小池昌代のレビュー一覧
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ネタバレ40歳の時、幼なじみで昔の恋人だった男から赤ん坊を預かる主人公。
彼の妻は出産時に亡くなり、男手一つで育てることができないため、と、800万円と赤ん坊を渡される。
それからの10年間の話。
「迎えに来る」といった男は連絡が取れなくなって久しい。
不規則な編集の仕事では赤ん坊を育てられないので、せんべい工場で働くことにした。
赤ん坊だった山尾が小学校に入る年になった時、初めて役場に相談するが、そのまま彼女のもとで山尾は育つ。
特に山場も修羅場もないストーリーだけを追ってもこの本の面白さは伝わらないだろう。
私は子ども好きなので、子育てのあれこれの部分に多く付箋をつけてしまったけれど、この作 -
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世に名作と言われている作品を、権威に負けずに、面白くないものは面白くない、わからないものはわからないと語る。
基本的に主観丸出しの、言いたい放題の対談。
でも、文学を鑑賞することって、主観で、自分の捉え方を楽しむってことだから、これで良いのでは。と思う。
対談している2人が実際に小説や詩を創作している、作り手であること、あまたの文学作品を読んでいることから、語っていることも説得力があり、楽しく読める。
対談形式としたのが功をそうしてる。
一人だけで語っていると偏って思えるけど、どちらかが合いの手をいれたり、私は別にそうおもわないけどと流したりすることで、極論に見えることが、色々あるうちの -
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ネタバレ『通勤電車で読む詩集』の続編です。
編者の小池さんは、「はしがきにかえて」で、
「恋するひとは狂気のひとだ。彼らの目は中心を失い虹色になって輝いている。うらやましいがおそろしい。それはもはや、尋常な状態ではないのだから。恋は事件でなく、事故なのだと思う。そんな彼らに恋歌のアンソロジーを薦めてみたところで、読んでいる場合じゃないかもしれない。では恋歌を読むのは誰か。今日も明日も、一見恋とは程遠い現実のなかで、汚れにまみれながら生きている、わたしたちではなかろうか。(中略)
これって恋愛詩?と思われるような作品も、ここにはさりげなく、混ぜてある。でもそれが、わたしの願う恋の姿だ。恋うとは遠いものに -
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昔の男から突然、男の赤ちゃんを預かった40歳の「わたし」。
以来10余年「山尾」という名の血の繋がらない子を
「わたし」は育ててきた。
そんなシングルマザーの話。
著者の小池昌代さんは母であるが
「狭い血のつながりで
親子のことを書きたくなかったから」
この作品を書いたのだと言う。
脚本家の岡田惠和さんも
他人の集まりである「家族」をよく描くが
血縁ではないだけに
より深い理解や愛情で結ばれることがある。
「家族の絆」こそがすべて、と群れたがる人も多いが
私はそのベタついた感じが苦手で
小池さんが言うように
血のつながりなんぞちっちゃいものだ、と思う。
親と子であればもっと深く大きな -
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小池昌代の小説らしい小説よりは、散文的な文章が好きな自分にとって「たまもの」は、久しぶりに小池昌代の詩人としての力に魅了された作品だ。
最近の小池昌代の小説は詩的な趣が後退して、こんな事を言うのもおこがましい話ではあるけれど、小説家の描く小説のようになってきたなと思うことが多い。それは筋立てだとか仕掛けだとかという面もあるにはあるが、むしろ言葉の使われ方の違いじゃないかと思う。
登場人物が日記について触れる印象的な場面がある。曰く、私の日記は単語ばかりだと。それがあたかも詩人その人の日記の様式であるように聞こえ、何か重さのあるものを受け止めた感覚が残る。言葉には様々な意味を指し示す矢印が -
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ネタバレ”飾り気がないといえば、わたしほど、心に装飾がない女は少ないと思う。それなりに化粧はする。おしゃれもする。けれど心は、いつも裸だ。裸の心は、傷だらけだが強い。傷つけばさらに強くなっていく。
だけどそれは、何度も言うように、どこかケモノめいた心なのだ。まだかすかに残っている人間の心が、わたしにサビシイという言葉をはかせる。わたしはさびしい。わたしはむなしい。”(P71)
”わたしが眠っているあいだに、深い鍋の中で、この世の現実は、とろとろと煮込まれていく。夢など見ない。わたしが夢そのものだから。”(P240)
粟立つような女性の薄暗い部分から
あっち側との境目をゆらゆらするようなお話ばかり6 -
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自分と他者との関係を、感覚的に詩的に捉えた表現が卓越している。それでいて哲学的といってよいほど深く突きつめられてもいる。
例えば、『石を愛でる人』の一節。手のひらの中で石ころをころがす場面。
「石とわたしは、どこまでも混ざりあわない。あくまでも石は石。わたしはわたしである。石の中へわたしは入れず、石もわたしに、侵入してこない。その無機質で冷たい関係が、かえってわたしに、不思議な安らぎをあたえてくれる」
ここに収められた15本の短編小説は、15通りの「人との関わり」を描いている。
主人公は全て「こいけさん」だが、不躾に入り込もうとして「こいけさん」に拒絶される迷惑な隣人