたように思う)。
なぜなら「わたし」について考えることはとっても面倒くさいことだからだ(この言い方が適当でなければ、非常に時間がかかるとかって言い換えてもいい)。
10代のころは時間だけはあったから「わたし」について考えても差し障りがなかったけれど、社会人になってしまったいま「わたし」について考えていたら、日々の生活に支障をきたすこと請け合いだ。だから私はふだん「わたし」ついて考えることはしない。

ではなぜ「わたし」について考えることはそんなに時間を必要とするのか?
その答えは簡単だと思う。それは「わたし」というのがとても曖昧なものだからだろう。それは本書『某』で繰り返し書かれていることだ(そう私は解釈する)。

主人公(人じゃないらしいけれど)の〈わたし〉が「わたし」にたどり着くまでにいったい何年の歳月と、何人の「自分」と、何種類の〈変化〉を体験することが必要であったことか。
「わたし」とはそれくらい曖昧で、とてつもない広がりをもったものなのだということが、『某』を読んでいるとひしひしと伝わってくる。

私の中で川上弘美さんは曖昧なものをなんとか言語化していくという作家さんだ。そしてその曖昧なものの、一つの主要なテーマとして「わたし」があるように感じている。
初期の作品では〈無人称〉が一つのスタイルであったように思う。この『某』では人称がころころと変わっていく。そうした移ろいゆくもの、はっきりしないもののなかで、藁ほどでもよいので確かなものをつかみ取ろうとする作業。

そんな私の川上弘美さんのイメージを、より強く意識させるような作品、それがこの『某』だった。それが今回の感想。

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2022年03月26日

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限りなく人間に近いが、性的にも未分化で染色体も不安定で、不死の生命体。
彼らはいつだって、何にでもなれる。性別も年齢も職業も。何かになって、人間と一緒に生活する。
章が変わるごとに姿を変える某。
感情があること、考えること、誰かを愛すること、生活をすること、何かを楽しいと思うこと、人の気持ちを理解するということ、自立するということ、子どもを産むということについて、家族というものの存在について。

某という存在は、人間の形を取った人間ではない存在であるが、人間と共に人間社会で生活していくので、人間が生きていく上で大切なことを、某はひとつひとつ、学んでゆく。
生きるって、生きていくって、こういうことだよな。
読みながらそう実感する。
毎日を当たり前のように過ごしていると、さらさらと抜け落ちていってしまう何か。
それらに、一つ一つ丁寧に向き合っていく感触があった。

そして、「生きること」を考えると同時に、「死」についても考えることになる。
P390「何にでもなれ、どこにでも存在できるということは、生きていないのと同じこと」でもあるからだ。
作中では、「死」について考える場面で「安楽死」に触れている部分がある。
解説P429「安楽死が合法化されると、それを選ぶ人はだんだんと減っていったらしい。いつでも死ねるなら今でなくてもいい」
死をのぞむ人って、少なからず存在する。さらに日本は自殺者が多いことで有名である。この国で安楽死が合法化されたとしたらどうなってしまうんだろう、安楽死が合法化されている国と同じ現象が起こるのだろうか、なんてことを考えた。

そして、三島由紀夫(奇しくも「死をのぞんだ人」である)が答えを出せなかった、「誰かを好きになること」と「性欲」がイコールなのか問題と、「一緒にいて落ち着く」イコール「好き」ってことなのか問題。
そういうことにぶち当たって、考える某。

わたしも一緒になって考える。
愛ってなんだ。
家族ってなんだ。
そして、『夏物語』に引き続き、またしても産む産まない問題にぶち当たる。
どうしてわたしは「子どもをほしくない」と思う自分を、欠陥品だと思って責めてしまうんだろう。

そして、倫理観を問われる、なぜと問われると大人が詰まる質問3連発。

①なぜ人を殺してはいけないの?
②なぜ身内とセックスをしてはいけないの?
③なぜ学校へ行かないといけないの?

「生きていくためにはこうしないと」「こうするしかない」と思って、せかせかと生活しているうちに忘れ去られ、しかし答えが出せていない「なぜ」。つまり、この作品は、レビューの冒頭で書かせてもらった「毎日を当たり前のように過ごしていると、さらさらと抜け落ちていく何か」について、優しく問いかけてくれる作品なのである。

P179「『家族は、変わってゆくから、つかまえておくのは、難しい』。家族、という言葉の意味が、みんな違うのだなと、私は思った」
P205「優しい声は、優しい気持ちとは無関係に出すことができる。私はたしかに、何かに対して怒りを感じていたのだ。香川さんに対してではない。では、何に?」
P225「『うん、生きるのは、苦しいことなんだよ』」
P241「『愛してるって、どんな感じ?』『一緒に年とって…やがては死んでいってもいいような感じ…かなあ』」
P264「『体を使役することは、けっこう楽しかった。でも、体の表面と体の中のつながりが、うまくわかってないみたい、あたしいまだに』」
P347「生きることは、日々刻々と変わってゆくこと」

自分の中にある倫理観を揺さぶられ、掘り下げられた作品として、かなり印象に残った作品。
平野啓一郎さんの『空白を満たしなさい』を彷彿とさせる。真正面からではなく、少し違った角度から、「生きる」ということに向き合わせてくれる。

そして実は、川上弘美さん初読みでした…!

