小池昌代の一覧
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ユーザーレビュー
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40歳の時、幼なじみで昔の恋人だった男から赤ん坊を預かる主人公。
彼の妻は出産時に亡くなり、男手一つで育てることができないため、と、800万円と赤ん坊を渡される。
それからの10年間の話。
「迎えに来る」といった男は連絡が取れなくなって久しい。
不規則な編集の仕事では赤ん坊を育てられないので、せん
...続きを読むべい工場で働くことにした。
赤ん坊だった山尾が小学校に入る年になった時、初めて役場に相談するが、そのまま彼女のもとで山尾は育つ。
特に山場も修羅場もないストーリーだけを追ってもこの本の面白さは伝わらないだろう。
私は子ども好きなので、子育てのあれこれの部分に多く付箋をつけてしまったけれど、この作品は子育てのすばらしさを謳ったものではない。
どちらかというと、成長していく子どもを通して、人の一生というか、老いることの当たり前に対する賛美なのかもしれない。
”「年をとるといつか、死ぬよね」
「そうだよ。でも、わかってるだろうけど、順番は守れ」”
ああこれ、私も伝えておかねばならないな。
”子はみんな、誰か特定の女の腹から生まれながら、そして一応は、どこか特定の家に繋がれた家畜のような顔をしながら、でも誰にも、どこにも所属しない、落ちてきたもの、捨てられたもの、誰のものでもない者、なんじゃないか。産んだ者の所有権、そんなものなんか、ないと、この偽の母は思う。”
私も所有権とか一心同体とか、ないと実感しましたね、孕んだとき。
”幼い子供と生きる人生の時間は、一貫性のあるキャリアを追求する生き方に比べ、遠回りの獣道。行く先々で、具体的な実りがあるわけではない。生きているものを世話する仕事は、為すそばから消えていく、むくわれない行為からできあがっているのだ。だから逆に、子供のいる女は、あきらめを知ることになる。この世には、できないこととできることがあることを知るようになる。いや、できないことだらけであることを知るようになる。(中略)つまり順当に老いることを学ぶ。”
子どもを育てる育てないにかかわらず、自分にはできないことが多いということを知っておいた方が結局はいい仕事ができるような気がします。
賢いとか、いい学校を出ているとかではなく、自分と違う思考で生きている人に合わせることができる人が、結局は仕事ができている。
子育ても、親の思いを押しつけるのではなく、子どもの気持を汲める方がよいのと同じ。
”ふわりと現れた山尾が、だから私のすべてだと言ってもいいが、そんなふうには言いたくない。どのように山尾と別れていくか。それが、これから先のわたしの課題。”
まったくその通り。
私と別れても問題なく生きて行けるように育てたつもりだから、あとはこっちの問題なんだよね。
”でも山尾は私でよかったのだろうか。黙っていると、須藤さんが言った。大事なのは――血じゃなくて、一人の子供に、誰か一人がずっとついててくれることですよね。(中略)血を、愛する理由にするのは変です。もし、血が家族であることの証をつくる唯一のものであるなら、家族を愛するといっても、結局自分を愛するのとなんら変わらないもん。”
今は自分と違う人を警戒して排除する傾向が強いけど、そういう社会は弱い。
家族であろうとなかろうと、血が繋がっていようといなかろうと、違うことを認め尊重し合うことができないのは、淋しいよね。
”よくできた子は、悪くにしかならない。悪い子なら、よくなることができる。よくできた子は、あるとき、ふっと消えてしまいそうでこわい。”
これもよく思っていた。
「最短コースで生きなくていいよ」と「いい子になってほしいのは親の本音だけど、大人にとって都合のいい子にはならなくていいからね」は実際に子どもに言ってきかせた。
ストーリーが単調なのに、ぐさぐさ刺さる言葉がてんこ盛りでまいった。
ふつうこれほどに読点が頻繁に打たれると却って読みにくくなるものだけど、するすると入ってきた言葉が読点をくさびにして腑に刻まれた感じ。
作家の言葉って怖い。
Posted by ブクログ
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やっと平仮名を読めるようになった6歳から、祖父が遊んで下さった、懐かしいもの。百人一首。書店で見つけると、つい買ってしまう。これは詩人小池昌代による解説ですが、白洲正子の解説には及ばない。
Posted by ブクログ
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世に名作と言われている作品を、権威に負けずに、面白くないものは面白くない、わからないものはわからないと語る。
基本的に主観丸出しの、言いたい放題の対談。
でも、文学を鑑賞することって、主観で、自分の捉え方を楽しむってことだから、これで良いのでは。と思う。
対談している2人が実際に小説や詩を創作し
...続きを読むている、作り手であること、あまたの文学作品を読んでいることから、語っていることも説得力があり、楽しく読める。
対談形式としたのが功をそうしてる。
一人だけで語っていると偏って思えるけど、どちらかが合いの手をいれたり、私は別にそうおもわないけどと流したりすることで、極論に見えることが、色々あるうちの一つの意見として意味があるように思える。
谷崎など、嫌いな作品じゃないものを論じるところの切れ味が鈍くなるのが面白かった。
嫌いな作品をこき下ろすことで、逆にその作品の持つ力や、足りなくても輝いているしぶとさが見えてくるのだなと。
悪口言えるだけの度量の広い作品だからこそ、名作なのではないだろうか。
Posted by ブクログ
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さまざまな形の「愛」が収められたアンソロジー。どれも一般の恋愛観からは少し外れた愛で、しかしそんな奇妙な愛こそが恋愛であるような気がする。どこか変でなきゃ恋愛なんてできないな、と感じた。
Posted by ブクログ
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『通勤電車で読む詩集』の続編です。
編者の小池さんは、「はしがきにかえて」で、
「恋するひとは狂気のひとだ。彼らの目は中心を失い虹色になって輝いている。うらやましいがおそろしい。それはもはや、尋常な状態ではないのだから。恋は事件でなく、事故なのだと思う。そんな彼らに恋歌のアンソロジーを薦めてみたとこ
...続きを読むろで、読んでいる場合じゃないかもしれない。では恋歌を読むのは誰か。今日も明日も、一見恋とは程遠い現実のなかで、汚れにまみれながら生きている、わたしたちではなかろうか。(中略)
これって恋愛詩?と思われるような作品も、ここにはさりげなく、混ぜてある。でもそれが、わたしの願う恋の姿だ。恋うとは遠いものに橋を渡すこと、そうだとしたら、詩のことばはみんな恋を生きている」と語られています。
前編と同じくすべての詩に小池さんの解説付きです。
私が好きだったものを挙げると
「一目惚れ」ヴィスワヴァ・シンボルスカ
なんて素敵な詩!と思いました。
「報告」宮沢賢治
たった2行ですが、確かにりんとした風景です。
「樹下の二人」高村光太郎
あまりにも有名な詩ですね。
素晴らしいと思います。
「夜のくちびる」大手拓次
「未来」谷川俊太郎
佐野洋子さんに宛てられた詩ですね。
「プレゼント」三角みづ紀
三角みづ紀さんの作品は何作か読みましたが、私もこれに一番惹かれました。
「夢」茨木のり子
「プレゼント」
(前略)
わたしたち
本当は
おらんひとなのかもしれんけど
それでも
このひとが大好きだ
その事実にこころを殴られ
わたしは
不覚にも
泣いてしまう
Posted by ブクログ
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