丸谷才一のレビュー一覧

  • 快楽としての読書 海外篇

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    世界文学に関する書評集。秀逸。これらの書評が毎週毎日新聞に載っていた時期は、とっても楽しい時期でした。
    書評は内容紹介と、評価という要素がある。書評者の評価をもとに、実際の本を手に取るか考える。
    著者の書評は、読んでいて気分の盛り上がるものでした。

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    2025年07月27日
  • 横しぐれ

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    ネタバレ

    今回、文庫で再読したが、「文庫版のためのあとがき」を読んでびっくり。なんと、ひらめきはグレアム・グリーンの自伝中のエピソードだったという。グレアムの父親が旅先のナポリのカフェで機知に富む男と一緒になり、飲み物をおごった。後年、あれは出獄したばかりのオスカー・ワイルドだったのではないか、と……。かくしてカフェは茶屋になり、ワイルドは山頭火に変身した。
    「わたし」の父が茶屋で出会ったという坊主は山頭火では? ストーリーは「謎解き」なので、「ミステリ」に分類されることがあるのもうなずける。しかも、緻密に錬られた上質のミステリだ。
    山頭火、しぐれ、そして山頭火の日記の欠落の時期をもってくるあたりは、さ

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    2025年05月09日
  • たった一人の反乱

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    長らく、古い講談社文庫版(上下)で保有していた「絶対手放さない本」の一つ。何より面白い。これも古い文庫では文字の小ささに辟易するようになったので、文芸文庫版にリプレースすることとした。

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    2025年04月05日
  • 快楽としての読書 日本篇

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    名人が手がけた書評集。毎日新聞の書評は、名人のおかげで色彩を放っていた。
    豊富な知識、情報、文学への姿勢が、書評を高みを導いていたことがよくわかり、その文章を読むだけで読者の目は覚め、背を伸ばさずにはいられない。
    いつ読んでも楽しい一冊です。

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    2025年02月08日
  • 口訳万葉集/百人一首/新々百人一首

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    『口訳万葉集』:万葉集の現代語訳を手掛けた折口信夫の著書より抜粋。折口信夫を知る上ではちょうど良い分量と難易度。

    『百人一首』:現代の詩人である小池昌代による分かりやすい現代訳で,他2作に比べると浮いて見えるが,『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03)』に近いテイスト。

    『新々百人一首』:丸谷才一が自ら百人一首を手掛けたテキストより抜粋。和歌研究の深層に踏み込んだ内容を含む。

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    2024年03月17日
  • 恋と日本文学と本居宣長・女の救はれ

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    ”もののあはれ””からごころ”から”神国日本”の発想に至る本居宣長の内面的事情を、博識と作家的想像力でもって描き出す。講演がもととなっているとのことで論理だけでなく情も交えて読みやすく、なるほどと思わされる。女人往生の系譜とその始原を描いて見せた「女の救はれ」も面白かった。

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    2023年09月17日
  • 作家の証言 四畳半襖の下張裁判 完全版

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    作家の証言
    四畳半襖の下張裁判
    ~完全版

    編者:丸谷才一
    発行:2023年1月25日
    中央公論新社
    「作家の証言 四畳半襖の下張裁判」(1979年10月、朝日新聞社刊)に短編「四畳半襖の下張」(全文読める)を収録して完全版としたもの

    読んでいてひっくり返るくらい面白かった!永井荷風が書いたとされる短編小説「四畳半襖の下張」を全文掲載した雑誌「面白半分」1972年7月号を販売した佐藤嘉尚代表取締役と、編集長(2代目)を務めていた作家野坂昭如氏が、猥褻物頒布等の罪に問われた公判(東京地裁)において、弁護側の証人として証言した人のうち、作家の証言だけ抜粋して紹介した本。なお、他に、学者や主婦など