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2022年02月13日

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ネタバレ

アイデンティティとはなんぞや、魂とはなんぞや、人間とは、自分とはなんぞや、生きるとはなんぞや、自己愛とは?自己犠牲とは?誰かのために生きたいと思うって、なんぞや?
川上弘美さんらしい、とっても不思議ワールドな小説です。
タイトル通り、某とした、「何者でもない者」たちが主人公。突然この世にあらわれて、いろいろなアイデンティティを持ちながら人間として生きていくのだが、人間ではない。人間ではないだけに、人間とは何か?と考えさせられる。年もとらないし、死ぬこともない。彼らも自分が何者なのかわからない。よくわからないけど、その時々に得た人格を演じて生きる。何かの拍子にカップル的なものもできるけど、愛しあうとか、相手のために尽くすとか、理屈ではわかるけどそういうことはできない。
別れを悲しむとかも、よくわからない。
でも、最初「ハルカ」として生き、最後は嬰児から生きることをやり直した「某」は、ともに成長したみのりを愛することによって、それまで知らなかったいろいろな感情をもつ。もう全く別物の何者かに変化したりもしない。変わったのだ。もしくは、何かを失い、何かを得たのだ。
ちょっと、「100万回いきたねこ」みたいな話だな、と思った。
とても不思議で、少し悲しくて、荒唐無稽で非現実的だけど、でも魂というのはこういうものかも、と腑に落ちたりもする。前世の魂の記憶がないだけで、こういうものなのかも。

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2022年02月13日

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いつもながら設定が斬新でした。特に最終章の光と言う物語がいい。ひかりは曖昧に生きていたけれど、みのりを恋する事を選ぶ事で変化が出来なくり恋と言う感情を知り、曖昧な性格に彩りが生まれたところが好き。ひかりは恋をして自分らしく生きたんだと思う。

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2024年04月07日

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人間ではない人間の形をした生き物を通して見る人間は、滑稽って、不思議で、おもしろい。
「愛する」とは何かを考えさせられたし、そこに行き着いた某の成長や姿に心を打たれました。

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2024年01月23日

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ほかの誰でもない自分として存在するってどういうこと?とか、人を愛するってどういうこと?とか突き詰めて考えたくなる小説。ラストシーンに対する自分の解釈が固められずモヤモヤしているのは、まだその二つの問いに対する自分なりの考えを持ててないからなのかな?と思ったり。

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2023年06月19日

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ネタバレ

人間に近い何かの目線で登場人物をみれるのが面白かった。最初は淡々と進んでいき感情の変化もそこまでないが、後半になるにつれ主人公の心の変化が大きく、豊かになっていくのが感じられて良かった。
何者でもない時は誰にでもなれるしどこにでも行けるが、愛するものなど執着が産まれたらそこにつながれてしまうというのは人間においても同じように感じた。人間でないものの話だけども、人間味を感じる話だった。

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2022年11月29日

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ネタバレ

読む前の印象は、もっと怖くて仄暗いお話なのかな~‥と思いましたが、そんな事はなくてちょっぴり不思議なお話でした。

一見、突拍子もない摩訶不思議な話しに思えるけど、この物語を前世の記憶を少しだけ持っている人達の話と置き換えて読んでみると、非常にしっくりくる‥

何度も何度も変化(輪廻転生)を繰り返しながら
生とは?死とは?

問いかけながら

変わっていく事、変わらない事。

色んな人格になり、色んな人生を経験する事で、自身も知らない間に少しずつ成長していく‥

「愛するって何?」
「相手の為に生きたいって思える事だよ」

死を恐れなかったひかりが、愛する事を知って変化する事を恐れた事も、変化出来なくなった事も、魂の意志、成長を現しているように思えた。

最後の人格が「ひかり」という希望の溢れる名前なのも良かったな‥。

あと、個人的には何度か
途中禅問答のようなやりとりも出てきて、あ〜こういうの好き♡
と思いながら夢中で読み耽りました。

色んな解釈が出来る一冊
私好みのお話で面白かったです。

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2022年08月27日

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何とも奇怪な話を考え付く才能はどこから生まれるのか、読みながら考えたが未だに結論が得られない.丹羽はるかが野田春眠になり、山中文夫、神谷マリ、ラモーナ、片山冬樹、ひかりと変身していくなかで、キャバクラで働いたり、カナダに移住したり、幼児になったり、なんだこりゃ! 蔵先生と水沢看護師が唯一まともな人と思ったが、芦田先生、津田さん、アルファ、シグマ、高橋さん、鈴木さん、等々ユニークな登場人物をチェックするのも大変だった.人間の生き方を上下左右に振り回しても、生き長らえられるのだと感じた.

