川上弘美のレビュー一覧
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ネタバレ他者と自分の境、自分であること、他人であることとは一体なんなのだろう。
これまで読んできた川上弘美作品のなかでもかなり独特で、読み終わるのにだいぶ時間がかかった。
霧の中をゆっくり小舟で進むような物語で、時に掴めない表現のかさなりになんだか眠くなったりもした。
しかし不思議と退屈さはなく、真鶴に引かれるようにして通い続ける主人公のようにつらつらと読み続けた。
特に最後の方は波にひかれるように読み切ってしまった。
喪失に折り合いを付ける、というのはとても時間のかかることで、相手が自分の中に食い込めば食い込んでいるほど難儀で、相手がいない以上明確な回答はどこにも存在せず、存在しないゆえに輪郭を -
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純文学作家の発想
ひとつづつ評していく。
川上弘美。未来SF。
発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
妙にSFが現実路線のわりには -
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酒井駒子さんの挿絵が美しかった七夜物語…
こちらは、ちょっと雰囲気がちがうな…と思ったらヒグチユウコさんの装画。
どちらも素敵です。
そしてやはり、川上弘美さんの子ども心の表現がなんとも愛おしい。
「大人になったら、子どもの時のことは、わすれちゃうのかな」という絵くん
「わからない。子どもの時にあったできごとは、きっとわすれないよね。でも、今の自分の気持ちは、おぼえてるかどうか、わからない。だって、大人になったら、ちがう気持ちになってるかもしれなくて、そうすると、もっと前の気持ちをいつまでもおぼえてて、いちいちそのことを思い出してたら、気持ちが決まるのに、すごく時間がかかっちゃうじゃない?」 -
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佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』。インパクトの強い緑色の瞳をしたオスのトラ猫が表紙の絵本です。おそらく子どもの頃にも読んだことがあったと思うんですが内容はほとんど記憶になく、大人になって改めて読んでグッときました。
1977年に発売されて以来、今なお多くの人に読まれ続けている大ロングセラーであるこの絵本への、13人の作家によるトリビュート短篇集です。
佐野洋子さんの息子さんで絵本作家の広瀬弦さんや元旦那さまの谷川俊太郎さんも執筆されています。結構著名な作家陣ばかりですが、私は読むのは初めましてな作家さんが多かったですね。
どういうこと?と理解が追いつかないお話もあれば、ちょっと不思 -
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あなたは、こんな依頼を受けたとしたらどうするでしょうか?
「ぼくの死体をよろしくたのむ」
いやいや、これはまずいでしょう。『ぼくの死体』というからには、目の前の人がこれから死にゆくことを意味します。どう考えてもやばい、やばすぎる!止めなきゃ!一刻も早く!そうあなたが行動すべき場面なはずです。
もちろん必ずしもこれから死を選ぶ人を前にした緊迫感のある場面とは限らないのかもしれません。病気療養中にある方から遺言のようにお願いを受けている場合かもしれません。しかし、どのような場面であっても『死体』を『よろしく』とたのまれることには動揺も走ります。
さてここに、「ぼくの死体をよろしくたのむ -
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主人公の小学生、仄田りらと鳴海絵の二人を中心としたストーリーが視点を変えて進んでいく。りらはマイペースで自分のルールのようなものがあって、確かにちょっと変わっている。りらと絵は性別を超えて仲が良く、いつもべったりなわけではないけど、すごく良い関係だなと思った。最後のあとがきまで読んで初めて知ったけど、『七夜物語』という作品の続編らしい。
この物語は小学生二人が自分の成長やら両親のこと、いじめなどに直面していく成長ストーリー…かと思いきや、ファンタジー要素もあり、幼い頃ってこんな風に感じてたなぁと思うこともあれば、二人(特にりら)はずいぶん大人だなぁと思うこともあった。