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    2023年04月05日
  • 輝く日の宮

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    見事と言う他無い。
    著者らしいユニークな表現法やインテリが結晶した集大成。
    古典文学や『源氏物語』に興味関心が無ければ、「ふぅん」で終わる内容が大半を占めるが、物語的工夫が半端ないので読ませられてしまう。
    古典アレルギーの方でなければ一読の価値あり。

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    2022年09月15日
  • 文学のレッスン(新潮選書)

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    丸谷才一による、文学に関する縦横無尽の講義。歴史的かつ同時代的にも文学を縦断・横断的な解説。聞き手の湯川さんも博識でこのようなインタビューはもうできないのではないかと思うと同時に、自分の勉強不足を痛感させられる。
    以下、自分の関心を中心に本書の内容を簡単に紹介する。なお、下記は本書のメモに近く、本書の魅力は数多くの作者・文献が各種紹介され、それぞれの作品の魅力が語られることにある。

    短編小説
    ・短編小説の面白さは本歌取り。短編の中に他の説話を盛り込むことにより、短い筋であるにも関わらず話の深さ広がりを作ることができる
    ・長編小説はイギリスで生まれた。生活に余裕ができて小説を読むという時間を持

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    2021年09月05日
  • ボートの三人男

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    三人と一匹のボート旅。
    軽妙洒脱な文章。愛すべきあほらしさにクスッと笑ってしまう古典ユーモア。
    ジーヴスシリーズが好きな人は好きだと思う。楽しい作品だった。

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    2021年08月16日
  • ボートの三人男

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    その時いたのは、ジョージとハリスとぼくの三人、そして犬のモンモランシーだった。
    三人でどうも最近体の具合がよくないなあなんて話し合っていたんだ。ジョージもハリスも不調を訴えていたが、ぼくなんてもっと重症だよ、病床図鑑を調べたら全部が当てはまるんだ!
    ぼくたちには休暇が必要だ。だからぼくたちはテムズ河に出ることにした。
    キングストンからオクスフォードへ、ボートをひきながら河を漕ぎ上がる。そしてキングストンへ漕ぎ下がる一週間の旅。
    こうしてぼくたち、ボートの三人と一匹の休暇が始まったんだ。

    ***

    イギリスのユーモア小説。

    読んでいる最中には頭の中で「ボートの上には三人男~~♪犬もいるよボー

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    2019年11月08日
  • 女ざかり

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    ぼくは本作の美点をいくつも挙げることが出来ます。
    まず何と言っても、内容。
    舞台となる大手新聞社は、政府の土地を払い下げてもらい、そこへ新社屋を建てる構想を持っています。
    ところがこの構想が頓挫してしまいます。
    原因を作ったのは、主人公の美人論説委員・南弓子。
    弓子の書いたコラムが政府関係者の逆鱗に触れてしまったのです。
    社の上層部は事なきを得ようと、弓子を事業局へと左遷させるべく動きます。
    ここから物語が大きく展開します。
    弓子は同僚や友人・知人、恋人と伝手を頼り、あの手この手で事態を解決しようと画策します。
    結果、どうなるかは言わぬが花でしょう。
    ただ、ストーリーは実に起伏に富んで面白い。

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    2019年09月18日
  • 星のあひびき

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    理由抜きで好きなもの、というのがあります。
    自分なりの理由は何かしらかあるんでしょうが、客観的に説明はできない(する必要も無いし)、まあ、好み、趣味です。個人的に「東日本○○を愛する会」を作りたくなるような、そういうちょっとメジャーでは無い好み、フェチというか情熱+好みというか。
    その「○○」に何が入るのか。人によって色々、楽しいものです。できれば「読書」とか「沖縄料理」とか「中島みゆき」とか「お寺巡り」といったざっくりした言葉より、「関西引っ越し以降の谷崎」とか「島らっきょうとゴーヤーチャンプル」とか「”生きていてもいいですか”の2曲目の”泣きたい夜に”」とか「奈良時代以前の仏像」などなどと