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2022年06月24日

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読むと自分も某になった感じ。

突然物語の中にほっぽり出されて、
終わりも突然に迎える。

思えば中学や高校に入学する度、新しいコミュニティに入る度、「変化」をしてきたなぁと思う。
だから、彼らの気持ちがわからないわけでもない。

「成長」するようになるまで、物事に関して、良いも悪いも好き嫌いもなく、淡々と事が進んでいく。

でも、やっぱりわからない。共感できない部分もたくさん。ええそれどんな感じ?もっと教えてくれ!と思う。


アイデンティティ以外にも、家族とか、愛とか、生きるとか死ぬとか、たくさんたくさん考えたいワードが出てきた。


面白かった!

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2022年03月04日

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何者かに変化できる生命体が主人公。この設定が本当なのか、精神世界のものなのか、それとも本人が錯覚しているだけなのか。それを探りながら読み進めていくので、どんな展開になるんだろうと気になってページが進んだ。なかなかハマったってことだ。
何者にもなれる存在は、何者でもないということ。そんな中途半端な存在の彼らがアイデンティティを確立しようとする話にも思えたし、彼らを通して人間の人生や愛について考えさせる話でもあった。なかなか面白い手法。
意外と驚かされたのが人間社会の変化の描き方。なるほど、そんなミスリードもあるのか。人には勧めづらいが、印象には残った。

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2021年12月13日

Posted by ブクログ

「多重人格」「サイコパス、ソシオパス」を題材にした小説は幾つか読んだが それらとは似て非なるモノ。
前半(と言っても9割がた)何が主題なのか分からないまま
それでも小気味良い文体で読み進む。
最後になってやっと
'他者との共感とは?'
'他者を愛するとは?'
'何故 生きるのか?' 
が語られ(もちろん 結論は分からない)
切ない物語。

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2021年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4.3
人が他人を必要とする理由が体感できたときに、「何者でもないもの」が「あるもの」になるのかななどと考えさせられた。
色々な人を経験していくことで、共感や他人を大事に思う気持ちを得ていく、主人公の変化を感じられた。
若干、変化する人が多すぎて、途中中だるみした気もした。

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2021年10月21日

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何者でもない者。
読み進めてみえてくる景色は、決して鮮やかなものではないけど、独特の空気に吸い込まれて行くように最後まで読み進められました。
次々に変化する主人公である某。
変化する度に似てないようで似ているところもあるし、アイデンティティや考え方が違かったりするのもこの作品の魅力のひとつかな。
ょっと切ない場面もあるけどね。
この本を読み終えた後のスッキリ感を求めるならオススメはできない作品だけど、不思議な雰囲気を味わいたいなら、お勧めします。

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2021年10月08日

Posted by ブクログ

ある日突然発生した人の姿をした、某(ぼう)
時が経つと性別も年齢も変化させて別人となって
生きる某は、誰にでもなれるけど、誰でもない。

SF的な内容だけど、
変身を繰り返して生きる某たちは
SNSのアカウントを変えて何人もの別人になりきれる
現代人のようにも思えるし、
変身を繰り返す某たちが変身をしなくなるときもまた、
人に重なるものがある。

始終、表紙のような灰色の静かな世界が
淡々と進む感じがとても好きな雰囲気でした。

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2021年09月30日

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究極の自分探し。
アルファやシグマ等の「仲間」が出てきたあたりで飽きてしまった。
意外と「特殊な」みのりがあっさりしている

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2021年09月17日

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川上弘美はディストピアがいいんだよ! 透き通るような文体。川上弘美を読んでいるときは空気が澄んでいるように感じる。マリの章が素敵でそこから先へ進むのが嫌だった。
あなたは誰?と問いかけられるように進む。
私たちは某のように、顔も声も変わらないが、過去の自分は全く違うと思ったり、また違う人と話すと別人のようになったりする。だから、某たちは過去のわたし自身であり、他人といるときのわたし自身である。
私は根底に「すべての人は自分になりうる」と思っていて、だからこそ他人に興味があり優しくしたい。後半、人と人以外の同一性が提示されて、「植物にも物にも動物にもなりうる」と考えをあらためた。根は繋がっているのだ。
ラモーナらへんから減速するもラストの情景描写が好き。前半の速度は落ちるけれど、ゆっくり動くからみれる景色ってあるよね。途中減速しても最後まで読む価値はあると思います。風呂敷がおおきく広がり、「大きな鳥に」の期待も広がるから、くらべるとやや小さくおさまった感は否めないけれど。

