丸谷才一のレビュー一覧

  • ボートの三人男

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    今風に表現するならほっこりする小説といえる。男三人と犬一匹が英国のテムズ川を遠漕する。その珍道中を面白おかしく紹介する。ひたすらアホな旅なのだが、男同士の旅行ってこんな感じだよなあと過去の経験を呼び起こさせる。何かつらいことがあった時やイライラしている時に本作品を読めば、リラックスできそうだ。深いことは考えなくていい。ひたすら流れる文字を(ゆっくりと)追いかけ、アホな男たちを笑おう。ゲラゲラ笑えるものではないが、ゆったりとした笑いが心の中に沸き起こってくる。

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    2018年03月20日
  • 女ざかり

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    いや〜〜、本当に久しぶりの丸谷才一です。
    あひ変わらずの旧仮名遣ひの文章で、自立的な女性の話を描く、「たった一人の反乱」を思ひ起こさせる小説です。
    この時代に旧仮名遣いといふだけで、ガチガチにまぢめな小説とおもはれがちですが、しばしば爆笑といふか、スラップスティック的なユーモア感覚を見せるのがこの人の作品の特徴です。
    登場人物もかなり変わってゐます。文章の書けない新聞記者、あっけからんとした元女優の叔母、助平な書道家、変な理屈を捏ねる哲学者。
    なかなか楽しめる作品でした。(しかし旧仮名遣いで書くのはしんどい)

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    2017年11月10日
  • 輝く日の宮

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    丸谷さんらしいというか。。。
    ストーリーは自立した女性の恋愛物語で「たった一人の反乱」あたりに似た雰囲気があります。一方でもう一つの主題が国文学で、こちらがちょっと難題。
    「芭蕉はなぜ東北に行ったのか」「輝く日の宮」について、延々と説が述べられます。それはそれで面白いのですが、特に後半は「輝く日の宮」についてのミステリーになっている感もありまして、源氏物語を知らない(あるいは興味の無い)私には、ちとしつこ過ぎるかと。
    とは言え、如何にも丸谷さんらしい、知的遊戯に溢れた作品でした。

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    2017年10月30日
  • ボートの三人男

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    テムズ川をボートで旅する「ぼく」とジョージとハリス。そして犬のモンモランシー。三人衆と一匹の旅は上手くいかないことも多くて現実味にあふれている。それからイギリスっぽいユーモアも会話のあちこちにあふれています。
    あーわかるわかる!という箇所も多くて(特に、「ぼく」のおじさんが額縁の絵を壁に掛ける大騒動の話とか)笑いながら読みました。

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    2017年08月23日
  • たった一人の反乱

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    題名の『たった一人の反乱』は絶妙。誰かの個人的な決意とそれと独立した誰かの決意が相乗的に重なり、ユーモラスながら何処か悲哀に満ちた物語を紡ぎ出す。この「反乱」とは自我の芽生え、悪く言えば自分勝手な主張といえよう。

    作品自体は中盤まで非常に退屈。しかしながら半分か三分の二を超えたあたり、ツルのある決意から物語は面白くなってくる。本作品を読むと赤塚不二夫氏の漫画を思い出す。学生運動や授賞式のくだりなんか、もうわけがわからない。散漫にして奔放。なぜこういうプロットになるのか。理解に苦しみながら、またそれが面白い。丸谷氏の魅力はこのナンセンスさにあるのかもしれない。

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    2017年02月15日
  • 口訳万葉集/百人一首/新々百人一首

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    ・池澤夏樹=個人編集「日本文学全集 02」(河出書房新社)は 池澤が「初学者に向けた和歌入門のつもりで編集した。」(池澤夏樹「解説」419頁)書である。折口信夫「口訳万葉集」、小池昌代訳「百人一首」、丸谷才 一「新々百人一首」の三作を収める。和歌入門といふだけあつて万葉集から勅撰集までといふ、正に和歌といふにふさはしい時代と作品を扱つてゐる。実際に歌 を詠まないのならば、これで十分である。折口のはいささかぶつきらぼうであるが、他は丁寧に解説し、小池はすべてをきちんと訳す。丸谷は必ずしも訳すこと をしないが、その内容は多岐にわたる。そこから自然にその歌の意味も見えてくる仕掛けである。ただし、折口

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    2015年10月05日
  • ボートの三人男

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    イギリス人って、映画もそうですが、なんともいえないユーモア感がありますよね。
    そしてこういう自虐がほんとにうまい。

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    2015年05月25日
  • 輝く日の宮

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    源氏物語の幻の章、輝く日の宮はあったのか、をめぐるミステリー仕立ての主題に、主人公の恋愛や様々な文学論をちりばめた、贅沢な作品。章毎に文章のスタイルも変わり、最初はそれが分からなくて戸惑ったが、途中からは一気に読めた。筋の面白さは一級で、特に源氏物語をかじった人ならきっと興味を引かれる内容。いろんな伏線が張り巡らされていて、再読して初めて気付くことも多々ありそうな作品。
    (2015.4)

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    2015年04月17日
  • ボートの三人男

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    ロンドンはいつだって曇り空。憂鬱な天気を吹き飛ばす気概もない夜にはこんな本がよく似合う。ダメ・だめ・駄目な残念三銃士と1匹が繰り広げる、テムズ河におけるボート旅でのズッコケ道中。脱線と回想を繰り返す内容は人生に目的など不要だと諭してくれるダメダメ臭が溢れているはずなのに、時折挟まれる美しい風景描写や詩的な情景がふと我に返させてくれるその絶妙なバランスがたまらない。主人公の仕事に対する、真摯に怠惰であろうとするスタンスもたまらない。見上げればいつだって曇り空、それでも別に構わない。それがユーモアの力なんだ。