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    2018年06月10日
  • 女ざかり

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    「女ざかり」丸谷才一さん。1993年。

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    丸谷才一さんなので、大抵面白いのです。
    丸谷さんの小説は、好きになったらもう、全部好き。噺家の語り口みたいなものなので。

    1993年ですから、まだワープロの時代。携帯電話はありません。

    舞台は、朝日新聞社を彷彿とさせる、都内の大新聞社。の、論説委員室。つまり、新聞の「社説」とか「コラム」を書く部署です。

    主人公は南弓子。40代後半?くらいなんでしょうか。「女ざかり」。
    バツイチのシングルマザー、若い大学生の娘がいます。そして、周囲には中年から老年の、社会的地位のある男たちが群がっている、モテモテ女流記者。

    そんな弓子さんが、論説委員となり

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    2017年06月13日
  • 石川淳/辻邦生/丸谷才一

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    面白い小説でした。
    石川淳氏 焼跡のイエス。紫苑物語。小林如泥。鈴木牧之。江戸人の発想法について
    辻邦生氏 安土往還記。
    丸谷才一氏 横しぐれ。樹影譚
    特に、安土往還記。丸谷才一氏の2つの小説。紫苑物語が
    とても面白い傑作だと思います。モダニズムという感覚が
    湧き出してくる感じがします。
    丸谷氏は、旧かな使いを積極的に使われる作品が多く
    あまり好きではありませんでしたが、特に随筆系の作品は
    読みづらく、わかりづらい内容が多くて好みではありませんでした。ただ、この2つの小説はとても面白くよめました。

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    2017年04月01日
  • 松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙

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    芭蕉、蕪村、一茶、余りに有名かつ定番の俳人であるが、本格的に比較して鑑賞したのは恥ずかしながら初めてであった。
    中でも、蕪村は他の2名と比べて写実的、と云われていると思うのだが、どうしてどうして非常に心理描写を巧みに取り入れた作品が多く、あらためて感銘を受けた次第である。俳諧というものは、素人の私が云うのもおこがましいが、深いものだと感じた。

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    2016年07月14日
  • 石川淳/辻邦生/丸谷才一

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    さすがにこのメンバーになるとはずれが少ないのか、収録作品が選りすぐりなのか、どれもひきこまれた。ベストをえらぶとすれば、「横しぐれ」だろうか。小説としてのプロットの巧みと文学論の両方がバランスしていて素晴らしい。

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    2016年06月19日
  • 石川淳/辻邦生/丸谷才一

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    記載されている諸作品はほぼ初読み。
    全集になっていなかったら読むことがなかったろう。
    誰も誰も熟達した文章力!
    解説や挟んであるパンフが読みの助けになった。

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    2016年05月07日
  • 口訳万葉集/百人一首/新々百人一首

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    かるたとりの趣味もなく、普段和歌に触れることなく数十年生きてきたが、本書で、大げさかもしれないが歌に少しばかり親しみを持てたような気がする。
    それにしても折口信夫は天才だ。「死者の書」でも度胆を抜かれたが、この作品も口述筆記で作られたとか。どのような頭の構造をしたいたのだろうか。古代人の生まれかわりではないかと真面目に思ったりする。

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    2016年04月26日
  • 輝く日の宮

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    なんという 小説なのだろうか。
    松尾芭蕉の奥の細道 
    そして源氏物語を ひもといていく。

    その徹底した構成力と 文体の変化に
    作者自身の 智力 と 洞察力。
    人間模様の 変化 など。
    円熟した ふでさばき の職人ワザ。
    恐ろしいほどに 切り込んでいく。
    まったく、スゴイ人が いるんですね。

    そのことだけで、ため息が でるほどの 
    スリリングな 読後感。
    源氏物語を 挫折した ニンゲンが、
    再度 読んでみたいと思わせるほどに。

    道長 という権力の保護のもとに
    紫式部の 才能が さらに磨かれ 熟練していく。

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    2015年06月01日