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2021年08月19日

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ネタバレ

【2023年114冊目】
大体あらすじを頭に入れずに読み出しちゃうことがほとんどなんですけど、いや〜不思議な小説でした。川上弘美さん、SFもお書きになるんですなぁと思ったけど、「蛇を踏む」もそうだったかもしれない。

主人公は突然この世に誕生した、というか存在が始まった、生命体。途中から、この生命体には個体名がつくんですけど、まあそれは置いといて。女子高生、男子高生、男性事務員とどんどんと変化していく主人公。変化する前の記憶は持っているのに、性質とかはがらりと変わるというのが面白いなと思いました。似通った性質を引き継ぐこともあれば、全く違った性質なこともあり。

確固たる己がない生命体の話だからこそ、物語全体を通してなんだか、ふわふわと包まれるような雰囲気があったのですが、かと言って話に芯がないわけではないのが、さすがでした。

マリあたりまでが生命体としては好きだったかな。

しかし、なんでこの生命体に対して殺意をもつ人間がいるのか、そこだけは説明がなかったのが残念でした。

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2023年09月25日

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世界観は結構好き

初めの頃の某の不自然な口調がよかった

学生編がもう少し読みたい気もしたし、
途中まではスイスイ読めたけど後半がよくわかんなくなってしまった。
それと先生と水沢さんが自然にFOして寂しかった。哲学みたいな本でした。

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2023年09月12日

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誰でもない者、という架空の存在を題材にした作品。人間ではない存在が主人公であり、人を人たらしめるものは何かを第三者視点から理解することを試みる。
不思議な世界観に引き込まれます。

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2023年06月10日

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ネタバレ

不思議な話だった。不思議な世界に飲み込まれていってすらすらと読めたがアルファとシグマという仲間が出てきた途端つまらなくなった。何者でもない者は1人(最低2人)でいいと思う。

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2022年12月07日

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ネタバレ

忽然と病院に現れた女性。名前も性別も年もわからず記憶も持たない彼女は、「誰でもない者」(「医学界の都市伝説みたいなもの」と思われていた「人間に限りなく近い生物」)だった。主治医の蔵医師の指示でアイデンティティーを確立すべく、治療を開始し、まず丹羽ハルカという女子高生になる。治療の過程で次々と別人(性別も変わる)になるが、それにより人格も変化する。さまざまな人間としての経験を重ねながら、仲間に出会い、感情を獲得していく。

それぞれの話はそういうものとして読めば、とても面白い。これはSFでもミステリでもないので、それでいいのだ。
なんでそんな存在なのかは自分にもわからないし仲間たちも知らない。家族もなく、どこか欠落したものを感じながら「人間」のように生きる彼らの自由さには不穏さがつきまとう。人は一人で生きるしかないからこそ、他人を求めるのかもしれない。

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2022年03月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジャゲ買いです。表紙が好きで、そして「某」とう題名が気に入って買いました。私は「なにがし」って読み方の方が好きですが、「ぼう」という読み方にしたのは、単独じゃなくて、添える言葉として表したかったのかなと思いました。

「誰でもない者」それは、人とも限らない者でした。関りの長さ深さによって、執着の度合いも変わってきて、登場人物の変化が面白かったです。たくさん変わり過ぎて、途中ごちゃごちゃしてきましたが。それぞれの生き方というか過ごし方の方向が多様なのが面白かったし、「誰でもない者」は「誰にでもなれる者」なんだなと思いました。

お話の中で、変わっていく風景も面白かったです。良いことも悪いことも、日常の中に、埋没していき、当たり前となっていきました。常に新しいものを取り込んで受け入れていく強さをもっているんだなと思いました。

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2022年01月29日

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何者でもないものは特定の人になる度に生き方ががらっと変わる。

人間の生き方や個性って何者かを作り出す遺伝と言うものにとても大きな影響を受けているのだなあ。

どんな生き方をしても仲間と語り合うことを楽しみにしたり、趣味をもち、何かの成長を楽しみにしたりする。

理系(生物系)の人はより感覚的に楽しめるかも。

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2021年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文庫でも表紙が変わらないんだ。この人の恋愛感覚とかセックスに対する姿勢とかが私にはなじみやすい。そのあたりは先生の鞄以来かなあ。

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2021年10月05日

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"綺麗事"としてよく聞く言葉。「人はいつでも、いつからでも、何者にでも変われるのだ。」

これが文字通り、変わることのできる生態系が存在したのならば?
某は確かに"何にでもなれる"けれど"何かになる"ことはきっとなかった。誰になっても、何になっても、きっと自分が何者なのかはずーっとわからなかったのだと思う。個が個である理由はおそらく誰かに必要とされること。他者との関係を通して自分というものの存在意義を改めて考える機会になった。

 

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2021年09月19日

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