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    2015年01月22日
  • 快楽としてのミステリー

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    一冊のミステリ本をここまで深く読み解いたガイドブックはない。一般読者とは読書量も知識もレベルが違う。

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    2015年01月31日
  • 年の残り

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    表題作の『年の名残り』を読みました。

    味わい深い、読み応えのある文章で、一介の医師の老境を彼の旧制高校時代の同級生達の生き様を交えながら、複雑な心情の綾を巧みに描いていて素晴らしいと思いました。

    親子とそして妻との関係も、それぞれの登場人物のもつ様々な有り様を対比させていて独善に陥らず、心の内側を見つめると同時に外へも開き、観察し、分析する均衡の取れた人格を読みながら知覚する、その辺りが心地良く感じました。

    しかし、かなり衝撃的な事件とも言うべき出来事もあるので、読む際にはそれなりの覚悟が必要かもしれません。

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    2014年02月05日
  • たった一人の反乱

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    反乱。それは秩序への反逆。あるいは自由への疾走。あるいは理由なき破壊衝動。あるいは……滑稽な喜劇。

    登場人物の一人ひとりが引き起こす滑稽な反乱はカーニバル的であるが、その中から期せずして市民社会の中に潜む欺瞞が一つひとつ暴かれていく。しかし、市民社会が欺瞞に満ちていることを認めた上で、それに代わる新しい社会は構想しえないのだから、この市民社会を大切にしていこうとする主人公のセリフは、時代背景(本書刊行は1972年)を考えると、著者の当時の学生運動に対して向けられた言葉でもあるのだろうと思う。

    だが、当初は人一倍体裁や世間体を気にして臭いものに蓋を閉め続けていた主人公が、終いには囚人を利用す

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    2014年01月31日
  • 女ざかり

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    いままで読んだ丸谷小説はどれも暗い感じだったので、コメディタッチのこれはいかにも「お話」という印象。よくできてはいますが。

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    2013年07月18日
  • 輝く日の宮

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    職人的な手つきで綴られる現代絵巻物。
    百年の孤独と同じ構造物を裏口から入ったかのようである。

    色調は淡く、少し面白みに欠けるというか、
    それこそ「幽玄」なのであろうが、
    もっと堂々とやってくれてよい。
    後半部分、何か丸谷君のエクスキューズが隠れてるようでそれが残念。

    もっとも非常に味わい深いだけでなく、
    読者としては楽しく遊ばされましたけどね。

    2013年5月ののほんよめとーく対象本。
    来週くらいするのでUstream見てね。

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    2013年05月20日
  • 女ざかり

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    分量は多いけれど、おもしろくて読むのが止まらない。
    20年前の作品であるにしても人物造形や会話などが古めかしくてちょっと現実離れしたところもあるし(それが丸谷才一らしいところでもあり)、筋書きそのものは話が大きすぎたり予定調和的なところもあるのだけれど、背景を貫く贈与論を中心とした日本の社会や民俗についての考察、新聞社論説室の仕事や裏の人間関係のくわしさ、登場人物の会話に登場するさまざまなゴシップや雑学がおもしろくて(そこが丸谷作品の真骨頂)、ついついページをめくってしまう。
    森鴎外が大した筋書きじゃない『即興詩人』を雅文体でくるんで読ませるように、丸谷才一は知的好奇心という包み紙で読ませるの

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    2013年02月14日
  • 快楽としての読書 日本篇

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    この本は丸谷才一が、週刊朝日や毎日新聞の書評担当として掲載したものを書籍としてまとめたもの。丸谷才一が書評を書くと、その本の内容がよくわかるだけでなく、関連して幅広い情報が得られる。書評では、対象とする書籍に関連する古い時代から現代にいたる様々な書籍と作家が幅広く比較評価してある。それらの作家の個性や時代を我々の前に示してくれる。文学の流れも理解できたような気になった。生き生きとした書評を読んでいると、ついその本が読んでみたくなる。

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    2013年04月23日
  • ポー名作集

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    訳文のせいかもしれないけど、思っていたより綺麗な文章だと感じた。個人的には、「モルグ街の殺人」コンビのシリーズが好き。

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    2012年11月29日
  • ボートの三人男

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    ユーモア小説といったらこれとウッドハウスくらいしか思いつかない。他にもあるのかしら。もしご存知の方がいらっしゃったら、教えてください。

    ボートでテムズ川下りというストーリーはあってないようなもので、この本の真髄は枝葉末節にある。これ以上ないほどどうでもいいエピソードが仰々しい美文によって綴られる、それだけで知らず知らずのうちに唇が歪んでしまうではありませんか。神は細部に宿る。違うか。

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    2012年11月22日
  • たった一人の反乱

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    昭和47年発行の書籍ですが、今読むと当時にしては随分挑戦的な内容だと感じました。話はとてもおもしろい。
    モデルとの再婚、犯罪者の祖母、教授の地位を捨てた父など。
    話は別として、当時の女性の話し言葉が美しい。また文体としていまでは使用しない言葉が多く出てくる。
    改めて日本語を勉強する必要があると思った。

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    2012年11月07日
  • 快楽としての読書 海外篇

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    国外の様々な作品についての書評が載っている。驚いたのは、書評についての書評が載っていること! ほぼ知らない本の話だったが、この書評を読んだら「読みたい」と思った。

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    2012年09月12日