辻原登の一覧
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ユーザーレビュー
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暗い。とことん。どんどん深く狭く寒い穴を延々と転がり落ちていくかの様な読み口。
調べた限りでは物語のモチーフはそのまんまシューベルトの歌曲であろうか。この辺り、全く知識が無いので受け売りだが。
「社会からの疎外」を描くとともに、緒方の場合は進んで死を求めている訳ではなく、彼なりに今よりも良い状態を
...続きを読む模索してささやかながら手の中に掴みかけもするが、悉く上手くいかない。
流れ流れて辿り着いた和歌山県切目という場所で、傍目にはあまりに哀しい結末を迎えるのだが、緒方にとっては少し違う。
この世に生を受けてから、人は「訳も分からず、否応なしに」(p395)とりあえず生きるしかない。中にはそれなりに目的や意味を見出せる人もいるだろうが、人生の終盤まで分からないまま過ごす人も当然いる。
作中で緒方を縛っていた「何か」とは。運命、常識、モラル…何だろうか。
’生きること’を見つめる小説。
1刷
2021.6.14
Posted by ブクログ
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日露戦争の史実と当時の町の人々の話と恋愛とか絶妙なバランスで描かれており、とても面白く読み進めた。特に後半はページめくりが止まらなくなった。心に残る良書でした。
Posted by ブクログ
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本作は1980年代後半、所謂バブル時代の頃の和歌山を主な舞台とし、当時の実際の事件や動きに虚構を絡ませた、「虚実混じり合った」というような具合に展開する“犯罪モノ”というような小説である。
1人の女と3人の男が主要視点人物ということになる…
ヒロインの「増本カヨ子」はスナックを営む。そこの客である町
...続きを読む役場の出納室長の「梶康男」が在り、カヨ子を愛人であると考えている地元暴力団の幹部である「峯尾」が在り、そしてカヨ子の元夫で不動産業の「紙谷覚」が在る。
作中世界の時代、1980年代半ばから後半頃の和歌山というのは、関西空港の建設に向けた土砂を供給する用地の件や空港開港を見込んだ種々の開発関係の事案が色々と出ている、或いはかの山口組を巡る大きな抗争により、そうした大規模な組織に連なる様々な組の栄枯盛衰が色々と見受けられた地域だったという。
「誘う女」のカヨ子…それに戸惑いながらも惹かれることを拒めずに居る梶…そんな場面から物語は起こる。
梶が「絡め取られる」ようになって行く他方、山口組系の様々な組が2つの陣営に分かれて争う渦に、峯尾も巻き込まれて行く。そしてその様子の中でカヨ子との家庭を取り戻そうという想いも在って動く紙谷が在る。
未読の方の楽しみを妨げないという意味でも、これ以上の詳述は避けるが…中盤以降の動きは「で…どうする?どうなる?」と、本当に頁を繰る手が停まらなくなった…
「手に取ったからには一気読みを余儀なくされる」と巻末の解説に在るのだが…正しくそのとおりである!!
Posted by ブクログ
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「月も隈なきは」が初出されたのが2018年秋でしょ?!もう辻原登さんのファンにならない訳がないです。
この本を手にとったきっかけが文學界2月号で「最近独特な手法で書かれている小説が多いけど、まさに小説とはこのことお手本!」だっけかと小説を書きたい人向けに阿部公彦さんが力説されていて積読していた一冊
...続きを読むです。
内容をざっくりお伝えするとすれば、フランス文学者・中条省平さんのお言葉「辻原登は現代日本の純文学を代表する作家で、…ここ数年、純文学とエンタティンメントを途方もない筆力で融合させるクライム・ノヴェル(犯罪小説)の執筆に力を注ぎこんでいる」が1番伝わりやすいと思います。
私はSFが大好きなのでアニメや「子供の科学」など発行されている誠文堂新光社の二間瀬敏史さん「タイムマシンって実現できる?」を読んで物理をわかった気になってみたり、いつも目にするニュース番組に出ている落合陽一さんをきっかけに知った哲学者・清水高志さんのツイートを追ってみたり、私の精神的ヒーロー保坂和志さんの「ハレルヤ」(新潮社)「読書実録ーーバートルビーと人類の未来」(集英社「すばる」3月号)などで哲学の世界の入口に迷い込んでみたりしてようやく、6ヶ月を経て読めるようになった小説です。
「不意撃ち」は全5作からなっています。購入当時の勢いで読み進めてもわたしには2作目の「学校感」が居心地よくなくてその感覚から本に蓋をしてしました。この「学校感」を綺麗に解きほぐしてくれたのが上の保坂和志さんの2作品でした。あとは「戦後日本の「独立」」(ちくま文庫)P.456より松本健一さんと竹内修司さんの「憲法…「国民主権」は民主主義理論で、「皇位は世襲」といので反民主主義で、いわば生物学理論です。全然整合性なんかないでしょう。」「なるほど、必ずしも厳密に論理の整合性をとる必要はないと考えればいいのか。」というかけ合いをきっかけにこの「不意撃ち」を楽しめるようになりました。
それから最終章「月も隈なきは」に入るまでは一晩かかりました。前章の「Delusion(妄想)」からあまりにも違いすぎて、つまりそれがより現実的な学校感的な普通の風景描写過ぎてSF好きな私にとっては一晩寝かざるをえなかったわけです。と、「そのこと」に気づいたことをきっかけにラストの展開の黙示録(インテリジェンスに許された飛躍的思考のエンタメ)的なストーリーに気づかされ絶句、涙せざるをえませんでした。
この本を読んで実際に自分の中で変わったことと言えば、ドゥヴィッシーの「月の光」よりベートーベンの「月光」を好きになったことかな…。
Posted by ブクログ
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辻原登『籠の鸚鵡』新潮文庫。
1980年代を舞台にした時代とリアリティを感じる犯罪小説。
辻原登の作品は過去に『闇の奥』と『冬の旅』の2作を読んだ限りだが、文学文学している作品より、本作のような大衆小説の方が断然良いように思う。昭和史を巧く絡めることで、まるで実際にあったかのような事件として描か
...続きを読むれる物語は結末が良い。実際の事件の結末は小説のような綺麗なものではなく、本作のようなものだろう。
長崎から和歌山に流れ着き、バーのママをとなった増本カヨ子は夫・紙谷寛の不動産詐欺が地廻りヤクザの若頭・峯尾宏の知るところとなり、峯尾の女にさせられる。峯尾は金のために、カヨ子に町役場の出納室長・梶康男を色仕掛けで篭絡させることを命ずる。折しも山一抗争の拡大により組同士の抗争が激化し、峯尾に組長暗殺の大役が命ぜられるが……
本体価格630円
★★★★★
Posted by ブクログ
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