丸谷才一のレビュー一覧
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ネタバレ今回、文庫で再読したが、「文庫版のためのあとがき」を読んでびっくり。なんと、ひらめきはグレアム・グリーンの自伝中のエピソードだったという。グレアムの父親が旅先のナポリのカフェで機知に富む男と一緒になり、飲み物をおごった。後年、あれは出獄したばかりのオスカー・ワイルドだったのではないか、と……。かくしてカフェは茶屋になり、ワイルドは山頭火に変身した。
「わたし」の父が茶屋で出会ったという坊主は山頭火では? ストーリーは「謎解き」なので、「ミステリ」に分類されることがあるのもうなずける。しかも、緻密に錬られた上質のミステリだ。
山頭火、しぐれ、そして山頭火の日記の欠落の時期をもってくるあたりは、さ -
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作家の証言
四畳半襖の下張裁判
~完全版
編者:丸谷才一
発行:2023年1月25日
中央公論新社
「作家の証言 四畳半襖の下張裁判」(1979年10月、朝日新聞社刊)に短編「四畳半襖の下張」(全文読める)を収録して完全版としたもの
読んでいてひっくり返るくらい面白かった!永井荷風が書いたとされる短編小説「四畳半襖の下張」を全文掲載した雑誌「面白半分」1972年7月号を販売した佐藤嘉尚代表取締役と、編集長(2代目)を務めていた作家野坂昭如氏が、猥褻物頒布等の罪に問われた公判(東京地裁)において、弁護側の証人として証言した人のうち、作家の証言だけ抜粋して紹介した本。なお、他に、学者や主婦など -
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丸谷才一による、文学に関する縦横無尽の講義。歴史的かつ同時代的にも文学を縦断・横断的な解説。聞き手の湯川さんも博識でこのようなインタビューはもうできないのではないかと思うと同時に、自分の勉強不足を痛感させられる。
以下、自分の関心を中心に本書の内容を簡単に紹介する。なお、下記は本書のメモに近く、本書の魅力は数多くの作者・文献が各種紹介され、それぞれの作品の魅力が語られることにある。
短編小説
・短編小説の面白さは本歌取り。短編の中に他の説話を盛り込むことにより、短い筋であるにも関わらず話の深さ広がりを作ることができる
・長編小説はイギリスで生まれた。生活に余裕ができて小説を読むという時間を持 -
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その時いたのは、ジョージとハリスとぼくの三人、そして犬のモンモランシーだった。
三人でどうも最近体の具合がよくないなあなんて話し合っていたんだ。ジョージもハリスも不調を訴えていたが、ぼくなんてもっと重症だよ、病床図鑑を調べたら全部が当てはまるんだ!
ぼくたちには休暇が必要だ。だからぼくたちはテムズ河に出ることにした。
キングストンからオクスフォードへ、ボートをひきながら河を漕ぎ上がる。そしてキングストンへ漕ぎ下がる一週間の旅。
こうしてぼくたち、ボートの三人と一匹の休暇が始まったんだ。
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イギリスのユーモア小説。
読んでいる最中には頭の中で「ボートの上には三人男~~♪犬もいるよボー -
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ぼくは本作の美点をいくつも挙げることが出来ます。
まず何と言っても、内容。
舞台となる大手新聞社は、政府の土地を払い下げてもらい、そこへ新社屋を建てる構想を持っています。
ところがこの構想が頓挫してしまいます。
原因を作ったのは、主人公の美人論説委員・南弓子。
弓子の書いたコラムが政府関係者の逆鱗に触れてしまったのです。
社の上層部は事なきを得ようと、弓子を事業局へと左遷させるべく動きます。
ここから物語が大きく展開します。
弓子は同僚や友人・知人、恋人と伝手を頼り、あの手この手で事態を解決しようと画策します。
結果、どうなるかは言わぬが花でしょう。
ただ、ストーリーは実に起伏に富んで面白い。 -
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理由抜きで好きなもの、というのがあります。
自分なりの理由は何かしらかあるんでしょうが、客観的に説明はできない(する必要も無いし)、まあ、好み、趣味です。個人的に「東日本○○を愛する会」を作りたくなるような、そういうちょっとメジャーでは無い好み、フェチというか情熱+好みというか。
その「○○」に何が入るのか。人によって色々、楽しいものです。できれば「読書」とか「沖縄料理」とか「中島みゆき」とか「お寺巡り」といったざっくりした言葉より、「関西引っ越し以降の谷崎」とか「島らっきょうとゴーヤーチャンプル」とか「”生きていてもいいですか”の2曲目の”泣きたい夜に”」とか「奈良時代以前の仏像」などなどと -
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「女ざかり」丸谷才一さん。1993年。
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丸谷才一さんなので、大抵面白いのです。
丸谷さんの小説は、好きになったらもう、全部好き。噺家の語り口みたいなものなので。
1993年ですから、まだワープロの時代。携帯電話はありません。
舞台は、朝日新聞社を彷彿とさせる、都内の大新聞社。の、論説委員室。つまり、新聞の「社説」とか「コラム」を書く部署です。
主人公は南弓子。40代後半?くらいなんでしょうか。「女ざかり」。
バツイチのシングルマザー、若い大学生の娘がいます。そして、周囲には中年から老年の、社会的地位のある男たちが群がっている、モテモテ女流記者。
そんな弓子さんが、論説委員となり