丸谷才一のレビュー一覧

  • 樹液そして果実

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    巻末の金屏風の起源に関する論考以外は、すべて文芸評論である。ジョイス、源氏物語、新古今、後鳥羽院、大谷崎、折口信夫、大岡昇平等自分の好きな人、作品を機嫌良く論じており、読者も気持ちがいい。母権性社会と源氏物語を結びつけた「むらさきの色こき時」が、構想が大きく楽しめた。

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    2012年01月23日
  • 年の残り

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    淡々としたその物語が好き。

    丸谷さんのものはこれまでエッセイしか読んだことがなかったけれど、これからは小説も読んでいこう。そんな気持ちにさせてくれた中編集。
    表題作「年の残り」と「思想と無思想の間」が個人的には好きだった。

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    2012年01月18日
  • 日本文学史早わかり

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    通説である政治史と文学史を一致させた区分ではなく、著者独自の勅撰集・七部集を基準とした時代区分に新鮮味を感じた。

    文学者というのは、新説を提起する存在でなければならないのだなあという感想を抱いた。

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    2011年12月12日
  • 樹液そして果実

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    1、ジョイス(空を飛ぶのは血筋のせいさ、巨大な砂時計のくびれの箇所) かなり、難しかった。ジョイスに連なる作家に刮目。
    2、古典(むらさきの色こき時、北野供養、王朝和歌とモダニズム、室町のころ、ばさら連歌)古今和歌集が鎮魂のためなど、なるほど?と思うことも。
    3、近代(題名略)森鴎外、折口信夫、北原白秋、伊藤整、後鳥羽院、谷崎松子、大岡昇平、中村真一郎、吉行淳之介、などたくさんの人作品に触れていて、それが王朝文学あるいは女権社会に連なるのが面白かった。
    4、芸術(六日のあやめ)

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    2011年08月05日
  • ボートの三人男

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    「犬は勘定にいれません」が、この本のオマージュだと知ってから、一度は読もうと思ってた。
    ユーモア小説というけど本当に面白いかな?と半信半疑だったのだけど、愉快な本だった。吾輩は猫である的な面白さ。洋の東西と時代を問わず、人間のやることを茶化したり皮肉ったりというのは、面白いもんなんだなぁ。

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    2011年05月07日
  • 輝く日の宮

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    ネタバレ

    読み応えのあるボリュームを備えた作品。ただ、薀蓄がちりばめられ、主筋を辿るのを妨害するきらいがある。アサコの恋の行方だけに集中できたら、どうだろう?とも思える。また、社長となった長良との恋の行方も気なるところ。だが、この小説の主役は、「輝く日の宮」なのだろうから、この結末でOKなのだろう。

    で、作者がこめた数々の謎。これも、読者を惑わせるものだろうと思うし、いろんな読み方が出来てよいのだろうと思う。影の主役は、『源氏物語』であり、その創作の謎であろうのだろうから、表面に現れた暗喩や、文学史的な話題も、それぞれに役割を演じて、この作品を構成しているのであろう。

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    2011年01月24日
  • 輝く日の宮

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    源氏物語、そして紫式部と藤原道長に絡めて描かれる男女の関係の物語。日本古典に関するある程度の知識がいるうえ、文章は旧かな遣い。しかしその幽玄な雰囲気がストーリーに合っていて、いっそ美しいほど。

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    2010年11月16日
  • 女ざかり

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    大新聞社の舞台裏のような話と、論説委員に選ばれた主人公、離婚して大きな娘がひとりいて、母親と娘と三人で暮らす弓子の働く姿を、すごくおもしろく読んだ。弓子はまさに正真正銘の「バリキャリ」を絵に描いたような。インタビューなどを通じて各界著名人と懇意にしていて、もちろん、哲学者のすてきな恋人(不倫だけど)もいて、文章を書く仕事は楽しいし、お金はあるし、暮らしは優雅で。なんだか読んでいて楽しくて。あと、問題ある社説を書いた弓子に圧力をかけてきたのはだれかをさぐっていくという、ちょっとミステリっぽいところもあって、それもおもしろかった。首相公邸に入っていくところとか、どきどきわくわくしたし。丸谷先生らし

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    2011年09月18日
  • 女ざかり

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    ストーリー展開も軽妙で、作中で展開される独自の「贈り物論」も面白い。
    女性の描き方が「なんだかなあ」と思わなくもないけれど、そのあたりも含めて、書かれたのは平成ながらいかにも「昭和」な雰囲気がたっぷり漂った作品。

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    2010年07月27日
  • 輝く日の宮

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    懸念していた旧かなづかいもあまり気にならず、ものすごくーーおもしろく読めた。主人公の女性は国文学者。やはり学者の父親とのアカデミックな会話や、研究や学会での発表の場面など、専門的でまるで知らないことだらけだったりするんだけれど、難解とか退屈ということはなくて、研究ってこういうことをするのかーとか学会の発表ってこんななんだーなどと興味深かった。主人公の恋愛話もからんでいて、プロポーズされるところがすごくおもしろかったり。文章のスタイルがいろいろ変わって、論文の原稿だったり、戯曲だったり、になるのは、普通の文章のほうがいいなーと、大変失礼にも思ったけれども。やっぱりいちばんおもしろかったのは、源氏

