丸谷才一の一覧
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ユーザーレビュー
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見事と言う他無い。
著者らしいユニークな表現法やインテリが結晶した集大成。
古典文学や『源氏物語』に興味関心が無ければ、「ふぅん」で終わる内容が大半を占めるが、物語的工夫が半端ないので読ませられてしまう。
古典アレルギーの方でなければ一読の価値あり。
Posted by ブクログ
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丸谷才一による、文学に関する縦横無尽の講義。歴史的かつ同時代的にも文学を縦断・横断的な解説。聞き手の湯川さんも博識でこのようなインタビューはもうできないのではないかと思うと同時に、自分の勉強不足を痛感させられる。
以下、自分の関心を中心に本書の内容を簡単に紹介する。なお、下記は本書のメモに近く、本書
...続きを読むの魅力は数多くの作者・文献が各種紹介され、それぞれの作品の魅力が語られることにある。
短編小説
・短編小説の面白さは本歌取り。短編の中に他の説話を盛り込むことにより、短い筋であるにも関わらず話の深さ広がりを作ることができる
・長編小説はイギリスで生まれた。生活に余裕ができて小説を読むという時間を持つことが必要で、これには豊かなブルジョワ読者層が必要。したがって、それまでは短編小説しか作ることができなかった
長編小説
・日本では夏目漱石を除けば長編小説で成功した作家はいない
・長編小説の魅力は、①作中人物、②文章、③ストーリーの3つから考えることが必要
伝記・自伝
・自伝には事件がたくさんあるといい。文章がよくないとつまらない。文体の個性が最も重要なジャンルが自伝かもしれない
歴史
・歴史であっても「声」を響かせることが必要。「声」が響いていないと歴史書としてつまらない。結局は文体の問題なのかもしれない
批評
・川村二郎によると批評とは、学問とエッセイの重なるところ
エッセイ
・石川淳によると随筆家に必要なのは、本と資産と間暇
演劇
・歌舞伎はバロック演劇。①世界は劇場であり、人間はみな役者でそれぞれの役を演じている。②人生は夢である。この二つのテーゼが表裏一体になっている
詩
・古典劇は大部分が詩
・文学の中心には詩がある。文学は言い回しの面白さと、言葉の連なりの美しさ、意味とは別の音の楽しさ、それが同時にあることが要求される
・シュールリアリスムの影響で、世界の詩の流れは音楽よりもイメージを重視するようになった
・大岡信は詩に祝祭的なものの復活を目指しているのではないか。和歌の哀愁好き、俳諧のわび・さび好きを批判している
Posted by ブクログ
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三人と一匹のボート旅。
軽妙洒脱な文章。愛すべきあほらしさにクスッと笑ってしまう古典ユーモア。
ジーヴスシリーズが好きな人は好きだと思う。楽しい作品だった。
Posted by ブクログ
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その時いたのは、ジョージとハリスとぼくの三人、そして犬のモンモランシーだった。
三人でどうも最近体の具合がよくないなあなんて話し合っていたんだ。ジョージもハリスも不調を訴えていたが、ぼくなんてもっと重症だよ、病床図鑑を調べたら全部が当てはまるんだ!
ぼくたちには休暇が必要だ。だからぼくたちはテムズ河
...続きを読むに出ることにした。
キングストンからオクスフォードへ、ボートをひきながら河を漕ぎ上がる。そしてキングストンへ漕ぎ下がる一週間の旅。
こうしてぼくたち、ボートの三人と一匹の休暇が始まったんだ。
***
イギリスのユーモア小説。
読んでいる最中には頭の中で「ボートの上には三人男~~♪犬もいるよボートの上に~~♪」とかいう感じ歌が流れていました(メロディーは適当に/笑)
翻訳は丸谷才一、表紙絵は和田誠、解説は井上ひさしというメンバーがなかなか豪華。
ボートを漕ぐ男たちの楽しい騒動。
楽しいといっても大袈裟な事件が起こるわけではありません。
家の壁に釘を打つとか、夕食会の余興で歌を披露するとか、初めてボートを漕いだ時のこととか、新しい趣味として楽器を習うとか、そのような日常が作者の語り口により実に賑やかで楽しい大騒動に変わります。
語り手である"J"も、回りの人たちを好き勝手に面白可笑しく語っていますが、彼自身もなかなかの身勝手っぷり。この本でに出てくるイギリス人は、みんなが好き勝手にしてお互い迷惑かけつつみんなが楽しいという、なかなか前向きな生活ですね。
さらに犬のモンモランシーは、小さいフォックステリアながらも近所ではボス犬、他の犬猫相手に暴君ぶりを発揮したり、キャンプの湯沸かし器相手に喧嘩を吹っ掛けたりとやんちゃ坊主でかわいい。
小説としては、もともとはテムズ河周辺の歴史的地理的旅行案内のようなものだったようで、そのためにユーモアも気取ったりわざとらしいところがなく、読者も一緒に自然に楽しい日々を過ごせます。
さらにイギリス人の生活様相、イギリス人気質、食事の状況、紳士淑女の休暇の過ごし方など、イギリス人の日常風景も感じられます。
ちょうどいい時に父なるテムズ河に入り、ちょうどいい時にボートから逃げ出した三人男に乾杯!
わん!
Posted by ブクログ
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ぼくは本作の美点をいくつも挙げることが出来ます。
まず何と言っても、内容。
舞台となる大手新聞社は、政府の土地を払い下げてもらい、そこへ新社屋を建てる構想を持っています。
ところがこの構想が頓挫してしまいます。
原因を作ったのは、主人公の美人論説委員・南弓子。
弓子の書いたコラムが政府関係者の逆鱗に
...続きを読む触れてしまったのです。
社の上層部は事なきを得ようと、弓子を事業局へと左遷させるべく動きます。
ここから物語が大きく展開します。
弓子は同僚や友人・知人、恋人と伝手を頼り、あの手この手で事態を解決しようと画策します。
結果、どうなるかは言わぬが花でしょう。
ただ、ストーリーは実に起伏に富んで面白い。
優れたエンターテインメント作品と言えましょう。
最後まで読んで、この作品のテーマ(の少なくとも1つ)が「贈与」なのだと感じた次第。
ギブ&テイク。
政府と新聞社との間の土地のやり取りしかり、書き手としても優秀な弓子と、記事のからきし書けない論説委員・浦野の関係しかり、それから弓子と不倫関係にある恋人の豊崎の関係も「贈与」が介在しています。
そして、この関係が崩れた時、必ず「修羅場」が訪れているのです。
何とまあ凝った作りなのでしょう。
それだけじゃありません。
丸谷の博識ぶりが随所に発揮されていて読ませます。
特に哲学方面の知識はすごいと舌を巻くレベル。
しかも丸谷の場合、博識ぶりを披歴しても鼻につくのは稀です。
憲法改正ではなく、「憲法廃止」のくだりも印象に残りました。
それからユーモアね。
弓子が首相を問い詰める場面は愉快で何度も吹き出しました。
実作者としては、油断すると通俗的になりそうな設定なのに、文学的な強度を一貫して保っているのは、さすが丸谷と思いました。
痴話喧嘩も丸谷が書けば、高尚な文学になるんだから、もう逆立ちしたって敵いません。
ただただ脱帽。
Posted by ブクログ
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