丸谷才一のレビュー一覧
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赤穂浪士たちの討ち入りのときの衣装が火事装束だったことに注目するところから議論を説き起こし、彼らの行動の背景に『曾我物語』からの影響があったことを指摘しています。
ただし、『忠臣蔵』が御霊信仰を動機としているという本書の主張に対しては、諏訪春雄による厳しい批判が提出されています。また小谷野敦も、本書の議論の杜撰さをくり返し指摘しています。
そうした実証的なレヴェルでの問題はさておき、赤穂事件をもとにして『仮名手本忠臣蔵』が成立したという、歴史的事実と物語の関係を逆転させる著者の構想は、演劇的人間観にもとづいているといえそうです。本書の後半で『忠臣蔵』のカーニヴァル的な性格についての議論を展 -
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折口信夫の「万葉集」と小池昌代訳の「百人一首」
はどちらも、少し難解というか、その良さがすべて理解
できたわけではありませんが豪華な内容だったと
思います。万葉集や百人一首をここまで深く読んだ
ことは初めてかと思います。
百人一首は、昔覚えた記憶があるのですが、割と
忘れているもので、半分以下しか覚えていません。
でも、かけ言葉や謎、背景、意味がここまで
詳しく読めたのは初めてかもしれません。
『新々百人一首』は中にはいい句もあるのでしょうが
個人的に丸谷氏の旧態のかなづかいがどうしても
気持ち悪くて、読む気になりません。
なんで旧かなづかいをわざわざする必要があるので
しょうか???
現代の -
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英国ユーモア小説の古典。
いろいろオマージュ作品もあるようで、本作品の副題がタイトルの
『犬は勘定に入れません』(コニー・ウィリス)も是非読んでみたい。
・・・実はチラッと最初だけ読んだけど入りがほぼ同じだった。
ちなみに各章の目次的あらすじ的キーワードの羅列は、
既読の『エーミールと探偵たち』にもそのオマージュを見た(と思う)。
↑やっぱり違った(笑)。なんだったかな…
↑判明!『飛ぶ教室』だった!やっぱりケストナーだったかー。
内容については機知に富んだ場面がいくつかあって参考になった(何の?)。
展開に派手さはないけど、ほぼ全編に渡って脱線しまくり(笑)。
そしてスト -
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中国では恋愛文学が成長せず、日本に成長したのは儒教の影響による、との宣長の主張は興味深い。確かに日本には源氏物語があるが・・・。唐詩選の465首の中で、恋人を思う歌は2首とは、日本の万葉・古今・新古今と比べても驚く状況。某氏が「歌は我が国の風習だが、恋歌が非常に多く、まことに淫ら。恋歌でなくとも花鳥風月などの軽薄なことが多く、世の役に立たぬ無益」との言葉に対し、宣長が「歌の風雅な趣を知らない、頑固な考え。・・・道徳論にこだわってはいけない」という反論は見事との紹介。しかし、筆者が宣長の歌の下手さは尋常ではないという説明は実に可笑しい。「女の救はれ」は実は建礼門院は義経と通じ、「薄幸の妃」とは異
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三人の英国紳士が10日間、ボートでテムズ河を旅する、ただそれだけの話ですが、それぞれのエピソードが声に出して笑ってしまう程面白い。実話に近いみたいです。
面白い話の合間にふと登場する真面目で哲学的な話も印象的。
ただ、テムズ河ほとりの歴史や地理が私にはちょっととっつきにくい箇所がありました(途中まさかと思ったけどこの本はそもそもは旅行案内書になるはずだったとか)。
でもユーモア小説として今も世界中で愛読されているのは納得。本書の井上ひさしさんの解説も良かった。訳者の功績もあるのでしょう。
三人三様に自分勝手な彼ら、あと、モンモランシー(フォックステリア)の活躍もお忘れなく。