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    2011年09月18日
  • 輝く日の宮

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    解説によると、この小説の構造自体が、「輝く日宮」巻の喪失に関する提言になっているそうです。本自体がミステリー。
    「源氏物語」が何事につけてもぼんやりと曖昧模糊に描かれていることを受けて、この小説も何事も「ズバリ」がありません。
    「輝く日の宮」喪失の謎が今、明らかに!ということにはなっていないのが、かゆいところに手が届かなくてちょっと欲求不満なんだけど、そのおかげでよりいっそう「源氏」に思いを馳せることになり、ますます源氏の虜に(それが作者のねらい!?)。

    400ページの分厚い中には、たくさんの知識が詰まっていて、芭蕉はなぜ東北へ向かったのか―義経五百年忌説など面白かったです。芭蕉は源平時代に

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    2009年10月07日
  • 闊歩する漱石

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    恥ずかしいことに三四郎は未読なのです(汗) 発想の仕方も文章もしゃれっ気も、まさに知的とはこの事って感じ。

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    2009年10月04日
  • 女ざかり

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    ネタバレ

    がんを看取りたい、看病してくれるとの申し出を受け入れようと決意したわけですが、往生際の悪さを描きつつだったので、その後の行く末が気になりました。

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    2025年05月20日
  • 横しぐれ

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    ▼それこそ十代からの長い歳月で、丸谷才一さんの「一般向けの小説本」は多分あらかた読んでしまいました。相手がお亡くなりになっているから、そりゃいつかそういうことになります。
     恐らくこの本が最後の一冊だったのでは・・・・そういう感慨がありました(笑)。


    ▼収録は以下

    ・横しぐれ
    ・だらだら坂
    ・中年
    ・初旅

    ▼「横しぐれ」
    執筆当時の現代劇で、私小説風、ですね。
    国文学者の中年男が主人公で、
    <自分の父が戦前に道後で飲みかわした坊主というのは、山頭火ではなかろうか>
    というミステリーに挑みます。
    これはもう、語り口で載せていく不思議な日常ミステリー。
    圧巻の筆力です。ただまあ、好みによっ

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    2025年04月08日
  • 犬だつて散歩する

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    「コアラ」が白眉だね
     博学エッセー集。ただ、読者層は謎。
     阿部定について、またぞろ書いてゐて、ほんとなんて丸谷ってひとは陽物切り取り事件が好きなんだらう。となかば呆れた。そして相変らずの吉行淳之介だ。

     白眉は、珍獣エッセー「コアラ」。
     そこに、『たった一人の反乱』のとき、ファッション雑誌のカメラマンとモデルのオーストラリア撮影に同行した。とある。何を隠さう『たった一人の反乱』の主人公の妻が水商売の女なので、これは半分取材旅行なのだが、いちばん面白いのはコアラのうんちくと丸谷の反応ですね。

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    2025年03月30日
  • 後鳥羽院 第二版

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    筑摩書房 日本詩人選
    丸谷才一 後鳥羽院

    新古今和歌集を中心として、後鳥羽院の歌を解説した本。古典主義的な歌を想像していたが政治色が強く、「承久の乱は、文芸の問題を武力によって解決する試みだった」という著者の見解に驚いた



    後鳥羽院と藤原定家の違いを「後鳥羽院は最後の古代詩人となることによって近代を超え、定家は最初の近代詩人となることによって中世を探していた」としたことは とてもわかりやすい


    著者が、和歌史上最高の作品としたのは、百人一首「人もをし 人もうらめし あぢきなく 世をおもふ故に もの思う身は」でなく


    「見渡せば 山もと霞む みなせ川 夕べは秋と何思ひけん」上句と

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    2023年05月06日
  • たった一人の反乱

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    馬淵英介(主人公)のスノッブな思考に珍しいもの見たさの覗き見趣味を刺激される。日本型学歴階級社会エリートの、うちに秘める異常な優越感と貴種意識に違和感と嫌悪を感じながらも、引き込まれる自分自身の俗物性を痛感しながら、むず痒く複雑な感覚で読めた。
    ストーリーがユニークで内省語りの多い軽やかなハイテンポの読み物である。「たった一人の反乱」という題名への疑問はいろいろ考えさせられながらも、解決することなくそのまま最後まで続く。

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    2022年10月12日
  • 横しぐれ

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    旧仮名遣いだが、文章は流麗。
    一文が長めで、よく連想から過去の話に移るので、時系列が把握しづらくなる。

    父親と高校時代の国語教師が四国旅行時に出会った坊さんの正体を探る「横しぐれ」、記憶喪失になった少年と従兄弟を探しに盛岡へ行く主人公が交互に描かれる「初旅」が面白い。

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    2022年05月02日
  • ボートの三人男

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    ゆったりしながら読むのがちょうど良さそうな本。
    小話がいっぱい詰まってる。そして、可笑しい。
    おいこら、前と言ってることと違うぞと思ったり、間抜けだなと思ったり。
    1番チーズの話がくだらなくてお気に入り。

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    2021年05月05日
  • 犬だつて散歩する

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    昭和60年(1985)の出版なので、ずいぶんと古い。まあ面白いんだけど、どうでもいいことが多いね。著者がコアラを抱きたかったなんてことや、アメリカのジョンソン大統領が電動ハミガキを人に贈るのが好きだったなんて(その理由もせこい)、はあそうですかてなもんです。それにしても、またまた阿部定の話題を書いているけど、よっぽど好きなんだねえ。吉田茂や吉田健一、ホームズも好きなようです。長大なポルノ漢詩を紹介しているけど、エロいことも大好き。

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    2020年09月21日