あらすじ
モノクロームの日常から、あやしく甘い耽溺の森へ。恋多き詩人に三十年以上仕えてきた女、孤独なカーテン職人が依頼をうけた屋敷の不気味なパーティー、魅入られた者たちがケモノになる瞬間……短篇の名手が誘う六つの幻想譚。
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Posted by ブクログ
”飾り気がないといえば、わたしほど、心に装飾がない女は少ないと思う。それなりに化粧はする。おしゃれもする。けれど心は、いつも裸だ。裸の心は、傷だらけだが強い。傷つけばさらに強くなっていく。
だけどそれは、何度も言うように、どこかケモノめいた心なのだ。まだかすかに残っている人間の心が、わたしにサビシイという言葉をはかせる。わたしはさびしい。わたしはむなしい。”(P71)
”わたしが眠っているあいだに、深い鍋の中で、この世の現実は、とろとろと煮込まれていく。夢など見ない。わたしが夢そのものだから。”(P240)
粟立つような女性の薄暗い部分から
あっち側との境目をゆらゆらするようなお話ばかり6つの短編集。
詩人であるということがよくわかる
言葉の選び方や曖昧な空気感。
不気味さがじわじわにじんでくる感じも
たまらなく好き。
生き物をモチーフにしている短編集らしく
人間味より動物的。
つのが特によかった。
表紙もタイトルも良い。
無駄がない。
けど一つ一つの話は相当漠然としている。
こういうものが読みたかった。
久しぶりに良い作家さんに出会えた。