あらすじ
モノクロームの日常から、あやしく甘い耽溺の森へ。恋多き詩人に三十年以上仕えてきた女、孤独なカーテン職人が依頼をうけた屋敷の不気味なパーティー、魅入られた者たちがケモノになる瞬間……短篇の名手が誘う六つの幻想譚。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「人間は、うんざりするほど他人を誤解し、自分も誤解され、死んでいく。誤解と思ってもそこにはひとかけらの真実があるのかもしれないし、やっぱりすべては誤解であるのかもしれない。」
短篇の名手が誘う六つの幻想譚。と裏表紙にあります。この方はもともと詩人なので言葉の使い方がとても巧妙です。
幻想というけど人の内面はそもそも幻想でできているように思うので心象風景としてはリアルかも。
決してわかりやすくはない作風である意味ドロドロとしていますが、はまります。
Posted by ブクログ
文章が瑞々しく豊かでありながら、官能的な雰囲気を纏う小説。
一つ一つが、昔話のような、どこか遠い異界の物語のように錯覚する。
短篇のほとんどが共通するのは、人間の「嫉妬」を盛り込んだ作品。
私は短篇の中で「つの」がお気に入りです。
読み応えがあり、世界観にどっぷりと浸かることが出来ました。
Posted by ブクログ
”飾り気がないといえば、わたしほど、心に装飾がない女は少ないと思う。それなりに化粧はする。おしゃれもする。けれど心は、いつも裸だ。裸の心は、傷だらけだが強い。傷つけばさらに強くなっていく。
だけどそれは、何度も言うように、どこかケモノめいた心なのだ。まだかすかに残っている人間の心が、わたしにサビシイという言葉をはかせる。わたしはさびしい。わたしはむなしい。”(P71)
”わたしが眠っているあいだに、深い鍋の中で、この世の現実は、とろとろと煮込まれていく。夢など見ない。わたしが夢そのものだから。”(P240)
粟立つような女性の薄暗い部分から
あっち側との境目をゆらゆらするようなお話ばかり6つの短編集。
詩人であるということがよくわかる
言葉の選び方や曖昧な空気感。
不気味さがじわじわにじんでくる感じも
たまらなく好き。
生き物をモチーフにしている短編集らしく
人間味より動物的。
つのが特によかった。
表紙もタイトルも良い。
無駄がない。
けど一つ一つの話は相当漠然としている。
こういうものが読みたかった。
久しぶりに良い作家さんに出会えた。
Posted by ブクログ
読んでから知ったのだが、筆者は詩人だった。
どの話も、静かに進んでいるようで、扱われている感情は非常に濃い。あっさりしているようでいて、皮膚に直接迫ってくるような力があった。小説を読んでいるんだけど、自分の夢の中にいるような気分にさせられる。久しぶりに好みの作家に出会った。
「女房」「つの」「花火」が特に良かった。
Posted by ブクログ
女の人がたくましく生きていく為には、妄想が必要なのだ。みじめな自分に、妄想というアートで、言い訳を与えてあげるのだ。
そんな美しい言い訳が、6つも読めるなんて。
Posted by ブクログ
普通の日常からいつの間にか別世界へと迷いこんでしまう短編集。妖しくて生々しくて、静かに怖い、大人の童話のようだった。嫉妬や欲望が人をけものにする過程が、爆発的ではなくじわりじわりとしていて、気がつけば後には戻れない場所まで辿り着いてしまっている状態がすごく怖かった。それと同時に、老いてもなお女は女であることもよーく分かった…しんどいような嬉しいような、でもしんどい。
Posted by ブクログ
詩というものは、一言でくくるなら
「意想外の結合」と云えるんじゃないかと思う。
言葉は、思いもよらない言葉と手を結んだとき、
詩として昇華するのだろう。
本書は、現代をときめく詩人による6つの幻想譚。
でも、「ことば汁」という作品はない…それにしても、
この言葉から感じられる、おどろどどろしくも
なまめかしい感触は、新鮮で魅惑的だ。
言葉は、記憶を装い、身体に憑依する。
行儀よく、不規則にならんだ歯の隙間から、
よだれがだらぁんと、流れ出るような…官能。
そんな作品群…すごいっ!
さすが! 小池昌代さんだなぁ!
著者の詩集は大好きで、繰り返し読んでいるけど、
こうした短編も味わい深いです…ありふれた日常に
裂け目ができて、舌を出すような一冊です!
Posted by ブクログ
はじめて読んだ本のジャンルだなぁとしみじみしてる。
冒頭は、言葉の選びがとても綺麗でしっかりしてると思ったけど、
つので完全に持って行かれた。
耽美な文章が織り成す世界は、ほとんど中毒に近い。
Posted by ブクログ
日常の中のちょっとしたズレを描いた6つの短編です。
なにげないふりをして、読む者の胸にいきなりサクッと刃を突き刺すような小説でした。
〝女房〟という短編以外は、いずれも主人公は、けしてもう若いとはいえない年頃の女性たちです。老い、孤独、欲望・・・・著者の筆によって、主人公たちはふと踏み込んだ非日常の世界で、心の襞を露わにされてしまいます。けれど不快な読後感はありません。それどころか、読み始めたらついつい惹き込まれてしまいます。
「ことば汁」という書名は、鍋の中の言葉のごった煮というイメージだそうです。思えば人生なんて矛盾だらけ、人の胸の中もコトコト煮込んだごった煮のようなものですネ。
Posted by ブクログ
ヴィレッジヴァンガードで、手にとった作品。
本の帯は「ピース又吉」がコメントしていて、そのコメントと【ことば汁】というどろっとしたタイトルに魅せられて購入。
6つの物語で構成されていて、どれも人間の欲望や欲求などが、艶めかしく・獣のように書かれている。
個人的には【女房】と【つの】が好き。
Posted by ブクログ
一つのきっかけを元に狂って歪んでゆく物語集。
妄想の毒々しさがタイトルに現れていると思います。
「ことば汁」…タイトル買いでした。秀逸なタイトル。